2022-08-04

[EU]査察報告書

キュラソー―水産物

Curaçao 2021-7168―Fishery products

01/08/2022

https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit_reports/details.cfm?rep_id=4504

2021年11月1~11日にキュラソーで実施した、EU輸出用水産物の公的管理評価の査察。国内法はいくつかの顕著な例外を除いてほぼ適切な基盤を提供している。管轄機関の運営に関しては、人や資金不足、適切な文書化手順・知識・教育が欠如している。加工施設や船の登録システムはEU規則に準拠する保証を提供していない。冷凍船の公的管理は、いけすの「二重使用」や船の冷凍能力の評価などの問題が含まれていない。さらに、公的管理には水産物のサンプリング義務がない。公的承認に関しては、製品の発送や積み荷の管轄機関は、現在のEU条件を知らないまたは十分認識していない。概して、上記のことから、キュラソーの管轄機関の公的衛生証明は保証を提供できていない。

(カリブ海に浮かぶオランダ領の島)

 

[EFSA]意見等

-遺伝子組換えAspergillus niger DSM32805株由来食品酵素キモシンの安全性評価

Safety evaluation of the food enzyme chymosin from the genetically modified Aspergillus niger strain DSM32805

EFSA Journal 2022;20(8):7466  3 August 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7466

(科学的意見)

この食品酵素キモシン(EC 3.4.23.4)はChr. Hansen社が遺伝子組換えAspergillus niger DSM32805株で生産した。この遺伝子組換えは安全上の懸念を生じない。この食品酵素にこの生産生物の生きた細胞やそのDNAはない。チーズ生産のミルク加工や発酵乳製品の生産に使用することを意図している。食事暴露は欧州人で最大0.09 mg総有機固形物 (TOS)/kg体重 (bw)/日と推定された。遺伝毒性試験は安全上の懸念を生じなかった。全身毒性はラットの90日間反復経口投与毒性試験で評価された。パネルは無毒性量を調べた最大量1,000 mg TOS/kg bw/日とし、推定食事暴露と比較して暴露マージンは少なくとも10,600となった。既知のアレルゲンに対するこの食品酵素のアミノ酸配列の類似性が調査され、呼吸器アレルゲンの2件の一致が見つかった。パネルは、意図した使用条件で食事暴露によるアレルギー感作リスクや誘発反応は除外できないが、これが起こる可能性は低いと考えられると見なした。提出されたデータに基づき、パネルは、この食品酵素は意図した使用条件で安全上の懸念を生じないと結論した。

 

-Cellulosimicrobium funkei AE‐AMT株由来食品酵素α-アミラーゼの安全性評価

Safety evaluation of the food enzyme α‐amylase from Cellulosimicrobium funkei strain AE‐AMT

EFSA Journal 2022;20(8):7463  3 August 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7463

(科学的意見)

この食品酵素α-アミラーゼ(4‐α‐d‐グルカン グルカノヒドロラーゼ; EC 3.2.1.1)はAmano Enzyme Inc社が非遺伝子組換えCellulosimicrobium funkei AE‐AMT株で生産した。この食品酵素にこの生産生物の生きた細胞はない。マルトトリオース生産のデンプン加工に使用することを意図している。総有機固形物(TOS)の残留量はデンプン加工中に適用される精製段階で除去されるため、食事暴露の推定は必要ないと考えられる。遺伝毒性試験は安全上の懸念を示さなかった。全身毒性はラットの90日間経口投与毒性試験で評価された。パネルは無毒性量を最大用量230 mg TOS/kg 体重 (bw) /日とした。既知のアレルゲンに対するこの食品酵素のアミノ酸配列の類似性が調査され、9件の一致が見つかった。パネルは、意図した使用条件で食事暴露によるアレルギー感作リスクや誘発反応は除外できないが、その可能性は低いと考えられるとみなした。提出されたデータに基づき、パネルは、この食品酵素は意図した使用条件で安全上の懸念を生じないと結論した。

 

