2021-07-08

[MHRA]ハーブとホメオパシー医薬品:有害事象疑いに注意しそれをイエローカード計画で報告するように再度注意喚起

Herbal and homeopathic medicines: reminder to be vigilant for suspected adverse reactions and to report them to the Yellow Card scheme

7 July 2021

https://www.gov.uk/drug-safety-update/herbal-and-homeopathic-medicines-reminder-to-be-vigilant-for-suspected-adverse-reactions-and-to-report-them-to-the-yellow-card-scheme

もし薬物への有害反応が疑われたら、患者にハーブやホメオパシー医薬品を使用していないか尋ね、疑わしいものは全てイエローカード計画に報告するように。患者にはそのハーブやホメオパシー医薬品が許可を得たものかどうかチェックし、患者向け情報に記載された助言に従うよう注意喚起視すること

(一部)

ホメオパシー医薬品は希釈されていて有効成分は数分子しか含まないものの、最近の研究では製造業者が間違って、ドイツでアトロピンの過剰使用につながって患者が入院した事故がおこっている。これは英国外でおこったものであるが、有害事象をおこした患者のホメオパシー医薬品についても検討する必要があるという例である。

Schmoll S, Romanek K, and others. Anticholinergic syndrome after atropine overdose in a supposedly homeopathic solution: a case report. Clinical Toxicology. 2021. 1–3

 

[DHSC]新しい予備計画は人々がより多く運動しより良く食べるのに役立つ

New pilot to help people exercise more and eat better

7 July 2021

https://www.gov.uk/government/news/new-pilot-to-help-people-exercise-more-and-eat-better

政府は新しい計画を実施するパートナーを探す

2022年1月から6ヶ月行う予定の計画を実施する事業者の一般競争入札を開始

 

[DHSC]力強いライフサイエンスビジョンが、英国のパンデミック対応の上に構築する患者の生活を変える革新への道のりを定める

Bold new life sciences vision sets path for UK to build on pandemic response and deliver life-changing innovations to patients

6 July 2021

https://www.gov.uk/government/news/bold-new-life-sciences-vision-sets-path-for-uk-to-build-on-pandemic-response-and-deliver-life-changing-innovations-to-patients

英国ライフサイエンスビジョンは、がんや認知症を含む我々の世代の最大の医療問題のいくつかを解決するための10年計画を定める

(ワクチン開発能力、肥満、加齢対策も入る)

 

[RIVM]国と地方の健康増進のための支出:ベースライン測定

National and local expenditures for health promotion: a baseline measurement

07-07-2021

https://www.rivm.nl/publicaties/landelijke-en-lokale-uitgaven-aan-gezondheidsbevordering-nulmeting

健康増進は疾患予防の一部で、例えば肥満や過剰飲酒を予防するために健康的ライフスタイルを推奨したりする。健康増進が住民のニーズにマッチしていることを確実にするためには地域毎に健康増進を行うのが有用で、効果的にそうするためにそのコストを知る必要がある。今回初めてRIVMと政策助言センターが地方自治体が健康プロモーションのためにどのくらいのお金を使っているのかを調査した。その結果、極めて少なくしばしば一時的であることがわかった。2019年にオランダ地方自治体が住民一人あたりヘルスプロモーションに使ったのは平均21-23ユーロだった。その大部分の14ユーロはスポーツへの参加を勧めるものだった。

比較のために、2019年は医療と介護に住民一人あたり約5000ユーロが使われた

 

[WHO]化学物質の公衆衛生への影響についての新しいデータ:わかっていることとわからないこと

New data on the public health impact of chemicals: knowns and unknowns

6 July 2021

https://www.who.int/news/item/06-07-2021-new-data-on-the-public-health-impact-of-chemicals-knowns-and-unknowns

WHO事務局長が、2021年7月7日に開催された閣僚対話の一環として化学物質の公衆衛生への影響についての新たな推定を発表した。新たな推定は前年より増加し続け、2019年には化学物質暴露により200万人の命と5300万DALYが失われた

