2023-01-06

[ANSES]フランス領カリブ海のクロルデコン:食事暴露を低減する効果的な対策がある

Chlordecone in the French Caribbean: there are effective ways to reduce dietary exposure

08/12/2022

https://www.anses.fr/en/content/chlordecone-french-caribbean-ways-reduce-dietary-exposure

ANSESはフランス領カリブ海の住民のクロルデコンへの暴露に関連するリスクについて、新たな専門家評価を実施した。これらのリスクは、非公式ルートで入手した特定の食品の摂取に関するANSESの助言全てに従うことで大幅に低減できることが確認された。さらに、特に自家製の卵の汚染を避けるために、ANSESはJAFA家庭菜園プログラムの会員を増やすよう助言している。

クロルデコンへの過剰暴露リスク

ANSESは2021年に、新しい毒性学的・疫学的研究を踏まえてクロルデコンの外部(食事)健康参照値を改訂し、内部(血中)参照値を設定した。これらの値は、健康影響のリスクが除外できない上限値(閾値)に相当する。

本日発表した専門家評価で、専門家はKannari研究(2013-2014)による食事暴露量及び血中クロルデコン濃度のデータとこれらの値を比較した。フランス領カリブ海の住民の一部はクロルデコンに過剰暴露しているリスクがあることがわかった。

クロルデコンに関連するリスクを低減するために特定の食品の摂取を制限

クロルデコンへの過剰暴露を避けるために、ANSESは2007年の意見で、非公式ルートで入手した特定食品の摂取を制限する目的で3つの助言を発表した。

・手短なルート(レジャーや生計のための釣り、露天商から購入したもの)で入手した水産物の摂取を、週4回以下に制限する;

・地方行政令で禁漁とされる地域の淡水魚を摂取しないこと;

・汚染されていることがわかっている地域の家庭菜園でとれた根や塊茎の摂取を週2回以下に制限する。確信がない場合、JAFAプログラムのアドバイザーに問い合わせること。

ANSESは新しい専門家評価の中で、これら3つの助言全てに従うことで、暴露された住民は2021年に設定された外部健康値を超えるリスクを大幅に低減できると結論した。これらの助言は、すでに大多数の人々が実施しているフランス領カリブ海の食事習慣と一致していることも示されている。そのためANSESは、これらの摂取制限が、住民の健康リスクを低減する効果的な対策の可能性があると支持している。

自家製食品、特に卵の汚染管理

専門家評価では、汚染されていることがわかっている地域の自宅の卵の摂取がクロルデコン暴露に大きく貢献していることも明らかになった。そのためANSESは、地方保健機関が運営するJAFA家庭菜園プログラムの会員数と加入の強化を勧めている。これらのプログラムでは、土壌中のクロルデコンの濃度をモニターし、家庭菜園の適切な農耕技術について個別の助言を提供している。適切な行為は、汚染された土壌から動物をできるだけ隔離し、汚染されていない飼料を与えることなどである。

クロルデコンへの暴露を低減する他の方法を特定するには新たなデータが必要

この専門家評価は2013-2014年に実施したKannari研究のデータに基づいていた。規制ルートを通して入手した食品のより新しい汚染データも含まれていた。だがANSESは、非公式ルートで入手した食品の汚染と摂取習慣に関する新しいデータが不足していると強調している。

より新しい補完データを提供する新しい研究が進行中である。2021年初頭にANSESが開始したChlorExpo研究は、食品調達、調理、料理法に関する現場のデータを得ることを目的としている。これによりフランス領カリブ海のクロルデコンへの暴露を継続して低減するための実践的な助言を出せるようになる。さらに、もうすぐSanté publique Franceが開始するKannari 2バイオモニタリング研究により、ヒトの汚染データに基づくリスク評価が更新できるようになる。

最後に、ANSESは、フランス領カリブ海の住人を守るために講じられた対策を適応させ補完することを目的として、クロルデコン以外の化学汚染物質への暴露を含む調査範囲を広げるよう助言している。

専門家評価の数値結果

グアドループの成人集団の14%とマルティニークの25%は慢性内部毒性参照値(TRV)を越えている。慢性内部TRVは血中クロルデコン濃度を基にしている。ANSESは2021年にこの値を0.4 µg/L血漿に初めて設定した。ANSESは、この値は集団レベルでの血中クロルデコン濃度を説明するのに使用するものだと繰り返し述べている。

フランス領カリブ海の住人の2~12%は慢性外部TRVを越えている。この慢性外部TRVは食事暴露に関係し、0.17 µg/体重kg/日に設定されている。

TRVsが超過している割合は、汚染物質がないとわかっている地域に住んでいる人よりも汚染されていることがわかっている地域に住んでいる人の方が高い。

*集団専門家評価

The collective expert appraisal

https://www.anses.fr/en/content/collective-expert-appraisal

*詳細(フランス語)

https://www.anses.fr/en/system/files/ERCA2018SA0166.pdf

 

[FDA]ホメオパシー製品

Homeopathic Products

12/07/2022

https://www.fda.gov/drugs/information-drug-class/homeopathic-products

 ホメオパシーは1700年代に開発された代替医療であり、主に次の2つの原則に基づいている。

健康な人に症状を引き起こす物質は、希釈された状態で症状や病気の治療に使用できる:似ているものが似ているものを治す(like-cures-like)の原則

物質を希釈すればするほど強力なものとなる:極微量の法則(law of infinitesimals)

 つまり、ある物質が特定の症状を引き起こすのであれば、その症状を経験した人はその物質を用いた希釈溶液で治療することができるとしている。

 ホメオパシーと表示された製品について、これまで米国食品医薬品局(FDA)が認可したものはない。高度希釈したと表示されているが、一部の製品には測定可能な量の活性成分が含まれており、そのため重大な障害をもたらす可能性があるとFDAは懸念している。FDAはこれまで、不適切に製造された製品の検査を行っており、それらの製品は、希釈を誤り、汚染の可能性が高まるようなものだった。さらに、深刻な疾病や病状の治療用として販売された製品もあるため、FDAは懸念を示し消費者向けに複数の警告やリコールも発している。

連邦食品医薬品化粧品法のもとでは、ホメオパシー製品には他の医薬品の認可、異物混入、不正表示と同じ要件が求められている。

2022年12月6日、認可されていない、最もリスクの高いホメオパシー製品についてFDAが執行及び規制措置を優先するためのアプローチを記した最終ガイダンスを発表した。本ガイダンスは、違法に販売されているホメオパシー製品はいつでも FDA の執行措置の対象となると通知することが目的である。そのため、多くのホメオパシー製品は、このリスクに基づいたカテゴリーに該当しないであろう。

リスクの高い対象の製品カテゴリーは次の通り:

・安全上の懸念がある被害報告があった製品(例:MedWatch報告)

・重大な安全上の懸念の可能性がある成分を含む又は含むとされる製品

・経口と局所以外の投与経路の製品(例:注射や経鼻)

・重篤な及び/又は命にかかわる疾病や病状の予防や治療用に使用することを意図した製品

・脆弱集団向けの製品

・品質上の重大な問題のある製品

*ガイダンス:

Homeopathic Drug Products; Guidance for FDA Staff and Industry

https://www.fda.gov/media/163755/download

 

[USDA]Pesticide Data Program (PDP) 2021年次サマリー

2021 PDP Annual Summary (pdf)

December 2022

https://www.ams.usda.gov/sites/default/files/media/2021PDPAnnualSummary.pdf

USDAの農業マーケティングサービス(AMS)は、食品中の残留農薬に関する新規/更新

データを収集するために、毎年PDPを実施している。2021年度では、9州(カリフォルニア州、コロラド州、フロリダ州、メリーランド州、ミシガン州、ニューヨーク州、オハイオ州、テキサス州、ワシントン州)の支援により、サンプリング及び/又は試験プログラムの運用が実施された。採取された全10,127サンプルのうち、生鮮・加工果実又は野菜が94%を占め、対象品目は、ブルーベリー(生鮮及び冷凍)、ブロッコリー、カンタロープ、ニンジン、カリフラワー、セロリ、ナス、ブドウジュース、インゲン、桃(生鮮及び冷凍)、ナシ、プラム、夏カボチャ、ピーマン、タンジェリン、スイカ、冬カボチャであった。トウモロコシ粒とバターも検査され、それぞれ2021年度に採取されたサンプルの4.1%と1.7%を占めた。67.8%が国産品、30.8%が輸入品、0.9%が国別混合、0.5%が原産地不明であった。

COVID-19関連の閉鎖により、2021年度初期にPDPのサンプリングが中断され、このことが今年のデータ内の季節観測に影響を与えた可能性がある。COVID-19に関連する具体的なサンプリング情報はセクションIIに、COVID-19に関連するPDPラボ業務の遅延に影響を受けたサンプルの詳細はセクションIIIに記載されている。

