2022-08-10

[NASEM]EPAは水環境への影響を理解するために日焼け止めに含まれるUVフィルターの生態学的リスク評価を行うべき、新しい報告書は言う

EPA Should Conduct Ecological Risk Assessment of UV Filters Found in Sunscreen to Understand Their Impact on Aquatic Environments, Says New Report

August 9, 2022

https://www.nationalacademies.org/news/2022/08/epa-should-conduct-ecological-risk-assessment-of-uv-filters-found-in-sunscreen-to-understand-their-impact-on-aquatic-environments-says-new-report

日焼け止めに使われる有効成分であるUVフィルターは、皮膚がん予防に重要であり、米国の水環境と絶滅危惧種が暴露されている可能性から、EPAによる生態リスク評価が緊急に必要でありそれはFDAと共有する必要がある。

生態リスク評価はある化学物質への暴露が予測される濃度と、毒性が生じる濃度を比較し、環境ストレス要因が生態影響をおこす可能性のある状況を決めることである。UVフィルターの環境リスクは、フィルター、環境、フィルター濃度、暴露される種の感受性が多様であるため複雑である。

報告書では、EPAの評価は感受性の高い種が含まれる、最も暴露される可能性の高い環境に焦点を合わせるべきだという。それは娯楽使用の多い海岸近くの浅瀬の珊瑚礁や都市の廃水が入る岩礁などを含む。他に水泳や娯楽使用が多いあるいは廃水が流入する動きの遅い淡水系の評価が優先課題である。

報告書はSPFの高い広範囲日焼け止めを一貫して使うことが皮膚がん、日焼け、光加齢のリスクを下げることは確かであることを確認した。行動研究からは日焼け止めの使用が一般的には不適切で、使うべき人が使っていない、使う量が少なすぎる、十分な頻度で使われていないことが示されている。消費者の好む日焼け止めの入手が困難になることは使用の減少につながり健康には負の影響が予想される。しかしながら日光保護行動は現在の情報からは簡単に予想できない

Review of Fate, Exposure, and Effects of Sunscreens in Aquatic Environments and Implications for Sunscreen Usage and Human Health

(2022)

https://nap.nationalacademies.org/catalog/26381/review-of-fate-exposure-and-effects-of-sunscreens-in-aquatic-environments-and-implications-for-sunscreen-usage-and-human-health

 

論文

-COVID-19リスクを承知しているにも関わらず、多くのアメリカ人は「普通」に戻ったという

Despite awareness of COVID-19 risks, many Americans say they’re back to ‘normal’

9-AUG-2022

https://www.eurekalert.org/news-releases/961306

ほとんどが保護のためのマスクを拒否

Annenberg公共政策センターの2022年7月の調査によると、多くのアメリカ人は自分や家族のCOVID-19感染リスクの可能性を知っているが、ますます多くの人がパンデミック前の日常生活に戻っているという。ますます多くの人がCOVID-19で死んだ人や長期影響に苦しむ人を個人的に知っているという。それでも健康影響への懸念は低下し、マスクをする人の割合は急激に低下した。

 

-食事の塩代用品は心臓発作/脳卒中と死亡リスクを下げる

Dietary salt substitutes lower risk of heart attack/stroke and death

9-AUG-2022

https://www.eurekalert.org/news-releases/961094

Heartに発表されたプール解析。NaClをKClで代用することは世界中で年齢と性別とベースラインの血圧、BMIに関わらず一貫して血圧を下げる

 

その他

-「栄養研究者ギルド」発の食品についての疑わしい知見:この非科学的な統計操作から我々がどうやって学べるか

GLP

Dubious findings about food from the ‘Nutrition Researchers Guild’: How can we learn from this unscientific manipulation of statistics?

Henry Miller, Stanley Young | August 9, 2022

https://geneticliteracyproject.org/2022/08/09/dubious-findings-about-food-from-the-nutrition-researchers-guild-how-can-we-learn-from-this-unscientific-manipulation-of-statistics/

あなたはある食品の健康影響についての矛盾する「研究」知見に混乱している?驚きではない。最初に、バターは敵だった;そして次はマーガリン。カフェインはあなたの心臓に良いのか悪いのか?βカロテンサプリメントはがんを予防すると考えられていたがやがて喫煙者の肺がんリスクを上げることがわかった。そして受胎時の女性の食事が胎児の性別を決める?