死亡の約半分は鉛暴露による心血管系疾患。次に大きいのは粒子状物質の職業暴露によるCOPDと発がん物質への職業暴露によるがん。しかし化学物質暴露のデータが入手できるのはほんの少数である。

(鉛や水銀やヒ素が「毎年生産量が増える化学物質」の代表ではないだろうし心血管系疾患の原因としてそんなに大きいかは疑問だけど。アルコールとタバコは別枠だけど何故か受動喫煙が入っていたりする。)

 

[FSA]根拠の重み付け-外部の根拠を評価するための新たな枠組み

FSA blog

Weighing the evidence – a new framework for assessing external evidence

Professor Peter Gregory, Science Council member, Posted on:29 June 2021

https://food.blog.gov.uk/2021/06/29/weighing-the-evidence-a-new-framework-for-assessing-external-evidence/

FSAの独立科学評議会の一員として、私はFSAがその目的のために科学を使うことについて専門的戦略的知見と助言を提供する手伝いをしている。

FSAはその決定を最良の科学と根拠に基づいて行う機関で、各種食品や飼料の問題をより良く理解しリスク管理の決定をするために報告書を依頼しリスク評価を行う。時々標準的研究や意見募集プロセスとは外れたところから、独立したエビデンスが送られることがある。この委託していない第三者のエビデンスは、知識のギャップがあると認識されるあるいは法律や方針の変更を求めるなどの一連の動機や目的により提出される可能性がある。

科学評議会はFSA長官からこの種の第三者のエビデンスを一貫して評価する方法と、提出しようとする人たち向けに期待される水準について明確にするよう依頼された。それに対応して、我々はこの種のエビデンスの批判的評価のための枠組みを開発して発表した。

FSAがこの科学評議会のガイダンスを採用して使うことを喜んで報告する。FSAの公開性と透明性への貢献方針に従って、それはFSAのウェブサイトから入手できる

ガイダンスの目的

このガイドラインはFSAが受け取るエビデンスに期待される水準について概要を示し、その強みと弱点を品質と信頼性と頑健性の中核基本原則に従ってどう評価するかのガイダンスを提供する。

エビデンスがこれら基本原則にどれだけ反しているかを検討し、ガイダンスが有用な根拠の準備に役立つだろう。

食品の安全性について新たな助言が必要になるときは、我々のリスクアナリシスプロセスでリスクを評価し、とるべき対策を検討し、リスクや必要な行動についてコミュニケーションをするだろう。

我々がエビデンスを受け取ったら、以下を行う

・そのエビデンスの評価、しようについては透明であろう

・質、信頼性、頑健性の基本原則により適切な文脈でエビデンスを評価する

・専門的プロトコール、科学助言委員会、ピアレビュー、および/または複数専門性チームを使い、エビデンスの評価におけるバイアスを最小限にする

・結論や提出されたエビデンスについて公開性と透明性を維持する

 

質、信頼性、頑健性の基本原則とは

科学評議会のガイダンスがより詳細に説明している

・質 エビデンスは明確に提示され、信頼できるもので、目の前の質問と引き出された結論に関連する

・信頼性 その限界、不確実性、バイアスおよびどうやって偏りを最小化したかについて透明である

・頑健性 いくつか視点を変えても一貫して観察される

 

FSAにエビデンスを提出ことについて他にもガイダンスがある

この枠組みは委託されていないエビデンスを提出するヒト向けである。それはリスクアナリシスプロセスを補完する。しかしながら、規制対象製品を市販するのに必要なエビデンスは別に特有のガイダンスがある。

 

報告書:第三者のエビデンスを批判的に評価することについての迅速エビデンスレビュー1

Rapid Evidence Review 1 on the Critical Appraisal of Third-Party Evidence

Last updated: 29 June 2021

https://science-council.food.gov.uk/SCRapidReview1

(GLPとかGRADEとか)

 

欧州不正防止オフィス(OLAF)