検査したサンプルの99%以上がEPAが定めたトレランス値以下の残留であり、24.0%に検出可能な残留物はなかった。トレランス値を超える残留物は、検査した全サンプル(10,127サンプル)の0.53%(54サンプル)から検出され、このうち国産品が29(53.7%)、輸入品が24(44.4%)、原産地不明が1(1.9%)であった。トレランスが設定されていない残留物は、検査した全サンプルの3.7%(374サンプル)から検出された。このうち、国産品が220(58.8%)、輸入品が150(40.1%)、原産地不明が4(1.1%)であった。

2021年度のPDPデータベースファイル一式、及び過年度の年次サマリーやデータベースファイルは、PDPウェブサイト(http://www.ams.usda.gov/pdp)にて入手可能。また、PDPのデータは、PDPデータベース検索ツール(https://apps.ams.usda.gov/ pdp)からも入手できる。

 

[Codex]プレスリリース

-コーデックス議長のSteve Wearne氏はCAC45での参加者の前向きな姿勢を歓迎

Codex Chairperson Steve Wearne welcomes positive attitude of delegates at CAC45

23/12/2022

https://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/news-and-events/news-details/en/c/1627679/

2022年も終わりに近づき、コーデックス委員会のSteve Wearne委員長(英国)が第45回総会の成果を振り返った。以下、委員長のコメント:物理的な会合に回帰したことで、多くの人が2、3年ぶりに顔を合わせることができた。廊下やコーヒーを飲みながらの非公式な交流が、妥協と前進のきっかけとなることが多い。また、5日間で32時間という膨大な議論を経て、すべての議事を終えることができたことを、議長として嬉しく思う。議論の中には、合意形成に至らず、委員会が10年ぶりに規格の推進を投票で議決することになったものもあったが、全体を通して、友好的で規則に基づいた、お互いを尊重する議論が行われた。将来的な変革としては、コーデックス事務局長のTom Heilandt氏が、レポート採択へのアプローチの変革について、いくつかの考えを持っていることを認識している。バーチャルで8時間議論し、オンラインで意見を2回募集するというやり方は、現状では効率的でも付加価値のある手続きでもないと感じている。来年ローマで開催されるCAC46では、より効率的な話し合いが行われることを期待したい。

 

-ACTプロジェクトがネパールで始動、50人の関係者がAMRの優先に同意

ACT project launched in Nepal, 50 stakeholders agree on AMR priorities

22/12/2022

https://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/news-and-events/news-details/en/c/1627614/

「Codex AMR Texts(ACT)実施支援行動」プロジェクトの一環として、FAOネパールは2022年12月5日に食品由来薬剤耐性(AMR)に関するコーデックス規格の実施に関する1日ワークショップを開催した。政府、各省庁、学術界、民間企業(飼料生産、養殖、畜産、食品安全、試験所検査)から50名が参加した。

ワークショップでは、ACTプロジェクトの作業計画のもと、今後4年間に実施される具体的な活動を確認した。意識向上は優先事項として認識され、試験所技術者のトレーニング、AMR検査に提出されるサンプル数を増やすことも重要と考えられた。また、異なる政府機関やその他のAMR関係者(学術界や研究所など)との協力改善にも関心が集まった。さらに、AMRの診断検査を強化するために、人的・制度的な能力開発の必要性が指摘された。

ACTプロジェクトは、食品由来AMRの封じ込めと削減、抗菌剤の使用と耐性のモニタリングとサーベイランスに関連するコーデックス規格の実施を支援している。韓国が支援するこのプロジェクトは、ネパールだけでなく、ボリビア、カンボジア、コロンビア、モンゴル、パキスタンにおける食品由来AMRの管理改善にもつながる。

 

[EU]査察報告

-ドイツ―輸入管理

Germany 2022-7423―Import controls

08-12-2022

https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit-report/details/4555

EUに入る動物と商品の公的管理システムと、国境管理所(BCPs)のEU要件の遵守の検証について2022年3月10日~4月13日までドイツで実施された査察の結果。動物及び動物や非動物由来製品がEUに入ることに関する公的管理システムは一般的によく機能している。だが査察チームが評価したBCPsは最低要件を完全に遵守しておらず、公的管理の組織と実行に欠点が確認され、管理システムの有効性や遵守した商品だけがEUに入る適合性を害している。これらの欠点にもかかわらず、査察チームは違反動物や製品がEUに入るリスクは最小だと見なしている。

 

-ギリシャ―水産物

Greece 2022-7452―Fishery products

17-11-2022

https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit-report/details/4551

2022年5月3~17日にギリシャで実施した、公的管理システムの実施を評価するための査察。管轄機関は漁船(一次生産)と水揚げ地点の運営以外の水産物の生産チェーンを十分にカバーする公的管理システムを開発・実行している。漁船の登録不履行、操作者へのリスクに基づいたシステムがないことにより、EU規則遵守の確認能力が妨げられている。公的管理は特定の違反を確認するのに十分効果的ではない。深刻で長期にわたる職員不足、資源管理の非効率や柔軟性のなさが公的管理の適切な実施を妨げており、当局による管理の頻度が尊重されていない。適切な範囲の公的モニタリングが実施されており、研究所の有能なネットワークに支えられているが、ヒスタミンの分析手段は現在の参照方法と一致していない。

 

[EFSA]意見等

-全ての動物種に使用するためのスイートフェンネルの果実由来チンキ(スイートフェンネルチンキ)からなる飼料添加物の安全性と有効性

Safety and efficacy of a feed additive consisting of a tincture derived from the fruit of Foeniculum vulgare Mill. ssp. vulgare var. dulce (sweet fennel tincture) for use in all animal species (FEFANA asbl)

EFSA Journal 2023;21(1):7693  3 January 2023

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7693

(科学的意見)

-

全ての動物種に使用するためのパセリの果実由来チンキ(パセリチンキ)からなる飼料添加物の安全性と有効性

Safety and efficacy of a feed additive consisting of a tincture derived from the fruit of Petroselinum crispum (Mill.) Fuss (parsley tincture) for use in all animal species (FEFANA asbl)

EFSA Journal 2023;21(1):7694 3 January 2023

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/7694

(科学的意見)

 

-2022危機準備訓練:年次報告書

2022 Crisis Preparedness Training: Annual Report

EFSA Journal 2022;19(12):EN-7799  23 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/supporting/pub/en-7799

(外部科学報告書)

2022年にEFSAは重金属の化学物質汚染に関する2つの危機準備訓練イベントを開催した。

 

[EFSA]欧州食品リスク評価フェローシッププログラム(EU-FORA 2.0)シリーズ5

Volume 20, Issue S2 Special Issue: EU-FORA SERIES 5

December 2022

https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/toc/18314732/2022/20/S2

-序文

Foreword

EFSA Journal 2022;20():e200901 14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200901

EU-FORA(欧州食品リスク評価フェローシップ:European Food Risk Assessment Fellowship Programme)は、資格要件を満たし及び訓練を受けた食品リスク評価者の必要性の高まりに対処するというEFSAの大望の一環として2016年に開始した。過去6年間、EFSAは、食品の安全性及びリスク評価における欧州の次世代の専門家の育成を支援してきた。その間、このプログラムは食品リスク評価の絶え間なく変化する状況の課題に対処するために進化してきた。

-導入

Introduction

EFSA Journal 2022;20():e200902  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200902

今年は、EFSAのフェローシッププログラム(EU-FORA 2.0)の新たな章が始まる機会でもある。改善されたフェローシップは、新しい組織の参加をもたらし加盟国の支援範囲も拡大した。

-スペイン製品のフードチェーンに沿った定量的微生物リスク評価を開発するためのツールでの研修

Training in tools to develop quantitative microbial risk assessment along the food chain of Spanish products

EFSA Journal 2022;20():e200903  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200903

-より健康的で持続可能な食事モデルに向けて食生活を変えるリスク・ベネフィットに関する変化

Changes in terms of risks/benefits of shifting diets towards healthier and more sustainable dietary models

EFSA Journal 2022;20():e200904 14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200904

このプロジェクトの目的は、現在の食習慣とベジタリアンやペスクタリアン(訳注:肉類は食べず魚介類は食べる菜食主義者)等の新しい代替食事シナリオを比較することで成人の食事の栄養の適切性と環境への影響を調査することだった。現在の環境の影響の明確な評価は難しい。現在の食事による環境影響と世界的に持続可能な食事シナリオの明確な評価は難しい。最後に、国の食品ベースのガイドラインは持続可能性に向けた望ましい食生活の変化を実現するために、伝統的な食習慣や地元の食品の入手可能性の範囲内で、健康的で持続可能な食生活の助言を提案することによって調整されるべきである。

-食品マトリクスの影響を化学物質の食品汚染物質リスク評価に導入

Implementation of food matrix effects into chemical food contaminant risk assessment

