2019-01-07

新年おめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。

 

[EU]査察報告 

-スウェーデン―動物由来食品、特に生鮮肉とその製品

Sweden―Food of animal origin, in particular fresh meat and products thereof

19/12/2018

http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4077

2018年3月6~16日にスウェーデンで実施した、哺乳動物の生鮮肉生産とその製品の公的管理システムを評価するための査察。前回の査察の赤身肉とその製品への助言に対する管轄機関のフォローアップ行動を評価した。公的管理の責任の再編と再帰属を行うことで公的管理の強化、均一につながり、改善が見られた。しかし様々な欠点が確認され、公的管理システムは完全には信頼できず、法令違反が検出され保証は十分でない。屠殺場の処理能力が低く、スウェーデンは事後検査の遅延問題で措置を採択しないと決めた。結果として、現在の慣習はEU法に違反し続けている。

 

-スペイン―遺伝子組換え生物

Spain―Genetically modified organisms

13/12/2018

http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4076

2018年6月19~27日までスペインで実施した、環境と栽培への慎重なリリースを含めた、遺伝子組換え体を含む、から成る、で生産された、食品、飼料、種子の公的管理システムを評価するための査察。スペインはGMOsの公的管理システムをよく組織化している。故意のリリースや耕作を含む全分野でGMOs管理を実施する資源が割り当てられていて、新しく統一した故意のリリースの管理計画はこれらの管理をさらに強化することが予想される。管理の優先順位は適切でリスクに基づいている。しかし、訪問した自治コミュニティの1つで食品のサンプリングがなく、EUの要求に従っていない。市販されている食品と飼料に特定のGMイベントの法令違反があることが公的管理で検出されず、リスクとなっている。

 

-ドイツ―植物の輸入管理

Germany―Import controls for plant health

13/12/2018

http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4074

2018年5月22日~6月1日までドイツで実施した、植物の健康の輸入管理システムを評価するための査察。輸入管理機関の作業能力や輸入検査の妥当性と有効性を特に評価する。ドイツは概ねEUの必要条件に従い、木材と木材梱包材料を含む植物の健康のための輸入管理の包括的なシステムを確立している。輸入管理システムには多くの優れた実践例があり、ポストや到着客を定期に管理することで、非常に多くの法令違反の積送品がEUに入ることを防いでいる。しかし管理システムには多くの欠点がある。特に、ドイツへの主な入国2地点で実施されている植物と植物製品のサンプリング量の削減や植物の健康検査は、ドイツの植物の健康の輸入管理システムの全体的な効果と保証を傷つけるものである。

 

[EFSA]セロリ、フェンネル、米のラムダ-シハロトリンの既存MRLsの改訂

Modification of the existing maximum residue levels for lambda‐cyhalothrin in celeries, fennel and rice

EFSA Journal 2019;17(1):5546 3 January 2019

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5546

リスク評価結果に基づき、EFSAは、報告された農業規範によってラムダ-シハロトリンの使用による残留物の短期及び長期摂取は消費者の健康リスクになりそうもないと結論した。提示された消費者リスク評価は、認可更新や既存のMRLsレビュー後に求められた確証データを踏まえて再検討する必要がある。

 

[EU]RASFF Week1-2019

警報通知(Alert Notifications

ウズベキスタン産スロバキア経由レーズンのオクラトキシンA (66.5 µg/kg)、トルコ産赤パプリカ粉の未承認着色料スーダン1 (1142 µg/kg)及びスーダン4 (330 µg/kg)、中国産オランダ経由乾燥クコの実の未承認物質カルボフラン(0.17 mg/kg)、ベルギー産梅酒のカルバミン酸エチル(11.375 mg/kg)、産出国不明デンマークで包装した煎った塩味ピスタチオのオクラトキシンA (96 µg/kg)、米国産ピスタチオのアフラトキシン(B1 = 21; Tot. = 24 µg/kg)、

