2021-05-21

[EFSA]ミツバチの保護:リスク評価のための新たな方法

Protecting bees: a new way forward for risk assessment

20 May 2021

https://www.efsa.europa.eu/en/news/protecting-bees-new-way-forward-risk-assessment

欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会(ENVI)が要請した新しい科学的意見は、MUST-Bとして知られる、ミツバチの複数のストレス要因の複合影響を評価する統一した全体的な枠組みを設定した。

このMUST‐Bの意見では、農薬や他の環境化学物質、寄生虫や病気、食品の入手可能性、気候、養蜂管理規範などの要因といった複数のストレス要因のミツバチの環境リスク評価(ERA)のためのモデリングとモニタリングシステムを組み合させたシステムベースのアプローチを提案している。

モデリングとデータ

このモデリングは、他のストレスや要因と相互作用する単一または複数の農薬を評価する、ApisRAMと呼ばれるミツバチコロニーのシミュレーターに基づいている。ApisRAMはまだ開発中だが、2~3年のうちに農薬リスク評価で使用できるようになる。

さらに先を見据えて、ApisRAMは、ミツバチが生存する環境の複雑さを反映するために、単一作物/単一農薬評価アプローチにとどまらず、より複雑な化学物質混合物への暴露による影響を評価できるようになる。化学物質混合物リスク評価に関するEFSAのガイダンスを基にした、複数の化学物質の、慢性、亜致死、およびコロニーレベルの影響を評価することも可能になる。

このモデルは、将来的には、センサーを装備した歩哨蜂の巣箱からのリアルタイムのデータ収集に強化される予定である。はじめに、それぞれ北欧と南欧の気候帯を代表するデンマークとポルトガルで、EFSA資金による現場収集プロジェクトから収集したデータを使用する予定で、これは今年入手できる予定である。

関係者

利害関係者は、EUミツバチパートナーシップが導く、アクセスしやすい、信頼できる、統一したデータの収集と共有で極めて重要な役割を果し、来月には「ビーハブbee hub」概念に基づくデータプラットフォームの試作品を発表する予定である。

このパートナーシップには、EUの養蜂家、獣医、農業団体、学界、NGOs、企業の代表が含まれている。

EUミツバチパートナーシップを通して関係者の見解を取り入れるのと同様に、MUST-Bの意見では、EU主要国の養蜂家と実施する対象を絞った研究を通して、より広い社会的文脈も考慮する。

 

・ミツバチの複数のストレス要因の環境リスク評価へのシステムベースのアプローチ

A systems-based approach to the environmental risk assessment of multiple stressors in honey bees

EFSA Journal 2021;19(5):6607  20 May 2021

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/6607

 

・ミツバチの複数のストレス要因の環境リスク評価へのシステムベースのアプローチに関するEFSAの科学委員会の意見案についてのパブリックコメント募集結果

Outcome of the public consultation on the draft EFSA Scientific Committee Opinion on a systems-based approach to the environmental risk assessment of multiple stressors in honey bees

EFSA Journal 2021;18(5):EN-6653  20 May 2021

https://www.efsa.europa.eu/en/supporting/pub/en-6608

 

[EFSA]意見等

-Bacillus amyloliquefaciens IT‐45株の農薬リスク評価ピアレビュー

Peer review of the pesticide risk assessment of the active substance Bacillus amyloliquefaciens strain IT‐45

EFSA Journal 2021;19(5):6594 17 May 2021

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/6594

(農薬の結論)

情報不足と懸念が確認された。

 

-すべての鳥種用Salmonella Gallinarum B/00111 (Bafasal)に感染したバクテリオファージPCM F/00069、PCM F/00070、PCM F/00071、PCM F/00097からなる飼料添加物の安全性と有効性(Proteon Pharmaceuticals S.A.)

Safety and efficacy of a feed additive consisting on the bacteriophages PCM F/00069, PCM F/00070, PCM F/00071 and PCM F/00097 infecting Salmonella Gallinarum B/00111 (Bafasal) for all avian species (Proteon Pharmaceuticals S.A.)