EFSA Journal 2022;20():e200905  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200905

EU‐FORA作業プログラムの第1部(WP1)では、食品リスク評価に用いる2つの重要な単語「ハザード」と「リスク」の実際の翻訳に洞察を与えることを目的とした。作業プログラムの第2部(WP2)では、化学物質のリスク評価(CRA)における特別な領域として、重金属や半金属(カドミウム、鉛、水銀、ヒ素)のバイオアクセシビリティ(bioaccessibility)とバイオアベイラビリティ(bioavailability)への食品マトリクスによる影響に焦点を当てた。

-消費者と水生生物のリスク評価のための植物保護製品の残留に及ぼす飲料水処理工程の影響:理論的及び実験的研究

Impact of drinking water treatment processes on the residues of plant protection products for consumer and aquatic risk assessment: theoretical and experimental studies

EFSA Journal 2022;20():e200906  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200906

残留農薬は地下水や地表水に存在する可能性があり、塩素など水消毒処理に使用される化学物質に反応する可能性がある。EU‐FORAフェローシッププログラムでは、塩素消毒で処理された水の中のイミダゾリノン系やスルホニル尿素系の除草剤の性質を研究した。結果から、除草剤の分解はpHと塩素/クロラミン濃度両方に依存することが示された。

-マイコトキシンの影響の毒性学的研究に対する革新的なin vitroアプローチ

Innovative in vitro approaches to toxicological investigations of mycotoxins effects

EFSA Journal 2022;20():e200907  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200907

マイコトキシンの同時暴露の毒性データに関する知見は限られている。そのため、革新的な細胞モデルを用いてマイコトキシン(オクラトキシンA、フモニシンB)の複合汚染への暴露によるヒトのリスクを評価することを目的とした。結果は、マイコトキシンのリスク評価においてより予測的で現実的なアプローチを用いることによる優れた理解の可能性を示している。

-リスク評価におけるNAMsとオミクスデータの使用

The use of NAMs and omics data in risk assessment

EFSA Journal 2022;20():e200908  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200908

-食品中の昆虫とそのアレルギー誘発性評価に関する関連性

Insects in food and their relevance regarding allergenicity assessment

EFSA Journal 2022;20():e200909  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200909

昆虫は循環型農業に貢献し、伝統的なタンパク質源を補完する理想的な候補である。トレーニングとして、先ずは食品としての昆虫とアレルゲン性について文献検索を実施した。さらに昆虫のアレルギー誘発性に関する食品加工の影響を分析するために様々な食品サンプルを用意し、消化管を模倣したプロトコルを用いて人工的に消化した。結論は、食品安全、特に新規食品としての昆虫とその安全性評価においてより幅広い視点で捉えることができた。

-新規食品:昆虫のタンパク質のアレルギー誘発性評価

Novel foods: allergenicity assessment of insect proteins

EFSA Journal 2022;20():e200910  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200910

昆虫は有望なタンパク質源であり、新規食品・飼料タンパク質としての使用に大きな可能性があると報告されている。EU‐FORAフェローの主な目的は、新規食品や新しい代替タンパク質源のアレルギー誘発性を予測する現在の戦略をレビューし、評価し、ギャップを特定することや、アメリカミズアブ(Hermetia Illucens)の幼虫を用いたケーススタディなどで昆虫タンパク質のアレルギー誘発性評価を習熟し、毒性学的な栄養及び微生物リスクを含む新規食品として昆虫をとらえたリスク評価を考慮し、理解し、実施することである。

-ポーランドで市販されているライ麦パンの複数の化学汚染物質の食事暴露とリスクキャラクタリゼーション

Dietary exposure and risk characterisation of multiple chemical contaminants in rye‐wheat bread marketed in Poland

EFSA Journal 2022;20():e200911 14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200911

この作業の目的は、ポーランドで市販されているライ麦パン中の化学汚染物質に関する実態データを集め、その後ポーランドの様々な年齢集団のこれらの化学物質の食事暴露によるリスクを推定することだった。調査された分析物は様々な分類に属している:加工汚染物質類(アクリルアミド)、マイコトキシン類(デオキシニバレノール、デオキシニバレノール-3-グルコシド、ニバレノール、ニバレノール-3-グルコシド)、環境汚染物質類(アルミニウム、ヒ素、カドミウム、クロム、鉛、ニッケル)。

-分子相互作用のin silico解析に基づくミツバチのストレス要因のリスク評価

Risk assessment of honey bee stressors based on in silico analysis of molecular interactions

EFSA Journal 2022;20():e200912  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200912

ミツバチコロニーの減少は農薬などいくつかのストレス要因に関連している。現在の欧州のミツバチの農薬リスク評価は致死的影響に焦点が置かれており、亜致死的影響に関する考察がない。第一段階として、セイヨウミツバチのタンパク質と農薬のリガンド間の分子レベルでの相互作用の可能性を特定した。これらの結果を文献から得たデータと比較すると、潜在的な亜致死的影響と関連していた。最後に、特定されたミツバチの分子的ストレス要因のリスク評価分析が行われた。この研究結果はミツバチの潜在的な新しいストレス源を特定するための出発点である。

-データ分析ツールの適用による新興リスクの特定

Emerging risk identification by applying data analytical tools

EFSA Journal 2022;20():e200913 14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200913

このプログラムは、新興リスク同定プロセスで採用される可能性のある様々なツールの概要を提供し、様々な利害関係者が新しいフードチェーンの安全問題に備えるためのいくつかの異なる活動で構成されている。目的は、組織の作業経験と完全に統合されること、新興リスク同定分野のデータ分析や可視化ツールの分野に関連する科学的側面の知識を増し、結果を様々なEUの利害関係者の環境評価に実装することである。

-FoodSafety4EU:将来の食品安全システムの道を開く

FoodSafety4EU: paving the way for the food safety system of the future

EFSA Journal 2022;20():e200914  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200914

3年間EUが資金提供するFoodSafety4EUは、新しい透明性規則(EU/2019/138)の下で2021年1月に開始された。このHorizon 2020プロジェクトは将来のEUの食品安全システム(FSS)の複数関係者のプラットフォームの構築に焦点を当てている。FoodSafety4EUネットワークは現在、23のコンソーシアムパートナーと約50人の利害関係者で構成されている。

-生体異物のリスク評価のための微生物叢解析:トキシコマイクロバイオミクス、生体異物のリスク評価における腸内微生物叢の組み込み、One Healthの有益な成分の特定

Microbiota analysis for risk assessment of xenobiotics: toxicomicrobiomics, incorporating the gut microbiome in the risk assessment of xenobiotics and identifying beneficial components for One Health

EFSA Journal 2022;20():e200915  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200915

-生体異物のリスク評価のための微生物叢解析:One Healthアプローチの下での累積生体異物暴露とヒトの腸内細菌層の影響

Microbiota analysis for risk assessment of xenobiotics: cumulative xenobiotic exposure and impact on human gut microbiota under One Health approach

EFSA Journal 2022;20():e200916 14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200916

-魚介類の次世代リスク・ベネフィット評価のオープン・FAIRデータ管理実践の枠組みの開発

Developing a framework for open and FAIR data management practices for next generation risk- and benefit assessment of fish and seafood

EFSA Journal 2022;20():e200917  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200917

食品のリスク及びリスク・ベネフィット評価は複雑な課題実習で、ハザードや暴露情報を得るには、いくつかの分離された個別の独立したデータベースにアクセスして使用することが必要である。そのようなデータベースから得たデータは理想的にFAIR原則(データを見つけられる(Findable)、データにアクセスできる(Accessible)、データを相互運用できる(Interoperable)、データを再利用できる(Reusable))に従うことになる。だが、これらの原則の1つ以上に従わないケースによく遭遇する。このプロジェクトでは、我々はリスク評価で通常使用される既存のデータベースがFAIR原則に従っているかどうか評価することを目指している。

-フードチェーンに沿った、集団における腸内ウイルスのリスク評価

Risk assessment of enteric viruses along the food chain and in the population

EFSA Journal 2022;20():e200918  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200918#metadata

-伝統的な肉ベースの食事から代替食パターンへの転換のリスク・ベネフィット評価

Risk–benefit assessment of shifting from traditional meat‐based diets to alternative dietary patterns

EFSA Journal 2022;20():e200919  14 December 2022

https://www.efsa.europa.euen/efsajournal/pub/e200919

このプロジェクトは、化学物質のリスク評価分野のフェローを訓練し、植物由来の代替肉への変更がどのように新興リスクの発生源となるのか、包括的な概要を提供することを目的とした。このプロジェクトの結果から、植物由来の代替肉中の自然毒の存在と、新しい製品や食事パターンを考慮した、規制の枠組みの改善の必要性を反映した概念が示された。

-食品接触物質のリスク評価

Risk assessment of food contact materials

EFSA Journal 2022;20():e200920  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200920

