2019-08-20

[BfR]消費者製品のPAH濃度は可能な限り減らすべきである

PAH levels in consumer products should be as low as possible

09.08.2019

https://www.bfr.bund.de/en/press_information/2019/29/pah_levels_in_consumer_products_should_be_as_low_as_possible-241757.html

ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、助言する立場で国家GS認証マークを与える基準の作成に関与している。現在BfRは、発がん性の多環芳香族炭化水素(PAHs)の既存最大量が、使用されている技術基準により合理的に達成可能な量に調整されていることの確認作業中である。発がん性の混合物質には安全な用量が導出できないため、PAHsへの消費者暴露をさらに減らす必要がある。 BfRの見解では、全ての一般的なゴム素材、エラストマー、プラスチックのPAH含有量を0.2mg/kg未満に最小化することは技術的に実現可能である。これは、比較的含有量の少ない多くの製品の様々な検査機関の測定データから示されている。「したがって私達の見解では、この数値は長期間あるいは繰り返し皮膚と接触するすべての製品にGSマークを適用してよい」とBfR長官Andreas Hensel医学博士は述べた。「消費者製品のPAH濃度を可能な限り減らせば、消費者の健康保護を維持できる」とHensel氏は強調した。

EUの規制は発がん性8 PAHについて全ての消費者製品に1 mg/kgであり、乳幼児用のおもちゃは 0.5 mg/kgである。GSマークは安全性を保証する認証であり製品のプラスチックやゴムの部分について最大0.2 mg/kg PAHを基準とする。

 

[FDA]シーフードの安全性更新

Seafood Safety Updates

https://www.fda.gov/seafood

 

Fish and Fishery Products Hazards and Controls Guidance

Fourth Edition, August 2019

https://www.fda.gov/food/seafood-guidance-documents-regulatory-information/fish-and-fishery-products-hazards-and-controls-guidance

 

魚および水産物のハザードと管理ガイド第四版に更新

たとえば

自然毒(ヒスタミンは単独で別の章)

CHAPTER 6: NATURAL TOXINS

https://www.fda.gov/media/80235/download

記載があるのは

シガトキシンによるシガテラ魚中毒

クルペオトキシンClupeotoxin

ゲンピロトキシンGempylotoxin

イクシオヘモトキシンIchthyohemotoxin

テトラミン

テトロドトキシン

シーフード関連横紋筋融解症(Haff病)

(毒魚は別)

記憶喪失性貝毒

アザスピロ酸貝中毒

下痢性貝毒(オカダ酸、ジノフィシストキシン)

神経毒性貝毒(ブレベトキシン)

麻痺性貝毒(サキシトキシン)

環状イミン類

ペクテノトキシン

エソトキシン

 

(何故抜き出したかというと米国のシーフードHACCPガイドではここまで説明しているのに日本の仲卸は「魚の入った箱を蹴らない」「タバコを吸わない」が守られないレベルだということ。これで日本の食品は安全だからどんどん輸出できるはず、というのだから)

 

論文

-現地の藻類から作ったペーパーフィルターがバングラデシュの数百万人の命を救う

Paper filter from local algae could save millions of lives in Bangladesh

18-Aug-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-08/uu-pff081819.php

Pithophora 藻類から作ったペーパーフィルターを使って水処理ができる可能性

 

-研究が妊娠中のフッ素暴露と子どものIQスコアを検討する

Study examines maternal exposure to fluoride in pregnancy, kids' IQ scores

19-Aug-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-08/jn-sem081519.php

JAMA Pediatricsからのプレスリリース

 

-小麦粉にビタミンDを添加することで1000万の新規ビタミンD欠乏が予防できる

10 million new cases of vitamin D deficiency will be prevented by adding vitamin D to wheat flour

19-Aug-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-08/uob-1mn081919.php

イングランドとウェールズで今後90年間におこるビタミンD欠乏が強化小麦粉で予防できる、European Journal of Clinical Nutritionに発表。

(ビタミン錠剤のススメではなかなか効果がない、必要ない人が摂って必要な人が摂らない)

 

