[HK]食品中のヘキサブロモシクロドデカン(HBCDD)について
Hexabromocyclododecanes (HBCDD) in Food
19 Nov 2021
https://www.cfs.gov.hk/english/programme/programme_rafs/programme_rafs_fc_01_45.html
ヘキサブロモシクロドデカン(HBCDD)のリスク評価報告書。
概要
ヘキサブロモシクロドデカン(HBCDD)は難燃添加剤で、主に繊維製品や、建築や梱包材に利用される発泡スチロールや押出ポリスチレンに使用されている。HBCDDは環境中に存在し続け、生物蓄積及び生物濃縮する可能性が高い(すなわち、フードチェーンに沿って濃度が高まる)。
2.HBCDDへの暴露による急性毒性は低い。実験動物では、HBCDDの慢性毒性の主な標的は肝臓、甲状腺ホルモンの恒常性、生殖、神経系及び免疫系である。HBCDDは実験動物で遺伝毒性や発がん性はない。
3.FAO/WHO合同食品添加物専門会議(JECFA)は食品中のHBCCDの安全性を評価していない。欧州食品安全機関(EFSA)はHBCCDへの経口暴露から生じる潜在的な健康上の懸念を評価するために暴露マージン(MOE)アプローチを採用した。EFSAはMOEの算出のためにヒトのHBCDDの慢性摂取量を2.35 mcg/kg bw/日と推定し、24以上のMOEは健康への懸念が低いことを示すと考えた。
4.この研究は、(i)国内のマーケットで入手できる食品中のHBCDDの量を特定する;(ii)香港の成人集団のHBCDDへの食事暴露を推定する;(iii)関連する健康リスクを評価することが目的である。
方法
5.国内で合計300の個別サンプル(100食品)が集められた。このサンプルは主に、文献でHBCDDの量が報告されていて、国内マーケットで入手できる、国内の人気に基づいて選ばれた。これらのサンプルは、15種類の食品グループ「海水魚」「淡水魚」「水産物」「甲殻類」「軟体動物」「肉と内蔵」「油脂」「飲料」「シリアルと穀物製品」「牛乳と乳製品」「卵と卵製品」「野菜と豆類」「果物」「ナッツと種子」「ハーブとスパイス」に分類された。
結果
6.食品グループ15のうち13に、分析した300サンプルのうち128サンプル(約43%)にHBCDDが含まれることがわかった。HBCDDが検出された128サンプルで、濃度は0.01 – 1.2 mcg/kgだった。
7.様々な食品グループのHBCDDの濃度に関しては、「海水魚」と「卵と卵製品」に最大平均濃度のHBCDDが含まれ、「軟体動物」と「淡水魚」が続いた。「海水魚」「卵と卵製品」「軟体動物」「淡水魚」の下限平均濃度はそれぞれ、0.16 mcg/kg、 0.16 mcg/kg、0.13 mcg/kg、0.11 mcg/kgだった。
8.国内の成人集団のHBCDDへの食事暴露に関しては、平均的な消費者のHBCDDの下限(LB)及び上限(UB)暴露推定量はそれぞれ0.00016及び 0.00091 mcg/kg bw/日で、一方、多量消費者(90パーセンタイル)では、LBとUB暴露推定量はそれぞれ、0.00041及び 0.0015 mcg/kg bw/日だった。平均及び多量消費者に相当するMOEsはそれぞれ、15000 – 2600 (LB-UB) と5700 – 1600 (LB-UB)である。これらのMOEsは健康の懸念が低いことを示す24より遙かに多い。
9.HBCDDの暴露への主な貢献者は「海水魚」(30.7%)で、「淡水魚」(21.2%)、「肉と内臓」(20.1%)、「軟体動物」(11.2%)、「牛乳と乳製品」(7.7%)と続く。他の食品グループの寄与は全部で総暴露の10%未満だった。
結論と助言
10.この研究で、集めたサンプルの約43%にあたる様々なサンプルでHBCDDが検出された。
11.この研究結果を他の場所の結果と比較すると、国内集団のHBCDDへの食事暴露は報告された暴露範囲の下限にある。算出したMOE値から、香港の成人集団のHBCDDsへの食事暴露は健康上の懸念を生じないという結論が支持された。
12.この研究におけるHBCDDへの食事暴露の知見から、健康的な食事についての基本的な食事の助言に変更の必要はない。多種多様な果物と野菜を含むバランスのとれた様々な食事を維持することを勧める。
[FDA]FDAはN-アセチル-L-システインをダイエタリーサプリメントとして使用することに関連する情報を求める
FDA Requests Information Relevant to the Use of NAC as a Dietary Supplement
November 24, 2021
アメリカ食品医薬品局(FDA)はダイエタリーサプリメントとして販売されている製品中のN-アセチル-L-システイン (NAC)の過去の使用に関する情報を求めている。
FDAは今年の初めに、ダイエタリーサプリメントとしてのNACの使用に関する立場を考え直すよう求める市民の嘆願を2件受け取った。2021年6月、アメリカ栄養評議会(CRN)はFDAに、NACを含む製品をダイエタリーサプリメントにすることはできないという見解を覆すよう求めた。2021年8月、米国自然製品協会(NPA)はFDAに、NACはダイエタリーサプリメントの定義から除外されないことを決定するか、またはその代わりに、NACを連邦食品・医薬品・化粧品法の下で合法的なダイエタリーサプリメントにするための規制作成を開始するようFDAに求めた。
本日、FDAは2件の市民の嘆願に対して、請願者及び関係者に追加情報を要求し、これらの請願から提起された複雑な質問を注意深く徹底的にレビューするために更なる時間を必要とすることを指摘する、暫定的な回答を出した。
