2021-05-27

[USDA]遺伝子組換えを用いて開発したトウモロコシの規制解除拡大

Extension of Deregulation to Corn Developed Using Genetic Engineering

May 26, 2021

https://www.aphis.usda.gov/aphis/newsroom/stakeholder-info/stakeholder-messages/biotechnology-news/dereg-corn

USDAのAPHISはPioneer Hi-Bred International社の遺伝子組換えトウモロコシ品種DP56113に規制解除を拡大する。APHISはPioneer社の別の品種DP-32138-1トウモロコシを先に規制解除していてそれと同じ特徴をもつ。

 

[COT]2021年5月4日の会合の議題とペーパー

Agenda and papers for the meeting of the Committee at 10.00am on Tuesday 4th May 2021

Last updated: 24 May 2021

https://cot.food.gov.uk/COTMeeting4thMay2021

・妊娠前、妊娠中、授乳中のビタミンD過剰摂取の影響-最初の声明案

・電子ニコチン(および非ニコチン)配送システム由来の毒性学的リスクの可能性に関する声明への補遺

・経口ニコチンパウチの使用によるニコチンとその他成分の生物学的利用能データの要約

・生涯未満の暴露あるいは生涯にわたって異なる暴露に由来するリスクを評価するためのCOTの基本原則案

・母親の健康への影響についての将来のペーパーで優先すべき食事成分や生体異物についてのディスカッションペーパー

https://cot.food.gov.uk/sites/default/files/2021-05/TOX-2021-24%20Maternal%20health%20and%20exposure%20Part%202.pdf

鉛、カドミウム、ヒ素、水銀、ヘテロ環状アミン(PhIP、MeIQX、PANH)、ビスフェノールA、アクリルアミド、ダイオキシン&ダイオキシン様PCB、非ダイオキシン様PCB、ヘキサシクロクロロヘキサン、有機塩素、エンドスルファン、油分の多い魚のメチル水銀とダイオキシン、セレンについて毒性の概要とHBGVと暴露量について

・アルコールと母親の食事:2016年医務主任報告書

・妊娠および授乳中のショウガと生姜サプリメントの影響

https://cot.food.gov.uk/sites/default/files/2021-05/TOX-2021-26%20Safety%20of%20Ginger%20Use%20in%20Pregnancy.pdf

(一部抜粋)

ショウガについての文献は術後や化学療法、つわりへの効果が多く、妊婦の安全性について議論したものはほとんどない。健康に基づくガイダンス値はない。

ショウガの成分は主に二つのクラスからなり、一つは香りの原因となるエッセンシャルオイルと、辛味の原因であるジンゲロールとショーガオールである。これまで100以上の化合物が同定されていて多くはセスキテルペノイドである

ショウガはFDAによりGRASに分類されているが、妊娠中や授乳中の安全性について評価するための試験は行われていない。最近フィンランド食品局がショウガ濃縮物あるいは抽出物を含む製品、ジンジャーティー、ショウガを含む食品サプリメントは妊娠や授乳中の女性、乳幼児、学童、高齢者、免疫系の弱っている人は使用しないようにと助言した。濃縮物には有害物質が含まれていて安全な摂取量はわからないと注記している。2008年にはデンマークの企業Ferrosan A/Sが乾燥ショウガ粉末6gを含む製品GraviFriskを、妊娠女性が使用する場合の安全性データがないことを巡る懸念から市場から取り下げている。

ショウガは胸焼け、過敏性腸症候群や十二指腸潰瘍などの消化管の症状の悪化、低血圧の原因となることが報告され、理論的には不整脈の可能性がある。6gという大量は胃に刺激性で胃の保護粘膜を失う。

6-gingerolは強力な変異原性がある

妊娠中のショウガの使用に関して入手できる安全性と毒性データがないためリスクを完全にキャラクタライズするのは困難である。入手できる研究からは、ショウガは雌の動物のホルモン濃度に影響する可能性があるので生殖や妊娠に干渉し、早期胚損失につながる可能性はある。さらに子宮内暴露あるいは授乳中の暴露は雄の動物のホルモン濃度と精子形成に影響する可能性が示唆される。これらは限られた研究から示唆されるもので完全に解明されてはいない。ヒト疫学研究では同様の影響は報告されておらず、ヒトでのショウガへの子宮内暴露の影響はわかっていない。

(ショウガ6gとか、普通に食べてそうなのだけれど)

・助言委員会の作業についての更新

 

[CFIA]食品安全性警告―Our Father's Farmブランドのアプリコットカーネル製品はシアン化物中毒をおこす可能性がある

Food Safety Warning - Consumption of Our Father's Farm brand apricot kernel products may cause cyanide poisoning