このような結論を出した研究の方法論をよく検討してみれば、それらが一貫せず信じがたいのは驚くことではない。誰がそんな研究をしているのか?疑似科学の一部門が数世紀前に始まった現象にある種先祖返りしている-それは「ギルド」という、共通の関心をもつ職人や商人の集まりである。ギルドに入るには徒弟から始める。現在一部の科学者が-正確には疑似科学者が-ギルドを作って食品の科学を毀損しているようだ。

彼らは食習慣の調査を含む「コホート研究」をする。ハーバード大学が1980年代半ばに開発した半定量的「食品頻度質問表」(FFQ)は人々にある食品をどのくらいの頻度で食べるかを尋ねる。最初のFFQは61食品だった。この数の選択はおそらく意図的で、もし61の独立した質問をすると95%の確率で少なくとも一つの統計的有意差が出るからである。何年にも渡って多くのコホート研究がFFQを使って行われた。全国学識者協会(NAS)の行ったある研究プロジェクトでは、赤肉の健康影響に関する論文105を検討し、その中に含まれる食品の数が14から280で、中央値は51であった。質問は例えば、柑橘やブロッコリーなどをどのくらい食べたか、と、高血圧や鬱、肥満など経験した各種健康影響を尋ねる。どちらのカテゴリーの数も膨大であるため、関連がある可能性は大きい。それは統計のジレンマとなる-栄養疫学者は統計解析の調整をすることは滅多にないのでまさに泥沼である。膨大な数の統計検定をすれば、多くの偽陽性が偶然だけで生じる。

今何が問題?

さらに問題となるのは性、年齢、人種などで、そして複数の時点に、さらに細かく関連切り分けられることである。NASのプロジェクトではこの種の偶然の関連がどのようにして偽りの、再現性のない結論を生み出し、政府の政策や規制の各種分野に影響しているかを検討した。統計の専門家ではない人はこの知見の重要性がわからないかもしれないが、これは基本的な問題を提起する:適切な調整がなければ、栄養研究者の知見はしばしば再現できない。つまり、一見重要そうな知見でも、それは無意味である。

FFQギルドの研究者はこうした欠陥のあるやり方について何をしているか?研究データを公開せず、お互いの手法を批判せず、専門家の地位を独占している。また保身のために会員を批判した論文の取り下げを要求した。栄養研究者は居心地の良いお金になる便利な疑似科学ギルドを作った。そのプロセスで学術文献に何万もの価値のない論文を加え、一般の人々を混乱させ脅してきた。

この状況をどうすればいい?難しい。おそらく研究費出資機関が科学の完全性を守るための責任と力があるが、我々は楽観していない。

 

言及されているNASのプロジェクト

Shifting Sands: Unsound Science and Unsafe Regulation

Report I  Keeping Count of Government Science: P-Value Plotting, P-Hacking, and PM2.5 Regulation

https://www.nas.org/reports/shifting-sands-report-i

再現できない科学が政府の政策にどう影響しているかを探った。

最初の報告書ではPM2.5規制をとりあげる。環境疫学

 

報告書II 薄っぺらな食品の知見

Shifting Sands: Report II  Flimsy Food Findings

https://www.nas.org/reports/shifting-sands-report-ii

FFQを使った栄養疫学について

 

プレスリリース:新しい報告書は再現できない科学がFDAの規制に影響していることを発見

Press Release: New Report Finds Irreproducible Science is Affecting FDA Regulations

July 12, 2022

https://www.nas.org/blogs/press_release/press-release-new-report-finds-irreproducible-science-is-affecting-fda-regulations

科学の世界は「エキサイティングな発見」の論文を出すことが動機付けされているが、再現性のある論文を出すインセンティブがない。そのため研究者は意図的にあるいは怠慢により、ポジティブになるような各種統計手法を使っておそらく虚偽の、関連があるという主張をする。

(健康食品分野ではp-hackingなんてむしろ普通。)

 