請願への対応を支援するために、FDAは、NACがダイエタリーサプリメントや食品として販売された最も早い日付、ダイエタリーサプリメントとして販売されている製品中のNACの安全な使用、安全上のあらゆる懸念に関するデータや情報の受け取りに関心を持っている。該当する場合、FDAは、ダイエタリーサプリメントとしてNACを合法化するための規則作成が適切かどうか決めるために、公的記録に提出された情報や他の適用可能な情報を使用する。
FDAは2022年1月25日までにこの情報を提出するよう関係者に求め、その間2件の市民の嘆願の評価を継続する。FDAは分析のために提出された情報を使用して、レビューが完了したら直接両方の請願者に最終応答を提出することにしている。
[FAO]新しい国連報告書:ラテンアメリカとカリブ海地域の飢餓はたった1年で1380万人増えた
New UN report: Hunger in Latin America and the Caribbean rose by 13.8 million people in just one year
30/11/2021
食料安全保障と栄養についての地域概要2021発表
[USDA]USDAは動物の健康の文脈での抗菌剤使用と耐性について研究するためにいくつかのパートナーと協力する
USDA to Collaborate with Several Partners to Study Antimicrobial Use and Resistance in Animal Health Context
Nov 30, 2021
APHISは中西部の養豚場における抗菌剤使用と耐性を研究するために、いくつかの動物の健康と業界団体と協力する。この協力は抗菌剤使用と耐性監視のための将来の研究のモデルとなる
[FSANZ]食品基準通知
Notification Circular 181-21
30 November 2021
https://www.foodstandards.gov.au/code/changes/circulars/Pages/Notification%20Circular%20181-21.aspx
意見募集
・加工助剤としてのGM Escherichia coli由来麦芽糖産生性αアミラーゼ
-プレスリリース
Call for submissions on a new processing aid from a GM source
30/11/2021
[WHO]WHO化学物質リスク評価ネットワーク指導者コミュニティ-化学物質リスク評価の訓練のデザインのしかたについてのウェビナー
The WHO Chemical Risk Assessment Network Community of Trainers - Webinars on how to design a training in Chemical Risk Assessment
29 November 2021
[NAS]米国EPAのIRIS評価開発のためのORDスタッフハンドブックのレビュー
Review of U.S. EPA's ORD Staff Handbook for Developing IRIS Assessments
2021
https://www.nationalacademies.org/our-work/review-of-epas-iris-assessment-handbook
相当改善していると評価している
ただしまだ改善の余地がある
(用語の定義を明確にして一貫して使えとか、使った方法の文献を引用しろとかPECOをきっちり宣言せよとかいう基本的なことから)
このレビューの経緯は以下のEPAサイトから
ORD Staff Handbook for Developing IRIS Assessments (Public Comment Draft, Nov 2020)
https://cfpub.epa.gov/ncea/iris_drafts/recordisplay.cfm?deid=350086
[RIVM]プレスリリース
-新たに報告されるSARS-CoV-2感染者数は安定
Stabilisation in newly reported SARS-CoV-2 infections
11/30/2021
https://www.rivm.nl/en/news/stabilisation-in-newly-reported-SARS-CoV-2-infections
新規感染者、入院者数は安定、ICU入院患者は増加し続けている
新たに報告されるSARS-CoV-2感染者数はその前の週に比べて1%の増加
-以前の検体2つからオミクロン変異発見
Omicron variant found in two previous test samples
11/30/2021
https://www.rivm.nl/en/news/omicron-variant-found-in-two-previous-test-samples
11月19日と23日に採取した検体が重く論変異株だった
さらなる情報は12月7日に投稿する
論文
-大都市近くの鯨は毎日マイクロプラスチックを摂取する
Whales near big cities consume micro-plastics every day
28-NOV-2021
https://www.eurekalert.org/news-releases/936185
Science of The Total Environmentに発表されたオークランド大学によるHauraki湾の鯨についての研究。約1日300万個のマイクロプラスチックを食べていると推定
-哺乳瓶の乳首の蒸気殺菌は赤ちゃんと環境をマイクロ及びナノ粒子に暴露する