May 26, 2021

https://inspection.canada.ca/food-recall-warnings-and-allergy-alerts/2021-05-26/eng/1622070185148/1622070191067

インターネットで全国に販売されたビターアプリコットカーネル

製品リストと写真

(「極めて苦いextremely bitter」というのもあるのでアミグダリンを意図して売っているのだろう。

Our Father's Farm

https://www.ourfathersfarm.com/

会社のHPによると苦ければ苦いほど健康に良いとして独自に高濃度品種を育てているとのこと。悪質なのは政府からの圧力でヒトの食用ではなくペット用として売っていると言っている。

ちなみに有機認証されていてEco-Cert Canadaと CCOF (California Certified Organic Farmers)が認証。

(合成化合物はどんなに安全性が高くても拒否するが、天然毒物なら死亡する量でもOKなのが有機認証、という例)

陰謀論者として有名な、がんをアミグダリンで治せると主張するG.Edward Griffinの動画がある)

 

[RIVM]社会的福祉は改善している、コロナウイルス対策順守は重要なまま

Social well-being is improving, compliance with coronavirus measures remains important

05/26/2021

https://www.rivm.nl/en/news/social-well-being-is-improving-compliance-with-coronavirus-measures-remains-important

RIVMとGGDsによる行動研究から、最近のコロナウイルス対策の緩和により人々の社会的接触と福祉は改善している。ほとんどのコロナウイルス対策へのコンプライアンスは今のところ安定(検査を受ける、人混みを避ける)あるいは極めてゆっくり低下(自宅から働く、他人と1.5m離れるなど)。

予防接種を受ける意思は安定して高いが、ワクチンの種類によって異なる

対策は支持するが政府の一連の方針には批判的である。1/5は対策が多すぎる、1/3は対策が十分でないと感じている。

半分以上は何故ある対策がある状況に適用され別の状況では適用されないのかを理解していない。従って明確な説明は必要。対策の緩和は、予防接種がまだの場合でも、人々がより集まり距離をとらなくなることにつながっていた。

 

[RIVM]オランダ成人の2007-2010と 2012-2016の間の食事の変化。二つの横断国民食品摂取調査の結果

Dietary Changes among Adults in The Netherlands in the Period 2007-2010 and 2012-2016. Results from Two Cross-Sectional National Food Consumption Surveys

Ceciel S Dinnissen  et al., Nutrients. 2021 Apr 30;13(5):1520.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33946365/

この間赤肉あるいは加工肉、乳製品、ナトリウム、アルコール、穀物に対する全粒穀物の比が低下し食物繊維と不飽和脂肪酸は増加した。教育レベルの高い集団で好ましい変化が観察された。

 

[NASEM]科学を解読する:最先端からの教訓

Decoding Science: Lessons from the Leading Edge

Feature Story | May 12, 2021

https://www.nationalacademies.org/news/2021/05/lessons-from-the-leading-edge

COVID-19が拡大し科学者は迅速に行動した。初期の研究は他の科学の新しい分野にとっての教訓になる:注意深く近づき変化を受け入れる

2020年の春は私たちの多くにとって一生忘れられないものになるだろう。ほんの数週間の間に、恐ろしいウイルスがひろがり日常が大災害に飲み込まれた。それは混乱と、恐怖と、悼みと-そして不確実で無限の疑問の時期だった。

それはどんな種類のウイルス?水、食品、空気で感染する?どうして病気になる?どこから来た?今どこにいる?どうやったら止められる?

世界中の科学者がこの新興の脅威に向き合った。そして恐ろしく早く結果を出し始めた。

重要ではあったが、2020年の初期に共有された研究には重大な欠陥があった。もし十分時間があったらしなかったであろうミスがあっただろうし、根本的な問題もあった。ほぼ全ての初期の研究にはコントロール下での再現性が欠けていた。

・最初に、早く…欠陥がある?