EUでは、市販される食品と接触することを意図した物質や素材は、いわゆる食品接触物質(FCM)の「枠組み規制」と言われる規則(EC) No 1935/2004の要件に従う必要がある。FCMは、プラスチック、紙、金属、ガラスなど、食品に移行する可能性のある化学物質を含む幅広い物質を対象としている。対象とされない新規・特定材料の安全性は個別に評価する必要がある。この提案されたEU-FOR Aプログラムでは、フェローは申請文書の毒性データの評価や研究所で実施した移行試験の方法論で経験を積む機会を得た。

-ポーランドの短いサプライチェーンで生産された動物由来伝統食品の定量的微生物学的リスク評価

Quantitative microbiological risk assessment of traditional food of animal origin produced in short supply chains in Poland

EFSA Journal 2022;20():e200921  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200921

-食品安全の化学物質リスク評価に、食品サンプル中の農薬を迅速に高感度で検出するバイオセンサーの利用

Use of biosensors for rapid and sensitive detection of pesticides in food samples for food safety chemical risk assessment

EFSA Journal 2022;20():e200922  14 December 2022

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/e200922

このプロジェクトでは、残留農薬量を検出できる潜在的なバイオセンサーとしてAlicyclobacillus acidocaldarius由来耐熱性エステラーゼ-2 (EST2)の二重変異体を研究した。この酵素ベースのバイオセンサーの利用は、特に有機リン酸系農薬の有毒化学物質を管理するための食品トレーサビリティや環境モニタリングの分野で適用できる。

このバイオセンサーは、果物やジュースなどの実際の食品サンプル中の農薬の有無の検査にも使用される。この研究は、異なる農薬選択性を持つ変異体のスクリーニングを目的とした効果的な蛍光バイオセンサー開発の出発点となる。

 

[BfR]肥育動物における抗生物質の使用は減少傾向

Declining Trend in the Use of Antibiotics in Fattening Animals

20.12.2022

https://www.bfr.bund.de/en/press_information/2022/47/declining_trend_in_the_use_of_antibiotics_in_fattening_animals-309389.html

BfRは抗生物質の使用頻度と消費量に関するデータを評価する

肥育動物における抗生物質の使用は次第に減少している。これは、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)による「使用頻度と抗生物質消費量2018-2021:食肉生産用に飼育される牛・豚・鶏・七面鳥における動向」の報告結果である。BfRは毎年、ドイツ連邦州が提供する抗生物質の使用に関するデータの評価や、抗生物質耐性のリスク評価の実施を任されている。今回発表されたこの報告書では、BfRは2018~2021年のデータを十分考慮し、2017年のものと比較している。「いいニュースは、変動はあるものの、検討した家畜種で抗生物質の総消費量が減少していることである」と、この報告書を作成した疫学・人畜共通感染症及び薬剤耐性ユニット長であるAnnemarie Käsbohrer医学博士は述べた。屠殺する動物の抗生物質耐性菌の発生も減少している。「だが、この減少は動物種によって異なり、観察された消費量の減少を反映していない。我々は、耐性率を長期的に低下できるよう、細菌の耐性行動をよりよく理解し、削減するための取り組みを強化する必要がある」とKäsbohrer博士は述べた。

報告書「治療頻度と抗生物質消費量2018-2021:食肉生産用に飼育される牛・豚・鶏・七面鳥における動向」(ドイツ語)

https://www.bfr.bund.de/cm/343/therapiehaeufigkeit-und-antibiotikaverbrauchsmengen-2018-2021-bericht.pdf PDF-File (2.5 MB)

BfRはこの報告書で4つのパラメーターに焦点を当てた。最初に、農場レベルでの使用頻度を検討した。この値は、家畜動物に抗生物質効果のある物質を6ヶ月のうち平均して何日適用したかを示している。これらの値は肥育若鶏と七面鳥、肥育子豚と豚、肥育牛と肉牛に算出された。6ヶ月間抗生物質を全く使用しない農場、いわゆるゼロユーザー農場も特定できた。さらにBfRは、抗菌物質がどの動物種に最も多く使用されているか(集団全体の使用頻度)、その期間に消費量がどのくらい生じたかを調査した。

半年あたりのゼロユーザー農場の割合が最も高かったのは肉牛だった。これらの農場の約85%は6ヶ月間抗生物質を使用しなかった。肥育牛農場の半数強は、6ヶ月間全く抗生物質を使用しなかった。肥育豚と子豚の場合、6ヶ月間抗生物質を使用しなかったゼロユーザー農場は農場の約1/4を占めた。肥育若鶏と七面鳥では、ゼロユーザー農場の割合は半年あたり15~20%と幅があった。

2017~2021年の間に常に均等に分布しているわけではないが、全ての動物種の抗生物質の消費量に減少傾向が見られる。抗生物質の最大量は今なお肥育豚で使用され、次いで子豚、七面鳥、鶏、牛の順である。肥育肉牛の消費量はごくわずかである。特に、ヒトの治療に特に重要な抗生物質グループの減少が全ての動物種で観察されたことも歓迎される。

個々の半年間ではより高い値が見られたが、多くの場合、個々の農場での抗生物質の平均投与頻度は減少傾向を示した。しかしながら、2017~2021年には肥育若鶏農場で明確な上昇傾向が見られた。農場レベルでの平均治療頻度は4.8日増えた。

集団全体の治療頻度はこの傾向を反映している。最大頻度が観察されたのは家禽で、平均使用頻度は20~25日、次いで肥育牛と子豚が10~15日、肥育豚は約3日間だった。

BfRは、肥育動物の抗生物質の使用について現在入手できるデータと、ドイツ連邦州とドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)が共同で行った耐性モニタリングからのデータも比較した。耐性モニタリングでは、動物の種別によって差はあるものの、個別の活性物質では耐性率の増加より減少が観察された。しかしながらその変化は、個別の動物種で最も使用削減した抗生物質クラスに必ずしも関連していなかった。

従って、BfRの見解によると、耐性の広まりを防ぎ、長期にわたって耐性率を低下させるには、抗生物質の使用を削減する努力を継続・強化しなければならない。今回発表されたこのBfRの報告書の法的根拠は、2022年1月28日の動物用医薬品規則(TAMG)である。この法律では、食肉生産用の牛、豚、鶏、七面鳥を飼育する農場は、抗生物質の使用を文書で記録し、担当する州機関に報告しなければならないと規定している。このデータは匿名形式でBfRに転送される。

BfRは、2018年の上半期から2021年の下半期まで半年間のデータ8回分を評価し、2017年の状況と比較した。今後BfRは、使用頻度や抗生物質の消費量が時間と共にどのように進展するか、毎年調べる予定である。これは、ドイツ政府の抗生物質最小化戦略の効果や、畜産からヒトへの耐性菌の伝染リスクを評価するための重要な構成要素である。

抗生物質最小化戦略の目的は、ヒトに感染する可能性のある病原菌の耐性の発生を防ぐために家畜の抗生物質の使用を削減することである。人々が抗生物質耐性菌と接触すると、病気の治療に必要な抗生物質療法が効かなくなる。抗生物質の使用に関するデータの評価や細菌耐性発生のリスク評価により管轄機関が消費者保護政策を実行する基盤が提供される。

 

[BfR]あなたの食品に何が入っているか-BfR MEALスタディ

What’s in your food - the BfR MEAL Study

05.01.2023

https://www.bfr.bund.de/cm/364/whats-in-your-food-the-bfr-meal-study.pdf

 

BfR MEAL Study

05.01.2023

https://www.bfr.bund.de/cm/364/bfr-meal-study-flyer.pdf

2023年版パンフレット

 

[BfR]ヘンプを含む食品の健康リスクに関するよくある質問

Frequently asked questions about the health risks of foods containing hemp

06.08.2021

BfR FAQ, 16 July 2021

https://www.bfr.bund.de/en/frequently_asked_questions_about_the_health_risks_of_foods_containing_hemp-279961.html

 

*訳注1:Cannabis sativa L.は大麻草/アサの学名である。EUでは、「Common Catalogue of Varieties of Agricultural Plant Species」に登録され、精神活性成分のテトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量が0.2%(w/w)を超えないCannabis sativa L.のみ栽培が許可されており、一般的にヘンプ(英:hemp)と呼ばれている。このQ&Aでは、原文に合わせてhempは「ヘンプ」、hemp plantは「ヘンプ植物」、cannabisは「大麻」と訳すことにした。

 

*訳注2:2021年公表のFAQを下記の食品安全情報で紹介している。当該記事からの更新部分については質問の文頭に★印を付記した。BfRが実施した乳牛へのヘンプサイレージの給餌試験の結果、THC前駆体からTHCへの熱変換に関する知見などが追加されている。

食品安全情報(化学物質)No. 18/ 2021(2021. 09. 01)別添

【BfR】ヘンプを含む食品の健康リスクに関するよくある質問

http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2021/foodinfo202118ca.pdf

 

*訳注3:FAQの更新版には、EUで栽培が認可されているヘンプのTHC含量の上限について「2023年1月1日からおそらく0.3%」との記載がある。これは、2023年1月1日から5年間のEUの農業補助に関する共通農業政策(Common Agricultural Policy)を記したRegulation (EU) 2021/2115において、対象のヘンプ生産の規定がTHC濃度0.3%未満とされていることから、栽培の認可についても現行の0.2%から0.3%に変更されると予測しているためと思われる。

 

<以下、FAQ更新版より>

BfRは「ヘンプを含む食品」をテーマにしたFAQをまとめており、これは2021年7月16日に公表したFAQの更新版である。

ヘンプとは何か?

