2022-05-24

[EFSA]意見等

-赤肉の代替品としての新規食品―リスクベネフィット評価方法を用いた洞察(NovRBA プロジェクト)

Novel foods as red meat replacers – an insight using Risk Benefit Assessment methods (the NovRBA project)

EFSA Journal 2022;19(5):EN-7316  22 May 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/supporting/pub/en-7316

(外部科学報告書)

「赤肉の代替品としての新規食品―リスクベネフィット評価方法を用いた洞察(NovRBA)」というタイトルのこのプロジェクトは、赤身肉を食用昆虫種(新規食品)で代替する全体的な健康影響を推定するための統一したリスクベネフィット評価(RBA)を開発しテストすることを目的とした。 欧州でより消費される可能性のある昆虫製品の評価に基づき、プロジェクトの参加者は牛挽肉100%のビーフパテ(参照シナリオ)と牛肉を食用昆虫生地に完全に置き換えたパテ(代替シナリオ) の摂取を比較することになった。対象集団は成人である。RBAのステップには、問題の定義、同定、優先順位付け、関連する健康結果を伴う成分の選択、が含まれている。この評価には、参照及び代替シナリオに関連する、内的妥当性に基づいた用量-反応関係の選択(ハザードキャラクタリゼーション)、栄養摂取量の暴露評価、微生物的ハザードと毒性学的懸念のある化合物への暴露の選択が含まれた。全ての健康結果は障害調整生存年(DALYs)複合測定基準 によって定量化された。このプロジェクトは「長い」「短い」「最終」リストを作って要素に優先順位をつける段階的アプローチを開発することでモデル構成要素を選択する重要な段階を標準化した。最終リストは13の栄養素、2つの耐熱性胞子形成菌、無機ヒ素から成る。RBAモデルは変動性および/または不確実性を考慮したモンテカルロシミュレーションを使用して@Risk® add‐in softwareを用いて開発された。概して参照シナリオから代替シナリオに移行することによるDALYsに予想される変化は、ギリシャではおよそ8,753 DALYs (100,000人あたり)の節約、デンマークでは6,572 DALYs、フランスでは21,972 DALYsと推定された。これは主に全体的に有益な、栄養学的及び微生物学的影響によるものである。このプロジェクトの調査結果を伝えるために提案された行動は、政策立案者にわかりやすい科学的根拠を提出すること、消費者が昆虫の摂取について詳細な情報に関与する機会を作り出すこと;高い信頼を得ている拡散者を利用すること、信頼される情報源とでの情報交換を確立すること、に集約できる。

 

-石灰石粉末(炭酸カルシウム)の農薬リスク評価ピアレビュー

Peer review of the pesticide risk assessment of the active substance limestone powder (calcium carbonate)

EFSA Journal 2022;20(5):7315 20 May 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7315

(農薬の結論)

不足している情報をリストアップした。懸念は確認されていない。

 

-トリフルスルフロンメチルの農薬リスク評価ピアレビュー

Peer review of the pesticide risk assessment of the active substance triflusulfuron‐methyl

EFSA Journal 2022;20(5):7303 18 May 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7303

(農薬の結論)

情報不足と懸念が確認された。非化学的方法など、他の利用可能な手段では阻止できない植物の健康への深刻な懸念を管理するための除草剤としてトリフルスルフロンメチルの必要性に関するデータの評価も示されている。

 

-ハーブとエディブルフラワーのプロスルホカルブの既存MRLs改訂

Modification of the existing maximum residue levels for prosulfocarb in herbs and edible flowers

EFSA Journal 2022;20(5):7334 18 May 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7334

(理由付き意見)

 

-オキサミルの農薬リスク評価ピアレビュー

Peer review of the pesticide risk assessment of the active substance oxamyl

EFSA Journal 2022;20(5):7296  18 May 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7296

(農薬の結論)

情報不足と懸念が確認された。

 

-酵素的に生産されたステビオール配糖体(E 960c)に提案された規格改定の安全性:精製ステビア葉抽出物の酵素による生物変換で生産されたレバウジオシドD

Safety of the proposed amendment of the specifications for enzymatically produced steviol glycosides (E 960c): Rebaudioside D produced via enzymatic bioconversion of purified stevia leaf extract

EFSA Journal 2022;20(5):7291  16 May 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7291

(科学的意見)