EFSA Journal 2021;19(5):6534 17 May 2021

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/6534

(科学的意見)

 

-規制製品:申請者を支援するオンラインセミナーシリーズ

Regulated products: webinar series to support applicants

20 May 2021

https://www.efsa.europa.eu/en/news/regulated-products-webinar-series-support-applicants

透明性規則の申請エントリーに、特に中小企業を含む企業管理者や申請者に影響を与える申請ライフサイクルにおける新たなサービス、プロセス、規定が導入された。

申請者や他の関係者が新たな要件を理解しやすくなるよう、EFSAは各規制製品分野の申請手順の段階を説明する一連のオンラインセミナーを企画している。

講演者は各食品部門の手順の個々の段階を説明し、この数ヶ月に申請者が直面した問題に関する質問を扱う。

このオンラインセミナーは、規制製品部門で働く申請者、企業管理者、中小企業、研究室/検査施設を対象としている。このイベントは一般公開され、参加者は専用のQ&A 開催中に質問を提出できる。

第1回オンラインセミナーは、食品酵素、食品香料、食品添加物の申請手順について6月4日に予定されている。オンラインセミナーシリーズの暫定カレンダーはこちらで入手でき、定期的に更新される(スケジュールは変更される場合があるのでご注意ください)。

 

[FSANZ]食品基準通知

Notification Circular 156-21

21 May 2021

https://www.foodstandards.gov.au/code/changes/circulars/Pages/Notification%20Circular%20156-21.aspx

新規申請と提案

・遺伝子組換えBacillus licheniformis由来αアミラーゼ

意見募集

・総食物繊維の新しい分析法としてのAOAC method 2017.16

協議要請

・乳児用ミルク製品についての意見募集1―安全性と食品テクノロジー

一連の3つの協議の一部。食品添加物、汚染物質、乳酸産生性微生物、安全な調整と使用について扱う

乳児用ミルクの規制がEUやCodexと異なることへの対応

 

-プレスリリース

食品の繊維量を測定する新しい方法に意見募集

Call for comment on a new way to measure fibre content in food

21/05/2021

https://www.foodstandards.gov.au/media/Pages/Call-for-comment-on-a-new-way-to-measure-fibre-content-in-food.aspx

現在オーストラリアニュージーランド食品基準では総食物繊維の測定に3つの方法を認めているがそれに加えてAOAC 2017.16を認める提案

 

[FAO]ジンバブエの隠された飢餓と闘う

Fighting hidden hunger in Zimbabwe

19/05/2021

http://www.fao.org/news/countries-good-practices/article/en/c/1400740/

ビタミンA欠乏をビタミンAの多いトウモロコシ品種vitamin A orange maizeで改善する話。

(ゴールデンライスの運命と異なるのはこれが通常の交配で作った作物だから反GM運動の標的にならなかった。トウモロコシはβカロテンを作る)

 

[FAO]国際茶の日

International Tea Day

http://www.fao.org/international-tea-day/en/

5月21日

 

[WHO]世界保健総会はCOVID-19パンデミックを終わらせ次に備えることに焦点を合わせる

World Health Assembly to focus on ending COVID-19 pandemic and preparing for next one

19 May 2021

https://www.who.int/news/item/19-05-2021-world-health-assembly-to-focus-on-ending-covid-19-pandemic-and-preparing-for-next-one

 

[WHO]人獣共通感染症の新興と拡散に対応する新し国際専門家委員会

New international expert panel to address the emergence and spread of zoonotic diseases

20 May 2021

https://www.who.int/news/item/20-05-2021-new-international-expert-panel-to-address-the-emergence-and-spread-of-zoonotic-diseases

ワンヘルスハイレベル専門家委員会One Health High-Level Expert Panel

 

[USDA]APHISは日本から米国への生鮮メロンの輸入についての病害虫リスク分析を発表

APHIS Publishes Pest Risk Analysis for the Importation of Fresh Melon Fruit from Japan Into the United States

May 20, 2021

https://www.aphis.usda.gov/aphis/newsroom/stakeholder-info/stakeholder-messages/plant-health-news/japan-melon-fruit

2021年7月20日までコメント受付

 

[USDA]世界の農作物取引はCOVID-19のもとで弾力的だったか?