ヘンプは、アサ科(Cannabaceae)に属する植物である。欧州で一般的に栽培されるのはCannabis sativa L.である。

★ ヘンプは何に使われているか?

ヘンプは、最も古くから栽培され、有用な植物の1つと考えられている。植物のさまざまな調合物は、古くから薬としてだけでなく、快楽物質としても使用されてきた。産業界は、ヘンプを主に繊維を得るために使用し、織物などを製造している。20世紀には、有用な植物としてのヘンプの産業的重要性は低下したが、現在、栽培は再び増加している。ヘンプを含む食品の販売数は近年増加している。とりわけ、主にヘンプの種子を原料として含む製品である。ただし、ヘンプの葉や花から生産されるお茶もある。

欧州連合(EU)では、この目的のために認可された特定のヘンプ品種から得られるヘンプオイル、ヘンプミール、又はオイル製造から得られる油粕の形態のヘンプ種子は、主に動物の飼料として使用される。

ヘンプを含む食品で市販されているものはどれか?

近年、ヘンプを含む食品の種類が増えている。ヘンプ種子は主原料として最もよく使用される。例えば、以下のようなものがある:

ヘンプ種子由来の食用油

その油を原料とする食品

ヘンプ種子あるいはヘンプ種子由来のプロテイン粉末を含む食品(例:ミューズリーバー、パスタ)

ヘンプ種子を主原料としたプロテイン粉末を含むダイエタリーサプリメント

さらに、ヘンプ植物の他の部位を含む食品もある。例えば:

ヘンプの葉や花から作られた茶

葉や花からの抽出物を含むその他の食品(例:エネルギードリンク)

ヘンプ植物の葉や花からの抽出物を含むフードサプリメント

 

*重要:ヘンプを含む製品は一般的に、麻薬や医薬品に分類されず、食品自体が安全であると判断された場合にのみ、食品として販売することができる。(次の質問項目も参照:「ヘンプを含む食品は麻薬法に該当するか?」及び「ヘンプに0.2%THCという最大基準値が適用されるというのは本当か?」)

 

ヘンプを含む食品は麻薬法に該当するか?

大麻(マリファナ、Cannabis属の植物及びその一部)、大麻樹脂(ハシシ、Cannabis属の植物から分泌される樹脂)、及びTHCとその他のテトラヒドロカンナビノールは麻薬法(BtMG)で麻薬として指定される。例外は、中でもヘンプ種子で、成分としてTHCを含んでいないため、無許可栽培を意図しない限り麻薬として指定されない。したがって、通常は種子から製造された食品は麻薬法の対象ではない。

種子以外の植物の部位は、非常に特殊な条件の下でのみ麻薬法の適用が免除されるため、産業用ヘンプの葉や花を含む製品の場合は状況が異なる可能性がある。ここでの法的状況は非常に複雑である。個々のケースで、こうした製品は特定の状況下では管轄当局によって麻薬とみなされることがある。ドイツ連邦医薬品・医療機器研究所(BfArM)の連邦アヘン庁は、麻薬法に関する質問について法的拘束力のある情報を提供している。

*BfArM:https://www.bfarm.de/EN/Federal-Opium-Agency/_node.html (英語版)

 

ヘンプにはどのような成分が含まれているか?

これまで、560以上の物質がヘンプ植物で同定されている。種子には脂肪油(25-35%)とタンパク質(20-25%)を多く含み、すべての必須アミノ酸と脂肪酸を含む。ナッツ類、亜麻仁あるいはチアシードに匹敵する脂肪酸組成で、不飽和脂肪酸の比率が高く、栄養学的に価値があると考えられている。

種子と根を除き、ヘンプ植物の全体には腺毛があり、その腺毛からは約80-90%をカンナビノイドで構成される樹脂が生成される。現在までに、一般的なカンナビノイドであるTHCやカンナビジオール(CBD)も含め、120以上の異なるカンナビノイドが確認されている。腺毛がないため、種子の成分としてカンナビノイドは検出されない。ヘンプ種子やヘンプ種子から作られる食品(ヘンププロテイン、ヘンプ種子オイル)で検出されるTHCは、収穫時や加工時に植物のTHCを含む部位と接触したことによる汚染を示すと考えられる。

 

ヘンプ植物のどの成分が中毒を引き起こすのか?

大麻製品の精神活性作用は、主にカンナビノイドのTHCが原因である。THCには知覚変化の作用がある。THCはヘンプの天然成分で、植物の葉、葉脈、花序にある腺毛で生成される。特に雌株では、花序の部分に多くの腺毛が見られる。一方、ヘンプ種子には腺毛がないため、THC成分は含まれない。しかし、例えば収穫時などにTHCを含む植物の一部と接触すると、種子が汚染される可能性はある。また、ヘンプ植物に含まれるTHCの濃度は品種によって異なる。ドイツにおいて産業用ヘンプとして栽培が許可されている品種では、THCの上限は現在0.2%に設定されている(2023年1月1日からおそらく0.3%)。

ヘンプ植物にはTHCとTHCの生合成前駆体であるTHCカルボン酸(THCA)が混合して含まれているが、THCカルボン酸には精神活性作用はない。欧州食品安全機関(EFSA)が引用したJungらの文献によると、生鮮植物材料では、THCとTHCAの総量の約90%がTHCAの形態である。この記述はJungらの文献にあるが、実験的根拠による裏付けはない。他の著者による研究では、ほとんどの場合、THCAの方が多いが、THCAとTHCの正確な比率は多岐にわたることが示された。熱にさらされると、THCカルボン酸はTHCに変換される。ある種の分析法では、THCとTHCカルボン酸の合計しか測定できないため、この合計を総THCとも呼ぶ。

THCに加え、ヘンプ植物に少量含まれる他のカンナビノイドにも精神作用がある。しかし、産業用ヘンプに多く含まれているカンナビノイドのCBDは、CBDのカンナビノイド受容体への親和性が極めて低いため、THCで言われるような精神作用はない。

 

★ 産業用ヘンプ種は、「薬用ヘンプ」や「医療用ヘンプ」と何が違うのか?

産業用ヘンプ(産業用ヘンプ、繊維用ヘンプ)は、薬用ヘンプや医療用ヘンプと比較して、カンナビノイドTHCの含有量が低いだけのヘンプ品種の名称である。一部の例外を除き、産業用ヘンプも麻薬法の規則の対象となる。EUでは、厳しい条件のもと、産業用ヘンプの栽培が認められている。ただし、EUのCommon Catalogue of Varietiesに掲載されている認証品種に限り、栽培が可能である。ドイツでは、産業用ヘンプの栽培は連邦農業・食糧庁(BLE)の監視下に置かれている。法的規則によると、ドイツで産業用ヘンプの栽培が認可されている品種は、現在、乾燥質量に対するTHCの含有量が0.2 %(2023年1月1日からおそらく0.3 %)を超えてはならない。

詳細については、以下(ドイツ語): https://www.ble.de/DE/Themen/Landwirtschaft/Nutzhanf/nutzhanf_node.html

 

ヘンプを含む食品にはどのような健康リスクがあるか?

規則 (EC) No.178/2002の第14条に従って、食品は安全であると認められなければならない。これはヘンプを含む食品にも適用され、食品の安全性を証明する責任は主に食品事業者にある。

健康リスクの可能性に関して、ヘンプを含む食品の場合に留意すべき点は精神活性成分のTHCである。慢性毒性に関する動物実験から、THCの長期的摂取がさまざまな望ましくない作用を引き起こすことがわかっている。これには、体の免疫系の抑制(免疫抑制作用)及び生殖機能への悪影響が含まれる。しかし、これらの影響は摂取量が多い場合にのみ認められる。ヘンプを含む食品のリスク評価では、摂取量が少なくても生じる精神活性作用が主な懸念となる。

2015年、EFSAは、ヘンプを含む食品から発生しうる健康リスクを評価した。それによると、ヒトでは少量のTHCを摂取後、中枢神経系と循環器系への影響が予想され、結果として例えば、気分の落ち込みや疲労感などを生じる可能性がある。これらの影響はすでに、1人当たり2.5 mg (体重70 kgとして体重1 kgあたり約0.036 mgに相当)の単回及び反復摂取の両方で観察されていた。そのためEFSAはこの用量を「最小毒性量」(LOAEL)とし、これをもとに0.001 mg THC/kg体重を急性参照用量(ARfD)として設定した。この値は、一日のうち1回の食事で又は数回の食事で、検知できる健康リスクが認められないと推定されるTHCの最大摂取量を示す。

 

THCの評価には、特に厳しい基準が適用されたというのは本当か?

