2019-11-27

[EU]査察報告書

-ロシア連邦―生きた動物と動物製品の残留物と汚染物質

Russian Federation―Residues and contaminants in live animals and animal products

08/11/2019

http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4207

2019年5月14~24日にロシア連邦で実施した、2017年10月の同じ課題の以前の査察で示された行動の実践や、EU市場の食品がEUの規制限度に従っていることの確認行動の有効性を評価する査察。2019年4月に、ロシア連邦動植物監視局は委員会に馬肉の計画を追加するよう要請した。現在、委員会に示された残留物監視計画とその実行は、EUで期待されるのと同等の保証を提供している。全ての研究所が認可を受け、有効な/実証された手段だけを用い、品質管理パラメーターを実行していることが、ロシア連邦動植物監視局に信頼を与えている(常にこれらを最大限に使用しているわけではないが)。馬肉の残留物監視計画には馬を特定し個々の治療記録を保管する条件がないため、屠殺場に送られる馬が適切な休薬期間の適切な対象となっているかどうか決める能力が損われている。

 

-スイス―特定の動物製品に関する食品の安全面

Switzerland―Food safety aspects in relation to certain animal products

06/11/2019

http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4204

2018年10月9~19日にスイスで実施した、牛、豚、羊、ヤギの生鮮肉を含む動物由来食品にスイス連邦の管轄機関が実行した公的管理システムを評価するための査察。動物製品に関するスイス連邦の施行と管理プログラムは、農産物の取引に関する欧州コミュニティとスイス連邦の間の協定(いわゆる「協定」)に対して特定の方法で機能している。一般に、適切な法律と、管轄機関が実行した管理の組織と運営は、評価した部門で満足のいく保証を提供しているが、不適合も特定された。管轄機関の役人の実績はほとんどの場合適切または優良基準だった。州を超えた条件の正しく均一な実行は、管理の基準と校正、連邦レベルで拘束力のある検証がなく、十分保証されていない。

 

-キプロス―農薬の持続可能な利用

Cyprus―Sustainable use of pesticides

05/11/2019

http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4203

2019年3月5~13日にキプロスで実施した、農薬の持続可能な利用を達成する関連手段の実行を評価するための査察。キプロスは持続可能な利用指令(SUD)に従って、最初の国家行動計画(NAP)のレビュー後5年以内に2番目のNAPを採用した。この2番目のNAPは最初のものと実質的に同じである。最初のNAPには定量化目標や関連指標がなく、リスクの削減につながったかどうか決定できなかった。農薬利用者、販売業者、助言者の大半は教育を受け認定されているが、農薬散布機器検査には適切な機能システムがなく、実際にその実行を確認する検査はない。

 

-フランス-ツナ種由来水産物

France―Fishery products derived from tuna species

24/10/2019

http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4199

2019年10月8~19日と11月20日にフランスで実施された、ツナ種水産物が、食品衛生、添加物、表示の点で関連するEU条件に従って生産されていることを確認するための査察。フランスの指定管轄2機関は、ツナ種由来水産物の特定の機能を含む、水産物の生産チェーン全体をカバーする文書化された手順に裏付けられた公的管理システムを作成した。一般に、適切に手順に従って実行されており、欠点はあるものの満足のいくものだと考えられる。製品の冷凍条件は特定状況(水揚げ施設や冷凍船舶)では尊重されず、ヒスタミン検査は小売りレベルでランダムにサンプリングされているだけで生産チェーンの全段階で行われていない。

 

-キプロス―水産物

Cyprus―Fishery products

23/10/2019

http://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4196

2019年5月13~24日にキプロスで実施した、公的管理システムの組織と運営がEU法の条件を満たしているかどうか、水産物に関する食品法の的確な実施がどの程度効果的に施行されているかを評価するための査察。キプロスの公的管理システムの効果は、承認手続きや、内部監視がないことに関連する管理の効果と整合性に見つかったギャップに弱められていることが分かった。ヒスタミンや添加物の公的検査がなく、食品企業管理者のハザード分析や重要管理点計画(製品表示や保存期間の研究などの重要な側面を含む)の不適切な検証が、さらにこのシステムを弱めている。