Has Global Agricultural Trade been Resilient under COVID-19?

Posted by Mirvat Sewadeh, Communications Director, Office of the Chief Economist in Trade May 20, 2021

https://www.usda.gov/media/blog/2021/05/20/has-global-agricultural-trade-been-resilient-under-covid-19

昨年、COVID-19が世界経済を混乱させ物流を撹乱したが,農作物の取引は概ね安定していて、感染第一波とロックダウン時に僅か2%低下しその後反発して年末には3.5%増だった。しかしそれは貿易がパンデミックの影響を受けなかったという意味ではない。実際のところ2020年の多くは他の要因による。例えば、世界の農業貿易の増加の95%は中国によるもので、パンデミックとは関係のない飼料需要増、備蓄を増やそうとする努力、政治要因などによる。USDAの最近のペーパーは農業貿易は全体では安定していたが詳細な現場レベルでの解析ではパンデミックによる撹乱が相当あったことを示唆する

農業部門でパンデミックの影響が大きかったのは、食品以外のもの(エタノールや綿など)、シーフードや肉、高付加価値農産物であった。

(図,報告書へのリンク。いわゆる贅沢品への影響が大きかった。生きるのに必須な食品は世界中が確保に努力したし)

 

論文

-赤肉摂取、教育レベルの低さが直腸結腸がんに関連

Red meat intake, poor education linked to colorectal cancer

20-MAY-2021

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-05/oupu-rmi051321.php

JNCI Cancer Spectrumに発表された13の集団ベースの研究データをプールした解析

早期発症大腸がんに関連する要因は、アスピリンを定期使用していない、赤肉摂取が多い、教育レベルが低い、飲酒量が多い、全く飲酒しない。食物繊維の摂取量の少なさは結腸より直腸がんに関連が強い。

 

-世界の食糧、飢餓の課題は2050年までに死亡率と障害を増やすと予想される

Global food, hunger challenges projected to increase mortality, disability by 2050

20-MAY-2021

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-05/ifpr-gfh051821.php

新しい研究は,気候変動が、特にサハラ以南のアフリカで、増加する人口の栄養と食料需要を満たす課題を増すだろう、しかし今政治的対応を始めれば、その負担は避けられることを示す。 American Journal of Clinical Nutrition

単に収量に注目するだけでなく、インフラやアクセスなどフードシステム全体への投資が必要。

 

-エピジェネティックがプラスチックに含まれる化合物がIQレベルを下げるメカニズムを説明できるかもしれない

Epigenetic mechanism can explain how chemicals in plastic may cause lower IQ levels

20-MAY-2021

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-05/uu-emc052021.php

スウェーデン環境縦断母子喘息アレルギー(SELMA)研究の、妊娠女性の尿中ビスフェノールF濃度と子どもが7才の時のDNAメチル化と認知機能の測定。Environment International

(EUがBPAを禁止したためにBPFが使われたが最近はそのBPA代用品のほうが悪いという研究が増えている。BPAを禁止せよと主張していた同じ人たちが言っている場合もある。永遠に仕事ができる。)

 

-COVID-19パンデミック特別号

Special issue on the COVID-19 pandemic

20-MAY-2021

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-05/sfra-sio052021.php

Risk Analysisの特別号「新型コロナウイルスとCOVID-19への世界のシステムのリスクとレジリエンス」。

 

-一旦恐怖の段階を過ぎたら、我々はCOVID-19パンデミックの責任をどこに追わせるのか?

Once we're past the fear stage, where do we place the blame for the COVID-19 pandemic?