ニセラム酒ネットワークがOLAFのおかげで解体された

Fake rum network dismantled thanks to OLAF

06/07/2021

https://ec.europa.eu/anti-fraud/media-corner/news/06-07-2021/fake-rum-network-dismantled-thanks-olaf_en

中央アメリカからのニセのラム酒を欧州市場に販売していた犯罪組織の国際活動が破綻した。OLAFがスペイン、オランダ、ホンジュラス、グアテマラの各国間の主要調整ポイントとして働いた。

ニセラムの主な行き先はスペインだったが、洗練された生産工程はいくつかの大陸や国に渡った。瓶詰めされ表示されたラムはホンジュラスとグアテマラから出荷されてEUへはオランダ経由でスペインに輸送された。ニセのラベルはいくつかのブランド名を使った。概ね34万本が押収された

 

[DWI]研究報告書「三つの内分泌撹乱物質が飲料水に入る可能性」発表

Publication of research report “Likelihood of three endocrine disrupting substances reaching drinking water”

7 July 2021

https://www.dwi.gov.uk/publication-of-research-report-likelihood-of-three-endocrine-disrupting-substances-reaching-drinking-water/

地表水と地下水に17-Beta-エストラジオール (E2)、ノニルフェノール (NP)、 ビスフェノール A (BPA)が存在することは実証されており、従って飲料水にも低濃度で存在する可能性がある。水源や処理後の水中の濃度、あるいはその除去のための方法についての情報は限られる。提案されている飲料水基準のコンプライアンスにどのくらいリスクがあるのかを理解する必要があり、この研究はその知識のギャップを埋めることを目的とした。

飲料水指令(DWD)では17-Beta-estradiol: 0.001 μg/L; Nonyl phenol: 0.3 μg/L; Bisphenol A: 0.1 μg/Lが提案されていて、予防的ベンチマークとして使われていた。2020年10月にはBPAは健康に基づくパラメータ値として2.5 µg/lがDWDに追加され、NPとE2は最新バージョンでは特定のベンチマーク値はなく「監視対象」となる予定。

この研究はイングランドとウェールズでこれら基準のコンプライアンスにリスクがある地域や追加の監視が必要な場所を同定することを目的とした。

 

[FSANZ]食品基準通知

Notification Circular 161-21

8 July 2021

https://www.foodstandards.gov.au/code/changes/circulars/Pages/Notification%20Circular%20161-21.aspx

新規申請と提案

・GM Trichoderma reesi由来アラビノフラノシダーゼ

・GM Trichoderma reesi由来キシラナーゼ製品

・GM Aspergillus oryzae由来カルボキシルペプチダーゼ製品

・Schedule 22の食品および食品群のレビュー

パブリックコメント募集

・乳児用調整粉乳についての意見募集2栄養組成

その他

・データ募集

食品添加物として使われた場合の二酸化チタンのレビュー

 

Review of titanium dioxide as a food additive – call for data

(July 2021)

https://www.foodstandards.gov.au/consumer/foodtech/Pages/titanium-dioxide-call-for-data.aspx

2021年9月17日まで

EFSAの食品添加物と香料についての専門家委員会が、一般毒性影響の根拠は決定的では無いが二酸化チタンはもはや食品添加物として安全とは考えられないと結論した。

FSANZは独立した科学助言委員会と相談して現在EFSAの評価と既存の安全性についての根拠をレビューするプロセスをとっている。このレビューではオーストラリアとニュージーランドの消費者の健康と安全性を守るために対応が必要かどうかを検討する。現在二酸化チタンはオーストラリア・ニュージーランド食品基準で別表1に示すように使用が認められている。

FSANZのレビューは特に二酸化チタンの遺伝毒性の可能性に関する根拠と食品添加物として使用される二酸化チタンの粒子の大きさに焦点を絞る。

この評価を援助するために、食品中の二酸化チタンの粒子サイズと食品添加物としての安全性に関連する情報を探している。

二酸化チタンの必要性や代用品に関する情報は求めていない。意見や個人の体験等は考慮しない

 

