2019-03-29

[BfR]植物保護製品の認可:予防が最前線

Plant protection product approval: precaution at the forefront

15.03.2019

https://www.bfr.bund.de/en/press_information/2019/09/plant_protection_product_approval__precaution_at_the_forefront-240166.html

欧州の植物保護製品の認可システムは堅固で、健康と環境へのリスクの予防を十分配慮している。この結論は欧州司法裁判所(ECJ)の法務官であるEleanor Sharpston氏が下した。有効成分グリホサートの再承認はこのシステムの「想定される欠陥例」ではない。「この独立した法的評価は、予防的健康管理が欧州の植物保護製品規則の中心であることを裏付けている。グリホサートの再承認では消費者保護が最も重要だが、BfRは一連の作業をさらに改善し続ける。」とドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)所長のDr. Andreas Hensel医学博士は述べた。

EuGHのプレスリリース

https://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2019-03/cp190027de.pdf

Sharpston氏の考察の背景には、グリホサートを含む植物保護製品が販売された都市で店舗に損害を与えたフランスの環境活動家に対する刑事訴訟がある。欧州の植物保護製品規制が、予防原則、すなわち健康と環境保護に十分な注意を払っているかどうか担当裁判所がECJに照会した。Sharpston氏は結論でこの問題に対処した。ECJの法務官の結論は裁定への助言であるが、裁判所への強制力はない。判決はまだ保留されている。

Sharpton氏の見解では、製品群(植物保護製品)に事前承認システムを導入しているため、植物保護製品規制はそれ自体が予防手段である。市販されている最終製品がいくつかの有効成分を含む可能性があるという事実、「カクテル効果」にこの規制が十分配慮しているかどうかというフランスの裁判所で持ち上がった質問に答えて、Sharpton氏は、この種の事例では起こりうる評価の誤りを修正させる「セーフティーネット」があると答えた。BfRは何年もの間、この特定分野で包括的な研究活動に携わっている。この種の「カクテル効果」が規制のプロセスでよりよく評価できるよう、汎欧州ネットワークと協力して研究している。

フランスの裁判所は、承認に必要な検査を企業が実施できるという規則にも異議を唱えている。申請者はデータを伴う完全な関係書類を提示しなければならず、従って部分的あるいはバイアスを排除している、とSharpton氏は反論した。

裁判所が挙げた別の起こりうる問題だが、ある有効成分に長期使用による被害兆候がある場合、植物保護製品の規制は関与機関が承認拒否するのを妨げることはない。だが、植物保護製品を販売する前に長期毒性の分析を要求することは、その製品が農業従事者に提供される時期を遅らせる。ヒト、動物、環境のための適切な保護と農業生産性の保証とのバランスをここで見つけなければならない。

 

[EVIRA] 養豚場の慣行が豚肉生産チェーン上の抗菌剤耐性に影響を与える

Pig farms’ own practices affect the resistance to antibiotics in the pork production chain

March 20/2019

https://www.ruokavirasto.fi/en/organisations/risk-assessment/news-about-risk-assessment/pig-farms-own-practices-affect-the-resistance-to-antibiotics-in-the-pork-production-chain

養豚場の病原体に対する治療行為や予防措置が豚肉生産チェーンにおいて抗菌剤耐性と闘う上で重要な役割を果たす。これは、豚肉生産チェーンの異なったステージで動物の常在腸内細菌フローラの一部であるE. coli菌の抗菌剤耐性を監視する、フィンランド食品局とヘルシンキ大学による共同研究によって示される。研究の結果は対象とされた豚の生産者への指示及び抗菌剤耐性リスクマネジメント措置計画において使用されるだろう。

この研究は養豚場または豚の生産舎から肥育舎のチェーン上の任意の10の組み合わせが対象とされた。生きている豚から2度サンプルが採取された:離乳後5週の豚から1度及び屠殺される前のおよそ22週で再度採取された。

最も高い耐性レベルは離乳後に採取されたサンプルで発見されたが、屠殺前のサンプル採取ではかなり低下した。農場による差異はあった。

 