食品添加物及び香料に関するEFSAのパネル(FAF パネル)は、精製ステビア葉抽出物の酵素触媒による生物変換で生産したレバウジオシドDを含むことに関して、酵素的に生産されたステビオール配糖体(E 960c)に提案された規格改定の安全性に関する科学的意見を提出する。レバウジオシドD(乾燥ベースで95%)は、グリコシド結合によりグルコースの精製ステビア葉抽出物への移行を促進する、遺伝子組換え酵母K. phaffii UGT‐A株で生産したウリジン二リン酸(UDP)グルコシルトランスフェラーゼ(UGT)とスクロース合成酵素を用いて、精製ステビア葉抽出物の酵素による生物変換で生産された。K. phaffii UGT‐A株由来の同じ酵素は、ステビア由来ステビオール配糖体(E 960c(i))の酵素組換えによって生産された食品添加物、レバウジオシドMの製造工程で使用される可能性がある。パネルは、この申請で記述されている製造工程によって生産されたこの食品添加物には、すでにE 960c(i)に確立されているものとそろえて、別の規格が必要であると考えた。パネルは、酵母K. phaffiiの遺伝子組換え株で生産したUDP-グルコシルトランスフェラーゼを用いて精製ステビア葉抽出物の酵素による生物変換で生産したレバウジオシドに、毒性学的懸念はないと結論した。だが、入手可能なデータに基づき、パネルはカナマイシン耐性遺伝子をコードしたDNAの残留量が最終製品で見つかる可能性を除外できなかった。組換えたDNAが最終製品に存在するため、微生物叢での遺伝子増殖が懸念される。そのためパネルは、この酵素による生物変換で生産されたレバウジオシドDの安全性は、組換えたDNAが存在しないことが示されなかったため、入手可能なデータでは十分論証されなかったと結論した。

 

-新規食品としてのEscherichia coli BL21 (DE3)の派生株で生産したラクト‐N‐テトラオース (LNT)の安全性

Safety of lacto‐N‐tetraose (LNT) produced by derivative strains of Escherichia coli BL21 (DE3) as a Novel Food pursuant to Regulation (EU) 2015/2283

EFSA Journal 2022;20(5):7242  16 May 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7242

(科学的意見)

欧州委員会からの要請を受けて、栄養・新規食品及び食物アレルゲンに関するEFSAのパネル(NDA)は、規則(EU) 2015/2283に従って、新規食品(NF)としてラクト‐N‐テトラオース (LNT)に関する意見を出すよう求められた。このNFは主にヒトと同一のミルクオリゴ糖(HiMO) LNTからなる粉末混合物だが、d‐ラクトース、ラクト-N-トリオースⅡ、パラ-ラクト-N-ヘキサオース及び他の関連する糖類のごく一部も含む。このNFはEscherichia coli BL21 (DE3)の2つの遺伝子組換え株、生産株及び任意の分解株で発酵して生産された。このNFの製造工程、組成、規格に関して提出された情報は安全上の懸念を生じない。申請者はこのNFを、乳児用及びフォローアップミルク、乳児及び幼児用食品、特別医療目的用食品、食品サプリメントなど、様々な食品に添加することを意図している。対象集団は一般人である。提案された最大使用量でこのNF由来LNTに予想される1日の摂取量は、母乳を与えられている乳児に体重ベースで天然に生じるLNTの摂取量を超えない。母乳を与えられている乳児の体重ベースのLNTの摂取量は、他の集団にも安全だと予想される。LNTに構造的に関連する他の炭水化物種の化合物の摂取も安全上の懸念はないと考えられる。食品サプリメントは、同じ日にLNTを添加した他の食品や母乳を摂取する場合、使用しないするものではない。パネルはこのNFは提案した使用条件で安全だと結論している。

 

-使用後のPETを食品と接触する物質へリサイクルするために使用されるNGRテクノロジーに基づく3Rプロセスの安全性評価

Safety assessment of the process 3R, based on NGR technology, used to recycle post‐consumer PET into food contact materials

EFSA Journal 2022;20(5):7272 16 May 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7272

(科学的意見)

このプロセスから得られるリサイクルPETを室温で長期保存される飲料水を含む全ての種類の食品と接触する物質の製造に100%使用しても、安全上の懸念とはならない。このリサイクルされた PETで作られた最終製品は電子レンジやオーブンで使用されることを意図しておらず、そのような使用はこの評価の対象外である。

 

[COT]ポジションペーパー2022

Position papers 2022

Last updated: 05 May 2022

https://cot.food.gov.uk/2022-statementsandpositionpapers

 

-ビタミンDについての声明(2022)

Statement on Vitamin D (2022)

Last updated: 09 March 2022

https://cot.food.gov.uk/Statement%20on%20the%20potential%20effects%20of%20excess%20vitamin%20D%20intake%20during%20preconception,%20pregnancy%20and%20lactation.