-Rhizomucor miehei MMR 164株由来食品酵素ケカビペプシン(mucorpepsin)の天然型及び熱不安定型の安全性評価

Safety evaluation of the native and thermolabile forms of the food enzyme mucorpepsin from Rhizomucor miehei strain MMR 164

EFSA Journal 2022;20(8):7459 3 August 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7459

(科学的意見)

この食品酵素ケカビペプシン(アスパラギン酸エンドペプチダーゼ, EC 3.4.23.23)はTakabio社が非遺伝子組換え微生物Rhizomucor miehei MMR 164株で生産した。この酵素は熱不安定型にするために化学修飾されている。この食品酵素にその生産生物の生きた細胞はない。チーズ生産のミルク加工に使用することを意図している。この食品酵素への食事暴露―総有機固形物(TOS)は欧州人で最大0.98 mg TOS/kg 体重 (bw)/日と推定された。遺伝毒性試験は安全上の懸念を生じなかった。全身毒性はラットの90日間反復経口投与毒性試験で評価された。パネルは無毒性量を調べた最大量1,320 mg TOS/kg bw /日とし、推定食事暴露と比較して、暴露マージンは少なくとも1,300となった。既知のアレルゲンに対するこの食品酵素のアミノ酸配列の類似性が調査され、5件の一致が見つかった。パネルは、意図した使用条件で、この食事酵素への食事暴露上のアレルギー感作リスクや誘発反応は除外できないが、マスタードタンパク質に感作されている個人を除いて低いと考えられる、ただし、このリスクはマスタード摂取によるリスクを超えることはない。提出されたデータに基づき、パネルは、この食品酵素は意図した使用条件で安全上の懸念を生じないと結論した。

 

[NASEM]公開説明会:水域環境での日焼け止めの運命、暴露、影響とヒト健康と日焼け止め使用への意味

Public Briefing: Review of Fate, Exposure, and Effects of Sunscreens in Aquatic Environments and Implications for Sunscreen Usage and Human Health

https://www.nationalacademies.org/event/08-09-2022/public-briefing-review-of-fate-exposure-and-effects-of-sunscreens-in-aquatic-environments-and-implications-for-sunscreen-usage-and-human-health

8月9日公開ウェビナー

同時に報告書も発表

 

[FAO]ウクライナ、FAO、カナダは穀物貯蔵不足対応に協力

Ukraine: FAO, Canada join forces to address grain storage deficit

02/08/2022

https://www.fao.org/newsroom/detail/ukraine-fao-canada-join-forces-to-address-grain-storage-deficit/en

ウクライナでは貯蔵施設の14%が毀損あるいは破壊され10%はロシアに占拠された地域にあり、30%は昨年の収穫が輸出を待って一杯になっているため今年の収穫分の貯蔵に課題がある。カナダの出資するプロジェクトでこの問題に対応する

 

論文

-詐欺被害は長期血圧に影響するか?

Does fraud victimization affect a person’s long-term blood pressure?

3-AUG-2022

https://www.eurekalert.org/news-releases/960478

Journal of the American Geriatrics Societyに発表された研究によると、お金をだまし取られたり詐欺に遭ったりすることは男性の血圧上昇と関連するが女性では関連がない

 

-毎日大麻を使う人は重度喫煙を危険だとみなす可能性が低い

Daily cannabis users less likely to view heavy cigarette smoking as dangerous

3-AUG-2022

https://www.eurekalert.org/news-releases/960679

Nicotine & Tobacco Research.

18才以上の米国成人のデータ。毎日大麻を使用する人で1日1箱の喫煙は健康への「大きな」リスクになるとみなすのは62%、過去1年大麻を使用したことのない人では73%

 

-閉経期症状の緩和に、ますます多くの女性が医療用大麻を使っている

More women turning to medical cannabis for relief of menopause symptoms

3-AUG-2022

https://www.eurekalert.org/news-releases/960732

睡眠障害や不安などのような症状の治療目的に医療用大麻を使う女性が増えている

Menopause

 