再現は科学にとって必須である。しかし時間がかかる。そして最初のあるいは早い研究が再現できない理由はたくさんある。一つは知識不足で、科学者は何を研究しているのかをよく知らないうちは適切な質問ができない。あるいは器具がないことで、しばしば新しい科学には新しい装置が必要になる。もちろん既存の知識もたくさんあるが、新しい状況でどの知識をどうあてはめるのかを知るのは難しい。知らないことを知るのは難しいのだ。

現実世界のパンデミックがリアルタイムで進行しているときに、実験室で行っていたのと同じ方法を使って研究するのは不可能だ。科学者は動きながら継続的に適応を続けなければならなかった

・ギャップを認識する

数週間が数ヶ月になると、COVID-19についてわかったことも増えてきた。そして世界は新たな疑問に注目が移った

・不完全なデータで意思決定する

異なる種類の情報の強みと弱点を理解することが役に立つ。2020年6月に発表した意思決定者向けガイドではパンデミックに関する意思決定に情報提供する可能性のある7種類のデータについて、そのバイアスと不確実性を含めて説明した。

 

[Codex]汚染物質部会がチョコレート中のカドミウムに関する新しい最大基準値を提案

Contaminants committee proposes new maximum levels for cadmium in chocolate

13/05/2021

http://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/news-and-events/news-details/en/c/1399078/

 第14回コーデックス食品汚染物質部会(CCCF)が開催され、チョコレート中のカドミウムに関する新しい最大基準値(MLs)について総会に採択を諮ることとなった。CCCFが提案したMLsは、総乾燥カカオ固形分が30%未満のチョコレートについて0.3 mg/kg(Step 8)、総乾燥カカオ固形分が30%以上50%未満のチョコレートについて0.7 mg/kg(Step 5/8)である。ただし、全員が賛同したわけではなく、EUは、域内の子供における暴露量が、欧州食品安全機関(EFSA)が設定した耐容週間摂取量を超過しているとして、この決定について留保を宣言した。

 その他、食品中の鉛汚染の防止及び低減に関する実施規範の改定案(Step 5/8)、2種の魚種(オレンジラフィー、キングクリップ)中のメチル水銀のML策定の新規作業提案についての採択を次の総会に諮ることなどを合意した。

*CCCF14

http://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/meetings/detail/en/?meeting=CCCF&session=14

会期:2021年5月3-7日、レポート採択5月13日

 

[EFSA]二酸化チタン:E171は食品添加物として使用することは安全でないとみなす

Titanium dioxide: E171 no longer considered safe when used as a food additive

6 May 2021

https://www.efsa.europa.eu/en/news/titanium-dioxide-e171-no-longer-considered-safe-when-used-food-additive

EFSAは、2020年3月の欧州委員会(EC)からの要請により、食品添加物である二酸化チタン(E 171)の安全性評価を更新した。

入手可能な科学試験及びデータを全て考慮すると、二酸化チタンはもはや食品添加物として安全とは考えられないと結論した。この結論に達した重要な要素は、遺伝毒性の懸念が排除出来ないという結論に至ったことである。経口で摂取すると、吸収量は少ないが体内に蓄積する可能性がある。

EFSAは、食品添加物の評価に2018年のナノ技術に関するガイダンスを始めて適用した。二酸化チタンE171は、ナノ範囲(例:100 nm未満)の粒子がほぼ50%を占める。

【背景】

二酸化チタン(E171)はRegulation (EC) No 1333/2008のAnnex IIにおいて、欧州連合で食品添加物として認可されている。

食品添加物 E171の安全性は、2009年1月20日以前に欧州連合で認可された食品添加物を再評価するプログラムの一環として、Regulation (EU) No 257/2010の枠組みの中で2016年にANSパネルにより再評価された。その2016年の意見書でANSパネルは、生殖器系への影響の可能性に関する情報不足を埋めるための新たな研究を行い、それによって許容一日摂取量(ADI)の設定を可能にすることを助言した。食品添加物として使用される物質(E171)の特性にかかわる不確実性、特にE171として使用される二酸化チタンの粒子サイズや粒度分布に関して焦点が当てられた。

2019年、EFSAはフランス食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES)により行われた食品添加物二酸化チタン(E171)への暴露に関連するリスクのレビューについて声明を発表した。この声明の中で、EFSAはANSESの意見はEFSAが以前に確認した不確実性とデータの不足を繰り返しており、二酸化チタンの安全性に関するこれまでの結論を無効にするような知見は示されていないと強調した。

同年(2019年)オランダ食品・消費者製品安全局(NVWA)もまた、食品添加物の二酸化チタンの健康影響に関する意見を発表し、生殖毒性学的影響の可能性に加え、免疫毒性学的な影響を調査する重要性を強調した。

 

-食品添加物としての二酸化チタン(E171)の安全性評価に関する科学的意見

Scientific opinion on the safety assessment of titanium dioxide as a food additive (E171)

