2022-11-09

[FAO]率直に言う:細胞ベースの食品の「作業」用語の確立

Mince no words: establishing “working” terminology for cell-based food

19/10/2022

https://www.fao.org/food-safety/news/news-details/en/c/1609618/

国連食糧農業機関(FAO)は、世界保健機関(WHO)と共同で、2022年11月1日から4日にシンガポールで開催される細胞ベースの食品(cell-based food)に関する専門家会合のプレセッションとして、10月6日に「食品安全と細胞ベースの食品:なぜ用語が重要か?」というオンライン会議を開催した。

オランダのWageningen大学、Wageningen食品安全研究所のMark Sturme博士は、「細胞ベースの食品の食品安全性-背景文書1:用語」と題する論文を発表した。また、米国Rutgers大学のWilliam Hallman博士は、細胞ベースの魚製品の名称に関する問題について発表し、研究の結果、分野によって異なる好みが存在するものの、「細胞ベースの食品」という用語は混乱が少なく、便利で包括的であり、一般的に消費者に受け入れられているとした。

しかし、理論的には、細胞でできた生物はすべて「細胞ベース」と表現できるため、細胞から食用組織を培養する技術が自動的に区別されるわけではない。水産養殖の分野では、養殖魚や水産物を示す用語として「培養(cultured)」や「養殖(cultivated)」という用語が使われるため、混乱するかもしれない。「細胞農業(cellular agriculture)」という用語は、植物細胞の培養や発酵の話題を含む可能性があり、多種多様な方法論や技術を含むため、一般的すぎるだろう。

このオンライン会議の結果、FAO、WHO、技術パネルのメンバーの間で、専門家会合の目的に限って「細胞ベース」という用語を使用することが合意された。

国際的に調和された用語集を持つことは理想的であるが、専門家は、まずは国の食品安全を管轄する当局がそれぞれの文化的、地理的文脈や言語の中で検討することがより重要であろうと指摘している。また、専門家は英語の用語の直訳を使用しないよう提案した。

 

*参考文献

細胞ベースの食品の食品安全の状況

Food safety aspects of cell-based food

(訳注:2022年11月に開催される専門家会合のための背景文書シリーズであり、さらに内容が追加・修正されて2023年に最終版が発行される予定)

背景文書1-用語

Background document one – Terminologies

https://www.fao.org/3/cc2241en/cc2241en.pdf

細胞ベースの食品技術は、in vitroで培養された動物細胞や微生物細胞から動物性タンパク質を生産することを可能にする。現在、技術や生産プロセス、最終製品に関連する様々な用語が存在する。用語は消費者の認識と各国の規制の枠組み(表示など)の両方に影響を与えるため、既存の細胞ベースの食品に関する専門用語を分析し、様々な関係者がどのように使用し認識しているかを理解することが重要である。本書は、細胞ベースの食品用語の使用に関する文献の概観を行い、世界中の政策立案者が細胞ベースの食品に関するコミュニケーションや関連法規に使用できる用語を選択する際に、十分な情報に基づいた意思決定を支援する必要性についてグローバルな議論を開始するための基礎資料とした。

背景文書2-一般的生産工程

Background document two – Generic production process

https://www.fao.org/3/cc2502en/cc2502en.pdf

細胞ベースの食品生産は現在開発の途中であり、多種多様な製品を多様な生物の細胞からin vitroで生産することを目指す技術であるため、生産プロセス全体を詳細に俯瞰することは最適ではない。しかし、細胞ベースの食品生産に関するハイレベルな工程の一般的な理解は例示することができるだろう。このような基本的な理解を持つことにより、食品安全性評価の最初のステップである潜在的なハザードの同定を開始することができる。本書は科学的文献レビューから、現在実施されている細胞ベースの食品生産プロセスの概要を提供し、また、同定された主要な潜在的ハザードを限定的に示している。この文書は、適切な食品安全性評価の最初のステップを開始するための基礎となるものであり、最終的には、細胞ベースの食品の開発者と世界中の規制当局の両方が、食品安全保証システムの構築について十分な情報に基づいた決定を下すための支援となる。

