2019-04-05

[EU]査察報告

-フランス-農薬の持続可能な利用

France―Sustainable use of pesticides

18/03/2019

http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4106

2018528日~68日までフランスで実施した、農薬の持続可能な利用の達成手段の実施を評価するための査察。フランスは現在、農業所得に悪影響を与えずに、農薬の利用を2020年までに25%2025年までに50%削減するという第2国家行動計画(Ecophyto 2)を実施している。だが、2016年にフランスで販売されている農薬量が2009年と比較して12%上昇していたため、2019年の第1四半期にさらなる改訂が予期されている。2025年までに50%の利用削減目標を達成するために、管轄機関は、これまでに発見されていない技術的進歩を迅速かつ幅広く採用する、農業生産システムの根本的な変化が必要だと認めている。Ecophytoは具体的で全体的な定量目標や、ヒトの健康や環境への農薬利用のリスクや影響を減らす目標や高水準の指針を設定していない。専門家の利用者による総合的病害虫管理の実施を確認する公的管理システムはない。農薬散布機器については、 査察で不合格となった噴霧器は最大4カ月間使用し続けることができ、鉄道に利用する噴霧器は現在の査察体制に左右されない。

 

-管理団体パラグアイで活動する認定管理団体が適用するオーガニック生産基準及び管理手段

Control Body―organic production standards and control measures applied by a recognised Control Body operating in Paraguay

15/03/2019

http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4105

2018924日~102日に実施したパラグアイの認定管理団体が適用するオーガニック生産基準及び管理手段の妥当性評価。概して、欧州委員会が認定するのと同等の生産基準や管理手段が適用されている。検査は効果的で、違反事例には一般的に適切な強制手段が適用されている。全ての高リスク管理者の確認、サンプリング、追加訪問を保証できないので、管理システムの効果が低下している。生産グループ管理については、分析結果で未承認植物保護製品の存在が示されたほとんどのケースで適切な行動がとられていない。ほとんどの場合管理者が全ての条件を満たしているという十分な証拠がなく、変換期間に遡及的承認の特例が付与されている。  

 

-ルーマニア輸入管理システム(生きた動物、動物及び非動物由来食品)

Romania―Import control system (live animals, food of animal and non-animal origin)

11/03/2019

http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4104

201810916日にルーマニアで実施した、生きた動物や動物及び非動物由来食品の公的管理評価、及び、国境検査所(BIPs)、入国審査所(DPEs)、入国地点(DPIs)の施設、設備、衛生状態を評価した。管轄機関の構成と職責が20186月に変更され、中央機関から県衛生獣医及び食品安全総局の直轄となった。この変化の影響を評価するには早すぎるが、文書化手順や情報技術システム、関連職員の教育に支えられ、輸入公的管理の枠組みは適切で有効である。訪れたBIPs/DPEsの施設、設備、衛生状態は一般的に適切だが、飼料や水を与える施設や施設の維持には恒久的な解決策が必要である。

 

[EFSA]意見等

-EU市場で認可されているGMOsに関する(更新)市販認可及び年次市販後環境監視報告書のGMO申請関連で行われる文献調査についての説明注記

Explanatory note on literature searching conducted in the context of GMO applications for (renewed) market authorisation and annual postmarket environmental monitoring reports on GMOs authorised in the EU market

4 April 2019

https://www.efsa.europa.eu/en/supporting/pub/en-1614

欧州食品安全機関(EFSA)の遺伝子組換え生物(GMOs)に関するパネルのガイダンスは、GMOsのリスク評価やモニタリングのための要素、情報、データ要件を説明することで申請者の市販登録申請の作成と提出に役立つ。このガイダンスへの説明注記は、(1)EC規則No 1829/2003以前やEU実施規則No 503/2013の施行後に提出されたGMOsの市販認可申請に関連して行われた文献調査の範囲と方法論、すなわち、EU市場で認可されたGMOsの年次市販後環境監視報告書や、EC規則No 1829/2003で認可されたGM食品/飼料の市販認可更新のGMO申請、を明確化する。(2)組織的/広範囲の文献調査の実施・報告方法や、スコーピングレビューの結果の提示方法についての詳細な助言を提供する。

 

-全ての家禽種用Origanum vulgare ssp. hirtum (Link) leetsw.のエッセンシャルオイルの安全性と有効性

Safety and efficacy of an essential oil of Origanum vulgare ssp. hirtum (Link) leetsw. for all poultry species

EFSA Journal 2019;17(4):5653  3 April 2019

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5653

 