注意喚起情報(information for attention

フランス産チルドマグロのヒスタミン(468 mg/kg)、レバノン産酢漬けのカブの未承認着色料ローダミンB、ポーランド産食品サプリメントの未承認物質マンガングリシンキレート及び鉄グリシンキレート、2,4-ジニトロフェノール(DNP)のオンライン販売、

フォローアップ用情報(information for follow-up

中国産ドイツ経由ラプサンスーション茶の未承認物質アントラキノン(0.12 mg/kg)、中国産鶏肉風味油漬豆腐入りガラス瓶の蓋からのエポキシ化大豆油(ESBO)の溶出 (94 mg/kg)、オランダ産ハッシュチョコレートクッキーの未承認新規食品成分カンナビジオール(CBD) (1.441 mg/kg)、

通関拒否通知(Border Rejections

中国産ピーナッツのアフラトキシン(B1 = 13,3; Tot. = 14,7 µg/kg)、中国産鉄製電子レンジのグリルからのニッケルの溶出(0.8 mg/kg)、トルコ産オレンジのエスフェンバレレート(0.254 mg/kg;0.182 mg/kg)、フィリピン産インスタント麺の着色料タートラジン(E102)の未承認使用、トルコ産サルタナレーズンのオクラトキシンA(14.20 µg/kg)、ロシア産食品サプリメントの未承認照射、中国産メラミン製テーブルウェアからのホルムアルデヒドの溶出(141.2 mg/kg)、トルコ産乾燥アプリコットの亜硫酸塩高含有(2206 mg/kg)、中国産台所用品からのホルムアルデヒドの溶出(172,5 mg/kg)、トルコ産乾燥イチジクのオクラトキシンA (27.7; 189 µg/kg)、トルコ産種なしレーズンのオクラトキシンA (11.7 µg/kg)、アルゼンチン産ピーナッツのアフラトキシン(B1 = 5.6; Tot. = 33 µg/kg)、

 

[EU]RASFF Week52-2018

警報通知(Alert Notifications

ドイツ産原料スイス産食品サプリメントの未承認物質塩素酸塩(26.3 mg/l)、韓国産乾燥海藻のヨウ素高含有(261 mg/kg)、産出国不明ドイツ経由竹製カップからのホルムアルデヒドの溶出(164; 224; 163; 134; 226; 152 mg/kg)、イタリア産チルド鹿肉の鉛(2.7; 2.2; 0.71 mg/kg)、ニカラグア産リトアニア経由ピーナッツのアフラトキシン(B1 = 4.3 µg/kg)、イタリア産オーストリア経由レモン濃縮果汁の亜硫酸塩非表示(91 mg/l)、英国産冷凍調理済カニの亜硫酸塩非表示(99 mg/kg)、イラン産ドイツ経由殻をとったピスタチオのアフラトキシン(B1 = 60; Tot. = 71 µg/kg)、

注意喚起情報(information for attention

スロベニア産原料ハンガリー産チルド鹿のグーラッシュの鉛(0.568 mg/kg)、

フォローアップ用情報(information for follow-up

米国産食品サプリメントの未承認物質ヨヒンビン、

通関拒否通知(Border Rejections

トルコ産乾燥アプリコットの亜硫酸塩高含有(2326 mg/kg;2820 mg/kg)、トルコ産ピスタチオ穀粒のアフラトキシン(B1 = 14.56; Tot. = 21.44 µg/kg)、米国産アーモンドのアフラトキシン(B1 = 92; Tot. = 110 µg/kg)、

 

[ProMED]リシン 米国:(ワシントン)一般暴露の可能性

Ricin - USA: (WA) possible public exposure

2019-01-05

http://www.promedmail.org/post/6242133

Date: 4 Jan 2018 Source: KIRO 7 [edited]

Thurston郡の保安官事務所が、一人の患者が、2019年1月2日にSt. Peter病院の中で、リシンを摂取したことを認めたという。数十人の人がリスクに晒された可能性がある。