EFSAとBfRによるTHCの毒性学的評価は、確立されたガイドラインに沿って行われた。まず初めの段階では入手可能な研究に基づき、毒性学的に最も感受性の高いエンドポイントが同定され、2.5 mg/人がLOAELとみなされた。

さらに、LOAELを参照点とし、外挿係数30を用いて、ARfDを導出した。国際的な基準に従い、外挿係数はLOAELから「有害影響が全く観察されない最大用量」(NOAEL:無毒性量)に外挿するための係数3と、集団間の感受性の違いを考慮するための係数10で構成される。導出されたARfDは、集団の中で感受性の高い人も十分に保護されるように設定された。使用された外挿係数の大きさは毒性評価の国際基準に合致する。

             

THCの摂取量が特に多くなる食品は?

BfRは現在、ヘンプを含む食品の消費量に関する代表的なデータを持っていないため、信頼できる暴露評価はまだできていない。

しかし、BfRが行った暴露推計によると、THC濃度の高いヘンプ種子オイルを摂取すると、EFSAが導出したTHCのARfDを超える可能性がある。特に子供は体重が少ないため、THCを過剰に摂取するリスクが高い。

ヘンプ種子には天然のカンナビノイドは含まれない。しかし、抽出や加工の過程で、ヘンプ種子はカンナビノイドにより汚染される可能性がある。一般的に、収穫やその後の加工を適切な条件で行うことにより汚染濃度を低く抑えることができる。したがって、ほとんどのヘンプ種子オイルのTHC濃度は、毒性学的に無害と考えられるほど低い。

しかし、ヘンプ茶及びヘンプの葉や、時には花を含むその他のヘンプ製品の場合は、THCは汚染物質ではなく、成分の1つである。THCの濃度は、ヘンプの品種やさまざまな環境要因によって大きく変動する。それゆえBfRの見解では、これらの食品のTHC濃度を確実に低減できるかどうかは疑問である。

いわゆるCBDオイルは、カンナビノイドのカンナビジオール(CBD)を主成分とする。CBDはカンナビノイド受容体への親和性が極めて低いため、THCで述べられるような精神活性作用はない。ヘンプ抽出物から作られたCBDオイルには、THCも含まれている。現在のところ、CBDオイルに含まれるTHC濃度に関する信頼できる情報はない。リスク管理担当のドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)は、「フードサプリメントも含め、食品に含まれるカンナビジオール(CBD)が欧州連合(EU)内で合法的に販売できる事例は、現在のところないと認識している」と述べていることを指摘しておく。

 

★ ヘンプの葉や花から茶の煎じ汁へのカンナビノイドの移行はどの程度なのか?

データベースが少ないため、これまでの声明では、煎じる際のTHCの移行については保守的(100%移行)に仮定していた。データ状況を改善するために、THCを含む個々のカンナビノイドの移行について、最近BfR独自の研究で調査が行われた。ここでは、茶を煎じる際の物質依存的な移行が観察された。カンナビノイド酸は、対応する中性型のカンナビノイドよりも高い移行を示した。THC-では、平均して1%以下の移行が確認された。茶の煎じ温度100 ℃では、THC-カルボン酸(THCA)のTHCへの熱変換は観察されなかった。

 

★ 生合成前駆物質であるTHC-カルボン酸はどの程度食品加工中にどの程度、精神活性物質であるTHCに変換されるのか?

高温でTHC-カルボン酸(THCA)の脱炭酸によりTHCに変換されることが、これまでの研究で知られている。BfR独自の研究では、この熱変換が食品加工に関連する温度でも起こるかどうかを調べた。ヘンプ種子の食用油を加熱した場合(180 ℃で10分間)、THCの比較的小さな増加(10%未満)が検出された。ヘンプの葉と花の茶では、100 ℃でTHCAからTHCへの熱変換は観察されなかった。現在、BfRにおいて、ヘンプを含む食品の加工に関するさらなる研究が行われている。

 

食品に含まれるTHCの最大基準値はあるか?

現在、EUにおいて食品中のTHCに対する統一された最大基準値はない。ヘンプ種子やヘンプ種子オイルのような、ヘンプ種子由来の製品に対するEU最大基準値の導入については、現在EUで議論されている。ドイツでは、2000年に旧連邦消費者健康保護・獣医学研究所(BgVV)が様々な食品群におけるTHC最大濃度に関するガイダンス値を発表した。これは、ノンアルコール飲料及びアルコール飲料では0.005 mg/kg、食用油では5 mg/kg、その他の全ての食品及びそのまま喫食可能な食品では0.150 mg/kgであった。BfRの見解では、現在の知見に基づき、これらのガイダンス値はもはや十分な保護レベルを保証するものではない。これは、ガイダンス値を遵守しても、特に油でARfDを超える可能性があるためである。さらに難しいのは、「その他の全ての食品」というグループに、現在では、2000年にガイダンス値が設定されたときには市場に出回っていなかった多数のヘンプを含む食品が含まれるという事実である。このような食品について当時は考慮されていないため、このガイダンス値の妥当性にさらに疑問が生じる。

法的に最大基準値が定められていなくても、ヘンプを含む食品は恣意的にTHC濃度を高くして市場に出すことはできない。むしろ、ヘンプを含む食品は、規則 (EC) No.178/2002に基づく食品法の一般条項を遵守しなければならない。ヘンプを含む製品は一般的に、麻薬や医薬品に分類されず、食品自体が安全であると認められて初めて、食品として販売することができる。市販前に法的要件への適合性を確認することは食品事業者の責任である。

2023年1月1日より、ヘンプの種子及び由来製品に含まれるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)の最大基準値が、規則(EU)2022/1393に規定されている通りEUで適用されることになる。

 

ヘンプに0.2%THCという最大基準値が適用されるというのは本当か?

THCが0.2 %含有量(2023年1月1日からは0.3%と思われる)というのは、主にハーブ原料の麻薬分類に関係する。THC濃度がより高いものは一般的に麻薬法の対象となるので、そのような植物の部位は通常食品として使用することはできない。またTHC濃度の低いヘンプ植物であっても、例えば、中毒が目的での乱用が疑われる場合、麻薬とみなされることがあることに注意すべきである。ただし、0.2%という値は食品の毒性評価には適さない。しかし、EFSAは食品に対してARfDを設定している。これは、1日に1回以上の食事で、明らかな健康上のリスクなしに摂取できるTHCの推定最大量を示す。

以下の例は、植物原料中のTHCの最大基準値を0.2%とすることが、食品の評価に適していない理由を示す:

ヘンプを含む食品中のTHC濃度は、ARfD 0.001 mg THC/kg体重を超える摂取量につながるものであってはならない。THC含有量が0.2%の食品を1000 mg摂取しただけで、2 mgのTHCを摂取することになる。体重70 kgの成人の場合、これはARfDの約30倍(体重1kgあたり約0.03 mg)を超えることになる。子供や体重の少ない人、あるいは多量に摂取するヒトの場合、この超過量はさらに大きくなる。 

 

ヘンプを含む食品はどのような基準で毒性学的に評価できるか?

BfRは、EFSAが設定したTHCのARfD(0.001 mg/kg体重)に基づいたヘンプを含む食品の毒性学的評価を行うことを推奨する。ARfDは、1日のうち、1回の食事又は数回の食事で、特定できる健康上のリスクなしに食品から摂取できるTHCの推定最大摂取量を示す。

BfRの見解では、ARfDを超える可能性があるかどうか、各製品をケースバイケースで評価すべきと考える。

その判断には、測定されたTHC濃度と推定摂取量が用いられる。推定摂取量に関する情報は、EFSAから「EFSA包括的欧州食品摂取データベース(Comprehensive European Food Consumption Database)」という形で提供されており、また摂取量調査からも得ることができる。フードサプリメントの場合は、法的要件である1日あたりの推奨摂取量を用いることができる。

 

ヘンプ植物の異なる成分がお互いに影響し合うか?

ヘンプ植物の他の成分がTHCの望ましくない作用を弱める可能性を示唆するという知見は文献で繰り返し議論されている。しかし、関連データに一貫性はない。毒性学的な観点からは、現在の知見にもとづき、ヘンプを含む食品に天然に発生するTHCを単離あるいは合成された純物質と別に評価をすることはできない。

 

ヘンプを含む食品を摂取した後に薬物検査で陽性結果が出る可能性はあるか?