 

[EFSA]意見等

-ジメチルスルフィドの農薬リスク評価ピアレビュー

Peer review of the pesticide risk assessment of the active substance dimethyl disulfide

EFSA Journal 2019;17(11):5905 25 November 2019

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5905

情報不足と懸念が確認された。

 

-ミネラルオイル芳香族炭化水素類(MOAH)による乳児用粉ミルクとフォローアップミルクの汚染により公衆衛生に起こりうるリスクについての迅速なリスク評価

Rapid risk assessment on the possible risk for public health due to the contamination of infant formula and follow-on formula by mineral oil aromatic hydrocarbons (MOAH)

21 November 2019

https://www.efsa.europa.eu/en/supporting/pub/en-1741

Foodwatchが報告したフランス、ドイツ、オランダの乳児用及びフォローアップ粉ミルクのバッチでのミネラルオイル芳香族炭化水素類(MOAH)の検出を受けて、欧州委員会(EC)は加盟国(MS)に関連するバッチを分析し、可能性のある汚染源を調査するよう求めた。そしてEFSAに乳児用及びフォローアップ粉ミルクのMOAHの存在に関する健康リスクについて迅速な評価を行うよう命じた。MOAHには遺伝毒性や発がん性のある3-7環多環芳香族化合物(3-7 PAC)が存在する可能性がある。ミネラルオイル炭化水素類に関する2012年6月のEFSAの意見では、MOAHのこれらの成分の存在に潜在的な健康上の懸念が確認された。この評価では、foodwatchが発表したデータとSpecialised Nutrition Europeからのデータに加えて、EFSAは2つの加盟国(オーストリアとドイツ)からの限られた汚染実態データしか受け取っていない。Foodwatchが検査したサンプルでの検出50%から、ドイツの機関が分析した3つのサンプルの不検出まで、定量可能なMOAH濃度の汚染頻度は異なっていた。定量化されたMOAH濃度量は0.2-3 mg/kgの範囲だった。複雑な分析法により、乳児と幼児のMOAHへの推定暴露量推定に用いた報告された濃度量には不確実性がある。乳児でより高い暴露量が推定され、暴露量の平均及び95パーセンタイルはそれぞれ0.8 ~4.6 及び1.7 ~78.8 µg/kg bw /日の範囲だった。EFSAは分析されたサンプルに3-7 PACなしという情報を入手できなかったため、乳児と幼児に推定される暴露がヒトの健康に起こりうる懸念である。この評価は2019年11月14日まで利用できるようになった汚染実態データによる。MSによるさらなるサンプルの分析が行われ、追加データが利用可能になると、この評価の更新が検討される。

(注:欧州のNPOであるfoodwatchがこんな発表をした

foodwatch laboratory tests: Suspected carcinogenic mineral oil residues in baby milk

24.10.2019

https://www.foodwatch.org/en/press/2019/foodwatch-laboratory-tests-suspected-carcinogenic-mineral-oil-residues-in-baby-milk/

でも同じロットを事業者が測定しても結果が再現できなかったことがEFSAの評価書に記載されている)

 

-ヒメキサゾールの既存MRLsのレビュー

Review of the existing maximum residue levels for hymexazol according to Article 12 of Regulation (EC) No 396/2005

EFSA Journal 2019;17(11):5895  21 November 2019

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5895

規制の枠組みが必要とする全ての情報が提示され、消費者へのリスクは確認されなかった。

 

-マンコゼブの農薬リスク評価ピアレビュー

Peer review of the pesticide risk assessment of the active substance mancozeb

EFSA Journal 2019;17(7):5755  20 November 2019

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5755

情報不足と懸念が確認された。

 

-Bacillus pumilus (BLXSC株)由来食品酵素キシラナーゼの安全性評価

Safety evaluation of the food enzyme xylanase from Bacillus pumilus (strain BLXSC)