Steam disinfection of baby bottle nipples exposes babies and the environment to micro- and nanoplastic particles
29-NOV-2021
https://www.eurekalert.org/news-releases/936288
Nature Nanotechnology
蒸気殺菌したシリコンゴムの乳首を洗った水を光熱変換赤外分光(O-PTIR)顕微鏡で観察して600ナノメートルと小さい微小プラスチックを多数発見した
(図があって、赤ちゃんが1年間で66万個の粒子を飲み込むと書いてあって、数字が大きそうに見えるけれど乳首が無くなるわけではないので量としてはほんの僅か)
-肉を減らした食事は多くの利点がある
Reduced meat diet has many advantages
30-NOV-2021
https://www.eurekalert.org/news-releases/936326
ボン大学(ドイツ)によるScience of the Total Environmentに発表された研究。健康、動物の福祉、環境への影響で各種食事を比較。ビーガンが最もスコアが良かったが別途栄養をとる必要がある、地中海食は水の必要量が増えるのともし肉を全て魚に代えると動物福祉への影響はネガティブになる
(動物の福祉を殺された動物の数で数えるから牛一頭分が何千匹もの魚になってしまう。ミツバチの労働までネガティブ影響なのでいくらでも恣意的計算ができる)
-どこにでもある食品添加物がヒトの微生物叢と腸内環境を変える
Ubiquitous food additive alters human microbiota and intestinal environment
30-NOV-2021
https://www.eurekalert.org/news-releases/936412
Gastroenterologyに発表されたGeorgia州立大学とフランスINSERM、ペンシルベニア大学の共同研究。カルボキシメチルセルロース(CMC)を含む食事と含まない食事を健康なボランティアに2週間食べてもらってその前後の大腸内視鏡検査を行い、CMC群の一部に粘膜に侵入している腸内細菌をみつけた。
(実験の詳細が不明のプレスリリース
論文によると実験はCMC群7人CMCフリー群9人で投与は11日、1日のCMC摂取量15g。CMCを15gも余分に食べさせられた群は食後にお腹の調子が悪いと言うことが多かった。内視鏡で粘膜層に細菌が入り込んでいる像が増えていると報告されたのはCMC群の2人。なお標準的アイスクリームのレシピでは500mlのミルクを使う場合CMCはスプーン1/4とあるので2-3gくらいだろうか。1日の食物繊維の総量くらいをCMCで食べさせているのでお腹に影響がない方が不思議。完全に溶かしてない粉末与えたりするとさらによろしくない。これを食品添加物のヒト試験のひな形だと主張するのもどうかと思うがINSERMはこんなのが多い
この研究の報道
ヒト試験がよくある食品添加物が腸の微生物叢を変えることを発見
Human trial finds common food additive alters gut microbiome
By Rich Haridy November 30, 2021
https://newatlas.com/health-wellbeing/food-additive-emulsifier-cmc-gut-bacteria-inflammation/
CMCが慢性腸炎症リスクを上げるかもしれないと報道
著者は1日15gのCMCが加工食品の多い食事で摂取される量だと主張)
-ニュージーランドのCOVID-19対応の次の段階:厳しい抑制戦略がベストな選択肢だろう
The next phase in Aotearoa New Zealand’s COVID-19 response: a tight suppression strategy may be the best option
Michael G Baker et al.,
New Zealand Medical Journal EDITORIAL Vol 134 No 1546: 26 November 2021
オープンアクセス
(NZの医学分野は基本根絶対策支持で、政府の方針転換はあまり好ましくないと思っている。このエディトリアルで予防原則precautionary principleを使えと言っている)
-目立つ砂糖税は砂糖入り飲料の購入を減らす
A Salient Sugar Tax Decreases Sugary-Drink Buying
Grant E. Donnelly et al.,
Psychological Science https://doi.org/10.1177/09567976211017022
First Published October 29, 2021
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/09567976211017022?journalCode=pssa
砂糖入り飲料への課税は、それが税金が含まれることを明示した場合により購入を減らす
(同じ値段でも、税金と言われると払いたくない人が多いという話)
-2021年アメリカの幹細胞販売:認可されていない根拠のない幹細胞介入を販売する米国のビジネス
The American stem cell sell in 2021: U.S. businesses selling unlicensed and unproven stem cell interventions.