この質問に対する信頼できる答えは今のところない。文献によると、ヘンプを含む食品を摂取した後に法医学検査で陽性結果が出ることが原理的にあり得ると述べられている。そのため、BfRは2018年の声明でこの事実に言及した。陽性の結果は通常、THC濃度が比較的高い製品を摂取した後に得られた。低濃度に汚染された製品の摂取では、一般的に陽性にはならなかった。この問題に関する情報は、例えば、Lachenmeierらのレビュー (Foods Containing Hemp - An Update, 2019)に掲載されている。

わずかに汚染された製品を摂取してもTHCのARfD(0.001 mg/kg体重)を超えないのであれば、法医学検査で陽性反応が出る可能性はかなり低いと考えられる。しかし、さまざまな体液中におけるTHCやその代謝産物の正確な濃度は、多くの要因に影響される可能性がある。また、長期的な摂取により、物質が体内に蓄積される可能性もある。このような理由から、法医学検査で陽性結果となる正確な摂取量を最終的に評価することは、現在のところ不可能である。

 

CBDを含む多くの製品が店頭に並んでいる。これはヘンプとどういう関係があるか?

CBDとは、カンナビジオールという物質の略称である。これは、主に産業用のヘンプから得られるカンナビノイドである。THCとは対照的に、CBDは精神活性作用のないカンナビノイドと考えられており、そのために麻薬法(BtMG)では麻薬として指定されない。一般の人々の間では、CBDは多くの健康増進効果があると思われている。そのため、CBDは現在、多くの製品に含まれる人気の成分で、フードサプリメントを含む食品にも使用される。健康に良いと宣伝される効果のほとんどは、まだ科学的に証明されていない。BVLが「サプリメントを含め、食品に含まれるCBDがEU域内で合法的に販売できる事例は現在のところないと認識している」と述べていることを指摘しておく。

CBDには薬理作用があることが知られている。ドイツでは、この物質は処方箋医薬品に指定されている。現在EUでは、CBDを含む医薬品が承認されており、子供のある珍しいタイプのてんかんの治療に使用されることがある。

 

CBDを含む食品は、健康上の問題はないのか?

食品中のCBDの存在による健康リスクの可能性に関して、入手できるデータは現在のところまだ限られている。しかし、医薬品としてのCBDの使用から、CBDは少なくとも摂取量が多い場合に、望ましくない作用を引き起こす可能性があることがわかっている。こうした影響には、例えば、鎮静作用や肝機能障害などが含まれる。また、現在わかっているところでは、他の様々な医薬品との相互作用の可能性もある。つまり、他の医薬品とCBDを同時に摂取することで、医薬品の効果が損なわれたり、強くなったりする可能性があることを意味する。これらの影響が、もはや薬理作用を持たないほど低濃度で、ゆえに食品として扱えるようなレベルの摂取でも関係するのかどうかは、まだ評価できない。

EFSAは現在、新規食品規則 (EU) 2015/2283に基づき、CBDを含む特定の食品の承認申請を検討している。最近、EFSAはこの文脈で様々なデータギャップを特定し、意見としてまとめた。したがって、CBDを含む食品が健康にとって安全であるかどうかを評価することは、現在のところ不可能である。出典(ドイツ語):https://www.efsa.europa.eu/de/news/cannabidiol-novel-food-evaluations-hold-pending-newdata

 

ドイツでは、CBDを含むフードサプリメントは合法的に販売可能か?

製品の分類と個々の事例での販売可能性の評価は、ドイツの食品監視を担当する州当局の仕事の1つである。BVLが、「フードサプリメントを含め、食品に含まれるCBDがEU内で合法的に販売できる事例は現在のところないと認識している。BVLとしては、医薬品の承認であれ、新規食品の承認であれ、CBDを含む製品は市場に出す前に承認申請を提出する必要があると考える。この手続きの一環として、申請者は製品の安全性を証明しなければならない。」と述べている。出典(ドイツ語):https://www.bvl.bund.de/DE/Arbeitsbereiche/01_Lebensmittel/04_AntragstellerUnternehmen/13_FAQ/FAQ_Hanf_THC_CBD/FAQ_Cannabidiol_node.html

 

ヘンプを含む製品は新規食品とみなされるか?

新規食品規則(EU)2015/2283によると、1997年5月15日以前までEUでヒトが相当量を摂取していない食品は新規食品とみなされ、この規則で定められた特定の食品分類に割り当てられる。その後、その新規食品の安全性をEFSAに評価され、認可を受ける必要がある。

欧州委員会のいわゆる新規食品カタログでは、ヘンプ植物(Cannabis sativa L.)の抽出物とCBDを新規食品としている。これらは、規則(EU)2015/2283に基づく承認が必要である。このプロセスの一環として、EFSAは現在、CBDの食品としての安全性を評価している。ヘンプ種子、ヘンプオイル、ヘンプ種子パウダーなど、ヘンプ植物に由来する他の製品は、新規食品とはみなされない。

 

ヘンプを含む食品とヘンプを含む医薬品に違いはあるか?

原則として、(フードサプリメントも含め)食品の成分は、薬理作用、例えば、病気の治癒や軽減作用があってはならない。もし、そのような影響を持つ製品である場合、その製品は医薬品法に該当し、市場に出す前に医薬品としての承認が必要である。これは、医薬品の有効性と安全性を保証し、誤用を予防するためである。この場合、ドイツ連邦医薬品・医療機器研究所(BfArM)の管轄である。

 

★ 2022年11月、BfRは、産業用ヘンプから牛の乳へのカンナビノイドの移行に関する移行試験を発表した。なぜこの研究が行われたのか?

この研究は、2011年と2015年の欧州食品安全機関(EFSA)の意見に基づいており、その中で、牛に与えたカンナビノイドが牛の乳に移行する可能性が示唆されていたが、信頼できるデータは得られなかった。また、食料生産動物への健康影響に関するデータも得られなかった。そして、EFSAは2015年の意見で、ヘンプ種子由来の飼料原料を使用したことによる乳及び乳製品の摂取を介したTHCの摂取は、示唆された濃度で健康へのリスクとはなりにくいと結論づけた。ヘンプの全草に由来する飼料原料の使用によるリスク評価は、濃度データがないため不可能であった。ドイツと欧州における食品と飼料の健康リスク評価のための科学的データギャップを埋めるために、BfRは、認可された産業用ヘンプ品種(THC含有量0.2%未満)から牛の乳へのカンナビノイドの移行に関する給餌試験を実施した。発表された研究は、10頭の乳牛を対象に行われた。乳、血漿、糞便中のカンナビノイド含有量が測定された。さらに、心拍数や呼吸などの身体機能が検査され、動物の行動が観察された。研究へのリンク: https://www.nature.com/articles/s43016-022-00623-7

 

★ 主な研究結果は?

乳牛の飼料に市販のヘンプサイレージを添加すると、飼料から牛の乳に様々なカンナビノイド(THC、CBDを含む)が測定可能な濃度で移行することがわかった。このTHC含有量の乳や乳製品を消費すると、ヒトの急性参照用量(ARfD)である体重1 kgあたり0.001 mgのTHCを大幅に超える可能性がある。この超過は、特に子供で顕著になると思われる。ARfDは、1日のうちに摂取しても認識できる健康上のリスクがないとされるTHCの推定最大量を示している。

 

★ ヘンプの飼料を与えた結果、牛の行動はどのように変化したのか?

カンナビノイドを豊富に含むヘンプサイレージを与えたところ、牛の行動が大きく変わった。2日目以降、牛の食べる量が減り、乳量も減った。呼吸数、心拍数も減少した。さらに、唾液分泌の増加、舌の遊び、目の硝子体膜の発赤が見られた。

ヘンプを給餌しているときの牛の観察は、確かにマリファナを摂取した後のヒトの観察と一部似ている。原理的には、牛のエンドカンナビノイド系統はヒトのそれと似ているが、ほとんど研究されていない。しかし、牛が「ハイ」になるとは言えない。ハイになるというのは、むしろヒトで言うところの感覚であり、一連の生理的・心理的変化を表すものだからである。科学的に、牛の気持ちや感情を認識し、その属性を利用することはまだ不可能である。さらに、本研究では、CBD含有量が非常に高い市販のヘンプを給餌した。いくつかの観察結果(例えば、眠気)は、CBDの効果に起因する可能性も否定できない。

 

★ THCやその他のカンナビノイドは、飼料から牛乳に適切な量だけ移行させることができるか?