EFSA Journal 2019;17(11):5901 20 November 2019

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5901

この食品酵素1,4‐β‐d‐キシラン キシラノヒドロラーゼ (EC 3.2.1.8)はAdvanced Enzyme Technologies Ltd社により非遺伝子組換え株Bacillus pumilus ( BLXSC株)で生産されている。この食品酵素は、焼成工程、澱粉及びグルテン画分の生産のための穀物処理、蒸留アルコール生産での使用を意図している。この食品酵素の残留量は蒸留により、また穀物処理中に除去されるため、食事暴露は焼成工程にのみ算出された。焼成工程の最大推奨使用量とEFSAの包括的欧州食品摂取データベースの個別データに基づき、この食品酵素への食事暴露―総固形有機物量(TOS)は最大0.138 mg TOS/kg 体重 (bw)/日と推定された。B. pumilusの生産株は安全性適格推定(QPS)アプローチの要件を満たしているため、毒性学的データは必要ない。既知のアレルゲンに対するアミノ酸配列の類似性が調べられ、一致はなかった。パネルは、意図した使用条件 (蒸留アルコール生産以外) で、アレルギー感作のリスクや食事暴露による誘発反応は除外できないが、そのような可能性は低いと考えられる。この生産株のQPS状況と提出されたデータに基づき、パネルは、この食品酵素は意図した使用条件で安全上の懸念を生じないと結論した。

 

[FDA]キハダマグロ(アヒ)に関連したスコンブロイド魚中毒の調査、2019年秋

Investigation of Scombrotoxin Fish Poisoning Linked to Yellowfin/Ahi Tuna, Fall 2019

November 15, 2019

https://www.fda.gov/food/outbreaks-foodborne-illness/investigation-scombrotoxin-fish-poisoning-linked-yellowfinahi-tuna-fall-2019

 FDA及び州の衛生機関は、キハダマグロ、時にアヒツナ(Ahi tuna)と呼ばれる魚に関連したスコンブロイド魚中毒(訳注:FDAは中毒の発症にはヒスタミン以外の成分も寄与していると考えていることから、ヒスタミン中毒ではなくスコンブロイド魚中毒と呼ぶことが多い)の事例を調査している。FDAはベトナムの供給業者であるTruong Phu Xanh Co., LTDに対し、製造日が2019年1月以降の全ての輸入キハダマグロについて自主的リコールを要請したが、いずれの製品もリコールされていない。調査の一環でHACCP計画についても評価したが、欠陥が見つかっている。      

 調査では、2019年8月8日から10月15日までの間に中毒患者が47名確認されている。FDAと州は検査のために製品サンプルを集め、検査では腐敗又は高濃度のヒスタミンが陽性となっている。さらに患者の疫学的、遡り情報も集めている。最終的に、組織的な調査により、中毒患者のほとんどが消費してたであろうマグロの供給業者としてTruong Phu Xanh Co., LTDの特定に至った。該当する製品は廃棄し、摂取しないこと。

 

[RIVM]煙草の糖と保湿剤が煙の毒物量を多くする

Sugars and humectants in cigarettes lead to higher levels of toxins in smoke

11/26/2019

https://www.rivm.nl/en/news/sugars-and-humectants-in-cigarettes-lead-to-higher-levels-of-toxins-in-smoke

RIVMの研究で煙草に糖と保湿剤を加えると煙の多数の有毒物質の量が増える。RIVMは50の市販の煙草ブランドを調べた。研究はNicotine & Tobacco Researchに発表された。

糖としてはグルコース、フルクトース、スクロース、保湿剤はグリセリンとプロピレングリコールを分析

 

 FSSAI

-乳及び乳製品の安全と品質行動計画

Action Plan for Safe and Quality milk and milk products

November 26 2019

https://fssai.gov.in/upload/press_release/2019/11/5ddd5c991d016Press_Release_Safe_Milk_26_11_2019.pdf

3分野の12点の行動を提案

(微生物が検出されていても病原性ではないから安全の問題ではないというようないつもの主張だが対策を進めるようだ)