18才の男性が自宅でリシンを作っていて具合が悪くなって救急車を呼んだ。そして一部を救急室に持っていった。現在FBIが捜査中。

 

[NASEM]軍の肥満と過体重の課題を理解し乗り越える:ワークショップの概要

Understanding and Overcoming the Challenge of Obesity and Overweight in the Armed Forces: Proceedings of a Workshop

January 3, 2019

http://nationalacademies.org/hmd/Reports/2019/understanding-and-overcoming-challenge-of-obesity-and-overweight-in-armed-forces-proceedings.aspx

2018年5月7日の肥満解決法円卓会議が開催したワークショップの概要。

 

[FSANZ]食品基準通知

Notification Circular 70–19  

3 January 2019  

http://www.foodstandards.gov.au/code/changes/circulars/Pages/NotificationCircular7019.aspx

新規申請と提案

加工助剤としてのTrichoderma reesei由来キシラナーゼ

 

論文

-エディトリアル Nature 150才

Nature Volume 565 Issue 7737, 3 January 2019

Nature at 150

Collection  |  02 January 2019

150 years of Nature

http://www.nature.com/collections/dgabdjddji

 

-砂糖でない甘味料の健康上の利益に圧倒的な根拠はない

No compelling evidence for health benefits of non-sugar sweeteners

2-Jan-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-01/b-nc010219.php

根拠の重み付けからは利益があるかもしれないことが示唆されるが全体像はまだ不明

The BMJに発表されたレビュー。多くの試験の質が低く結果への信頼性も限られる。

エディトリアルではVasanti Malikが、現存の根拠に基づき、遊離の砂糖の代用品としての砂糖でない甘味料の使用は、「体重の重い消費者が心代謝リスクを減らすのに役立つ戦略の一つになるかもしれない、究極の目標は水あるいは他の健康的飲料に代えること」という

(砂糖入り飲料の影響が大きくなければ代用品のメリットもあまりない。普通の人が甘い飲み物少し飲んだくらいでは別にどうにもならない。水以外認めない、ってのはどうなんですかね)

 

-米国の成人10人中1人は食物アレルギーだが、約5人に1人はアレルギーだと思っている

One in 10 adults in US has food allergy, but nearly 1 in 5 think they do

4-Jan-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-01/arh-oi1122718.php

JAMA Network Open that。成人になってからアレルギーになったと答えている人が約半分。アレルゲンのトップは魚介類

(ヒスタミン中毒が混ざっているのではないかと疑う)

 

-科学者は光合成の問題を省略し作物の成長を40%増やした

Scientists engineer shortcut for photosynthetic glitch, boost crop growth by 40 percent

3-Jan-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-01/crwi-ses122818.php

Scienceに発表されたUSDAのARSを含む、Bill & Melinda Gates 財団などが支援する光合成の効率を上げる国際研究プロジェクトの一環。光呼吸を省略するよう遺伝子操作したタバコはバイオマスが40%多くなる

 

-がん代替療法のための患者のクラウドファンディング活動

Patients' crowdfunding campaigns for alternative cancer treatments

The Lancet Oncology

Perspectives|Digital Oncology|Volume 20, ISSUE 1, P28-29, January 01, 2019

Jeremy Snyder, Timothy Caulfield

がん患者の約半分がCAMを使用していると推定されている。理由はコントロール感覚が欲しい、痛みの緩和、治療に耐えるためなど様々であるが明確なリスクがある。必死の患者がCAMに搾取されることあるいはCAMが有害である可能性である。実際2018年の研究ではCAMの使用は患者の生存確率が低いことに関連することを発見した。

学術文献ではCAMは議論になり続けているがホメオパシーのようなものには効果がないということは科学コミュニティーには広範な合意がある。CAMはプラセボ以上の効果はないことが一貫して研究で示されている。