EFSA Journal 2021;19(5):6585 6 May 2021

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/6585

この意見は、パネルにより信頼できるとみなされた新たな関連のある科学的エビデンスに基づく食品添加物の二酸化チタン(E171)の安全性評価の更新である。これにはTiO2ナノ粒子(NPs)で得られたデータと拡大1世代生殖毒性(EOGRT)研究からのデータを含む。E171の構成粒子数の50%以下が最小の外形寸法100 nm未満である。加えて、パネルは30 nm未満の構成粒子数は1%未満であると注記した。パネルはそれゆえ、30 nm未満のTiO2 ナノ粒子の研究は、E171の安全性評価での妥当性は限定的であると考えた。パネルは胃腸からのTiO2粒子吸収は少ないが、体内に蓄積する可能性があると結論した。一般及び臓器毒性に関する研究は、E171として最大1日あたり1,000 mg/kg体重、あるいはTiO2 ナノ粒子( 30 nm以上)として最大1日あたり100 mg/kg体重では有害影響を示さなかった。生殖毒性及び発達毒性に関しては、EOGRT試験の最大量である1日あたり1,000 mg E 171/kg体重で観察されなかった。しかし、E171では免疫毒性と炎症が、TiO2 ナノ粒子では神経毒性の可能性がみられたことと、E 171が異常陰窩巣誘発の可能性があることを合わせると、有害影響を示す可能性がある。遺伝毒性に関して、パネルは、TiO2粒子はDNA鎖切断と染色体損傷を誘導する可能性があるが、遺伝子突然変異誘発の可能性はないと結論付けた。TiO2粒子の物理化学特性とin vitroあるいはin vivo遺伝毒性試験の結果の間で、明確な関連は観察されなかった。それゆえ、E171に存在する可能性があるTiO2粒子の遺伝毒性の懸念は、除外できない。遺伝毒性のいくつかの作用メカニズムが並行しておこっている可能性があり、TiO2粒子により誘発される異なる分子メカニズムの相対的寄与はわからない。作用機序に閾値が想定できるかどうかは不確実である。加えて、遺伝毒性に関するTiO2粒子サイズのカットオフ値は同定できない。TiO2 ナノ粒子の発がん性の影響を調査するための適切に設計された研究はなかった。すべての入手できるエビデンスに基づき、遺伝毒性の懸念が排除できず、不確実性が多いことを考慮し、パネルはE171は食品添加物として使用する場合、安全とみなすことができないと結論付けた。

 

(遺伝毒性陰性のたくさんの結果を妥当性が低いとする一方で一部の陽性結果を妥当性が高いとする。ACFも再現できてないけど一度でも報告された(発がん物質処理ありの実験で)ものは「可能性は否定できない」で押し通す。フランスの意向を通すための結論ありきの評価に見える。食品添加物は食品と違ってハイレベルの安全性が求められる、食品には遺伝毒性があるものもあるが食品添加物は疑いがあればダメだとBfRが言っているけれど。)

 

[FSAI]EFSAが二酸化チタン(E171)を食品添加物として使用することはもはや安全でないとみなすという意見を公表

EFSA Opinion: “Titanium dioxide (E171) no longer considered safe when used as a food additive

7/5/2021

https://www.fsai.ie/faq/efsa_opinion_titanium_dioxide.html

二酸化チタン(E171)とは何か?

二酸化チタン(E171)は、食品の色を白くしたり不透明にしたりするものとして食品に使用される認可された食品添加物である。

食品に入っているとどのようにしてわかるか?

食品や飲料に使用されるすべての添加物は、特定の食品の添加物と関連する機能分類(食品への作用、例:保存料や着色剤)とともに製品の成分表示に名称あるいはE-numberで掲載されることが法律で定められている。それゆえ、二酸化チタンが食品中に存在すれば、食品成分表示に「着色料:二酸化チタン」あるいは「着色料:E171」と表示されているだろう。

どのような食品に使用されるのか?

二酸化チタン(E171)は幅広く使用される食品添加物で、50年にわたり安全と考えられてきた。48の異なる食品分類で使用が許可されている。EFSAによると、E171の食事暴露に寄与する主な食品分類は、ファインベーカリー製品、スープ、だし汁及びソース(乳幼児及び青年);スープ、だし汁、ソース、サラダ及び風味ベースのサンドイッチスプレッド(子供、成人及び高齢者)である。加工ナッツもまた、成人及び高齢者で主に要因となる食品分類である。最大量の数値が法令で設定されていないので、食品事業者は適正製造規範(GMP)に沿って、意図されている目的を果たすために必要な量のみを使用しなくてはならない。これを「適量(quantum satis)」の原則と呼ぶ。

食品の添加物の使用に関する安全規則は何か?