-米国の違法薬物への支出は年に約1500億ドル

Spending on illicit drugs in US nears $150 billion annually

20-Aug-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-08/rc-soi081519.php

アルコールへの支出に匹敵

新しいRANDの報告書によると2016年にアメリカ人が大麻、コカイン、ヘロイン、メタンフェタミンに使ったお金は約1500億ドル。その多くが毎日あるいはほぼ毎日薬物を使う一部の人による。2017年のアルコールへの支出は1580億ドル。

 

Natureから

-ドラゴンを作る:空想科学の冒険

Nature書評

Making dragons: a speculative scientific adventure

16 August 2019

https://www.nature.com/articles/d41586-019-02468-w

Helen Pilcherがどうやってこの火を噴く恐ろしい生き物を生命工学で作るかについての父と娘の空想研究を楽しむ

Paul Knoepfler Julie Knoepflerによる「ドラゴンの作り方あるいは試みながら死ぬ:最新科学の風刺的研究How to Build a Dragon or Die Trying: A Satirical Look at Cutting-Edge Science」の書評

幹細胞研究者Paul Knoepfler8年生(中学2年生)の娘が父の助言を得てドラゴンを作る方法を考える

 

-恐ろしいバナナの真菌がアメリカに到達し警告

Natureニュース

Alarm as devastating banana fungus reaches the Americas

19 August 2019 Jonathan Lambert

https://www.nature.com/articles/d41586-019-02489-5

この地域は世界の輸出バナナの多くを作る-そして真菌はほとんどの人気のある商用品種に影響する

コロンビアが88日にTR4の存在を確認して国の緊急事態を宣言した

地図有り

 

-ブラジルの予算削減で8万人以上の科学奨学金を脅かす

Natureニュース

Brazil’s budget cuts threaten more than 80,000 science scholarships

19 August 2019 Rodrigo de Oliveira Andrade

https://www.nature.com/articles/d41586-019-02484-w

国の主要科学研究費出資機関がお金をすぐに出さないと若い研究者に賃金が払えない

ポスドク研究者等8万人以上が9月から停職に

(そうするとあちこちで実験できなくなるので全体に影響が)

 

-新しいデータベースで極端に自己引用の多い数百人が明らかになった

Natureニュース特集

Hundreds of extreme self-citing scientists revealed in new database

19 August 2019

https://www.nature.com/articles/d41586-019-02479-7

(おもしろい。インド人、ウクライナ、ロシア。日本はど真ん中)

 

Scienceニュース

-妊娠中にフッ素添加水を飲むと息子のIQが低くなるかもしれない、議論の多い研究が言う

By Michael PriceAug. 19, 2019 ,

Drinking fluoridated water during pregnancy may lower IQ in sons, controversial study says

https://www.sciencemag.org/news/2019/08/drinking-fluoridated-water-during-pregnancy-may-lower-iq-sons-controversial-study-says

ミシガン州Grand Rapids1945年に虫歯予防のために実験的に飲料水へのフッ素添加が行われて以降、米国では公衆衛生上の偉大な成功の一つとして称賛されてきた。現在米国の約2/3がフッ素添加水道水を供給されていて、オーストラリア、ブラジル、カナダ、ニュージーランド、スペイン、英国でも多くの人がそうである。今回新しい研究で妊娠中にフッ素添加水を飲んでいた母親の子ども、特に男の子のIQの低さとフッ素添加を関連づけた。

長い間フッ素添加を批判してきた人達がこの研究を称賛するが、他の研究者は信用性を低下させる無数の欠陥を指摘する。いずれにせよ「これは爆弾になるかもしれない」とこの研究には参加していないハーバード大学の環境健康研究者Philippe Grandjeanは言う。

フッ素添加は1940-50年代に始まり現在世界人口の約5%がフッ素添加水道水を受け取っている。これには始まった時から批判がある。一部の人達はがんを含む広範な病気に関連すると主張してきたが多くの批判者はそれを疑似科学だとして片づけてきた。しかし一部の少数の科学者はフッ素添加の虫歯予防への有効性に疑いを投げかけるメタ解析を発表した。そしてつい最近フッ素暴露とIQ低下の関連の可能性を示す小規模研究を発表し、歯科の研究グループが迅速にそれに疑問を提示した。そして今日、JAMA Pediatricsがおそらくこれまでで最も格の高い批判を提供した。この研究は心理学者と公衆衛生の研究者らがカナダの連邦政府が出資した、2008年からデータ収集を開始した6つのカナダの都市で妊娠女性とその子どもを追跡した長期研究である環境化学物質母子研究計画のデータを調べた。

