2019-01-31

[BfR]耐性菌-世界の問題

Resistant germs - a global problem

29.01.2019

https://www.bfr.bund.de/en/press_information/2019/06/resistant_germs___a_global_problem-239698.html

BfRはアフリカの動物の健康と食品の安全に関する国際起業プロジェクト会合に参加

経済協力開発省(BMZ)700万ユーロを出資しサハラ以南のアフリカで実行する予定のプロジェクトの開始会議が123-25日にベルリンで開催された。抗菌剤耐性や食の安全は国境を越える。解決のためには国際的科学的協力が必要である。

 

論文

-朝食を食べることは減量にとって良い戦略ではないかもしれない

Eating breakfast may not be a good strategy for weight loss

30-Jan-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-01/b-ebm012819.php

BMJに発表されたレビュー。朝食を食べることが減量に有効という考えを支持する良い根拠はない。むしろ朝食を食べる人の方が朝食を抜く人より摂取カロリーが多く、朝食を抜いたからあとでたくさん食べるということはない。ただし研究の質は低い。

 

-新しい研究は、完全菜食主義者、菜食主義者、雑食の人が昆虫を食べることをどう思うかについて示す

New study shows how vegans, vegetarians and omnivores feel about eating insects

30-Jan-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-01/uoef-nss013019.php

東フィンランド大学の研究によると菜食主義者と雑食の人は昆虫を食べる選択肢もあると思っているが完全菜食主義者は選択肢にはならないという。予想通り、とのこと。Nutrients.

 

-工業用化合物が妊娠中ずっと母親から胎児に移行する

Industrial chemicals pass from mother to fetus throughout pregnancy

30-Jan-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-01/ki-icp013019.php

Environment Internationalに発表されたスウェーデンの中絶胎児と母親の血液と胎盤のPFASを測定した研究。スウェーデンとデンマークのバイオバンク由来の7-42週の78胎児の組織を測定した。

もと論文オープンアクセス

Concentrations of perfluoroalkyl substances (PFASs) in human embryonic and fetal organs from first, second, and third trimester pregnancies

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160412018326102?via%3Dihub

PFASsは妊娠中ずっと母親の血清、胎盤、胎児組織から検出される

・胎児のPFASs濃度は胎盤と同程度(で母親の血清より少ない)

・妊娠週数が増えると胎盤の濃度が高くなる傾向がある

血清中濃度PFOS 1.04–16.66ng/ml, PFOA 0.55–7.95ng/ml

胎盤だと0.45–3.87ng/g0.15–0.99ng/gといったところ

(やたらと危険だというペーパーとプレスリリースだけれどもう禁止されているのであとは適宜監視するしかないのでは。)

 

-病気と異常高温で重要な補食者ヒトデが消え去った

Key sea star predator wiped out by disease and abnormally warm waters

30-Jan-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-01/aaft-kss012819.php

太平洋北東部の重要な捕食者であるヒマワリヒトデ(Pycnopodia helianthoides)が2013-2015の間に劇的に減少した。そしてヒトデの餌となっていたウニが増加した。この間Parvoviridae属のdensovirusによるとされるヒトデ消耗性疾患という病気が大量のヒトデを殺している。

Science Advances

(最大1mにもなるわりと厄介者扱いされてきたヒトデ。福島の放射能のせいだという主張が一部であったが全然関係ない。しかし絶滅しそうなのに同情が少ない。)

 

-オリーブの苦味を取り除く「環境に優しい」方法

A 'greener' way to take the bitterness out of olives

30-Jan-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-01/acs-aw013019.php

オリーブは地中海食の主要構成成分であるが、獲れたばかりのオリーブは非常に苦くキュアリングあるいは加工が必要で大量の水あるいはきつい化学物質を使う。研究者らがより環境に優しい方法をJournal of Agricultural and Food Chemistryに発表した。

オリーブに含まれるフェノール化合物オレウロペインやリグストロシドはオリーブを病害虫から守るのに役立っている可能性があるが苦い。オリーブを食べられるようにするために、通常これらの化合物を壊すため、あく溶液に実をつけて何度も洗う。しかしこの工程で大量の水を使い、有毒な排水を作る。研究者らはオリーブを塩水に漬けて貯蔵する時にAmberlite™多孔樹脂のうちのFPX66というものがオリーブのフェノール化合物を吸着して減らすことを報告した。吸着したフェノール化合物はエタノール洗浄で回収できる。