Nature & Science

-都市の食料不足をどう緩衝するか

How to buffer against an urban food shortage

Zia Mehrabi NEWS AND VIEWS 07 July 2021

https://www.nature.com/articles/d41586-021-01758-6

フードショック-突然の食品サプライの撹乱-が増えているという懸念が広がっている。都市のフードショックへの脆弱性はサプライチェーンの多様化によって減らせる

今週号のNatureにGomezらが農産物の都市への流れが都市の取引相手の多様性にどのくらい依存するのかを評価した。著者等はフードショックへの緩衝能力のあるフードシステムをデザインするために工学の考え方を応用した。

Supply chain diversity buffers cities against food shocks

Michael Gomez et al.,

Nature volume 595, pages250–254 (2021)

 

-オーストラリアのトップ実験用マウス・ラット供給業者が運営停止

Australia's top supplier of lab mice and rats to shut down operations

By Dennis Normile Jul. 7, 2021 , 4:15 PM

https://www.sciencemag.org/news/2021/07/australias-top-supplier-lab-mice-and-rats-shut-down-operations

Animal Resources Center (ARC)が今後12-18ヶ月で稼働停止することをCEOから顧客へのメールで伝えた。州規制に要求されている経済的に自立した運営ができない。

この閉鎖はオーストラリアの医学研究に大きく影響するだろう。代わりのブリーダーは一部しか代替できず、オーストラリアから齧歯類の交配インフラと技術が失われることになる可能性がある

 

-画期的研究の完全性調査が、疑問のある行為が驚くほどよくあることを発見

Landmark research integrity survey finds questionable practices are surprisingly common

By Jop de VriezeJul. 7, 2021

https://www.sciencemag.org/news/2021/07/landmark-research-integrity-survey-finds-questionable-practices-are-surprisingly-common

新しい研究によると、オランダの科学者の半分以上が定期的に、研究デザインの欠陥を隠したり文献を選択的に引用したりといった疑問のある研究のやりかたに関与している。さらに12人に1人は過去3年以内にもっと深刻な研究不正:研究結果の偽造や歪曲、に関与したことを認めた。この率は過去の報告の2倍以上である。

責任ある研究ができない率はPh.Dの学生で最も多い

 

-「話がうますぎる」:COVID-19死亡率を77%減らしたとする試験を巡って疑いが渦巻く

‘Too good to be true’: Doubts swirl around trial that saw 77% reduction in COVID-19 mortality

By Robert F. ServiceJul. 7, 2021 ,

https://www.sciencemag.org/news/2021/07/too-good-be-true-doubts-swirl-around-trial-saw-77-reduction-covid-19-mortality

実験的前立腺がん治療薬proxalutamideがブラジルでの臨床試験で入院しているCOVID-19患者の死亡を77%減らしたとするプレプリントが6月22日に公表された。さらにこの薬物は男性ホルモン作用を阻害して入院期間を5日減らしたと主張する-これまでのどの医薬品より遙かに大きく。この研究の中間結果は3月にJair Bolsonaro大統領が行った記者会見でワンダードラッグとして宣伝された。しかし多くの科学者は疑っている。臨床試験の不規則さが国の研究倫理委員会の調査の引き金となっていて、トップ医学誌は掲載をリジェクトした。そしてこのプレプリントの主著者Flavio Cadegianiはこれまでイベルメクチンやアジスロマイシン、抗寄生虫化合物などをCOVID-19治療薬として宣伝してきた。

この研究はブラジルでは既に影響が出ていて、proxalutamideは認可されておらず販売されていないために、一部の医師はdutasteride や bicalutamideのような抗アンドロゲン薬や前立腺がん治療薬を使い始めている。

 

その他

-SMC NZ

出生時欠損を減らすためのパンの葉酸義務化-専門家の反応

Mandatory folic acid in bread to reduce birth defects – Expert Reaction

Published: 08 July 2021

https://www.sciencemediacentre.co.nz/2021/07/08/mandatory-folic-acid-in-bread-to-reduce-birth-defects-expert-reaction/