自費でCAMの費用を払えない患者がクラウドファンディングで資金を集めている。特にGoFundMeが世界の個人によるクラウドファンディングの80%以上を占める。クラウドファンディングが根拠のない幹細胞療法のお金を集めるのに使われているという根拠があるそこでがんのCAMについて調査した。

2018年6月8日にGoFundMeを検索してホメオパシーによるがん治療のためのクラウドファンディングを行っている220人を同定した。CAMを使う理由として3つのカテゴリーが同定された:できるものはなんでもやってみたいので標準療法を補完するものとして使う、標準療法への疑いや恐れから標準療法を止めてCAMを使いたい、標準療法を止めたくないがお金がない。220人中186人がアメリカ人で次いでカナダ、英国。要求費用は5 795 602ドルで13621人から1 413 482ドルを集めた(24%)。少なくとも62人が募金開始以降死亡している。ホメオパシーに加えて、他の根拠のないがん治療法も行っている。ジュースやオーガニック食品が85人、サプリメントやビタミンやハーブが68人、ビタミンC点滴が30人、等

(以下略。これ、お金出す方にも問題がある)

 

-The Lancetの2019年予測

Looking ahead to 2019 in The Lancet

Editorial|Volume 393, ISSUE 10166, P2, January 05, 2019

2019年1月に、世界の増加する人口を食べさせるための21世紀の課題に知見を提供する二つの報告書が発表される予定である。

一つは「人新世の食品:持続可能なフードシステムのための健康的食事についてのEAT-Lancet任務Food in the Anthropocene: the EAT-Lancet Commission on healthy diets for sustainable food systems」で、差し迫った栄養要求に応えつつ地球の限界への将来のダメージを最小化あるいは回復する新しい参照となる食事を提案するもの。それから「世界の肥満と栄養不良と気候変動の同時発生The Global Syndemic of Obesity, Undernutrition and Climate Change」ではこれらの要因が如何にかつてない割合で交わっているかを検討し、その健康影響への対策のための新しい枠組みを提案する

(以下略)

 

-あなたのデジタル栄養士

Your digital nutritionist

Dina Hamideh et al.,

Perspectives|Digital medicine|Volume 393, ISSUE 10166, P19, January 05, 2019

我々は全員が一日中たった一つのこと-必要な食べものを確保する-をして何万年も過ごして来た人たちの子孫である。彼らが成功したおかげで我々はここにいてこれを読んでいる。それでも今でも、栄養不良から食べ過ぎまでの栄養に関する問題が世界の死亡や病気に寄与し続けている。健康的な食事がどんなものかを確認しようとする研究は主に観察研究で、食事記録を使い、しばしば全ての人に同じ食事が正しいとみなす間違った助言をしている。しかし新しいツールや知見は栄養科学の光景を変えつつあり、個人個人に即したより良い栄養ガイドの必要性を強調している。

ダイエットと栄養に関する消費者向けアプリが何千もある。食事データのデジタル記録は紙と鉛筆より効果的かもしれないという研究はあるが、そうしたアプリの順守率は常に5%以下で後ろ向きで、無作為化試験ではそうした技術によって減量が長続きする利益があることを示すことができていない。スマートホンには食事記録以外にも価値はあり、ウエアラブルセンサーや電子カルテ、代謝プロファイル、腸内マイクロバイオームなどの複数の情報源からの各種健康データを一元化することでデジタル栄養士として機能する可能性はある。

パーソナライズド食事ガイドを可能にするためには、必須の第一ステップは簡単に正確に食事摂取を追跡できることである。コンピュータビジョンの進歩で写真に基づく食事追跡、自動的食品画像認識とカロリーと栄養の決定、が可能だろう。これは労力の多い手による入力を省くが、それでも個人が食べるものを全て写真に撮る必要がある。AIが支援する食品写真アプリは既に存在するが、その正確性と現実世界での有用性についての報告はほとんど無い。別の新興食品画像技術は近赤外ラマン分光高度法により食品を分析できる持ち運び可能な装置である。Bluetoothでスマートホンに繋げた装置が初期試験目的でいくつか消費者に入手可能である。可能な限り受動的にカロリー摂取量を追跡できるように、個人が食品を口に運ぶ動きを感知するリストセンサーなどの身につけるセンサーについても検討されている。食べたり飲んだりしたものの栄養をワイヤレスで伝える歯に装着するセンサーすらある。しかしどれもまだ開発の初期段階で、正確性や有用性はわかっていない。