600人のうち40%ほどがフッ素添加されている都市に住んでいて、尿中フッ素濃度は平均0.69 mg/Lで、フッ素添加されていない都市の女性の尿の平均は0.4 mg/Lだった。出産後3-4年で子どもにIQテストをしているが、親の教育レベルや飲酒、出生時の体重、家庭の収入、鉛・水銀・ヒ素などの環境中有害物質の変数を調整した後、尿中フッ素濃度が1mg/L増えるごとに息子の(娘ではそうではない)IQが約4.5ポイント下がることを発見した。これは子どものIQと低濃度鉛暴露を調べた他の研究の影響に近い。

フッ素の摂取量を母親の自己申告で推定する二番目の方法では男女両方でフッ素1 mg/L(?)あたり3.7ポイントのIQ低下と関連した。自己申告はあまり信頼できないので広く認められた方法ではない。研究者らは方法により差がある理由はわからないと認めていて作用メカニズムの想定も拒否している。

この知見は既に広範な吟味対象になっているが、もし検証に耐えたら、それは公共政策に重大な意味がある。現在米国保健福祉省は飲料水のフッ素濃度を0.7mg/Lにすべきとしているが、「もしこの水道水を1L飲んで、それからマグカップ2杯のお茶を飲んだら、フッ素の上限を超える」とGrandjeanは言う。

著者らはこの仕事が議論になることは十分承知していて、その一人のトロントにあるヨーク大学の神経心理学博士候補Rivka Greenは、この研究がさらなる研究のきっかけとなることを期待する、という。「我々は可能な限り注意深くやろうとした。フッ素が毒だと言いたいわけではない。ただデータの語ることを示そうとしただけである」

この研究の知見が波風をたてるだろうことを知っていたため、JAMA Pediatricsは論文に編集者注をつけるという普通でないやりかたをした。「この論文を出版するのを決めることは簡単ではなかった」と編集者のシアトル子ども病院小児科医で疫学者のDimitri Christakisは書く。彼はこの研究は「方法や知見の提示などについて追加の吟味が行われた」と加えた。

それでも何人かの研究者らはこの論文の方法の欠陥が重要性を低下させると主張する。ロンドンのSMCに発表されたコメントで英国ノッチンガムトレント大学の心理学者Thom Baguleyは、データに「極めて雑音が多い」、つまり簡単に偽陽性につながってしまう他の要因がたくさん含まれる、と注意している。King’s College Londonの心理学者Stuart Ritchieはこの知見は裸の統計学的有意に過ぎず、「境界領域で極めて弱い」と呼ぶ。「これだけでフッ素の安全性についての疑問に大きく針を動かすべきではない」と書く。

カナダのカルガリー大学公衆衛生研究者Lindsay McLarenは合意しない。彼女はScienceに対してこの研究は方法がしっかりしていて信頼できるように見えるという。しかしフッ素添加について変更するのは時期尚早であることには合意する。「公衆衛生政策はどんなものでもたった一つの研究ではなく入手できる根拠全体に基づくことが理想的である。フッ素とフッ素添加についての新しい研究をレビューし続けることが重要であろう」

(これが真ならお茶どうしようって話になるんだけど・・)

 

-「システムは要求が殺到してさばききれない」カナダは研究用大麻のリクエストにこたえられない

‘The system is swamped.’ Canada can’t keep up with requests to study cannabis

By Meredith WadmanAug. 19, 2019 ,

https://www.sciencemag.org/news/2019/08/system-swamped-canada-cant-keep-requests-study-cannabis

カナダは201810月の大麻合法化により誘発された大麻研究許可申請に対応するのに必死である。申請は7月後半までに251あり何ヶ月も待たなければならないことに科学者はいらいらしている。遅れることでヘルスカナダへの批判もおこっている。

「みんなが大麻を育て、摂取し、買っているのになぜ研究者だけまだなのか?」

ヘルスカナダは大麻許可申請対応者を140人に増やして対応している

皮肉なことに、研究用ではたとえ数マイクログラムでも認可されるまで何ヶ月も待つのに、19才の学生は30グラムを吸うことができるのである。

 