[RIVM]Helmond の家庭菜園作物のGenX PFOAのリスク評価

Risk assessment of GenX and PFOA in home-grown garden crops in Helmond

2019-03-25

https://www.rivm.nl/publicaties/risicobeoordeling-van-genx-en-pfoa-in-moestuingewassen-in-helmond

Helmond Custom Powders社の近くに菜園をもつ人は、家庭菜園で育てた野菜を安全に食べられる。かつてこの会社は空気中にGenX PFOAを排出していたが、暴露量は健康ベースのガイドライン値を超えない

報告書本文オランダ語

 

[FDA]警告文書

-D’Andrea Foods Inc. 3/15/19

March 15, 2019

https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm634022.htm

水産食品HACCP、食品CGMP規則違反、不純品、衛生管理の問題。

 

-Uustar Corporation dba Daily Vita, LLC 3/12/19

March 12, 2019

https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm633962.htm

未承認の医薬品、不正表示、アメリカニンジンの残留化学農薬(キントゼン、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼン、プロシミドン、テクナゼン、クロルピリホス、フルオピコリド)の不純物の問題。

 

-IMedDo 2/19/19

February 19, 2019

https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm634167.htm

未承認の医薬品、不正表示の問題。

(コロイド銀をヒトやペットの各種疾患治療等用に宣伝)

 

論文

-プロバイオティック細菌は腸の中で進化する-必ずしも良くはない方向に

Probiotic Bacteria Evolve in the Gut…Not Always for the Good

March 27, 2019

https://www.genengnews.com/news/probiotic-bacteria-evolve-in-the-gut-not-always-for-the-good/

欧州で下痢用プロバイオティクスとして販売されているE. coli Nissle (EcN) 1917をマウスに与えた実験で、EcN系統が腸細胞の保護層を傷つける性質を獲得することすらあることをCell Host & Microbeに報告した。

 

-Grenfell:近くの家や土壌から有害汚染物質がみつかった

Grenfell: toxic contamination found in nearby homes and soil

Nick Hopkins Thu 28 Mar 2019 

https://www.theguardian.com/uk-news/2019/mar/28/grenfell-toxic-contamination-found-in-nearby-homes-and-soil

Grenfellタワーの燃え残りの近くや土壌で見つかった発がん物質や有害な可能性のある毒素は近傍の住民に健康リスクとなる可能性がある、と研究が警告する。PHEはリスクは低いままだと言っている

Anna Stec教授らの研究がChemosphereに発表される。

PAHやベンゼン、リン難燃剤。火事の跡に濃度が高くても当然だろう)

 

-コンゴ共和国North Kivuでの 2018–19エボラアウトブレイクへの対応における組織信頼と間違った情報:集団ベースの調査

Institutional trust and misinformation in the response to the 2018–19 Ebola outbreak in North Kivu, DR Congo: a population-based survey

THE LANCET Infectious Diseases Published:March 27, 2019

https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(19)30063-5/fulltext

201891-16日に961人の成人に調査

地元の当局を信頼しているのは31.9%。誤情報は広く信じられていて、25.5%がエボラのアウトブレイクは現実ではないと信じていた。組織への信頼の低さと間違った情報を信じることは予防対策を行わないことと関連した。この知見は不信と間違った情報がアウトブレイクコントロールにとって重要であることを強調する

 

-消費者は栄養と健康強調表示を規制者と異なる見方で見ている

Consumers view nutrition and health claims differently than regulators

28-Mar-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-03/uos-cvn032819.php

サリー大学による、英国、スロベニア、ドイツ、スペイン、オランダの消費者の調査。

EUの栄養と健康強調表示規制では、根拠のない、誤解を招くような食品の表示は排除して消費者を守ろうとしている。栄養強調表示と健康強調表示には違いがあって、必要とされる根拠のレベルは健康強調表示のほうが高い。しかし消費者が区別しているかどうかには疑問がある。