添加物は特定の技術的機能/効果(例、着色、甘味、保存など)のために食品に意図的に加えられるものであるため、使用上の安全性が確保され、EC規則1333/2008で設定されている食品添加物のEU認可リストに掲載されていなければならない。EU認可リストに掲載されるには、EFSAにより行われる徹底した安全性リスク評価を経なければならない。EFSAのリスク評価では、提案されている様々な食品分類における特定の食品添加物の使用量も考慮される。EFSAは、食品添加物の安全性評価の一環として、可能な限り各物質に1日許容摂取量(ADI)の設定を目指している。ADIは、人が生涯その物質を毎日摂取し続けたとしても、健康上のリスクがないと推定される物質量である。ADIは通常1日当たり体重1kg当たりの物質量(mg/kg 体重/日)で表される。

EFSAは二酸化チタン(E171)についてどう述べているか?

2021年5月6日に公表したEFSAの意見書において、EFSAは入手可能な総合的なエビデンスに基づき、二酸化チタン(E171)を食品添加物として使用することは、もはや安全とはみなされないと結論付けた。EFSAは11,000以上の科学文献、EFSAが助言し業界が委託した特殊な毒性研究の結果を調べた。一般毒性の結果のエビデンスは決定的ではなかったが、最新のデータ及び強化された方法に基づき、EFSAの科学者は遺伝毒性(細胞の遺伝物質であるDNAへの損傷)の懸念を排除できず、結果として、食品添加物として二酸化チタン(E171)の安全な1日摂取量を設定できなかった。

今後について

欧州委員会は消費者の健康を保護するために必要とされる対策を考慮するため、2021年5月18日に欧州連合加盟国の食品添加物専門家特別会議を開催する。EFSAは二酸化チタン(E171)の安全な1日摂取量の最大値を設定することができていないので、欧州委員会では食品添加物規則の添加物リストから排除されることが提案され、欧州連合での使用が実質的に禁止されると思われる。この詳細は2021年5月18日の加盟国と委員会の会議で合意される予定である。

なぜ二酸化チタン(E171)が即座に禁止されないのか?

EFSAは即時禁止の理由となる、二酸化チタン(E171)の摂取に関連する急性影響を確認していない。EFSAは二酸化チタン(E171)は遺伝毒性があると結論付けていないが、特に遺伝毒性に関する不確実性により、この食品添加物の1日摂取許容量(ADI)を設定することができていない。そのためEFSAは製品の安全性が確認できないと結論付けた。

二酸化チタン(E171)を含む食品を食べて安全なのか?

二酸化チタン(E171)の安全性に関する科学データは不確実である。しかし、EFSAは、二酸化チタン(E171)は食品添加物として食品に使用されるべきでないという十分な懸念があると結論付けた。二酸化チタン(E171)は欧州連合全体にわたり食品に使用されているので、消費者の健康を保護する次の対策を考慮するためには欧州全体でのアプローチが必要である。FSAIはこれらの対策が話し合われる5月18日の欧州委員会との会議にほかの加盟国と参加する予定である。個人的な懸念を持つ人もいるだろうが、二酸化チタンが食品中に存在すれば、「着色料:二酸化チタン」あるいは「着色料:E171」と食品ラベルの成分表示があるので、二酸化チタンを含む食品を確認することができる。これにより、消費者は情報を与えられたうえで購入の決定をすることができるだろう。

 

[ATSDR]パーフルオロアルキル化合物の毒性学的プロファイル

Toxicological Profile for Perfluoroalkyls

2021/05/05

https://wwwn.cdc.gov/TSP/ToxProfiles/ToxProfiles.aspx?id=1117&tid=237

ATSDR毒性学的プロファイルは、毒性物質について、その時点での毒性と健康への有害影響情報を簡潔に述べたものである。パーフルオロ化合物の毒性学的プロファイルを公表した。

(以下、一部抜粋)

ヒトへの影響

 入手可能な疫学研究が、パーフルオロアルキル化合物への暴露といくつかの健康アウトカムとの間の関連性を示唆しているが、因果関係は確立されていない。主な影響は次の通り。

妊娠高血圧症/妊娠高血圧腎症(PFOA、PFOS)

血清中肝酵素、特にアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の上昇とビリルビン濃度の低下(PFOA、PFOS、PFHxS)

血清中の脂肪、特に総コレステロールとLDLコレステロールの上昇(PFOA、PFOS、PFNA、PFDA)

ワクチンへの抗体反応の低下(PFOA、PFOS、PFHxS、PFDA)

出生児体重の小さな減少(PFOA又はPFOSの血中濃度が1 ng/mL上昇するにつき出生児体重の20 g未満又は7オンスの減少)(PFOA、PFOS)