-歪められたパンデミック推定のシンプルな修正方法

There’s a simple fix for skewed pandemic estimates

09 August 2022  Elizabeth Wrigley-Field

https://www.nature.com/articles/d41586-022-02137-5

信頼できる数字を出すには人口統計学者が一緒に働かなければならない

ミネソタのCOVID-19予防接種率は2021年夏以降、高齢黒人とアジア系アメリカ人で100%である。もちろんそれは間違いである。ミネソタの高齢黒人の数は2018年から2021年の間に20%以上増加したが、州の予防接種率は古いデータを使っている

(以下略。アメリカですら、人間の数すら正確ではない。まして途上国では。)

 

-ビル・マーは肥満受容運動については正しい

ACSH

Bill Maher Is Right About The Fat-Acceptance Movement

https://www.acsh.org/news/2022/08/09/bill-maher-right-about-fat-acceptance-movement-16479

コメディアンのビル・マーは先週自分の番組で肥満受容運動について批判した後、窮地に陥っている。その場面は面白いだけではなく人々が話したくない重要な事実について強調していた:社会正義活動家が彼らのイデオロギーのために科学を書き換えている

この週末、Bill Maherは肥満受容運動を、肥満の危険性について嘘をついていて過体重の人々の食事と運動習慣についての責任を免除していると言ったことで非難された。Maherは「無知でヘイトをまき散らし」、「肥満の流行の主因である」食品業界の役割を無視したと非難された。Maherはこう言っている

「近頃のアメリカには科学をイデオロギーに沿うように書き換える憂慮すべき傾向がある。肥満受容から肥満祝福に移行しつつある」

先鋭的コメディの範囲では、Maherの場面はどちらかというとマイルドな方である。私は子どもの頃から青年期のほとんどを肥満で過ごしたが、Maherの言うことは侮辱だとは感じない。Maherのジョークが言い過ぎだと思う人であっても、背景にある事実には逆らえない。彼の主張は:

・我々の社会は最早肥満を予防可能な健康状態だとは考えず、守るべき地位だと考えている。これがイデオロギーに沿うように科学を書き換える例である

・肥満には健康リスクが伴う

・我々は何故太るのか、そしてどうすれば痩せるのかを知っている;それに反対するのは愚かである

・減量に成功した過体重の人がその努力を常に間違って非難される

Maherは科学者ではない

かれを非難する人は藁人形論法を使うか過剰な単純化をする。Forbesの上級寄稿編集者Bruce Y. Leeは8月6日の「Bill Maherは米国で肥満賞賛が起こっていると主張するがそれは肥満の流行を過度に単純化している」と題した記事でその両方を使っている。Leeは「Maherは科学者ではない。彼の番組で実際の科学的根拠は提示されなかった」と書く。

(略)

問題は、肥満の人々を尊敬して扱うことと必要なライフスタイルの変更を勧めることのバランスをとることである。しかし「肥満活動家」たちは社会の「誰でも減量できるしするべきだ」という考えを止めさせたい。Leeは一部の活動家ほど過激派ではないが、肥満の原因は個人ではなく加工食品と「化学物質」のせいだという。その根拠は示さない、根拠がないからだろう。いつも悪役にされるビスフェノールAはもう何十年も研究されているがどうやって肥満を起こすのかはいまだ知られていない。BPAの生産が始まったのは1950年代で、肥満の流行が問題になる20年以上前である。

肥満の流行は摂取カロリーの増加と運動の減少に続いておこっている。変えるべきはこれらである。Bill Maherは正しい選択を促す数少ない有名人である。

 

-ラベンダーとティーツリーエッセンシャルオイルレビュー

コンシューマーラボ

Lavender and Tea Tree Essential Oils Review

08/04/2022

https://www.consumerlab.com/reviews/essential-oils-lavender-tea-tree/essentialoils/

真正性と純度を検査

検査の結果、人気ブランドのラベンダーオイルは化学組成から本物であり重金属や微生物汚染はないことが示された。しかし相当な値段の違いはある。ティーツリーオイルには化学組成に違いがあり、おそらく本物で汚染はないと考えられるが、標準品と近いものが質が高いと思われる。

エッセンシャルオイルは特定の化合物の濃度が高いために希釈して皮膚に使うべきで、ティーツリーオイルは経口摂取すべきではない。ラベンダーとティーツリーオイルは過敏症やアレルギーを誘発する可能性がある。子どもや妊婦用ではない。

(エッセンシャルオイルをたくさん買わせようとして飲食を薦める業者がいる)