-ナトリウムと塩化物の食事摂取基準の設定のための準備作業の一部としての最終エビデンスレポート

Final evidence report as part of preparatory work for the setting of Dietary Reference Values for sodium and chloride

3 April 2019

https://www.efsa.europa.eu/en/supporting/pub/en-692

欧州委員会からの委託の一環で、EFSAは、ナトリウムや塩化物を含む、エネルギー、マクロ及び微量栄養素、栄養学的あるいは生理学的影響のある他の物質の食事摂取基準(DRVs)に関する食品科学委員会(SCF)の既存の助言をレビューする必要がある。この任務の準備作業の一環で、この報告書では微量栄養素ナトリウムと塩化物の現在の一般的な科学情報をまとめた。発表された文献レビューや、Google ScholarPubMed 2つのオンラインデータベースからピアレビューを受けた科学的文献からデータが集められた。全部で、ナトリウムには146の文献、塩化物には85の文献を含む情報が評価され含まれた。この報告書では、方法論的アプローチの記述や、ナトリウムと塩化物の発生・地質学・化学、臨床サンプルの化学分析へのアプローチや限界、ナトリウムと塩化物の生物学的機能、ナトリウムと塩化物の欠乏による健康への影響の概要が含まれている。さらに、健康的な成人におけるナトリウムと塩化物の生理機能と代謝、摂取のバイオマーカー、代謝に影響を与える状態と機能と遺伝子型が含まれる。

 

-家禽と豚の飼料添加物としてのNatuphos (3フィターゼ)の認可更新申請の評価

Assessment of the application for renewal of the authorisation of Natuphos (3phytase) as a feed additive for poultry and pigs

EFSA Journal 2019;17(3):5640 2 April 2019

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5640

 

[CDC]キャッサバ粉摂取によるシアン化物中毒アウトブレイク、20179月、ウガンダKasese地方

Outbreak of Cyanide Poisoning Caused by Consumption of Cassava Flour — Kasese District, Uganda, September 2017

Weekly / April 5, 2019 / 68(13);308–311

https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/68/wr/mm6813a3.htm?s_cid=mm6813a3_w

201795日にKasese地方で葬儀が行われ、その後33人が下痢、嘔吐、腹痛などで病院に行った。98日にウガンダ保健省が食中毒疑いという通知を受け取った。調査の結果、キャッサバ粉とお湯で作った料理の摂取が原因であることがわかった。問題のキャッサバ粉は単一の卸売業者の売ったもので高濃度のシアン化物を含む。調査結果を受けて警察が全てのキャッサバ粉を押収した。

さらに追跡するとタンザニアに至った。そのバッチの値段が他のものより安価だったので調査官はそれが「野生」種であることを疑った。ウガンダ政府の分析ラボで調べたところ問題のバッチの粉のシアン化物濃度は平均88ppmで、安全量である10 ppm8倍以上だった。

キャッサバは干ばつや害虫、病気に強く食糧安全保障にとって重要である。サハラ以南のアフリカでは数千人がキャッサバ中毒になっている可能性があるが信頼できるデータがないので全体像は不明である。野生キャッサバは収量が多く害虫への耐性も高く長く貯蔵できるが苦く、市場価値は低い。また乾燥すると2000ppmという高濃度のシアン化物を含み、食べられない。しかしながら病気に強く収量が多いのでいまだに一部の農家は植えている。

スイートキャッサバのシアン化物含量は野生種より少ない(最大100 ppm)ものの、それでも食べる前に毒を抜く必要がある。適切に処理しないと高濃度のシアン化物を含むままになる。干ばつがあると業者はしばしば助言に従わず、シアン化物中毒の原因となる

 

[FSANZ]食品基準通知

Notification Circular 77–19              

5 April 2019

http://www.foodstandards.gov.au/code/changes/circulars/Pages/NotificationCircular7719.aspx

加工助剤としてのTrichoderma reesei由来アスペルギロペプシンの認可申請についての意見募集期間延長。資料の完全版がウェブサイトに掲載されていなかったため。

 

[FDA]FDAは患者の特定の医薬品への反応を予想すると宣伝する遺伝子検査を違法に販売した遺伝子検査ラボに警告文書を発行

FDA issues warning letter to genomics lab for illegally marketing genetic test that claims to predict patients’ responses to specific medications

April 4, 2019

https://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm635283.htm

Inova Genomics Laboratory (Inova)

 

論文

-The Lancet:適度な飲酒は脳卒中予防にならない、研究が示す

The Lancet: Moderate alcohol consumption does not protect against stroke, study shows