背景文書3-規制枠組み

Background document three – Regulatory frameworks

https://www.fao.org/3/cc2353en/cc2353en.pdf

今後、多くの国が細胞ベースの食品を市場で販売するために様々な規制要件を設ける可能性がある。2022年現在、限られた数の製品が一国のみで認可されている状況であるが、細胞ベースの食品が他の場所で認可、及び/又は国境を越えて取引されるようになるのは時間の問題であろう。したがって、まず細胞ベースの食品が規制される可能性のある既存の枠組みを理解することが重要である。また、食品安全を目的とした具体的な規制を特定し、優良事例を認識し文書化することも重要である。様々な国や管轄区域で細胞ベースの食品に適用されている、あるいは適用されるだろう規制の枠組みについて最新状況を提供するために、文献レビューを実施した。レビューの結果は、食品安全当局が、効果的な国家食品管理システムのために、自国の規制枠組みの中で重要な要素を検討するための基礎となるものである。

 

[Codex]プレスリリース

-第22回CCLAC:キトでの会合は食の安全に関する緊急の課題に取り組む機会

CCLAC22 / Quito meeting an opportunity to address pressing food safety topics

23/10/2022

https://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/news-and-events/news-details/en/c/1610374/

2022年10月24日(月)にエクアドルのキトをホストとして第22回ラテンアメリカ・カリブ海地域調整部会(CCLAC)がバーチャル開催される。部会では、コーデックス委員会のSteve Wearne議長(英国)が、コーデックス戦略計画が、変化し続ける運営環境がもたらす新しい挑戦や課題へのコーデックスの対応に、いかに応答し続けるかを説明する予定である。

コーデックスメンバーによって特定された現在の課題、新たな課題、重要な課題に取り組むことを第一の戦略目標とし、6つの地域調整部会が団結して、最も差し迫った食品安全のトピックについて話し合い、見解を共有し、行動することを喚起している。

CCLACでの基調講演のテーマは「農業食料チェーンにおける新しいテクノロジー」であり、新旧の技術が生み出すかもしれない食品安全や貿易に関する問題に関するコーデックスの対応について、生産的な議論が期待される。

*CCLAC22

https://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/meetings/detail/en/?meeting=CCLAC&session=22

 

-第22回CCLA / コーデックスはこの地域でのSDG達成のためにも重要なツール

CCLAC22 / Codex, an important tool in the region also for meeting SDGs.

24/10/2022

https://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/news-and-events/news-details/en/c/1610577/

2022年10月24日から28日まで開催される第22回FAO/WHOラテンアメリカ・カリブ海地域調整部会(CCLA)では、エクアドル農業畜産大臣Bernardo Manzano氏が、この地域の33カ国から参加した120名以上の代表者を歓迎した。コーデックスの使命を強調するとともに、意思決定に向けたエクアドルの科学に基づいた防御態勢として、チョコレート中のカドミウムの最大基準値やチョコレートの分類に関する5つの国際規格の採択を成し遂げたことも強調した。

ラテンアメリカ・カリブ海地域は、重要な食料生産地域であり、国内及び輸出向けの食料資源を提供している。María Gabriela Aguinaga保健副大臣は、「私たちの国民の健康を保証し、栄養格差をなくし、安全な食品への公平なアクセスを確保するためには、各国からの確かな提案に基づいて食品安全を促進・強化することが不可欠である」と述べた。「コーデックス規格は、地域にとって、また持続可能な開発目標に沿って設定した目標を達成するために、重要なツールである」と付け加えた。

基調講演を行ったテキサス工科大学食品産業国際センターのMarcos X. Sanchez-Plata博士は、農業食料チェーンにおける新しいテクノロジーに関してコーデックスが果たす重要な役割について述べ、クラウド上で利用可能なデータへの移行について説明し、リアルタイムで実行可能な情報を通じて、現場でリスク評価を実施できる方法を考案した。コーデックスは、これらの技術がもたらす可能性を活用し、リスク管理者としての業務を向上させることができるとした。

 

-世界食品安全デー2022の報告書を発行!

