[EU]査察
-コートジボワール―水産物
Cote d'Ivoire 2019-6862―Fishery products
04/05/2020
https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4277
2019年10月21~31日にコートジボワールで実施した、EU輸出用水産物、特にツナ製品の公的管理を評価するための査察。公的管理システムはEU輸出用水産物の生産チェーン全体をカバーしているが、一次生産水産物の管理は最近再開されたばかりで、冷凍船の管理と認可、EU登録施設の管理に重要なギャップがある。陸揚げ時にサンプリングされた冷凍製品に焦点を当てたが、ヒスタミンの管理は製品および/または製造工程の全範囲をカバーしておらず、信頼性を保証できていない。現在、管轄機関はEUへのツナ製品の輸出に際し、信頼できる保証を提供する立場にないと結論した。迅速な是正措置が必要である。
2013年の査察の8件の助言のうち、効果的に対処されたのは2件だけだった。
-デンマーク―水産物
Denmark 2019-6664―Fishery products
04/05/2020
https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4276
2019年6月12~21日にデンマークで実施した、公的管理システムがEU法の条件を満たしているかどうか評価するための査察。公的管理システムは市販されている水産物に適用でき、生産、加工、流通段階をほぼカバーしている。だが、食品企業管理者による是正措置の実行に欠点があり、システムの効果は悪影響を受けている。HACCPに基づく手続きや施設の認可に関してシステムにいくつか欠点がある。最初の認可付与とその後の検証の両方に欠点がある。
-トルコ―農薬
Turkey 2019-6727―Pesticides
23/04/2020
https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4272
2019年11月19~28日までトルコで実施した、EU輸出用パプリカ、かんきつ類、ザクロなどの生鮮果物と野菜の残留農薬の管理を評価するための査察。概して、当局は食品中の残留農薬に関するEU条件を満たし、農薬管理の効果を改善するために多くの対策を取っているが、これまでのところあまり効果がない。特に、植物保護製品(PPP)を散布する栽培者や助言者の不十分な教育や認可/認証、農場レベルでのPPP使用の管理不足などで有効性が損なわれている。RASFF通知の根本原因を特定できず、食品企業管理者の自己管理がないまたは極めて少なく、EU基準準拠の保証には更に懸念が生じている。
[BfR]検査が「秘密の」ホルモンを暴く
A test reveals ‘secret’ hormones
20 May 2020
https://www.bfr.bund.de/cm/349/a-test-reveals-secret-hormones.pdf
「E-Morph」は体内で化学物質がエストロゲンと同様の影響を持つかどうか検査する
ホルモンは生命の多くの過程を管理する身体の自己伝達物質である。特定の状況で生物にホルモンのような影響を及ぼす可能性のある人工・天然の物質は、環境中に発生することもある。好ましくない事例では、生殖能力を弱めたり、がんなどの病気を促進することもある。そのためEUでは、有害なホルモン様の影響があるかどうか調べるために化学物質や農薬を検査しなければならない。そのような物質は専門用語で「内分泌かく乱物質」として知られている。
ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)の科学者は、ホルモン様の活性をもつ化学物質の、起こりうる有害影響を検出する検査方法を開発した。この検査はヒト細胞株をベースとして、特に女性の性ホルモンエストロゲンと同様または反対の影響を持つ物質を追跡する。現在この検査の特許申請が出願されている。
「E-Morph」という名のこの検査は単純な原則に基づいている。化学物質の影響を受けて細胞間の「接着剤」が変化するかどうか、どのように変化するかを調べる。エストロゲン―またはエストロゲンと同様の影響のある物質―は、乳腺細胞間の結合を緩める可能性があるので、特に重要である。がん細胞が含まれる場合、深刻な危険を意味することになる。細胞接着が失われると、がん細胞は「離脱」して体内のどこにでも転移性娘腫瘍を形成する可能性があるからである。体自身のエストロゲンはそのため、プラスの効果があるだけではなく、好ましくない状況では腫瘍の形成を誘発する可能性もある。また別の物質にエストロゲンと同様の影響がある場合、がんの進行をさらに加速する可能性がある。
細胞の「接着剤」はタンパク質E-カドヘリンである。この糸状タンパク質は分子の「ロープ」のように隣接細胞の膜をつなげ、この方法で細胞同士を結合させる。これが「E-Morph」検査の機能するところである。細胞がエストロゲン様の活性をもつ物質(あるいはエストロゲンをブロックする物質)に暴露されると、Eカドヘリンタンパク質の分布や細胞間接触点の形状(形態)が典型的なかたちで変化する。「E-Morph」検査という名称を与えた E-カドヘリン接触点の形態の変化は、顕微鏡で確実に検出できる。この方法で、化学物質の「隠された」潜在的なホルモンを暴くことが出来る。