(サプリに使えると書いているが農学系の人たちはすぐそういうこと言うから)

 

その他

-ドクターが幼稚園児の癇癪を静めるために大麻入りクッキーを処方して医師免許を失うかも

Doctor might lose medical license for prescribing pot cookies to a kindergartner for temper tantrums

January 30, 2019

https://www.yahoo.com/lifestyle/doctor-might-lose-medical-license-prescribing-pot-cookies-kindergartener-temper-tantrums-205929471.html

カリフォルニア医事当局がWilliam S. Eidelmanの免許を取り消す提案をしたが判事が保留にして治療継続を認め3月に聴聞が予定されている。医事当局は免許は既に取り消されているという。

Eidelmanは自然療法と大麻が専門。問題となったのは5才の息子を連れてきた父親が、子どもの癇癪がひどいので大麻を処方して欲しいと来た事例。カリフォルニアでは大麻が役にたつ可能性のある重症患者に医師が大麻を処方できる。Eidelmanは父親と上の息子に、ADHDと双極性障害と診断して大麻を処方していた。ただし医事当局によると診断は正確ではない。Eidelmanは少年に「少量の大麻クッキー」を処方した。そこで父親は少年に朝大麻クッキーを与え、行動が改善したと感じた。しかし学校のナースに午後に大麻クッキーを与えて欲しいと頼んだところ彼女は職員に伝え、児童保護局員と警察が呼ばれた。その結果Eidelmanの行為が専門職にふさわしくない行為と判断されることになった。医事当局の報告によると、就学前の子どもが90マイル車に乗って病院に行くのが楽しくないのは当然で、診断の基本を理解していない。少年は病気ではない。

さらにEidelman2000年代初期から重症ではない患者に診察もしないで大麻を処方していた。Eidelmanは自身のウェブサイトで患者に彼を擁護してくれるよう呼びかけている

 

-コカコーラと肥満:米国CDCに影響しようとしたことを研究が示す

BMJニュース

Coca-Cola and obesity: study shows efforts to influence US Centers for Disease Control

BMJ 2019;364:l471

https://www.bmj.com/content/364/bmj.l471

Milbank Quarterlyに発表された論文によると、US Right to Knowが情報公開法でCDCの従業員とコカコーラの間でやりとりされた電子メールを入手した。開示されない情報については昨年裁判をおこしていてまだ係争中である。

CDCは「公衆衛生と科学の進歩は公衆衛生機関と大学の研究者と民間部門の間でのオープンでタイムリーで適切な情報交換によって最もよく進展する。CDCの専門職はガイドラインと助言でバランスをとるよう内部にも外部にも多数のチェックポイントがある」という。

コカコーラは「過去4年、コカコーラは肥満の問題に効果的なパートナーであろうとしてきた。信頼できる、透明性の高い、役にたつ方法で肥満との戦いを支援するために、公衆衛生コミュニティやその他の関係者の意見を聞いている」という

 

問題の「研究」

https://www.milbank.org/wp-content/uploads/mq/Volume-97/Issue-1/HESSARI_et_al.pdf

問題とされているのが

・職員と会う約束

・情報共有(企業がこんなことやってます、と教える)

・知り合いを紹介

(民間企業の人とは会ってはいけない、話してもいけない、らしい。Right to Knowはもともとそういう団体だけどBMJはそれに同調するの?Lancetといい、反企業がすぎないか?)