 

-食品安全執行の改善:2018-19データ発表

Improved Food Safety Enforcement: Data for 2018-19 released

25th November 2019:

https://fssai.gov.in/upload/press_release/2019/11/5ddce90b2867fPress_Release_Enforcement_Data_26_11_2019.pdf

2018-19の間に、106459サンプルが分析され、3.7%は安全でないと判断され15.8%は質が悪く9%は表示に欠陥があった。

犯罪に関しては捜査事例は86%増加で結論が出たのは2017-18で5198

 

論文

-中国の肥満問題の解決には学校と親と祖父母がカギ

Schools, parents and grandparents hold key to unlocking China's obesity problem

26-NOV-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-11/uob-spa112119.php

世界最大規模の子どもの肥満予防研究の一つ。CHIRPY DRAGON計画に参加した子どもでの12か月の介入試験。PLoS Medicineに発表。

CHIRPY DRAGON計画では子供、両親、祖父母に健康知識と技術を教え、学校給食の質を改善し、両親と子供に学校以外での運動を訓練し、学校でも運動の機会を増やす。祖父母を介入対象にしたのはCHIRPY DRAGONが初めて。このチームの先の研究で祖父母が主に世話をしている子供の肥満や過体重が2倍だったため。

 

-米国の寿命の解析

Analysis of US life expectancy

26-NOV-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-11/jn-aou112119.php

JAMA。

働く世代のアメリカ人が高率で死んでいる、特に経済的に不況がひどい州で

Working-age Americans dying at higher rates, especially in economically hard-hit states

26-NOV-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-11/vcu-wad112119.php

ラストベルトとアパラチア地方の25-64才の死亡がアメリカの平均寿命の低下を招いている

 

-研究:米国の天然向精神物質に関する中毒コントロールセンターへの電話が増加している

Study: Increase in calls to US poison control for natural psychoactive substances

26-NOV-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-11/nch-sii112219.php

2000年1月から2017年12月までの米国中毒コントロールセンターへの天然向精神物質に関する相談について解析した。Clinical Toxicologyに発表。

最も多いのは大麻(47%)で、次いでヨウシュチョウセンアサガオのような抗コリン作用のある植物(21%)、幻覚キノコ(16%)。入院や重大な医学的帰結になる率が高いのはクラトム、カート、抗コリン植物、幻覚キノコ。

全体として天然向精神物質暴露率が増えてはいるものの多くの物質で暴露率は減っていて、例外は大麻(150%増加)、ナツメグ(64%増加)、クラトム(5000%増加)。

この研究で同定された死亡は42だったがそのうち8人はクラトムによる。また7人は子どもである。

 

-母親の飲酒は増加傾向-しかし子どものいない女性のほうがまだ多く飲んでいる

Mommy drinking is on the upswing -- but women without children still drink more

26-NOV-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-11/cums-mdi112519.php

全年齢の、親であるかどうかに関係なく、女性で暴飲が増加

2006年から2018年の全国健康インタビュー調査の18-55才のデータを用いた研究

PLOS Medicine。暴飲の定義は一度に5杯以上の飲酒

 

-私たちはコーヒー、紅茶、チョコレート、ソフトドリンクがとても好きなので、カフェインが文字通り血の中にある

We love coffee, tea, chocolate and soft drinks so much, caffeine is literally in our blood

26-NOV-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-11/osu-wlc112519.php

複数の生命医学サプライヤーから複数のドナーのものをプールしたヒト血清を18バッチ購入して分析した結果がJournal of Pharmaceutical and Biomedical Analysisに発表された。検査した全てからカフェインが検出された。また多くの検体から痕跡程度の風邪薬や抗不安薬を検出した。

 

-米国の子どもたちの窒息死は過去50年で75%低下

Choking deaths in US children drop by 75% in past 50 years

26-NOV-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-11/arh-cdi112519.php

JAMA. 小さなものを飲み込んで死亡する子どもの数が1968年から2017年の間に75%低下した。しかしそれでもなお2017年に米国で184人の子どもが死亡した。