自動化されたロボットのようなプラットフォームで、「E-Morph」は短期間で多くの物質の体系的なスクリーニングを進める。BfRのドイツ実験動物保護センターの調査チームは、このようにして、この方法が化学物質をより安全に使用したり、新しいがん治療薬の研究を支えるのにも役立つよう望んでいる。ドイツ動物実験保護センターの課題は、「‘E-Morph検査」など、動物実験に基づかない代替試験法の開発を含んでいる。
追加情報
欧州特許出願(EP 3517967 A1)
https://data.epo.org/gpi/EP3517967A1
国際PCT特許出願(WO 2019145517 A1)
https://patentscope.wipo.int/search/en/detail.jsf?docId=WO2019145517
特許出願手続きとこの検査の出願可能領域についての予備知識
[FSA]2020年6月のFSA理事会ペーパー
FSA Board meeting papers published for June 2020
4 June 2020
https://www.food.gov.uk/news-alerts/news/fsa-board-meeting-papers-published-for-june-2020
・COVID-19へのこれまでのFSAの対応
・1月末のEU離脱からFSAが行ってきたこと
・主任科学アドバイザーGuy Poppyによる年次報告書
・リスクアナリシスのための根拠の導出において、根拠evidence base、影響impact 、費用/抵抗cost and resistanceの三角形のバランスという考え方
・フードシステムアプローチ
[WHO]世界食品安全デー2020:国連専門家が2020年6月5日にフェイスブックライブイベント
World Food Safety Day 2020: UN experts in Facebook live event on 5 June 2020
3 June 2020
[FTC]FTCはCOVID-19の予防や治療に有効だと根拠のない宣伝をしている業者にさらに35の警告文書を送っている
FTC Sends Letters Warning 35 More Marketers to Stop Making Unsupported Claims That Their Products and Therapies Can Effectively Prevent or Treat COVID-19
June 4, 2020
静注とオゾン療法、免疫強化注射
幹細胞治療
電磁場ブロックパッチ
エッセンシャルオイル
ホメオパシー
ビタミン、サプリメント、銀、中国ハーブ治療
(企業名略、カテゴリーのみ)
論文
-食べる量を減らせば健康で長生き?研究は「必ずしもそうではない」ことを示す
Eat less and live a long healthy life? Study shows 'not in all cases'
4-JUN-2020
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-06/bifr-ela052820.php
Current Biologyに発表されたショウジョウバエの研究
-ミシガンの大麻:新しい報告は娯楽用合法化前の傾向を記す
Cannabis in Michigan: New report documents trends before recreational legalization
4-JUN-2020
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-06/mm-u-cim060420.php
約12年前にミシガンの有権者は医療用大麻使用に賛成投票をし、1年半前には全ての成人が理由を問わず使えるように投票した。この間何がおこったかをミシガン大学の傷害予防センターが包括的報告書で示した。
・過去1ヶ月で少なくとも一回は大麻を使用したと報告する人は9人中1人で14年で60%増加した
・州の住人の約3%が医療用大麻カードを持っていてそのほとんどが慢性痛
・医療用大麻による州の収入は年5-700万ドル
・妊娠女性30人に1人が大麻使用を報告、所得と教育レベルの低い人で多い
・大麻の関係する交通事故死が増加、交通事故死そのものは減少
・大麻使用疾患症状を経験している人は1.5%
・大麻中毒に関係する救急や入院が増加、特に十代後半と若年成人
・大麻関連の軽犯罪や重罪は全体の4%
-科学のギャップを埋めると化学物質規制のギャップが顕わに
Filling gaps in science exposes gaps in chemical regulation
Steve C. Gold, Wendy E. Wagner