 また発がん性についてはIARCが「ヒトに対して発がん性がある可能性がある(Group 2B)としている。多量に暴露されたヒトにおいて精巣がんと腎臓がんの増加が観察されているが、一貫性がない。

実験動物への影響

動物おける経口暴露により観察された健康影響をもとに、下記の4つの化合物について亜慢性(intermediate)の経口最小リスクレベル(Minimal Risk Level: MRL)が導出された。急性及び慢性MRLは導出されていない。MRLは、特定の暴露経路と暴露期間によって、ヒトに対して感知できる程度の非発がん有害健康影響のリスクがないであろう、ハザード物質への一日暴露量の推定値である。ATSDRは、懸念される化学物質の同定に役立つスクリーニングツールとしてMRLを設定している。

PFOA:3 ng/kg体重/日(クリティカルエフェクトは、マウスにおける骨格への影響)

PFOS:2 ng/kg体重/日(ラットにおける目の開きの遅れと子の体重減少)

PFHxS:20 ng/kg体重/日(ラットにおける甲状腺濾胞上皮肥大/過形成)

PFNA:3 ng/kg体重/日(マウスにおける体重減少と発達遅延)

*略語:パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、パーフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)、パーフルオロノナン酸(PFNA)、パーフルオロデカン酸(PFDA)

*ToxFAQs™ for Perfluoroalkyls

https://wwwn.cdc.gov/TSP/ToxFAQs/ToxFAQsDetails.aspx?faqid=1116&toxid=237

 

論文

-世界の心血管団体が「タバコ終盤」達成のための合同意見を発表

Global cardiovascular organizations release joint opinion on achieving the 'tobacco endgame'

26-MAY-2021

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-05/acoc-gco052521.php

喫煙は世界の疾病負担の主要寄与因子であり続け、世界の30才以上の人の死亡のうち12%の原因であると推定されている。American Heart Association, American College of Cardiology, European Society of Cardiology および World Heart Federationの4団体が本日世界規模でのタバコ対策強化を求める合同意見を公表した

 

-世界研究が各都市には特有のマイクロバイオーム細菌指紋があることを発見

Global study finds each city has unique microbiome fingerprint of bacteria

26-MAY-2021

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-05/uoms-gsf052521.php

Cellに発表された世界60都市の公共交通網と病院から集めた検体を解析した国際プロジェクトの結果。研究はCOVID-19パンデミック前に行われたため、現在はパンデミックの影響を調べている。

 

Science & Natureニュース

-反ワクチン活動家は政府の副反応データベースを使って人々を怖がらせている

Antivaccine activists use a government database on side effects to scare the public

By Meredith WadmanMay. 26, 2021

https://www.sciencemag.org/news/2021/05/antivaccine-activists-use-government-database-side-effects-scare-public

5月5日、Fox NewsのホストTucker Carlsonは彼の番組Tucker Carlson Tonightで、COVID-19ワクチンの安全性に疑問を投げかける10分の放送を行った。彼はCOVID-19ワクチンを打った後で約4000人が死亡したと言い、そのデータは米国政府のワクチン有害事象報告システムVAERSのものだという。

VAERSに報告されている死亡はワクチンが原因だというものではない。しかし放送後、反ワクチン活動家がVAERSに集まって人々を怖がらせるデータを探り始めた。

こうした動きは真のワクチン副作用を検出するためにVAERSを使っている研究者にとって悩ましい問題である。VAERSの強みである公開性が、政治化されたCOVID-19時代には弱点にもなる。米国で認可されたワクチンを接種したヒトは誰でもVAERSに有害事象を報告できる。そのことがVAERSにたくさんの報告があがることを保証する。2020年12月以降COVID-19ワクチンだけで228000の報告があり、全てのワクチンについて昨年報告された総数の4倍以上になっている。虚偽報告が簡単であることを心配する人もいる。虚偽ではなくてもVAERSは間違って解釈される。

間違った解釈に対抗するためにVAERSのウェブサイトには目立つように注意書きがある。それでもワクチンデマを追跡している専門家は懸念する。VAERSはワクチンの安全性確保には重要だが、CDCと公衆衛生コミュニティはVAERSデータの誤用に対抗するためにもっと積極的に投資すべきである。

(これだけ注目されて精査されてて大した問題がないのだから本当に素晴らしいワクチン。日本の制度は名前が悪いと思うんだけど。有害事象adverse event報告なのに副作用・副反応・不具合報告という名前で、投与と関係あると思うだろう)

 