食事摂取量の追跡の他に、食事をしたときの個人の特有の反応を検出し解析する能力も必要である。正確さについての根拠はないものの自動的に食べたカロリーを追跡すると主張するセンサーもあるが、食後血糖反応が違うことを追跡できる。例えば予備的研究では血糖の継続的追跡により食品への血糖応答が三つのタイプに分類できる。個人の特有の血糖反応が食習慣と身体計測と運動と血液バイオマーカーと腸内細菌データを統合した機械学習アルゴリズムを用いて予想できるかもしれない。そのような研究が成熟すれば、加齢や妊娠や病気などの代謝や栄養要求が変わる個人向けの食事助言が可能になるかもしれない。

我々はデジタル技術が栄養科学にもたらす可能性を探る初期段階にいるにすぎず、現実世界で実行された根拠が切実に必要である。我々が何をどう食べているのかは複雑で、個人を超えたより広範な社会的要因により形作られている。個人レベルであっても、我々は全ての人にとって、あるいは生涯にわたって、正しい食事や食事介入はないことを知っている。しかし将来、一連のデジタル技術の進歩で、全ての人の健康にとって最適な食事を求める我々の探求に進化があるかもしれない。

 

(食事の話が続いたのでついでに

「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」について

エビデンスのヒエラルキーについて説明しているのだけれど、これは基本的に薬の場合。医薬品の場合、事前登録した二重盲検臨床試験が複数あってメタ解析で証明されていれば信頼性は高い、と言えるだろうけれど食品の場合ビタミンサプリメントのような特殊な事例を除いて質の高い介入試験はほとんどない。もとのデータの信頼性が低いので手法だけメタ解析でもバイアスが拡大されるだけ、だったりする。そこで関連分野の専門家が文献をレビューして関係者の意見を聞き、パブコメを募集したりして手間暇かけて報告書を作ることになる。それが科学アカデミーの報告書および米国人のための食事ガイドラインで、食事に関してのエビデンスレベルとしては最高レベルとなる。たまたまメインの所管は農務省なのでUSDAのサイトにあるけれど、別に農務省だけが関与しているわけではない。この最高レベルのエビデンスを、津川先生は「農協や酪農団体の政治活動で歪められている」と一言で否定してしまっている(p97)。アメリカ人にとっては乳製品はカルシウムとビタミンDの(かなり偏った)主な摂取源なので一つの病気についてのデータだけを指標にどうこうは言えない、といった事情が考慮されていない。

インターネットを使って正しい健康情報を手に入れる方法、として英語が読めない人にGoogle翻訳で英語の記事を読むことを薦めているけれど、そんなことをするより食事ガイドを読みなさい、でいいと思う。そして最新版のアメリカ食事ガイドはかなりよくできている。ただし当然のことながらアメリカ人向け。大事なことは健康的食スタイルは多様であり得ると言っていること。

日本の食事バランスガイドについても農水の陰謀を主張しているけれど、別に陰謀ではなくあからさまに農水はコメを食べて欲しいと言っている。理由は簡単、日本で自給できる、最も入手しやすいものだから。ただし玄米が推奨されないのはヒ素の懸念があったからで、世界中で玄米ばかり食べるのは良くないとされている以上、しかたがない。ちなみに玄米を薦めると「白米の生産に影響が出る」からとりやめになったと書いているがそんなわけない。玄米も白米も生産するのは同じものなので農家にとってはどっちだろうと関係ない。細かいところではEWGを好意的に紹介しているあたりはいただけない。ただしマリオン・ネスル教授が典型的な、米国の公衆衛生研究者の一部の雰囲気を反映しているだけだろうと思う。