妊娠前、妊娠中、授乳中のビタミンD過剰摂取の影響についての声明

結論

サプリメントを使用していない人では過剰摂取による健康への有害影響のリスクは極めてありそうにない。強力なサプリメントを継続して使用している人が懸念

 

-食品と接触する物質中の竹混合物についてのポジションペーパー

Position paper on bamboo composites in food contact materials

Last updated: 05 May 2022

https://cot.food.gov.uk/Position%20paper%20on%20bamboo%20composites%20in%20food%20contact%20materials

英国のデータが十分でないためCOTは竹混合物を含む食品接触物質について助言することができない。竹混合物やその他のバイオベースの食品接触部質に関連するリスクを評価する英国の研究が現在行われており、その研究ではメラミンとホルムアルデヒドの溶出量及び重金属や残留農薬のような他の化合物の存在の可能性にも対処している。この研究のデータは2022年3月に入手可能になる予定で、入手できたら完全リスク評価を行う

 

[ONS]COVID-19は死因としてインフルエンザとどう比べられるか

How coronavirus (COVID-19) compares with flu as a cause of death

23 May 2022

https://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/healthandsocialcare/conditionsanddiseases/articles/howcoronaviruscovid19compareswithfluasacauseofdeath/2022-05-23

COVID-19が原因での死亡は先のピークより減ったが、インフルエンザと肺炎による死亡数よりは高いままである。COVID-19をインフルエンザと同じように見る時期か?

(データ各種。英国はデータがたくさんあるし解析して公表するのも積極的)

 

Nature

-動物実験で見逃されている変数:何故餌が重要なのか

The overlooked variable in animal studies: why diet makes a difference

23 May 2022  Jyoti Madhusoodanan

https://www.nature.com/articles/d41586-022-01393-9

実験動物の餌について慎重な検討と記述が実験の再現性を上げるだろう

短期の実験でも、齧歯類用の標準化された飼料でもその栄養素含量の多様性が異なる結果につながることがある。餌の与え方(時間や動物の選択)なども慎重に検討し記述すべきである。一方動物の福祉方面からは餌を野生動物のように多様にすることで餌による差を克服しようとする提案がある。

(標準餌の範囲内での僅かな差でどうにかなるような動物実験の結果がヒトにとって意味があるのか疑問)

 

-ゲノム編集トマトは新たなビタミンD供給源になりうる

Gene-edited tomatoes could provide new source of vitamin D

23 May 2022 Heidi Ledford

https://www.nature.com/articles/d41586-022-01443-2

ビタミン前駆体の多い植物は欠乏症対策に役立つ可能性がある-しかし市販までの道のりは長い

トマトは天然にビタミンDの前駆体を作る。それが他の化合物に変換される経路をシャットダウンすることで前駆体が蓄積する。これを実験室で紫外線に暴露すると前駆体がビタミンD3になった。Nature Plantsに5月23日記述された。しかし戸外でうまく生育するかはまだ不明で商用にはなっていない

ゴールデンライスは実験室から農場に移行するのに何十年もかかった、そして栽培を認めているのは昨年のフィリピンだけである

(ゲノム編集による分解酵素失活だけならハイGABAトマトと似たようなもののような気もするが野外試験これからなんだ)

 

-Nature ワールドビュー

日本からのCOVID教訓:正しいメッセージが市民に力を与える

COVID lessons from Japan: the right messaging empowers citizens

23 May 2022  Oshitani

https://www.nature.com/articles/d41586-022-01385-9

パンデミックを抑えるのに完璧な解決法はないが、注意深い研究とコミュニケーションが重要

(三密のこと。)

 

その他

-SMC UK

ビタミンDのための遺伝子組換えトマトへの専門家の反応

expert reaction to GE tomatoes for Vitamin D

MAY 23, 2022

https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-ge-tomatoes-for-vitamin-d/

Nature Plantsに発表された研究が、新たなビタミンD補充経路として生物的栄養強化トマトを調べた。SMCによる概要説明会が開催されている

Southampton大学生態学教授Guy Poppy教授

約10億人がビタミンD欠乏で広範な健康影響の原因となっている。北半球の天候の悪い地域に住む人たちは日光でビタミンDを必要量得るのが難しく食事やサプリメントから摂る必要がある。最近認められたゲノム編集技術を使って、特に植物ベースの食事をしている人にとっては、これは本当に重要な革新である。ビタミンDは肉や乳製品に多い。食事推奨摂取量以上のプロビタミンD3を蓄積するゲノム編集トマトは、多くの人々にとってより健康になる結果をもたらす可能性がある。トマトは広く入手可能で簡単に食べられる。このエキサイティングな発見はヒト健康を向上させるだけではなくより植物を多く食べる食生活に伴う環境上の利益にも貢献する