-室温を下げるとマウスのがんの増殖が抑制される

Cool room temperature inhibited cancer growth in mice

3-AUG-2022

https://www.eurekalert.org/news-releases/960696

Nature。寒さで活性化される褐色脂肪組織が腫瘍とグルコースをとりあうため。マウスは30℃とそれより4℃低い部屋で実験、ヒトでは28℃、22℃、16℃で調べている

 

[SMC UK]毎日ヤールスバーグチーズ(対カマンベール)を食べることと骨がもろくなる指標とを調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at daily Jarlsberg cheese (versus Camembert) and measures of bone thinning

AUGUST 2, 2022

https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-daily-jarlsberg-cheese-versus-camembert-and-measures-of-bone-thinning/

BMJ Nutrition Prevention & Healthに発表された研究が、ビタミンK2のある/無しでの毎日チーズを摂取することと骨の同化指標への影響を調べた

Oxford大学Nuffield整形外科、リウマチ学、筋骨格科学部名誉上級研究フェローJonathan Reeve教授

私の意見では、この論文は信じがたい。骨の同化反応とは、対照群より骨組織が多く作られたことを意味する。それはこの場合証明されていない;骨形成に関連するかもしれないししないかもしれない生化学マーカーがヤールスバーグチーズ摂取で増えたことが示されている。骨粗鬆症予防のためにビタミンK2を摂取するようにとの助言は、私の知る限り11年前の日本独特のもので、この極東の国以外では言われていない。

適切に議論されていない交絡の可能性がある。ヤールスバーグは乳糖が少なく、他の多くはたくさん含む。一定年齢の欧州成人(と特に中国人と日本人)には軽度から重症の乳糖不耐がありそれが交絡している可能性はある-乳糖の摂りすぎが下痢につながりカルシウム吸収には良くない。

生化学マーカーは一般的に骨密度測定結果との関連は乏しく、著者らは骨密度を測定したほうが良かっただろう。

King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授

この研究は平均年齢33才の若い女性でヤールスバーグチーズとカマンベールチーズを食べた場合のカルボキシル化されたオステオカルシン量への影響を比べたものである。オステオカルシンはビタミンK依存性糖タンパク質で、ビタミンKの作用でカルボキシル化されるとカルシウムに結合できる。ヤールスバーグのようなハードチーズの中には、長期間の発酵によって細菌が作るメナキノン類と呼ばれるビタミンK含量の多いものがある。カマンベールのようなソフトチーズは発酵期間が短いためメナキノン含量は少ない。

この研究の目的はメナキノンの多いチーズと少ないチーズを比べることであるが、食事のデザインに大きな欠陥がある。一つ目は、ヤールスバーグチーズは毎日57gでカマンベールは1日あたり30-60gである。二つ目はカマンベールの方が水分が多いためタンパク質と脂質の量は相当違うことを考慮していない:ヤールスバーグ群は脂肪とタンパク質が毎日それぞれ16g、一方カマンベール群は6-12gである。

これは盲検になっていないRCTで、アウトカムは骨粗鬆症/骨減少の代用指標である。リスク削減を示すには骨密度の減少や骨折のようなハードエンドポイントが必要である。

この研究ではメナキノン濃度の増加に相応するカルボキシル化オステオカルシン濃度の増加は示された。

プレスリリースでは1日57gのヤールスバーグチーズを「少量」と記述し、それで骨の減少が防げると主張している。英国人の平均チーズ摂取量は1日18gで少量とは15gのことで、欧州で最も多くチーズを食べているフランスでさえ摂取量は45g/日である。報告されている影響はヤールスバーグ特異的である可能性は低い。そしてこの年代の女性のオステオカルシンの変化が長期的な骨の減少速度の遅さに翻訳されることはないだろう、特に何年もメナキノンサプリメントを使った試験で若い女性の骨量減少を減らす作用はなかったので。

Aston大学医学部登録栄養士で上級教育フェローDuane Mellor博士

この小規模試験はヤールスバーグチーズを製造しているTINE SAが一部資金提供しているものである(以下略)

英国栄養財団栄養科学者Simon Steenson博士

ビタミンKは骨折リスクと負の関連があるがビタミンKサプリメント試験では骨の健康への一貫した良い影響は示されていない。脆弱性骨折予防のための臨床ガイドラインにはビタミンKの適切な摂取を確保することを既に含めている。