オリーブ油の話など、栄養士界隈から本格的な解説が欲しいところなのだけれど、栄養士会のHPでニュータス(https://www.nutas.jp/)というのを見てがっかり。まるでトレンドブログのような軽いノリで、それ自体は別にいいのだけれど参考文献一切なし。出典を明確にするのは基本だと思う。)

 

-果物制限食が7才の子どもの壊血病を引き起こした

Restricted diet in fruits causes scurvy in a child of 7 years old.

Vázquez Gomis R, , et al.

Endocrinol Diabetes Nutr. 2017 Feb;64(2):119-120.

 

-二尖大動脈弁のある患者のLactobacillus rhamnosusによる心内膜炎:プロバイオティクス摂取の役割の可能性?

Endocarditis due to Lactobacillus rhamnosus in a patient with bicuspid aortic valve: Potential role for the consumption of probiotics?

Noreña I, et al.

Med Clin (Barc). 2017 Aug 22;149(4):181-182.

 

-二次的な先端紅痛症:尿中5-ヒドロキシインドール酢酸濃度の増加を伴うトリプトファンサプリメントに誘発された症例

Secondary erythromelalgia: a tryptophan dietary supplement-induced case associated with elevated 5-hydroxyindoleacetic acid (5HIAA) urinary levels.

Michelerio A, , et al.

Int J Dermatol. 2018 Jan;57(1):83-85.

イタリア

 

-肥満か食事か?フタル酸体負荷レベルと決定因子-ポルトガルの子どもたちでの症例研究

Obesity or diet? Levels and determinants of phthalate body burden - A case study on Portuguese children.

Correia-Sá L, et al.

Int J Hyg Environ Health. 2018 Apr;221(3):519-530.

尿中の21のフタル酸代謝物を測定。MCHP, MnPEPおよび MnOP以外は定量限界以下で2011/2012の研究よりも2014/2015のほうが減っている

 

-「肥満を誘発する」学校の食環境?オランダ都市部の事例研究

'Obesogenic' School Food Environments? An Urban Case Study in The Netherlands.

Timmermans J, , et al.

Int J Environ Res Public Health. 2018 Mar 28;15(4). pii: E619.

学校周辺400m以内の食品の販売や広告についての調査。社会経済状態による差はあまりなかった

 

-大アンティル諸島の侵入性ミノカサゴのシガトキシンの調査:水産業開発における意味

Investigation of ciguatoxins in invasive lionfish from the greater caribbean region: Implications for fishery development.

Hardison DR, , et al.

PLoS One. 2018 Jun 20;13(6):e0198358.

カリブ海とメキシコ湾のミノカサゴのシガトキシンを調べた。FDAのガイダンスレベルである0.1ppbを超えたのは0.7%

(食べて減らそうという方針への影響)

 

-市販のビタミンD中毒により誘発された高カルシウム血症による複数の腎結石

Multiple renal calculi due to hypercalcaemia induced by over-the-counter vitamin D intoxication.

Manappallil RG, et al.,

BMJ Case Rep. 2018 Aug 20;2018.

 

-桃アレルギー患者での食物依存性運動誘発アナフィラキシー

Food-dependent, exercise-induced anaphylaxis in a patient allergic to peach.

Ukleja-Sokołowska N, et al.,.

Int J Immunopathol Pharmacol. 2018 Jan-Dec;32:2058738418803154

 

-東アジアでの血中あるいは尿中カドミウムからカドミウムの食事摂取量を推定

Estimation of dietary intake of cadmium from cadmium in blood or urine in East Asia.

Ikeda M, et al.,.

J Trace Elem Med Biol. 2018 Dec;50:24-27.