4-Apr-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-04/tl-tlm040319.php

16万人の成人が関わる遺伝子研究で、飲酒量が増えると血圧と脳卒中は一貫して増え、これまで言われてきた11-2杯の飲酒は脳卒中予防になるかもしれないという主張は却下された

東アジアの飲酒に関連した遺伝子変異を調べたオックスフォード大学と中国医科学アカデミーの大規模共同研究。

 

-英国の子ども向けに販売されている多くの食品の包装の健康強調表示は「混乱する」

Health claims on packaging for many foods marketed to UK kids are 'confusing'

4-Apr-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-04/b-hco040219.php

Archives of Disease in Childhoodに発表された研究

朝食シリアルやフルーツスナック、フルーツ飲料、乳製品、すぐ食べられる食品など332製品を対象に放送規制機関のいわゆる健康的な食品を同定するツールOfcom NPMを使って評価した。その結果「健康的」とみなされる製品の多くが「あまり健康的でない」分類になった。フルーツスナックは平均100g48gが砂糖だがそれでも果物として計算できるので保護者を混乱させている、と研究者らは言う。「砂糖を添加していない」と表示されているスナックや飲料には濃縮フルーツジュースが使われている。加工した果物は砂糖より健康的な代用品とみなされているが砂糖と同じように体重は増える

 

-ネコは自分の名前を知っている-気にかけるかどうかは別の問題

Nature

Cats know their names — whether they care is another matter

04 April 2019 Colin Barras

https://www.nature.com/articles/d41586-019-01067-z

行動実験によるとネコは頭と耳をほんの少し動かすことで名前に反応する

Scientific Reportsに発表された東京大学の認知生物学者Atsuko Saito らの研究

(おもしろ枠。出てくる人みんなネコ好き)

 

その他

-如何にしてニュージーランドの鳥は飛ばなくなったのか

SMC NZ

How NZ birds lost flight – Expert Reaction

Published: 05 April 2019

https://www.sciencemediacentre.co.nz/2019/04/05/how-nz-birds-lost-flight-expert-reaction/

Scienceに発表された研究がモアやキウイのような飛ばない鳥のゲノムを調べている。その結果スイッチはノンコーディングDNAによることを示唆

 

-ILSIニュースレター

ILSI Newsletter | April 2019

https://ilsi.org/ilsi-newsletter-april-2019/

「健康な食事研究会」 進捗報告会

http://www.ilsijapan.org/ILSIJapan/LEC/HD20190221/HD20190221.php

食事バランスガイドに根拠論文がないとか発芽玄米はおいしくできなかったとか「管理栄養士監修」と書いても売れなかったとか

 

-最適化でより良い生活

Science書評

Better living through optimization

Science  05 Apr 2019:Vol. 364, Issue 6435, pp. 37

Joseph Reagle著「ハッキングライフ:システマチックな生活と不満Hacking Life: Systematized Living and Its Discontents」のDov Greenbaumによる書評

「ライフハッキング」として知られる近年流行の現象に関連する「ギークや教祖」とも呼ばれるパーソナリティと歴史の包括的まとめ。「ライフハッキング」というのは実践者の生活を改善する一連のツールの任意の組み合わせで、時間管理や生産性を上げる、気持ちを上げる、持ち物を整理する、健康を最適化する、関係を最適化するなどの側面をもつ。

ライフハッカーはしばしばシステムが自分のために動くように、自動化や外注や創造力を使って知識を利用する。このムーブメントに関連する人たちは多くが金持ちで白人で技術が得意な人で少し利己主義。金持ちでありながら質素であろうとし「デジタルノマド」を目指しミニマリストのようなライフスタイルをもつ。一部のライフハッキングには明確なメリットがあるが、多くは単なる先延ばしテクニックで節約したと称する時間より手間のほうが多い。科学の世界で良くあるp-ハッキングも使って「科学っぽい」主張が溢れている。ライフハッキングコミュニティで最も科学っぽいのは健康オタクやウェルネスハッカーで、脅迫的に歩いた歩数や心拍数などの数字を使っている。それは科学っぽいが相当違う。最大の違いはハッカーはn=1の体験談のほうが大規模研究より好きであることである。

いつだってヘビの油を売る詐欺師はいたが、インターネットには今や根拠のない再現できない科学に基づくハックが浸透している。ソーシャルメディアに溢れる疑わしいライフハックの嘘を暴くことに専念しているコミュニティーすらある。インチキの、根拠薄弱な科学と、しっかりした科学に基づき真に生活を豊かにするハックを見分けられるかどうかは最終的には個人にかかっている。