-英国はゲノム編集作物と動物の規則を緩和する方向に

U.K. set to loosen rules for gene-edited crops and animals

By Erik StokstadMay. 26, 2021

https://www.sciencemag.org/news/2021/05/uk-set-loosen-rules-gene-edited-crops-and-animals

2019年にBoris Johnsonが英国首相になったとき、彼は「英国の並外れた生命科学部門を反GM規則から解放する」と誓った。英国は1月にEUとの離婚が最終化されるまで、厳密な欧州バイテク規制に従わなければならなかった。来月、政府はJohnson首相の約束を概ね果たすと予想されている。

6月17日に発表されるだろう決定は、CRISPRのような精密技術で編集された植物や動物に適用される。それは英国を米国のようないくつかの国と同様にし、英国のバイオテクノロジー専門家は研究速度を上げ投資を刺激するだろうという。英国のEU離脱は少なくとも一つの成果をもたらした。

複雑な性質については外来遺伝子の導入が必要だがGMOへの規制もいつか緩和される可能性はある。

EUですらゲノム編集へのアプローチを再考しているが、反GMO感情の強い欧州議会では簡単ではないだろう。

 

-不和を生じさせる「実験室からのリーク」に関する議論が研究者からの緊急警告を引き起こす

Divisive COVID ‘lab leak’ debate prompts dire warnings from researchers

Amy Maxmen  27 MAY 2021

https://www.nature.com/articles/d41586-021-01383-3

COVIDが中国の研究所から漏れたという主張はパンデミックを終わらせるために各国が協力することを困難にし、オンライン虐めを過熱させると一部の科学者が言う

米国で共和党リーダーがパンデミックをおこしたコロナウイルスが中国の研究所からリークした物だと主張し、一部の科学者が「リーク説」を独立にしっかり調べなければならないと主張して熱を帯びている。しかし多くの研究者にとってはこうした要求の高まりは不安要因である。

(リーク説に特に根拠は無いがWHOの報告が逆にちゃんと調べていないという不満につながった側面もある)

 

その他

-CellAgri 創設者Ahmed Khan とのQ&A:細胞から作った肉はハラルになれる?

Q&A w/ CellAgri Founder Ahmed Khan: Can Cell-Based Meat Be Halal?

May 12, 2021

https://www.greenqueen.com.hk/qa-w-cellagri-founder-ahmed-khan-can-cell-based-meat-can-be-halal/

細胞培養で作った肉、乳製品、シーフードについての著書がありコンサルタントのAhmed Khanにインタビューした

ハラル肉とは何?

単純に言うと動物の屠殺に関わる伝統的宗教的やり方である。もし細胞培養肉をイスラム教徒に売りたいなら、ハラルについて検討する必要がある。

培養肉はハラル?屠殺しないから?

ハラルになる可能性はあると信じる。一つは動物を殺さない。もう一つは培養肉に使う幹細胞をハラルに従って屠殺した動物からとる必要があるだろう。

細胞培養分野の人たちは培養肉が屠殺を伴わないからそのままハラルやコーシャーであると思いたいかもしれないが消費者やハラル認証団体の多くはそうは思わないだろう。ハラルは屠殺なしの肉とイコールではない

イスラム教団体でこのことを判断したところはあるか?

私の知る限りまだない

培養豚はどうか?

豚は問題外である

培養肉の会社はハラル認証を求めるだろうか?

イスラム教徒に売ろうと考えるなら。

 

-視点:疫学の危機?科学者と健康ジャーナリストは「懐疑的科学」を受け入れる必要がある。ここに誇大宣伝されている恐怖を検出するためのチェックリストを示す。

Viewpoint: Epidemiology in crisis? Scientists and health journalists need to embrace ‘skeptical science.’ Here’s a checklist for detecting over-hyped scares

Geoffrey Kabat | May 25, 2021

https://geneticliteracyproject.org/2021/05/25/viewpoint-epidemiology-in-crisis-scientists-and-health-journalists-need-to-embrace-skeptical-science-heres-a-checklist-for-detecting-over-hyped-scares1/

SARS-CoV-2パンデミックアウトブレイク以降、疫学が人々の意識において並外れた役割を果たすとみなされるようになった。科学者がウイルスの伝染や健康影響を解明しようと苦闘する中、ニュースに広く現れた。それは一世紀前の疫学の「英雄」時代を思い出させる。疫学が有名になったのは1850年代の「疫学の父」John Snowが、コレラの原因が「瘴気」ではなく汚染された水であることを示してからである。その後喫煙が肺がんやその他の病気の原因であることを示し;天然痘を根絶し;心疾患のリスク要因を同定し;子宮頸がんにおけるHPVの役割を明らかにするなど次々と勝利をおさめてきた。こうした画期的成果が疫学を世界的次元での公衆衛生危機対策として使うことを可能にした。

かみ合わない影響力と科学の政治化?