ニュージーランドのパン用の、オーガニックでは無い全ての小麦粉には今後2年以内に葉酸が強化される

オークランド大学集団健康学部健康革新国立研究所上級研究員Kathryn Bradbury博士

葉酸が神経管欠損を予防することは過去40年間でおそらく最大の栄養科学の画期的発見である。パン用小麦への葉酸強化が発表されたことで、ニュージーランドは既に主食に葉酸強化を要求している70カ国以上の国に加わった。

2009年にオーストラリアは葉酸強化に進んだがニュージーランドは後退した。オーストラリアではそれから10代やアボリジニー人などの60-80%の神経管欠損の発生率の劇的減少が報告されている。

最新のRCTデータからは高用量葉酸サプリメントはがんリスクに影響しないことを示し、今回の葉酸強化で摂取される量はこの試験の約1/10である

Massey大学疫学教授でニュージーランド先天異常登録部長Barry Borman教授

2021年7月8日がニュージーランドの公衆衛生にとって記念となる日になることに疑いは無い。ついに、何度もパブリックコメントを行い、たくさんの言い訳と文書と反対を乗り越えて、NZは葉酸強化を義務化する国のリストに加わった

オークランド工科大学栄養学教授Elaine Rush名誉教授

パン用小麦粉への葉酸強化は強い根拠があり正しいことだ

(こういう事例でもオーガニックは健康のためではない、ということが明白なのだが)

 

-SMC UK

Liverpool COVID-SMART住民検査予備計画の完全報告書への専門家の反応

expert reaction to full report on the Liverpool COVID-SMART Community Testing pilot

JULY 7, 2021

https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-full-report-on-the-liverpool-covid-smart-community-testing-pilot/

症状の無い全ての人にラテラルフロー検査を使って検出を改善し感染を減らそうとしたリバプールCOVID-SMART住民検査予備計画の完全報告書が公表された

Bristol大学医学部集団健康科学名誉上級講師で公衆衛生コンサルタントAngela Raffle博士

この報告書の正直なタイトルは「別々の機関が実施する断片的な検査計画を、短い周知期間で、兵站や現実世界での検査性能、訓練、品質保証、正直で一貫した人々へ情報提供をあまり考慮せずやってはいけない」だろう。

Reading大学薬学部生命医学技術准教授Alexander Edwards博士

この研究がこれからの英国の状況にどうあてはまるのかはわからない

(いろいろ批判略。今更検査でどうにかなるという意見はほとんどない)

 

-BfR2GOの恐怖特集 一部追加

https://www.bfr.bund.de/cm/364/bfr-2-go-issue-1-2021.pdf

恐怖 さてどうしよう?

コロナウイルスから気候変動まで、リスクだらけの世界で我々は恐怖の囚人になっている。BfRは安心(confidence、普通信頼と訳されるけれど恐怖に対応する心の安寧のこととして安心とした)を求めて乗り出す

 

神経科学者でメディア心理学者のDr.Maren Urner教授

「ただ恐怖を広めるだけでは役に立たない」

Q:Urnerさん、あなたはジャーナリズムはもっと建設的になるべきと主張していました。コロナウイルスパンデミックはあなたに別のことを教えましたか?

A:それどころかコロナウイルスパンデミックは我々が解決志向のジャーナリズムが必要だという事実の完全な正当化だった。我々メディア研究者はそれを建設的ジャーナリズムと呼ぶ。その良いチャンスだ。今世界中が同時に、建設的ジャーナリズムの重要な質問を尋ねている:どうすれば続けられる?もしメディアが問題があることを指摘するだけで、恐怖を広めるなら、それは役に立たず、無力感と運命論が生まれるだろう。

Q:より建設的なジャーナリズムはパンデミック対応を変えただろうか?

A:解決志向の報道が役に立ったはずだと確信している-そして我々が個人として及び社会として両方で、危機とよりうまくつきあうのに役立ち続けるだろう。例えばワクチンについては、ドイツが悪いところばかり探すべきではない。そうではなく、よくできたところや上手くやっている余所から学べるところを探すべきである。そうすることで認識や展望が変わり予防接種の動機づけになり、スケープゴートを探し続けるだけではなくなるだろう。

Q:英国や米国の報道のトーンは違う?もっと楽観的でポジティブ?