(測定したわけではないようだ、報告されているデータでの相関。)

 

-WHO紀要

Bulletin of the World Health Organization

Volume 97, Number 1, January 2019, 1-72

https://www.who.int/bulletin/volumes/97/1/en/

公衆衛生におけるデジタル技術、機械学習、人工知能の倫理的課題について投稿募集

 

その他

SMC UK

-砂糖でない甘味料と健康を調べたレビューへの専門家の反応

expert reaction to review study looking at non-sugar sweeteners and health

January 3, 2019

http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-review-study-looking-at-non-sugar-sweeteners-and-health/

BMJに発表されたレビューが砂糖でない甘味料の健康上の利益の根拠は少ないと主張する

King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授

この研究の結果は驚くべきことではなく、人工甘味料が肥満予防の万能薬ではないことを確認する。砂糖入り飲料を人工甘味料に代えるのは子どもの体重増加の予防に役立つだろう、だが水の方がいい。

Glasgow大学代謝医学教授Naveed Sattar教授

この論文は私の気持ちを変えることはない-砂糖入り飲料より砂糖でない甘味料のほうがはるかにましだ。また最も質の良い無作為化試験は砂糖入り飲料より砂糖でない甘味料のほうが子どもや青少年の体重増加が少ないという利益を示している。この研究の問題は無作為化試験以外のデータを混ぜていることで、これをやると根拠の質が著しく弱くなる。異なる種類の研究を混ぜたときにはしっかりした結論を出すのはほぼ不可能になる。著者らはこのことを知っていて、だから栄養分野には質の高い大規模な無作為試験が必要だという主張には私は強く同意する。しかしそれは実施するのが難しいだろう-それがないとある種の問題は完全に解決することはないだろう。

 

-子どもの画面を見る時間についての新しいガイダンスへの専門家の反応

expert reaction to new guidance on children’s screen time

January 4, 2019

http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-new-guidance-on-childrens-screen-time/

Royal College of Paediatrics and Child Healthが発表した研究が画面を見る時間が長いことと子どもや若い人の健康への害に関連があるという根拠を呈示した

(本文略 以下RCPCHの発表)

 

Build screen time around family activities, not the other way round, parents told

4 January 2019

https://www.rcpch.ac.uk/news-events/news/build-screen-time-around-family-activities-not-other-way-round-parents-told

 

-2018年の法による錬金術:カイロプラクターがプライマリーケア医師と再定義する行為は続く

Legislative Alchemy 2018: Chiropractors rebranding as primary care physicians continues

Jann Bellamy  on December 20, 2018

https://sciencebasedmedicine.org/legislative-alchemy-2018-chiropractors-rebranding-as-primary-care-physicians-continues/

 

-医師が4才のがん患者に棗茶を与えて中国代替医療帝国が炎上

A Chinese alternative medicine empire is under fire after doctors say it gave jujube tea to a 4-year old cancer patient.

Shih G, Li L.

https://www.washingtonpost.com/world/2018/12/28/chinese-alternative-medicine-empire-is-under-fire-after-doctors-say-it-gave-jujube-tea-year-old-cancer-patient/?noredirect=on&utm_term=.c33986ee04f6

2012年に中国のQuanjianグループ(企業名)幹部の助言で化学療法を止めた少女がナツメや紫根アロマセラピーを行ったが2013年に病院の標準療法に戻って2015年に死亡した。ところがQuanjianは少女の写真を使って魔法のがん治療と宣伝した。このことを巡って双方が訴える事態になっている

(中国内の話。中国では中国伝統薬と称するものを売っている大企業の嘘を暴くと逮捕されるという恐怖から告発が行われ難いとか)

 

-ILSI年次会合

2019 ILSI Annual Meeting & Science Symposium

2019-01-08 – 2019-01-13

http://ilsi.org/event/2019-ilsi-annual-meeting/

テーマは「栄養と食品安全の素晴らしい新世界」

(ディストピア小説のタイトルをテーマにする意図は?新しい技術がテーマだから?)