The World Food Safety Day 2022 report is out!

26/10/2022

https://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/news-and-events/news-details/en/c/1610968/

世界食品安全デーは毎年拡大しており、今年も例外ではなかった。少なくとも109カ国で450以上のイベントが開催され、Twitterで世界食品安全デーのハッシュタグが8億以上発信された。第4回世界食品安全デーに行われた多くの祝典が「写真と数字で見る2022年の世界食品安全デー」と題した報告書で紹介されている。この8ページの報告書は国連の6つの公用語で提供され、世界各地のイベントの写真、FAOとWHOの事務局長や部門長からのビデオメッセージへのリンク、ウェビナーや会議で取り上げられたテーマの一部についての情報が掲載されている。

*報告書:World Food Safety Day 2022 in pictures and numbers

https://www.fao.org/publications/card/en/c/CC0798EN

*各地のイベント紹介

https://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/world-food-safety-day/wfsd-news/en/

*フォトアルバム

https://www.flickr.com/photos/faonews/albums/72177720298230208

 

[BfR]コロナモニター

BfR-Corona-Monitor | 2–3 November 2022

https://www.bfr.bund.de/cm/349/221102-bfr-corona-monitor-en.pdf

 

論文

-この種のものでは初めての報告:デマと戦うことと増加するオンライン嫌がらせへの取り組みを米国の研究者が世界で最も懸念している

First-of-its-kind report: US researchers most concerned globally about fighting misinformation and tackling increased online abuse

7-NOV-2022

https://www.eurekalert.org/news-releases/969957

学術出版社ElsevierとEconomist Impactによる研究者合同調査で、米国の研究者が一般の人々の科学研究への理解がパンデミック期間に悪化したと信じていることを示した。また研究者らはデマの急増とオンラインでの嫌がらせについて相当懸念している。

Confidence IN RESEARCH

https://confidenceinresearch.elsevier.com/

日本からの報告もある

6 INSIGHTS FROM JAPAN’S CONFIDENCE IN RESEARCH roundtable

https://confidenceinresearch.elsevier.com/item/6-insights-from-japans-confidence-in-research-roundtable

 

-欧州の食品ベースの食事ガイドラインの20%しか食品の持続可能性を含んでいない

Only 20% of European food-based dietary guidelines include food sustainability

8-NOV-2022

https://www.eurekalert.org/news-releases/970589

BMC Public Healthに発表されたカタルーニャ・オベルタ大学の研究

植物メインの食事が最も健康的で持続可能である

(欧州人には)

 

-職場のカフェテリアでの研究は、カロリー相当の運動量表示で食品の購入が変化する根拠は無いことを発見

Workplace cafeteria study finds no evidence that physical activity calorie-equivalent labelling changes food purchasing

8-NOV-2022

https://www.eurekalert.org/news-releases/970248

PLoS Medicineに発表された英国での実験。

2022年4月以降、従業員250人以上の事業者の食品や飲料にカロリー表示が義務化されている。多くの人がこれを歓迎しているものの、それによって消費カロリーが減るという根拠は乏しい。またカロリー表示の方法として、そのカロリーを消費するのにどのくらいの運動が必要かを示すものがあり、最近の系統的レビューでは単純なカロリーのみの表示より摂取エネルギーが減る可能性があると結論している。そこで2021年にイングランドの10の職場の食堂で12週間にわたる実験を行った。結果は全体的に購入カロリーが変化するという根拠は無かった。ただしカフェテリアによって大きな差があった。このことは表示の有効性には他の要因が影響することを示唆する。