(科学的根拠の貧弱な個人の体験談の健康法を薦めるギークって、いるよね・・フォロワーも多くて、ネットはそうやってゴミに溢れる)

 

-裁判所の判断はワクチンについての間違った情報の脅威を強調

Court ruling highlights the threat of vaccine misinformation

02 April 2019

https://www.nature.com/articles/d41586-019-01031-x

HPVワクチン接種を攻撃する歪められた事実は、ひとつの世代をリスクに晒す可能性がある

反ワクチン活動と誤情報は公衆衛生への悪質な脅威である。ワクチンで排除寸前だったはしかのアウトブレイクが世界中で増加している。このような状況の中で間違った情報と戦う努力を目にするのは励みになる。ここ数ヶ月、フェイスブックやYouTube Pinterest Instagramなどの技術大企業が、彼らのプラットフォーム上のそのようなコンテンツの拡散を減らすために、少なくとも何らかの対策をとると発表した。

しかし反ワクチン活動家に対して公に声を上げる一部の科学者にはいまだ圧力がかけられている。その一人が日本の医師でライターでドイツ在住のRiko Muranakaである。

(いろいろ略、最後だけ)

彼女は一つの戦いには負けるかもしれないが、ワクチンについての間違った情報へのより大きな戦いは続く。

Natureのエディトリアルでこんなふうに書かれるんだ・・公衆衛生を脅かす嘘情報はワクチンだけじゃないよ、「戦士」もいろいろいるよ)

 

-飲酒と脳卒中の研究への専門家の反応

SMCUK

expert reaction to research on alcohol intake and stroke

April 4, 2019

http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-research-on-alcohol-intake-and-stroke/

The Lancetに発表された研究が、これまでの研究が主張していたようなほどほどの飲酒は脳卒中予防になる、ことはないことを示した

ケンブリッジ大学MRC生物統計学ユニットグループリーダーStephen Burgess博士

大量飲酒が有害であることはよく知られているものの、これまでの研究では全く飲まない人や昔飲んでいたが今は飲まない人のほうが軽い飲酒をする人より心血管系疾患リスクが高いことを示していた。そのため一部の人たちが軽く飲むことは心血管系疾患予防になるかもしれないと示唆するようになった。この現象は中国コホートでも観察されているが、このコホートでは全く飲まない人とかつて飲んでいたが今は飲まない人は平均教育レベルが低く収入が低く運動量が少なく既往症が多い。飲酒ではなくこれらの要因が心血管系疾患リスクの増加を説明できるだろう。この問題に対応するために、著者らは遺伝的変異を考慮した。こうした変異は欧州ではあまりないが中国人の先祖にはよく見られる。遺伝的変異によって人々を分類すると平均飲酒量が大きく変化するが教育や収入や運動が群間で差が無くなった。従って遺伝子変異がRCTの割付に相当する。そのおかげで飲酒量の影響を比較できる。その結果飲酒による保護作用は観察されなかった。その代わり、平均飲酒量に比例した脳卒中リスクの一貫した増加が観察された。心疾患に関しては関連はフラットで、リスクが増える根拠もないが保護作用の根拠もない。

この研究は中国で行われたため主な酒はビールやスピリッツで他の種類の酒にはあてはまらないかもしれない。しかし中国は非常に多様な国で異なる地方で一貫して同様の結果が観察されている。さらにリスクがアルコールの量に比例することはアルコールの種類には関係ないことを示唆する。

この研究は何年にもわたる飲酒の影響調査の頂点になる。飲酒には心血管系疾患上の利益はないことを強く示唆する。従って、飲酒するなら、摂取量は制限すべきである。

ケンブリッジ大学リスクの公衆理解Winton教授David Spiegelhalter教授

これは非常に印象的な研究である

私はこれまでほどほど飲酒が心血管系疾患に保護的であると信じてきた、しかし今や私は疑っている

ブリストル大学MRC統合疫学ユニット疫学教授Deborah Lawlor教授

三つの疑問が残る。中国での研究が欧州にあてはまるか?二つ目、相対リスクではなく絶対リスクはどのくらいか?最後に心疾患への影響が見られないのはこれまでの欧州での研究と違う。

Open大学応用統計学名誉教授Kevin McConway教授

この新しい研究は中国人の特徴を利用してこれまでの疫学研究の課題の一部に対応した。一つは遺伝子の変異、そしてもう一つは多分中国文化によるものだろう、女性が男性に比べてほとんど飲まないこと。

(いろいろ略。ほとんどが欧州人との違いの話なので、日本人にとってはもうファイナルアンサーでもいいのでは。お酒が健康によいことはない)