その他

-母親のフッ素暴露と子どものIQを調べた研究への専門家の反応

SMC UK

expert reaction to study looking at maternal exposure to fluoride and IQ in children

August 19, 2019

https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-maternal-exposure-to-fluoride-and-iq-in-children/

JAMA Pediatricsに発表された研究が、母親のフッ素暴露が子どものIQスコアの低下につながるかもしれないと報告

(一部のみ)

Nottingham Trent大学実験心理学教授Thom Baguley教授

最初に、母親のフッ素暴露とIQ低下に関連があるというのは嘘で、これは有意ではない(なのに要旨に記載されていない)。男の子で僅かな低下、女の子で有意でない僅かな増加を観察した。これはサブグループ解析の例であり、この種の研究では不適切とされるものである。なぜなら何らかのサブグループで何らかの差を観察するのはいつでも可能だから。もう一つはIQの減少がありそうになく大きいことでこのような大きな影響があるならこれまでの研究でみつかっているはずである。

RMIT大学分析化学准教授Oliver Jones博士

タイトルは恐ろしげだが注意点がある。フッ素の1mg/Lの違いはIQ4.49ポイントの違いだと著者らは述べているが実際の人々での最も大きな差でも1mg/mL以下である。たくさんの交絡があり結論は難しい

王立統計学会統計大使Joy Leahy博士

この研究は妊娠中の母親の暴露の影響だけを評価しているが、それは出産後の子どもの暴露と強い関連があるだろう。従って妊娠中のフッ素が要因というのは困難である

Leeds大学環境毒性学名誉教授Alastair Hay教授

この論文には多数の懸念がある。最初に、母親のフッ素暴露量は妥当性を検証されていない。これは重要だ。フッ素のような半減期の短い物質については尿の濃度は最後に飲んだものの反映でしかない。また男の子でしか低下しないのも奇妙である。

ロンドン大学Birkbeck認知科学教授Rick Cooper教授

著者のタイトルはデータによって支持されない。少女のIQが増加している。少年のIQ低下が有意になったのは極一部の極端にフッ素暴露の多い母親の少年のデータによるが、それでも正常範囲である。フッ素の分布は均一ではなく、高濃度の集団は極一部でほとんどが低濃度であり、従って統計検定のための想定が満たされていない。影響が直線反応でない可能性-例えば高濃度でのみ影響が出て低濃度では出ない-などが考慮されていない。

Open大学応用統計学名誉教授Kevin McConway教授

フッ素暴露量の推定の妥当性が検証されていない。観察研究であり交絡要因がコントロールされているかどうかわからない。母親のIQは調整されていない。

King’s College London精神医学心理学神経科学研究所(IoPPN)講師Stuart Ritchie博士

全体としてこの知見は極めて弱くボーダーラインである。

King’s College Londonトランスレーショナル神経発達のためのSacklerセンタートランスレーショナル神経科学教授Grainne McAlonan教授

例えばフッ素添加群と添加していない群の平均IQ 108.07 vs. 108.21で、同じである。これを見て、フッ素とIQの関連を研究しようと思うこと自体驚きである

(とても気合いの入ったコメント多数。)

 

-ノー、フッ素はIQを低くしない。それは因果関係のHill基準を満たさない

ACSH

No, Fluoride Doesn't Lower IQ. It Fails to Satisfy Hill's Criteria of Causality

By Alex Berezow — August 19, 2019

https://www.acsh.org/news/2019/08/19/no-fluoride-doesnt-lower-iq-it-fails-satisfy-hills-criteria-causality-14229

JAMA Pediatricsに発表された極めて議論の多い研究についてAustin Bradford Hillの相関関係と因果関係を区別するための9つの基準(関連の強さ、一貫性、特異性、一時性、用量反応関係、妥当性、統一性、実験、類似性)を検討。

関連の強さ

少年のIQとの関連の信頼区間は-8.38から -0.60ともう少しでゼロを含み関連が強いとは言えない

一貫性

他の研究データと一致しない

統一性

男の子でしかIQ低下が有意ではない。女の子では差がないどころかIQが増加することになっている。明らかに統一性がない。