 

-朝食を食べることと減量についての研究への専門家の反応

SMC UK

expert reaction to study on eating breakfast and weight loss

January 30, 2019

http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-on-eating-breakfast-and-weight-loss/

BMJに発表された研究が、朝食を食べることは減量に役立たず、逆効果になる可能性があると示唆する

内分泌学会員でImperial College London内分泌代謝教授Kevin Murphy教授

朝食を食べると減量に役立つという根拠は多くがそのままの人たちの観察研究で、疑わしいのはそういういつも朝食を食べる人達は他の点で(例えば健康状態が良い)違う可能性があるということである。この研究は、介入試験をすると朝食を食べると一日の摂取カロリーが増える可能性が高いことを示唆する。

この論文は質が高いが、注意点もある。著者自身が述べているように、根拠は一貫していない。減量を試みようと思う人たちは、成功のために朝食を食べなければならないと考えるべきではない-全体的に健康的なライフスタイルの一環として一部の人に役にたつ可能性はあるが全ての人に役立つことはなく、逆に減量が困難になるかもしれない。

私は、この論文は食べない時間が長いとそれを補おうとしてあとでより多く食べてしまうという考えを覆すのに役立つと思う。ある条件下では、食制限はそんなふうに補償されることはないだろう。

King’s College London栄養科学客員講師Gerda Pot博士

「朝は王のように、昼は王子のように、そして夜は貧民のように食べよう」。この諺はこの系統的レビューを根拠に捨てるべきではない。これはRCTのレビューだが、しっかりした結論をだすには対象とした研究はあまりに多様で質が低すぎる。研究期間は平均7週で24時間から16週間の範囲であり習慣的摂取を反映していない。さらに対象者は肥満の英米人で誰にでもあてはまるわけではない。

私は体重への朝食の影響は習慣(時間栄養学)により多く関連すると考えているので、毎日朝食を食べるのかあるいは日々大きく変動するのかによるだろう。あなたの身体の代謝は日々の変動が少ないときに最適化されるだろう。朝食の研究には時間栄養学の要因を考慮すべきだろう。

King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授

朝食を抜くと1日の摂取カロリーが260少なくなるというこの研究の知見は信頼性が高くない。これが本当なら1年後には10kg以上軽くなっている。報告されている体重差は0.44kgで、大腸に残る食事の量の差だけである。従って朝食を抜いたことで食欲が調整されないというのは間違っている。

最大の弱点は摂取エネルギーの測定方法の信頼性の無さ-特に思い出し法である。さらに朝食の量が多様であることを認識していないことである。完全なイングリッシュ/アメリカンブレックファストは1000kcal以上になるがよく食べられているシリアルは400kcalに満たない。ブッフェ形式の朝食はさらに高エネルギーになりがちである。英国では低所得層の子どもが朝食を食べず貧しい食生活で過体重の可能性が高い。この報告が人々に朝食を食べないように薦めるのに使われるとしたら不幸なことである。

Bath大学代謝生理学教授James Betts教授

メタ解析は有用な方法だがこのトピックについてはもとの研究が実際同じ疑問に対する研究ではないので保留する。主な問題は朝食を食べることと食べないことの定義が明確でないためある試験と別の試験では違うことを意味する。従って違う試験を組み合わせて結果が一致しないことを報告しているのは驚くべきことではない。さらに全体としての知見、朝食が減量に明確な影響が無くカロリー摂取量が増えるかもしれないというのはこれまでの研究からわかっている。最後に著者らはもっと質の高い研究を要望しているが、完全な盲検が不可能であるためどうしてもバイアスのリスクは高くなる

 

-米国の気候コストは共和党員の牙城で高いだろう

Natureニュース

30 January 2019 Jeff Tollefson

https://www.nature.com/articles/d41586-019-00327-2

政治家が一般的に気候政策に反対している地方は今世紀最も経済的ダメージが多いだろう

ワシントンのシンクタンクBrookings Institution129日に発表した解析。

(南部に農業地帯が多いから、のような気もするけれど)

 

-インドの裁判所のGM綿の特許維持決定は企業の研究を活性化させる可能性がある

Indian court’s decision to uphold GM cotton patent could boost industry research

30 January 2019  Gayathri Vaidyanathan

https://www.nature.com/articles/d41586-019-00177-y

しかしこの判断が法的チャレンジの終わりではない

下級裁判所で無効だとされていたGM綿の特許が高裁で復活した。この決定はこの国でバイオテクノロジー研究を止めようとする動きを逆転させるのに役立つ可能性がある。

インドではGM作物の知的財産権保護を巡って長い法廷闘争が行われている。

インドでは2017-18年に栽培された綿の約90%にモンサントの遺伝子組換えが入っている