産業用ヘンプの乳牛への給餌に関するBfRの研究では、産業用ヘンプに含まれるさまざまなカンナビノイド(テトラヒドロカンナビノール/THC、カンナビジオール/CBD、THC-カルボン酸/THCA、テトラヒドロカンナビバリン/THCV、カンナビノール/CBN、カンナビジバリン/CBDV)の乳への移行が検出できた。また、測定結果を数理モデル化することで、これらのカンナビノイドの移行率(飼料で摂取した量に対する乳汁中に排泄される1日の量として定義)を求めることができた。例えば、THCの移行率は0.20%で、これまでのデータから算出された移行率よりも高い値を示した。CBDについては、0.11 %の移行率が決定された。

 

★ 牛乳中のTHC濃度は、消費者に健康上のリスクをもたらすのか?

今回の研究で測定されたTHC濃度の牛乳を消費すると、急性参照用量(ARfD)を超える摂取量になる可能性があり、特に子供で摂取量が高くなる。ARfDは体重1 kgあたり1 µgで、欧州食品安全機関(EFSA)によって導出された健康影響に基づくガイドライン値である。ARfDは、明らかな健康上のリスクを伴わずに1日以内に摂取できるTHCの推定最大用量を示している。これより高い摂取量は、有害な影響が生じる可能性があるため、望ましくない。この摂取量は、特に中枢神経系に影響を与える可能性がある(例:鎮静作用の増大、作業記憶の障害、気分の落ち込み)。ドイツでは、現在の科学的知見に基づく法的枠組みの条件により、牛乳中の高いTHC含有量は予想されない。

 

[TGA]医薬品のニトロソアミン不純物-出資者と製造業者向け情報

Nitrosamine impurities in medicines - Information for sponsors and manufacturers

5 January 2023

https://www.tga.gov.au/news/safety-alerts/nitrosamine-impurities-medicines-information-sponsors-and-manufacturers

TGAは国際規制機関や医薬品出資者と密接に協力して医薬品のニトロソアミン不純物の調査と対応にあたっている。この頁には情報をまとめた

ニトロアミン類の許容摂取量リスト等

 

[EPA]EPAは新しいPFAS解析ツールを発表

EPA Releases New PFAS Analytic Tools

January 5, 2023

https://www.epa.gov/newsreleases/epa-releases-new-pfas-analytic-tools

新しいインタラクティブウェブページ“PFAS Analytic Tools”を発表

PFAS Analytic Tools

https://echo.epa.gov/trends/pfas-tools

使用法、解説等

各種PFAS関連データを地図にまとめたもの

 

論文

-研究者がフィンランドの森のコウモリを風力発電が撃退したことを発見

Researchers find that wind turbines repel bats in Finnish forests

5-JAN-2023

https://www.eurekalert.org/news-releases/975736

Landscape and Urban Planning

 

-持続可能な世界農業生産のために混作システムを使う

Using intercropping systems for sustainable global agricultural production

5-JAN-2023

https://www.eurekalert.org/news-releases/975750

INRAEがPNASに発表した研究

複数の作物を組み合わせることで、少ない耕作地で生産性を上げることができる

(自家用にはよくやってた。残留農薬規制のせいでできないのだが。)

 

-SCIENCE VOLUME 379|ISSUE 6627|6 JAN 2023

2023年から新しい編集方針等が発表されている

・パンデミックが荒れ狂い、中国は当てずっぽう

China is flying blind as pandemic rages

3 JAN 2023 BY DENNIS NORMILE

公式の死亡数はあり得ないほど少なく、新たな変異は検出されていない可能性

(中国の公式発表を誰も信じてない)

 

-英国の食物アレルゲンリコール:2016年から2021年に報告されたリコールの批判的分析

Food allergen recalls in the United Kingdom: A critical analysis of reported recalls from 2016 to 2021

Sim RayYue et al., Food Control Volume 144, February 2023, 109375

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0956713522005680?via%3Dihub

・2016年から2021年の英国の1036の食品リコールのうち597 (57.6%)がアレルゲン

・インシデントのあった食品群で最も多いのが乳244/969 (25.2%)

・リコールのうち29/480 (6.0%)は賞味期限か消費期限超過

・「~が含まれない」と表示してある食品での意図せぬ存在がいまだ検出される

 

-Natureワールドビュー

私の研究は役に立たない?研究者が方法論レビュー委員会を必要とする理由

Is my study useless? Why researchers need methodological review boards

03 January 2023  Daniël Lakens

https://www.nature.com/articles/d41586-022-04504-8

データを集める前に研究者が方法について説明することは長年の懸案だったステップである

研究者は時間の無駄である研究をする自由があるべきか?現時点では答えは明確にイエスである。あるいは少なくとも、提案された研究に方法論や統計的欠陥があって役に立たない可能性があるかどうか尋ねて止める人はいない。私(Daniël Lakens)はオランダのEindhoven工科大学の中央倫理審査委員会の委員長として、倫理以外の問題に意見を出す委員会ではないものの、研究デザインのせいで意味のあるデータが出ないだろうという委員の指摘を何度受け取ったか覚えていない。今でも修正できなくなってからピアレビューで欠陥を指摘されるまで待つしか無い。

そこで私の学部では異なるやりかたを試している。5年前から提案された方法を評価する委員会を作った。最初は抵抗もあったが、研究の質が上がったことで認められるようになった。大学での方法レビュー委員会を標準にする時だ。

 

その他

-Covid患者が増加しNHSが困難になっている中で、フェイスマスクについての文化戦争を終わらせる方法

With Covid cases soaring and the NHS in trouble, here’s how to end the culture war on face masks

Thu 5 Jan 2023   Stephen Reicher(心理学教授)

https://www.theguardian.com/commentisfree/2023/jan/05/covid-cases-nhs-culture-war-face-masks

インフルエンザとCovidが同時に流行するツインデミックで、NHSは疲れ果てている。そのためUK HSAの主任医学アドバイザーSusan Hopkinsが、具合が悪いときにはマスクをするか家に留まるかすべきとどちらかというと柔らかく示唆した時、論争になどならないだろうと思っただろう。しかし違った。

Daily Mailはフロントページの2/3を使って「フェイスマスクの狂気になど戻らない」と叫び、今日はトーリー党のPhilip Davies議員がUK HSAの変人社会主義者のコントロールが変わらないと激怒した。なぜマスクがそれほどの怒りをおこすのか?

マスクは誰もが好きではない。それは不快だ。しかしマスクへの恐れは科学的根拠は無い。答えは政治で、無責任なエリートが普通の人々をコントロールし搾取しているというポピュリストの主張に根ざす。

(以下いろいろ。欧米人マスク嫌いすぎ。アメリカに住むアジア人はマスクにそれほど抵抗していないのに。)

 

-EUにおける科学に基づいたおよびエビデンスに基づいた政策決定:共存あるいは矛盾した概念?

Science-based and evidence-based policy-making in the European Union: coexisting or conflicting concepts?

Daniel Guéguen & Vicky Marissen

https://www.coleurope.eu/sites/default/files/research-paper/wp88%20Marisen_Guegen.pdf

予防的-革新、リスク-ハザードの関係、科学に基づいたとエビデンスに基づいた政策決定、は全て欧州の課題:農業、食品、健康、環境、エネルギー等々、の核心にある複雑な問題である。この研究論文の最初の目標はこれらの異なる概念とその相互作用、具体的にどう適用されているかを明確に説明することである。ちょしゃっらは現在のEUの仕組みの強みと弱みを深く解析する。Better Regulation(より良い規制)パッケージによる進歩を強調した後、必要とされる客観性を損なうハーモナイゼーションの欠如や解釈の問題を指摘する。それを改善するためにいくつかの提案をする。結論としてあらゆるレベルで科学を支持する雰囲気を作ることが緊急に必要だと主張する。

(グリホサートの認可更新やGMOなどを事例にしている。「私の科学の方があなたの科学より価値がある」というスタンスが人々の反科学の気分を生み出している。NGOなどを含む社会活動家が政策に影響を与える力を増したことが一因。EUの科学に基づいた意思決定は常に二対の概念:予防原則と革新原則、そしてリスクとハザードの不安定な相互作用で形作られている。EUでは予防原則の方が革新原則より圧倒的に強く、リスクではなくハザードに基づいたアプローチにシフトしている。提案としては規制影響評価の強化等)

 

-アルツハイマーの新薬で、Biden FDAは科学に従わない

With new Alzheimer’s drug, Biden FDA is not following the science

By Henry Miller January 04, 2023

https://www.washingtonexaminer.com/restoring-america/https:/www.washingtonexaminer.com/opinion/with-new-alzheimers-drug-biden-fda-is-not-following-the-science

Aduhelmの認可プロセスにおけるFDA と Biogenの関係は異常なことだらけだったという下院調査委員会の報告書が発表された。

(FDAのバイオテクノロジー部門の長だったHenry Millerがその普通で無さを解説する

おそらくFDAの高官にアルツハイマー治療薬が欲しいと強く願って科学を無視した人がいるのだろう、とのこと)

https://energycommerce.house.gov/sites/democrats.energycommerce.house.gov/files/documents/Final%20Aduhelm%20Report_12.29.22.pdf