ビタミンKの骨の健康への影響は確立されていないが、骨粗鬆症予防のためには既存の食事とライフスタイル助言を忘れないことが重要である。それは適切なカルシウムとビタミンDと運動を含む。

(一部のみ。

なお「骨粗鬆症予防のためにビタミンK2」については日本人の食事摂取基準(2020年版)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html

では 「ビタミン K 不足は骨折のリスクを増大させることが報告されているが、栄養素としてのビタミン K 介入による骨折抑制効果については、更に検討を要するものと考え、重症化予防のための量は設定しなかった。」

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版

http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf

では 有効性の評価B((弱い)推奨)とC(根拠が明確でない)。

微妙な根拠なのに「納豆はビタミンKを含むので骨粗鬆症の予防になる」と断言されていることが多い。食品分野では特に、一旦流行した言説は情報が更新されないままのことが多いような-教科書ですら。)

 

[SMC NZ]NZの最初の気候適応計画–専門家の反応

NZ’s first Climate Adaptation Plan – Expert Reaction

03 August 2022

https://www.sciencemediacentre.co.nz/2022/08/03/nzs-first-climate-adaptation-plan-expert-reaction/

政府は変化する気候に伴うことが予想される上昇する海水面、増加する暑さと極端な気候に対応する計画を発表した

(専門家のコメント略。気候変動関係の話題は温室効果ガス排出削減ばかりで、変化する気候への適応はタブーだったのが変わりつつある。そもそも変わる世界の中で変わらないことを善とする価値観が妙なのだけれど)

 

Nature

-取り下げは増えている、しかし十分ではない

Retractions are increasing, but not enough

02 August 2022 Ivan Oransky

https://www.nature.com/articles/d41586-022-02071-6

Retraction Watchは12年前にできてから取り下げブームを観察している。しかし科学コミュニティはもっとやらなければならない

2010年にAdam Marcus とともにRetraction Watchを始めたIvan Oranskyによるエッセイ

 

-ハイブリッド脳:ヒト神経細胞を動物に移植することの倫理

Hybrid brains: the ethics of transplanting human neurons into animals

03 August 2022  Kendall Powell

https://www.nature.com/articles/d41586-022-02073-4

動物の脳にヒト細胞を移植することは発達や疾患への知見と新たな倫理的疑問をもたらす

Imperial College LondonのVincenzo De Paolaのラボで、生きたマウスの脳にヒト脳細胞を移植し新たな結合を作る様子を観察

 

-死んだ動物から豚の組織が一部復活した—研究者らは愕然とした

Pig organs partially revived in dead animals — researchers are stunned

03 August 2022 Max Kozlov

https://www.nature.com/articles/d41586-022-02112-0

科学者らはこの知見はまだ臨床的な意味は無いと警告するが、死の定義について倫理的疑問を提示する

豚が死亡してから1時間経った後に、OrganExというシステムにつないで血液を循環させたところ心機能、肝臓、腎臓の活動が速やかに復活。脳の活動は確認されない

 

-書評

ウイルスと社会的不公正の二重の損害

The double toll of viruses and social injustice

Jennifer Hochschild

https://www.nature.com/articles/d41586-022-02075-2

COVID-19は永続する人種差別と貧困を顕わにした病気の最新のものにすぎない

Steven W. Thrasher著「ウイルスのように広がる底辺層:不平等と病気が衝突したときの人間の犠牲The Viral Underclass: The Human Toll When Inequality and Disease Collide」の書評

COVID-19パンデミックは社会的、経済的、人種的、政治的不利が健康と医療の不平等に平行して生じ、そして不平等の原因になるかを明らかにした。混雑した環境で生活し、生活や労働環境が守られていない人、一般の人に直面する人たちがより早くより厳しく打撃を受けた。1950年代のポリオから1980年代のHIVそして2010年代のエボラまで、ウイルスは構造的不平等に沿って猛威を振るう

Steven Thrasherのこの本は米国の強力なケーススタディを通してこれら不平等を暴く。