Science 05 Jun 2020:Vol. 368, Issue 6495, pp. 1066-1068
化学物質規制は公衆衛生と環境を不当な害のリスクから守り、より安全な代用品の使用や開発を促し、人々に化学物質のリスクはどのように管理されているのかについての十分な情報を提供するべきである。これらの目標はどれだけ達成されているだろうか?米国の規制システムは機能不全であると馬鹿にされてきた、2016年の大改訂で一部はEUのREACH規制に近づくと考えられていても。化学物質規制の欠点を記す文書の例として、science 1103ページのWashingtonらの報告をとりあげる。彼らは環境検体から予期せずクロロパーフルオロポリエーテルカルボキシレート化合物(ClPFPECAs)を検出した、PFASの代用品として使われたようだ。この化合物を規制制度に従って追跡しようとすると疑問が多く、既存の規制の構造的限界を明らかにする。代用化合物がもとの物質より安全であることを規制システムはどれだけ保証できるのだろうか?期待するほどできていない。
新たな化合物の誕生
Washingtonらが発見した化合物はクロロフルオロカーボンやヒドロフルオロカーボンの「環境に優しい」代用品の探索の一部として最初に文献に報告されたものである。しかしくっつかない性質をもつフッ化ポリマーの製造に使われていたようだ。そのためPFOAの使用を直ちに排除しなければならないという期待の答えを出すのに役立った。米国でPFOAの使用削減を求めたEPAのPFOA Stewardship ProgramではPFOAの排除のみが目的で代用品については全く対応しなかった。一部の代用品については毒性試験により懸念する理由が見つかってきている。WashingtonらはClPFPECAsがニュージャージーの会社の施設から大気中に放出されていることが強く示唆されると結論している。イタリアでも川の水から検出している。
しかし現時点で公開されている情報からClPFPECAsが有害かどうかを言うことができない。
(以下ClPFPECAsの公開データを巡る話略)
規制の物語
最初の教訓は、規制上の関心は注目された化学物質のリスクを排除することに集中していて代用品の安全性解析にはあまり注力していないこと
二つ目は一部の化合物は米国の公的追跡の裂け目から抜け落ちている可能性があること
三つ目は市場にある4万以上の化合物の評価の責任がEPAの僅かな規制担当者におわされていること
長い道のり
公衆衛生や環境上の懸念がPFOAとその類縁化合物の段階的使用禁止につながった。そのようなシナリオでは、社会が望むのは代用品がもとの化合物より悪くないものであることは明白である。しかし環境中から発見された代用品が有害なのか、有害だとしたらどのくらい有害なのかはわからない。EUは米国より進んでいるものの効果的化学物質規制にはまだはるかな道のりがある
(長い記事いろいろ略)
その他
-2つのエリート医学雑誌がデータの公正性への疑問からコロナウイルス論文を取り下げる
Scienceニュース
Two elite medical journals retract coronavirus papers over data integrity questions
By Charles Piller, Kelly ServickJun. 4, 2020 ,
COVID-19 時代の最初の大研究スキャンダルとして、The Lancet と The New England Journal of Medicine (NEJM)が二つの注目論文を本日取り下げた、研究者らからの疑問が提示され、背景となるデータを第三者が監査できるようにすることを企業が拒否したため。
Lancet論文の著者3人は取り下げを求めている
著者のハーバード大学と Brigham and Women's病院の心臓外科医Mandeep MehraはCOVID-19危機時の論文出版を急ぐあまりデータソースとその適切使用を十分確認しなかったことを認めた。そしてその結果としての直接的間接的混乱に対して本当に申し訳なく思う、という。Mehraはこの分野のスターだった。
この取り下げは大量のレビューされていないCOVID-19プレプリントの正確さへの非難が問題の一つでしかないことをも示した。論文出版を急ぐあまり厳密さを欠くことがアカデミックピラミッドの頂点に立つトップジャーナルにまで及んでいる。
(一部のみ。わりと深刻)
-米国トップ科学者がホワイトハウスのCOVID-19ワクチン候補リストから外れる
Scienceニュース
Top U.S. scientists left out of White House selection of COVID-19 vaccine shortlist
By Jon CohenJun. 4, 2020 ,
COVID-19ワクチンの迅速試験生産計画であるOperation Warp Speedが5つの実験的COVID-19ワクチンを選んだというニュースはホワイトハウスによる計画に参加していたトップ科学者にとってもニュースだった。「あまりにも混乱していて透明性がない」
