2019-03-01

[EFSA]意見等

-Trouw Nutrition International B.V社が提出した文書に基づき、羊用飼料添加物としてのモリブデン化合物(E7)モリブデン酸ナトリウム二水和物の安全性と有効性

Safety and efficacy of a molybdenum compound (E7) sodium molybdate dihydrate as feed additive for sheep based on a dossier submitted by Trouw Nutrition International B.V

EFSA Journal 2019;17(2):5606  27 February 2019

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5606

この添加物は現在EUで、全ての動物種用の「栄養添加物」「微量元素の化合物」として認可されている。最適な銅とモリブデンの 比率 3–10と、羊用完全飼料に認可された最大総銅量(15 mg/kg)を考慮して、FEEDAPパネルは2.5 mg総モリブデン/kg 完全飼料が羊に安全だと結論した。安全摂取量0.6 mg モリブデン/日、欧州の食品からの推定平均摂取値(一般的に 100 μg/日未満)、総モリブデン摂取量に対する動物由来食品の寄与(推定では最大22%)、安全量の上限までモリブデンを補完した餌を与えられた羊の可食組織/製品にモリブデンが蓄積されないことを考慮して、2.5 mg 総モリブデン/kg完全飼料は消費者と環境に安全だと結論した。モリブデンは食事の栄養をカバーするために羊の餌に添加する必要はない。食事の銅とモリブデンの割合が3–10の範囲内であれば、銅で適切なバランスを保証するために有効だと考えられている。

 

-鶏、七面鳥、マイナー家禽種肥育用あるいは産卵/交配のための育成用の畜産学的飼料添加物としてのTYFER™ (第二鉄キレートチロシン)の安全性と有効性

Safety and efficacy of TYFER™ (ferric tyrosine chelate) as a zootechnical feed additive for chickens, turkeys and minor poultry species for fattening or reared for laying/breading

EFSA Journal 2019;17(2):5608  25 February 2019

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5608

この添加物は最大予想量200 mg TYFER™/kg完全飼料で鶏肥育に安全である。この結論は産卵/交配のための鶏育成用に拡大でき、七面鳥や全てのマイナー家禽種肥育用あるいは産卵/交配のための育成用に外挿できる。家禽の栄養にこの添加物を使用しても消費者の安全性の懸念や環境リスクは予期されない。TYFER™は鶏の餌に最大推奨量(20 mg/kg 飼料)で使用すると鳥類の畜産パラメーターを改善する可能性がある。20 mg/kg 飼料でこの添加物は、鶏肥育用に少なくとも1 log10ユニットで盲腸の負荷カンピロバクター属種を削減する可能性があり、従ってヒトのカンピロバクター症のリスクを削減する効果を伴う。だが、鶏の盲腸のカンピロバクター負荷は生肉のカンピロバクター負荷に寄与する複数の要因の一つである。パネルは最大リチウム含有量の仕様書を含めて助言した。

 

 

論文

-野生生物への内分泌撹乱化学物質の影響についての自然科学の根拠のリステートメント(修正再表示)

A restatement of the natural science evidence base on the effects of endocrine disrupting chemicals on wildlife

H. Charles J.et al.,

Proceedings of the Royal Society B  Published:27 February 2019

https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2018.2416

オープンアクセス

 

-食べものを追跡すると体重が減る

Tracking food leads to losing pounds

28-Feb-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-02/du-tfl022819.php

特定のダイエットをすることなく、毎日食べるものを無料のスマートホンアプリで記録した過体重の人は相当体重を減らした。高価な個人への介入でなくとも達成。JMIR mHealth and uHealthに発表。アメリカ。

 

-エージェントオレンジの有害副生成物はベトナムの環境を汚染し続けていると研究が言う

Toxic byproducts of Agent Orange continue to pollute Vietnam environment, study says

27-Feb-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-02/uoic-tbo022719.php

Open Journal of Soil Scienceに発表されたベトナムの土壌や堆積物中のエージェントオレンジとダイオキシンの長期動向についての研究。

 

-輸出禁止にも関わらず、世界のタツノオトシゴ貿易は続いている

Despite export bans global seahorse trade continues

28-Feb-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-02/uobc-deb022719.php

国の規制や国際CITES条約での禁止はタツノオトシゴ取引を減速させていない

香港の大規模市場で販売されている乾燥タツノオトシゴの95%は輸出を禁止している国由来だった。Marine Policyに発表

(珍しい生き物を貴重であればあるほど効果があるとみなす漢方や伝統医療や自然療法をもてはやすのは本当に止めて欲しい)

 

-新しい研究はビッグデータを使って国際的食品貿易を分析

New study uses big data to analyze the international food trade

28-Feb-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-02/dsia-nsu022819.php

BioScienceに発表された研究「食品の不平等、不正、権利」で1986年から2010年までの180ヶ国266商品の食品取引データを解析した。この研究は食品を地球全体に、米国やブラジルなどの生産量の多い国から日本や中東諸国などの農業資源の少ない国へ、より公平に配分するために、貿易が重要な役割を果たしていることを示す。

 