James Hutton研究所科学部長Lesley Torrance教授

この論文はゲノム編集技術が食用作物の栄養強化に使えることを示した非常に重要な貢献である。ビタミンD欠乏は深刻な人健康問題を引き起こし、最良のビタミンDの食事からの摂取源は魚と乳製品である。この仕事はゲノム編集アプローチが栽培されたトマトのプロビタミンD3を増やし(果実と葉)、それはUVBによってビタミンD3に変換されることを示した。菜食又はビーガンの人にとって、この植物由来の天日乾燥トマトは良いビタミンD摂取源となるだろう。またトマトの葉も加工してビタミンD3源になる。このアプローチは同じ科の作物、つまりペッパーやジャガイモ、にも広く応用できるだろう

 

トマト研究には参加していない同じ研究所の他の科学者から

John Innesセンター作物形質転換グループ長Wendy Harwood教授

この仕事は栄養上価値ある性質をもつ食品を開発するためのゲノム編集のパワーを示した。生物的栄養強化トマトはビタミンD欠乏対策に重要な貢献ができるだろう。そして同様の改善が他の作物でもより短期間で可能になるだろう。

John Innesセンター上級科学者Penny Hundleby博士

この素晴らしい仕事は、遺伝子工学が消費者に、果実そのものあるいはトマト生産の廃棄物(葉)を利用したサプリメントのどちらかで、ビタミンDの植物源を提供できることを示した。残念ながら屋内で過ごすことが多くなっている人が増えた時代に、この製品は消費者に菜食主義者にフレンドリーな植物由来のビタミンDを提供する。

食料安全保障と持続可能性と気候変動が重要な課題になっている中で、栽培し食用にする食品を可能な限り栄養豊富にし廃棄も減らすことは目標達成に役立つ。

 

‘Biofortified tomatoes provide a new route to vitamin D sufficiency’

by Jie Li et al.

https://www.nature.com/articles/s41477-022-01154-6

オープンアクセス

(今後の行方も含めて、ゴールデンライスと比べられるだろう。牛乳にビタミンDが含まれるわけではなくて添加されている。国によって違う。日本ではビタミンDを強化すると牛乳と呼べなくなるのでほぼ強化されてないと思う)

 

-ガーナの科学者:「アフリカは世界の他の地域よりGMOを必要としている」

Ghanaian scientist: ‘Africa needs GMOs more than the rest of the world’

BY JOSEPH OPOKU GAKPO MAY 16, 2022

https://allianceforscience.cornell.edu/blog/2022/05/ghanaian-scientist-africa-needs-gmos-more-than-the-rest-of-the-world/

ガーナ大学の西アフリカ作物改良センター(WACCI)創設所長のEric Yirenkyi Danquah教授は、アフリカは世界の他の地域より緊急にGMOを採用する必要がある、という。

気候変動や人口増加が大陸の食料不足を悪化させており、この傾向をくい止めるには技術革新が緊急に必要である。降雨パターンの変化、干ばつ、極端な気象イベント、病害虫の侵入、植物の病気、作物のロスと飢餓がアフリカ大陸に負の影響を与えている。

遺伝子組換えによって開発されたより良い種子が希望である。規制を遅らせないで欲しい。

Danquahは反GMO活動家が多くの国でGM作物の採用を引き留めて安全でない農薬の使用と飢餓と貧困の永続化に寄与していることに懸念を表明する。科学に基づいた農業が、環境負荷を減らしつつ固有の重要作物を保護できる。

(以下略。ガーナは害虫耐性ササゲが最初のGM作物。また窒素と水を効率よく使い塩に耐性のあるコメを開発中)

 

-汚染貝に関連してグアテマラで4人死亡

Four deaths in Guatemala linked to contaminated shellfish

By News Desk on May 24, 2022

https://www.foodsafetynews.com/2022/05/four-deaths-in-guatemala-linked-to-contaminated-shellfish/

グアテマラで貝を食べた後30人以上が病気になり4人が死亡した。グアテマラ赤潮サーベイランスとコントロール委員会は基準を超えるサキシトキシンのためTiquisate、 Escuintla、Retalhuleu および San Marcosの沿岸の警告を延長した。公衆衛生当局によると4月末から34人が影響を受け、死亡したのは子ども3人と大人一人。当局は人々に二枚貝を食べないように警告している。貝毒を含む貝は見た目も味も変わらず、調理で毒素が壊れることはない