 

-研究:アルコールとタバコ政策ががん死を減らせる

Research: Alcohol and tobacco policies can reduce cancer deaths

26-NOV-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-11/ltu-raa112519.php

BMC Medicineに発表された新しい研究によると、無作為呼気検査やたばこ広告禁止などを含むアルコールとタバコの使用を減らすことを目的にした政策がオーストラリアのがん死亡率を相当減らした。

 

ラット毒性報告

SMC NZ

Rat toxicology reports – Expert Reaction

26 November 2019

https://www.sciencemediacentre.co.nz/2019/11/26/rat-toxicology-reports-expert-reaction/

匿名のラボから、西海岸で集めたラットの死体から1080が検出されたという報告が出された。

この二番目の報告は先週保全省(DOC)が発表した結果と矛盾している。DOCはManaaki Whenua – Landcare Researchに8匹のラットと1羽のコバネクイナの死体の検査を委託して1080は検出されなかった。Massey大学獣医学部の死後解剖では死因はわからなかった。Landcare Researchはラットの死体のフルオロ酢酸を調べたが、反するラボの報告はフルオロ酢酸とフルオロクエン酸の両方を調べたと主張する。フルオロクエン酸は1080が体内で代謝されてできる。SMCは毒性学者にコメントを求めた。

カンタベリー大学毒性学教授Ian Shaw

フルオロ酢酸とフルオロクエン酸の背景

1080の毒性成分であるフルオロ酢酸は哺乳類に対して極めて毒性が高く、細胞のエネルギー生産にとって重要であるクエン酸回路を阻害する。この回路が止まると細胞は死ぬ。フルオロ酢酸がこの経路に入るとフルオロクエン酸を生じ、それがクエン酸回路の重要酵素を阻害する。もし組織検体からフルオロ酢酸とフルオロクエン酸の両方が検出されたらそれはその動物がフルオロ酢酸を飲み込んで吸収したという良い証拠になる。両方の濃度が、致死量を飲み込んだかどうかを決める。

フルオロ酢酸の検査に最良の検体は筋肉と胃あるいは腸である。動物の死体ではフルオロ酢酸は速やかに分解する。フルオロ酢酸の毒性が極めて高いので筋肉内の量は低くても死亡する。つまり分析の時点では検出限界以下になっている可能性がある。このため胃腸での濃度が役に立つ-通常濃度は筋肉より高く検出できる。

Landcare Researchの分析結果は極めて信頼性が高い。国際的に認められた認証ラボである。胃でも筋肉でもフルオロ酢酸は検出されていない。この結果は私の意見では極めて信用できる。欠点としては古悪露クエン酸が分析されていないこととサンプルサイズが小さいことである。

匿名ラボの報告について 

Flora & Fauna Aotearoa と Clean Green New Zealand Trustが発表した匿名ラボの分析結果については信頼性が評価できない。ラット3(4?)匹の死体が胃腸を含めて分析されている。ラット1ではフルオロ酢酸とフルオロクエン酸のどちらも検出されていない、ラット2ではフルオロ酢酸とフルオロクエン酸が、ラット3ではフルオロクエン酸が検出されラット4ではフルオロ酢酸とフルオロクエン酸が検出された。1080ペレットに使われている緑色の色素がラット2、3、4で見つかった。

フルオロクエン酸が検出されたという知見は少々謎で、何故ならそれはクエン酸回路が活発な組織、つまり筋肉や肝臓でしか検出されないからである。腸や胃は普通はフルオロ酢酸をフルオロクエン酸に変えることはない、ただし腸では細菌が変えるかもしれない。

一方胃や腸の内容物ではなく組織全体を分析したのならフルオロ酢酸がフルオロクエン酸に変わる可能性はある。報告書からは何を分析したのかは明確にわからない。もしこの結果が信用できるのなら(それは判断できないが)この知見はこの動物がフルオロ酢酸を飲み込んだことを示すのだろう。