-科学者が改造ビール酵母で大麻を醸造

Scientists brew cannabis using hacked beer yeast

Elie Dolgin 27 February 2019

https://www.nature.com/articles/d41586-019-00714-9

研究者らが微生物を改変して向精神化合物THCを含む大麻化合物を製造

Natureに発表。THCCBDをより入手しやすくできる可能性がある

一方植物の大麻を遺伝子組換えして大量にカンナビノイドを作ろうとしている研究者もいる

 

その他

-はしか再興-専門家の反応

NZ SMC

Measles resurgence – Expert Reaction

01 March 2019

https://www.sciencemediacentre.co.nz/2019/03/01/measles-resurgence-expert-reaction/

今週カンタベリーで4例、オークランドで1例のはしかが確認された

保健省は海外でのはしかアウトブレイクを受けて旅行者に対して予防接種を確実にするよう助言を出した。NZでは2012以降全てのはしかが海外から旅行者が持ち込んだものである。SMCは専門家のコメントを聞いた。

予防接種助言センター(IMAC)長でオークランド大学一般診療とプライマリーヘルスケア学部准教授Nikki Turner

国内外ではしかのアウトブレイク増加ニュースが多くなっている。何がおこっているのか?はしかコントロールの科学は極めて明確である、予防接種率が高ければ排除できる。はしかは嫌な病気だが、効果的対策があり科学は率直である。

なのに何故根絶できないのか?「ワクチン躊躇」(ワクチンを拒否することにつながる恐怖と不信)によるダメージについては国際的にたくさんのコメントが出されている。欧州の一部の国では反ワクチン感情が高まっていて、ソーシャルメディアのフェイクニュースによって拡大している。ワクチン躊躇は信頼の欠如から生まれる-我々の住む世界は組織への信頼が低下し、公正さのギャップと力の不平等が増加している。しかし不信はパズルの一つでしかない。NZでははしかはほぼ根絶できている。新しい例は輸入からで、もしそれが拡大するとしたら免疫のない人に接触した場合である。

我々は効果的科学を効果的公衆衛生提供に翻訳する方法にもっと注目する必要がある。公衆衛生メッセージは組織への信頼に組み込まれているが、組織への信頼は簡単に毀損される。さらに我々は社会的信頼を育む必要がある-質の高い対策とコミュニケーションを提供するシステムが必要である。

予防接種で予防できる病気はトリッキーなもので、病気がないと忘れられてしまう。NZ住人向けの公衆衛生メッセージはシンプルである:予防接種履歴をチェックするのを忘れないように。疑わしい場合には再度予防接種をするのが安全である。

(信頼を得るのは難しい、という話はよくされるけれど、信頼するにも努力が必要。)

 

-神経性差別(ニューロセクシズム):男女の脳が違うという神話

Nature書評

Neurosexism: the myth that men and women have different brains

27 February 2019

https://www.nature.com/articles/d41586-019-00677-x

頭蓋骨の中の男女の違いを探すことは悪い研究の教訓である、とLise Eliot(神経科学教授)が書く

「性差を与えられた脳:女性脳という神話を粉砕する新しい神経科学The Gendered Brain: The New Neuroscience That Shatters The Myth Of The Female Brain

Gina Rippon The Bodley Head (2019)

の書評

Gina Ripponは認知神経科学者で、脳の性差に関する研究が如何にバイアスだらけでメディアによって都合良く歪められて神話を形成してきたかを明らかにしていく。

かつては女性の脳が男性より「劣っている」根拠が多数探索され、より最近は女性が共感や直感に優れ男性は論理や行動に適するようにできているという説が流布されている。しかし脳の性差は肝臓や腎臓や心臓と同じ程度である。

(いろいろ略

「女性脳」グリコのサイトに批判 専門家は「非科学的」

2019223

https://www.asahi.com/articles/ASM2R5JJ9M2RULFA002.html

詐欺師が見破れないのは科学を売り上げのための道具程度にしか思ってないからだろう。)

 

-デンマークはEUのネオニコチノイド禁止に逆らう

Denmark defies EU neonicotinoid ban

Christian Sonne1, Aage K. O. Alstrup(デンマークAarhus大学)

Science  01 Mar 2019: Vol. 363, Issue 6430, pp. 938 (レター)

ネオニコチノイドが非標的授粉媒介昆虫に致死的だという根拠に反応してEU20184月に使用を禁止した。しかし201812月にデンマーク当局は収穫される作物の推定10-23%の減少を避けるためにネオニコチノイドをビートの畑に使用を認めると決定した。ビートは花を咲かせないのでミツバチにとってリスクとはならないと説明する。このような正当な理由があっても、デンマークのネオニコチノイド使用はEU加盟国にとって危険な前例となる。EUのネオニコチノイド禁止に従わないことは技術的には合法であるが、デンマークの立法者は農業ロビー活動団体を宥める代わりに支持した例を他国に示した。禁止を守ることはデンマークの生態系と環境を守るのに役立つだろうし他国がネオニコチノイドを使用するのを抑制するだろう。デンマークはミツバチに影響しないごく僅かな例外を提供したが、他国は同じように注意深くやらないかもしれない。デンマークのビートへの例外はEU禁止を弱体化し全欧州中でネオニコチノイドが再び使われるようになることにつながるかもしれない。

(害がなくても象徴の意味で使うな、と主張する大学の研究者。そもそも農業が環境を変えながら生きる糧を供給しているものなのに。EUの「ムード」をよく表す)