The New York Timesが「政府高官」によればと報道した候補のひとつであるPfizerは政府からの資金提供は欲しくないと言っている、「第三者が関係しない方がより速く動ける」。
New York Timesの記事には選んだ理由は記載されていない。米国NIHのワクチン開発推進のための委員会Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines (ACTIV)のメンバーもWarp Speedから意見を求められていない。「まるで二つの平行宇宙のようだ」
(長い記事。アメリカはしっかりしてくれないと困るんだけど)
-COVID-19パンデミックの最中Guelphで薬物過剰使用による死亡増加
Overdose deaths rise in Guelph amid COVID-19 pandemic
Jun 04, 2020
https://www.cbc.ca/news/canada/kitchener-waterloo/guelph-overdose-deaths-covid-19-1.5598309
通常の薬物供給の撹乱がリスク要因とされる
今年の半年未満で12人死亡、昨年は7人だった。中毒事故は154で昨年は241
-なぜ地元産のものを食べることが環境にとって常にベストとは限らないのか
Why eating local isn’t always best for the environment
JONATHAN MOENS • MAY 8, 2020
https://scienceline.org/2020/05/why-eating-local-isnt-always-best-for-the-environment/
新しい解析によると、最も重要なのはそれがどこから来たか、ではなく何を食べるか、である
地元産のものを食べようという運動は、二酸化炭素排出量を減らそうとする人達にとって広く認められた信念となり、国連などの大きな団体すらそれを支持している。
しかしOxford大学のデータサイエンティストHannah Ritchieらによる最近の一連の解析ではそれは間違ったメッセージとなることもある。「多くの人が地元産の食品を食べることが最も有効な二酸化炭素排出量削減方法だと間違って考えていて、食品を生産する段階での排出を過小評価している」
彼女の解析によると平均して食品の輸送による二酸化炭素排出量は世界の食品供給全体の10%未満である。誤解の理由の一つは外国で育てられた食品が飛行機で運ばれると思っている人が多いこと。実際には飛行機輸送は全体の0.16%でしかない。彼女の解析では、これまで同様、赤肉、特に牛肉を食べることが最も温室効果ガスを多く排出する。
しかし専門家の見解に関わらず地元産を食べよう運動はますます強くなっている
-SMC UK
公共輸送機関でのフェイスマスク義務化への専門家の反応
expert reaction to mandatory face masks on public transport
JUNE 4, 2020
https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-mandatory-face-masks-on-public-transport/
6月15日からイングランドの全ての公共輸送機関で布のフェイスマスクが要求されると発表された
UCL行動科学と健康学部健康心理学教授Robert West教授
Leeds大学分子ウイルス学教授Nicola Stonehouse教授
Warwick大学工学部Leandro Pecchia博士
UCL疫学と公衆衛生学部Antonio Lazzarino博士
Oxford大学プライマリーケア健康サービス教授Trish Greenhalgh FMedSci
香港中文大学名誉教授で香港政府のSARS調査団共同座長Sian Griffiths教授
Reading大学細胞微生物准教授Simon Clarke博士
(賛否両論。マスクを巡る議論は続く。なぜそんなに熱くなるのか不思議なほど。)
-SMC NZ
ヒドロキシクロロキン研究取り下げ-専門家の反応
Hydroxychloroquine research retracted – Expert Reaction
Published: 05 June 2020
英国とニュージーランドから
(コメント略、当然注目される)
-Natureニュース
「全く新しい宇宙を切り開いた」:革新的顕微鏡技術が初めて個々の原子を見せる
‘It opens up a whole new universe’:Revolutionary microscopy technique sees individual atoms for first time
03 JUNE 2020 Ewen Callaway
https://www.nature.com/articles/d41586-020-01658-1
クライオ電顕は重大な障害を取り除きタンパク質の働きをこれまでになく詳細に追跡することができる
写真:アポフェリチンのCryo-EMマップ
先月末に二つのラボから報告されたブレイクスルーはクライオ電顕のタンパク質三次元構造解析の主力ツールとしての地位を確立した