研究の結果は消費者が規制担当者のようには区別していない可能性を示した。強調表示を解釈し理解する重要な因子は栄養と健康に関する消費者の予め決まっている思い込みであった。もし表示されている栄養素がよく知っているもので個人的に関心があればその栄養強調表示は健康強調表示に「アップグレード」される。

研究者は、規制担当者は消費者の知識や信念が正確で十分な情報に基づくものであることを確保することを検討しなければならない。

(ビタミンCで風邪が治る、みたいな情報をどこかで見て信じていると、商品にビタミンC入りとしか書いてなくても健康によいと勝手に解釈してしまう、というようなこと。嘘情報の氾濫そのものに対処しないと規制の効果はないだろうということ。)

 

その他

-米国環境庁で大気汚染科学が包囲網の中

Natureニュース

Air pollution science under siege at US environment agency

28 March 2019  Jeff Tollefson

https://www.nature.com/articles/d41586-019-00937-w

EPAのアドバイザーが大気汚染基準の大幅改革を前にEPAの意志決定を攻撃

四半世紀にわたる研究で、車や発電所やその他から排出される大気中微粒子を吸うことは人々の寿命を短くすることが示されてきた。しかしこの科学的コンセンサスが現在EPAのトップアドバイザーにより攻撃されている。EPAは現在トランプ大統領の最初の任期中に大気汚染基準を改定しようと急いでいる。科学者はその結果大気汚染規則が緩和され公衆衛生を脅かすことを恐れている-科学ではなく政治に基づいて。

クリーンな空気についての科学助言委員会Clean Air Scientific Advisory Committee (CASAC)の委員長Tony Coxは微粒子汚染の早期死亡との関連を疑ってきた統計学者で、案は彼の疑義を反映している

 

-Nature Volume 567 Issue 7749, 28 March 2019

先の統計的有意差についてのエディトリアルに3つの反応が掲載されている

Retiring statistical significance would give bias a free pass

Raise the bar rather than retire significance

Retire significance, but still test hypotheses

有意と判定するレベルを厳格にすべき、という感じ

(基本的にP<0.05でどうこう言うのは論外ということは合意されている。でもこれが蔓延しているのがトクホの世界だから。これは当時ですらありえない。科学ではない

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/10/s1029-4b.html

有意傾向あり(5%を超え10%以下))

 

-食糧安全保障のための新しい植物交配技術

New plant breeding technologies for food security

By Syed Shan-e-Ali Zaidi, et al.,

Science29 Mar 2019 : 1390-1391

飢餓のない世界は可能であるが、それは食糧生産が持続可能な形で増え分配されて極端な貧困がなくなった場合、である。世界的には最も貧しい栄養の足りない人々は途上国の地方に住んでいて食糧と収入と雇用を農業に依存している。国際データからは農業生産性の低さと栄養不良との間に明確な関連がある。また極端に貧しい人たちを減らすことは小規模農家の収入を増やすことでのみ可能であることが研究で示されている。従って、農業生産性の継続的改善が社会経済発展の中心課題となる。ここに我々はゲノム編集のような新しい植物交配技術の注意深い展開と科学的規制が世界の食糧安全保障に貢献できるだろうことを主張する

(以下略)

 

-名高い競馬場での馬の連続死亡の謎

Wave of horse deaths on famed racetrack poses puzzle

Christa Lasté-Lasserre

Science  29 Mar 2019:Vol. 363, Issue 6434, pp. 1372-1373

Seabiscuit John Henryおよび Zenyattaのようなサラブレッドの勝利で有名な南カリフォルニアの競馬場で馬が連続して死亡していて理由を説明するのに苦労している。

ArcadiaAnitaトラックで3か月以内に22頭が死亡し、その多くが壊滅的脚骨折で、314日に閉鎖に至った。このことで動物の福祉活動家が非難し経済的損失が生じたが、競馬や競馬場の研究をしている科学者にとっても不可解である。激しい雨で不規則なダートトラック層の圧縮がおこったと信じる人もいるが米国の専門家による一連の検査では何も普通でないことは見つかっていない。