私の意見では二番目のラボの信頼性がわかるまでLandcare Researchの分析結果に頼るしかない。Landcare

の結果は飲み込んだフルオロ酢酸が分解されたことを示すのかもしれないし1080を飲み込んでいないことを示すのかもしれない。

オタゴ大学毒性学薬理学部Belinda Cridge博士

両方の報告を見て私は二番目のラボの検査方法にいくつかの疑問があり、そのためその結論には疑問がある。

1080の分析は、特にフルオロクエン酸は、複雑で極めて高度な専門技能を必要とする。私の理解ではニュージーランドで短期間にこの分析ができるのは現在Landcareのラボだけである。

二つ目のラボが使った方法はPitt (2015)と引用文献を示されているが、この文献を見つけることができなかった。提示されている方法には複数の間違いがあり、それは単純なエラーかもしれないがクロスチェックができない。フルオロクエン酸の濃度がフルオロ酢酸の濃度より高かったと報告されているが、そういうことは想定できない。さらに、この報告では胃の内容物を分析したとされていてフルオロクエン酸の濃度が高いが、胃の中ではフルオロ酢酸からフルオロクエン酸への変換はあまりおこらない。

こうした理由から私は詳細が明らかにされるまで二番目のラボの結果を支持することはできない。発表された結果はいくつかの極めて普通でない知見が含まれ、それらはこれまで発表されている全ての研究の知見と矛盾する。なぜそんな異常な結果になったのかを確認する必要がある。

 

その他

-修飾蚊がデング熱症例を減らす

Natureニュース

Modified mosquitoes reduce cases of dengue fever

26 NOVEMBER 2019  Ewen Callaway

https://www.nature.com/articles/d41586-019-03660-8

病気を阻止する細菌に感染した昆虫がアジアと南アメリカのコミュニティに放出された

11月21日に米国熱帯医学と衛生学会年次会合で発表された、Wolbachia感染Aedes aegyptiをインドネシア、ベトナム、ブラジルの地域に放出した結果、デング熱が減った。Wolbachia感染が地域の蚊集団に拡大した。

 

-スペースエイジング:なぜSF小説では凄腕の高齢女性を避けるのか

Natureエッセイ

Space ageing: why sci-fi novels shun the badass older woman

25 NOVEMBER 2019 Sylvia Spruck Wrigley

https://www.nature.com/articles/d41586-019-03618-w

未来のビジョンに銀河の祖母がいないことは年齢差別と性差別を反映する

写真:ターミネーター:ダークフェイトのサラ・コナーはとても稀なSFにおける高齢女性

女性は年をとると超能力が身につく:見えなくなる。

(意味もなく若返らせられているというのは確かに。)

 

-電子タバコはどのくらい安全?新しいヒト研究が心臓や肺への慢性毒性を評価する

Scienceニュース

How safe is vaping? New human studies assess chronic harm to heart and lungs

By Jennifer Couzin-FrankelNov. 26, 2019

https://www.sciencemag.org/news/2019/11/how-safe-vaping-new-human-studies-assess-chronic-harm-heart-and-lungs

電子タバコによる肺障害がニュースになっている昨今だが、長期健康影響についての懸念も生じている。動物やヒトでの慢性リスクを評価するための研究が始まっている。

電子タバコはニコチンや溶媒や香料などのその他の物質を含むバッテリーで動く装置である。熱により混合物がエアロゾルになって使用者が吸入する。製造業者は電子タバコを禁煙ツールとして宣伝しているがデータは多様である。しかし一つ明確なことがある:タバコを吸わなかった何百万人もの若い人たちが電子タバコを吸っている。そして電子タバコは普通の煙草よりその化学組成において多様性が大きいために、健康影響をみつけるのに「医科学に膨大な負荷をかけている」、とウィスコンシン大学の予防心臓専門医James Steinは言う。しかし調べないという選択肢はない。今月国立心臓肺血液研究所は現在進行中の電子タバコ研究に資金を追加すると発表した。今年の費用は2300万ドルである。

(以下研究状況の紹介。アメリカの中高生何故そんなに吸ってるんだろう。)