 

-コンシューマーラボ 質問コーナー

ConsumerLab.com Answers

緑茶の放射能

Radiation In Green Tea

1/5/2019.

https://www.consumerlab.com/answers/radiation-contamination-in-green-tea-from-japan/green-tea-radiation/

Q: 日本産緑茶に放射能汚染があるの?

A: 2011年の福島第一原子力発電所事故以降、日本の食品と飲料中放射能レベルは緊密に監視されていて、現在緑茶に過剰な放射能があるという兆候はない。

(以下緑茶について略)

 

-おもちゃの磁石を飲み込んで少年の大腸と小腸の一部を除去した、と母親が言う

Parts of boy's colon, intestines removed after swallowing toy magnets, mom says

Published 6 days ago

parts-of-boys-colon-intestines-removed-after-swallowing-toy-magnets-mom-says

4才の子どもが人気のおもちゃを飲み込んで手術を受けた

母親が12月27日に息子の病気についてフェイスブックに投稿し325000回以上シェアされた。おもちゃを壊して開けて中に入っていた磁石を13個飲み込んだ

 

-科学者は米国政府の閉鎖が長引き落胆

Natureニュース

Scientists despair as US government shutdown drags on

04 January 2019

https://www.nature.com/articles/d41586-019-00008-0

宇宙ではデータ収集を続けられるが、何千人もの連邦科学者は賃金なしで自宅待機を強いられる

 

-米国政府機関閉鎖中

FTC

USDA

FDA

CPSC(磁石の事故はここが担当)

CDCは生きてるようだ

MMWR Weekly: Current Volume (67)

January 4, 2019 / Nos. 51 & 52

https://www.cdc.gov/mmwr/index2018.html

・ブラックタールヘロインを使用した人の創傷ボツリヌス中毒アウトブレイク-サンディエゴ郡、カリフォルニア、2017-2018

9人の患者1人死亡

(こういうのにもインフォグラフィクス使うんだ)

 

-レクチン:新しいグルテン?

Lectins: The New Gluten?

by Wellness Letter 

Published January 02, 2019

http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/nutrition/article/lectins-new-gluten

炭水化物の多い食品の中では、近年グルテンがあらゆる病気の原因だとされている。そして新しい悪役はレクチンである。それは特に豆や全粒穀物に多い炭水化物結合タンパク質であるが動物や微生物にも存在する。グルテン同様、植物レクチンがあらゆる病気の原因だと非難されるようになった。この変化の主導者はSteven Gundry博士で2017年に「Plant Paradox」という本を書いた。サブタイトルは「病気と体重増加の原因になる「健康的」食品に隠された危険」である。あなたが健康によいと思っている植物性食品があなたを病気にする、と恐がらせるものである。それから類似の本がたくさん出て、レクチンを避ける料理法、とかGundry博士による高価なダイエタリーサプリメント(「レクチンシールド」のような)やクリームなどが販売されインフォマーシャルで宣伝された。Gundry博士は「あなたが食事について知っていると思っていることは全て間違っている」という。

レクチンは新しい悪者ではない。実際20年ほど前から宣伝されている疑わしい「血液型別正しい食事」ではレクチンをあらゆる悪事の原因としている。以下にレクチンについての宣伝と事実を示す。

・レクチンは植物食品に含まれる有毒物質

一部は。適切に調理すれば問題ない

・レクチンは炎症と炎症性疾患を誘発する

単離したもので実験室で実験すれば

・レクチンは体重を増やす

植物の多い食事は体重増と関連しない

・レクチンはがんの原因

レクチンの多い食品はある種のがんのリスクを減らす

基本

栄養専門家は植物の多い食生活を推奨している。Gundry博士は逆張りで疑似科学的主張をしている。彼はダイエタリーサプリメントを売りたい

ただし生の豆や調理不十分な乾燥豆は食べないこと

(珍しく強い言葉で完全否定されているが邦訳が出ているようだ。本邦の類似ポジションの白澤卓治先生

https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798154572