A:私の印象では。The New York Times や The Economistのような我々が読むアングロサクソン紙には「建設的ジャーナリズム」と言えるものがたくさんある。パンデミックの解決法の提案については、そのトーンはより強く励まされるものがある。文化の違いもあるだろう。オランダやイギリスでは一般的によりオープンで安心できる、ポジティブフィードバックが多い。オランダで初めて仕事をしたドイツの友人はかつて当惑して私にこう言った「私、褒められた!何か悪いことしたのかな?」

Q:あなたは危険性やリスクに注目してしまうのは我々の進化の遺産だと強調する。勇気と信頼を広めたければこれとどう取り組む?

A:我々はこの遺産を取り除くことはできない;それは我々の石器時代の脳の機能だから。しかしだからといって我々は無力だというわけではない。我々はそれともっとうまくつきあおうとすることができる。最初のステップは知ることである。「客観的」情報処理というものは存在しないので、我々は心の中で「理性的」と「感情的」を分離することはできない。我々はこのことに建設的につきあう必要があり、自分自身に問わなければならない:個人、職業、社会のレベルでそれは何を伴うか?

Q:もしそうなら、リスクをコミュニケーションする時にはそれはどういうことを意味するか?

A:重要な最初のステップは常に何が目的でどこに行きたいのかを問うことである。

それからメッセージに必要な要素を集める:文章、画像、グラフ。全ての発信者は常に情報の全ての成分が受け手に影響することを認識しなければならない。

Q:恐怖を例にして

A:OK。恐怖は悪い助言者として悪名高く、脳の研究で確認されている。恐怖は、主に前頭葉にある、高次の認識能力を阻害する。また過去の良い決定の経験から学ぶことも停止させる。ストレスと恐怖は我々を警戒モードにし、そうなると我々は「戦う」か「逃げる」かしか選べない。冷静に考えて解決と未来を指向した決定をすることができない。

Q:それはコロナウイルスパンデミックの情報に関しては何を意味する?

A:重要な質問は常に:どうすれば解決志向の情報を伝えることができるのか?どうすれば人々をその問題の緊急性を理解しつつパニックモードにならない状態にできるか?である。これは情報提供にとって微妙なラインである。我々はコロナウイルスの緊急性は認識してきた-それは人々に影響し、人々は苦しんでいて我々のそばでおこっている。しかしそれを恐怖が支配するように劇的に演出し、「戦う」か「逃げる」しか選択できないような状況にすることは認められない。人々は目的を目指した、長期の決定ができる十分な認知機能をもたなければならない。

Q:農薬の話に移ろう。BfRは科学的根拠に基づきグリホサートは指示通りに使えば発がん性ではないという情報を提供した。それについてリスクを過小評価しているという批判があった

A:これには重要なポイントがある:人々は客観的に情報を処理できるか?ノー!これまで人生で見てきた全てのものが、意識的にも無意識でも我々に影響する。もちろん、そのトピックについて我々が感情的にどう感じるかについては無意識の部分が大きな役割を果たす。事実情報が個人的信念と矛盾するとき、心理的「免疫系」が起動される。それは我々をウイルスや細菌から守るのでは無く、自分の世界観にそぐわない意見や知見から防御する。そうなっていなかったら我々は一日中自分のアイデンティティの再構築で忙しかっただろう。

Q:これには何が役に立つ?

A:それ自体は有用であるものの、この免疫系はしばしば新しい知見や事実を自分の世界観に組み入れることを困難にする。ここにいわゆる「クリティカルシンキング」が役に立つ。クリティカルシンキングは自分自身に疑問をもつスキル、知的謙虚さ、そして好奇心などを同時に含む。この種の考え方は子どもたちや若者だけではなく大人にも教え、推奨すべきである。