Turner L. Cell Stem Cell, 28:1891-1895, 2021
https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S1934-5909%2821%2900420-3
2021年3月に、各種病気の治療に幹細胞治療と称するものを売っている米国の事業者は1480でクリニックは2754だった。それは5年前の4倍である
最も多いのはカリフォルニア、フロリダ、テキサス(地図がある)
最もよく宣伝されているのは痛み治療。費用は最も安いのが1200ドルで最大は28000ドル、平均5118ドル、中央値は4000ドル。
SMC UK
ゲノム編集と家畜交配に関する報告書への専門家の反応
expert reaction to report on genome editing and farmed animal breeding
DECEMBER 1, 2021
Nuffield生命倫理評議会が家畜の交配にゲノム編集技術を使うことを取り巻く社会的倫理的問題を検討した報告書を出版した。別途SMCの説明会が行われた
Oxford Uehiro実践倫理センター上級研究員Katrien Devolder博士
家畜へのゲノム編集の倫理的受容可能性は方法に依存するだろう-病気予防のためより肉の増量のほうが問題が多いだろう。ゲノム編集をひとくくりにして全て良いとかダメとか言うのは意味がないだろう
Edinburgh大学Roslin研究所機能的遺伝学と発達部長Helen Sang教授
例えばPRRS(重症呼吸疾患をおこす豚共通ウイルス)耐性は豚にも利益があるだろう
Kent大学遺伝学教授Darren Griffin教授
議論は「フランケンシュタイン食品」のような感情的フレーズではなく事実に基づいて行われることが望まれる
Nottingham大学獣医科学部Tim Morris教授
より広範な、家畜の交配全体を考慮したほうがもっと良かっただろう
Edinburgh大学Roslin研究所暫定所長で動物バイオテクノロジー教授Bruce Whitelaw教授
Nuffield報告書はこうしたツールへの信頼を構築し根拠に基づいた規制のための対話を始めるのが今だと認識させた
Abertay大学応用科学部Kevin Smith博士
遺伝学専門の生命倫理学者としてこの報告書を歓迎する。
報告書全体として、遺伝子改変のための革新的新しいツールに対応するためにいわゆる「予防原則」を明確に否定したことにすっきりした。この感情的に魅力的ではあるが科学的には全く擁護できない何の意味もない「原則」を拒否することで、この報告書は家畜のゲノム編集のベネフィットの可能性を、適切な規制を要請しつつ、概して良く認めている。
残念ながら英国には非常に多い、反科学のラッダイト達(技術嫌いの人たち)はこの報告書の結論に声高に反対するだろう。しかし現代の正確な遺伝子改変技術が食品の質と安全保障を改善する、高い福祉と環境基準に適合した、手段であると認識している私たちは、この報告書に元気が出るだろう。
ゲノム編集と家畜交配:社会的倫理的課題
Nuffield生命倫理評議会
Genome editing and farmed animal breeding: social and ethical issues
Published 01/12/2021
https://www.nuffieldbioethics.org/publications/genome-editing-and-farmed-animals
要約
(あとで)
その他
-Natureワールドビュー
AIDSへの勝利はCOVID-19への教訓になる
Victories against AIDS have lessons for COVID-19
29 November 2021 Anthony Fauci
https://www.nature.com/articles/d41586-021-03569-1
Anthony FauciがHIVへの40年の進歩と将来に必要なことを語る
COVID-19のせいであまり注目されていないが、今年はAIDSが報告された1981年から40周年で、12月1日の世界AIDSデーに、これまでを振り返る
-世界食料安全保障指標 ランキングとトレンド
Global Food Security Index
Rankings and trends
https://impact.economist.com/sustainability/project/food-security-index/Index
1位アイルランド 日本8位
品質と安全、だと日本は30番目くらいに下がる