ここ数十年、疫学はより専門化し、研究者らは健康の社会的決定要因、「人生疫学」、特定の遺伝的変異の特定疾患への寄与、「遺伝子と環境の相互作用」などに集中している。しかしながら近年最も注目されているのは「リスク要因疫学」とよばれるもので、典型的には食事の成分や微量の化学物質などの特定の要因を取り出して、特定の病気との関連を検討する。この手の研究の結果がメディアで報道されると、我々は「ファクターXが疾患Yのリスク増加に関連する」というメッセージを受け取ることになる。疫学の重要性を確立した画期的発見とは違って、この手の研究はメディアを介して直接一般人にまるでそれが直接健康に

関係するかのように語る。そして毎日のようにニュースになる。

例えば最近のワシントン大学とハーバード大学の研究者らによる研究では、週に一回以下しか砂糖入り飲料を飲まない人と比べて毎日2回以上飲む人は、早期発生大腸がんのリスクが二倍になることを発見した。この結果は興味深い可能性があるが、多くの理由で新しい現象の重要な原因を発見したとは言い難い。人間はこのようなニュースを読めば砂糖入り飲料が健康に悪いと思うようにできている。この種の結果を広報したいと考えるような人々(著者、編集者、ジャーナリスト)はこういう物語が感情的反応を引き起こすことを知っている。こういう報道の背景にあるロジックは「さあ心配しろ、詳しいことはあとで」である。この話を報道したたくさんのニュースの一つは以下のようなものである

「砂糖入り飲料を飲むとあなたの大腸がんリスクが増える、研究が発見」

恐ろしげである。しかし疫学者はこの種の結果はその後のさらなる研究のきっかけでしかないことをよく知っている。しかしニュースの見出しはそのようなニュアンスを伝えない。

このような研究結果に出くわしたときに尋ねるべき重要な質問のリストを以下に示す。

・知見/メインの結果は何か?

・その結果の強さはどのくらいか?研究内の一貫性は?

・その結果は研究対象集団全体に関連するか、あるいは亜集団のみか?

・研究者が検討した要因はどのくらいの数か(多重比較やデータあさりではないか)

・その研究のデータはどのくらい良いか?研究した要因をどれだけ良く測定したか?

・その結果は交絡のせいではないか?

・用量反応関係の根拠はあるか?

・相対リスクと絶対リスクの両方を報告しているか?

・その結果は他の研究の結果とどのくらい調和するか?

・その結果は既にわかっていることとどう適合するか?

・著者はデータの限界を注記しているか?

・著者等はその結果を適切な文脈の中でみているか?

・関連は因果関係ではないことを忘れずに

・著者等はしばしば生物学的メカニズムを説明するが、大体どんなときでも生物学的メカニズムを発見できることを忘れずに

・その結果は注目すべきか?

砂糖入り飲料の論文についてはスペースの都合で全ての主張を検討することはできない。しかしいくつかの重要ポイントを見てみる。

最初に、表に示したように、炭酸飲料摂取レベルごとの症例数が極めて少ない。特に二つの高摂取量群では14人と16人だけである。従って推定は不確実である。

二つ目は、相対リスク2倍というのは印象的かもしれないが、実際にはあまり大きな増加ではない

三つ目、そしてより重要なことは、早期発症大腸がんのうちどのくらいが砂糖入り飲料を多く飲むことによると考えられるのかを検討すると、最も少ない群では10万人あたり8.4人、最も多い群で11.6人なので10万人あたり3人が余分である。これが絶対リスクである

最後に、砂糖入り飲料と一般的な大腸がん発症については多くの研究があり、その結果は概ねリスクに関係ないというものである。

このような弱い根拠にも関わらず、著者等は砂糖入り飲料の摂取量が多いことが若年相の大腸がんの急速な増加に寄与している可能性があるという疫学的根拠を加えたと結論している。

真に重要な疫学研究はセンセーショナルなニュースの見出しで誇大宣伝する必要もなく自明になる。

もう何年も、多数の高名な疫学者がリスク要因疫学を「人々の複雑な人生と時間の中からたった一つの要因を抜き出してたった一つの健康アウトカムと関連付けるやりかた」と批判してきた。しかしそうした批判は届いていない。

メディアの生態系で常に出回る結果について、もっと懐疑的態度をとろう。