20-MAY-2021

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-05/tpao-owp052021.php

Social Psychological Bulletinに発表された、自由主義と共同体主義に政治的に分かれているポーランドでの調査。調査対象者の反応には不安やストレス、鬱あるいは自己申告による全体的健全性よりも政治的見解や政党支持の方が大きな影響があった。不安レベルが高いことと政府を非難する傾向には関連があった。教育レベルの高い人の方が政府の責任を強調する傾向があった。

 

その他

-ニュースを一目で

News at a glance

Science  21 May 2021:Vol. 372, Issue 6544, pp. 770-772

・CDCのマスクガイダンス緩和は賞賛と批判を浴びる

・日本パンデミック対応は遅い(オリンピック関連)

・米国が大麻生産許可を増やす(研究用大麻)

 

-過剰診断と過剰治療-専門家であっても免疫がない

Overdiagnosis and overtreatment – the experts aren’t immune either

05/13/2021  Elsa Pearson

https://theincidentaleconomist.com/wordpress/overdiagnosis-and-overtreatment-the-experts-arent-immune-either/

米国医療は予防より治療を推進している。このやりかたには多くの欠陥があり、その最も不幸なもののひとつが過剰診断され過剰治療されて大金がかかることである。

過剰診断は疑似疾患、あるいは患者に何の問題も引き起こさない病気を検出すること、過剰治療は患者に何の利益もないあるいは害すら与える治療である。ある調査によると医師は全ての医療のうち20%以上は不必要だと考えている。検査は4件中1件である。

この現象は医療制度や医師と患者の認識を含むいくつかの要因による。医療助手のKendra Allanは患者が何かを心配して病院に来たときに「何かをしないといけない」と感じるという。結果的に過剰な処方をし患者はそれを期待する。

不必要な医療をしないためには教育が最大の武器であるが実際のところそれは簡単ではない。専門家ですら陥穽に陥る。ここにいくつか例を示す。

(以下略)

 

-食卓由来の死

DEATHS FROM DINNER TABLES

May 21, 2021

https://www.thisdaylive.com/index.php/2021/05/21/deaths-from-dinner-tables/

食品と飲料は適切に加工されることが重要

ますます多くのナイジェリア人が死亡している、皮肉なことに生きながらえようとして。先月Kanoで異物混入された小袋入りの水と質の悪いジュースにより10人が死亡し約400人が入院した。しばらく前にはキャッサバベースの食品を食べて死亡した事故があった。ラゴスのEtiosa地域でamala(ヤムイモの粉の料理)を食べて6人が死亡し20人が入院した。最近の報告では男性一人とその子どもがキャッサバ粉の料理を食べて死亡した。

キャッサバ料理はナイジェリアやアフリカ、南米で広く食べられている。それは主要炭水化物摂取源で貧しい人に人気がある。実際ナイジェリアはキャッサバの生産が多くJonathan政権が農業「転換」に使った。しかしキャッサバには欠点があり、加工が不十分だとリナマリンが残り、食べると有毒ガスのシアン化合物に変わる。伝統的方法でのキャッサバ加工は十分毒を減らせるが,最近の中毒事例では加工不十分な省略法を使っている

 

-ファクトチェック:ノー、COVID-19ワクチンが接触で他の人にうつることはない

Fact check: No, COVID-19 vaccine isn't transmitted to others via contact

Rick Rouan, USA TODAY Fri, May 21, 2021,

https://news.yahoo.com/fact-check-no-covid-19-025822909.html

予防接種を受けた人と接触あるいは側に行くと不妊になる、妊婦なら流産するといった主張がネットに出回っている。何度も否定されている。

 

-喫煙関連がんは「ほぼ全てが金儲けのため」– Whitty

Smoking-linked cancers ’caused almost entirely for profit’ – Whitty

By Ella Pickover

https://www.standard.co.uk/news/uk/gresham-nhs-b936151.html

イングランドの医務主任Chris Whitty教授がGresham大学での講義で、喫煙関連がんは「ほぼすべてが金儲けのため」だと言った。肺がんによる死亡率にはここしばらく改善がなく、それは大部分が「予防できる」がんである。

今年はCovid-19より多くの人がタバコによって死亡するだろう

 

-カナダは農薬禁止から後退、制限を加える

Canada backs down from crop chemical ban, adds restrictions

Rod Nickel  May 20, 2021

https://www.reuters.com/business/environment/canada-backs-down-crop-chemical-ban-adds-restrictions-2021-05-19/

水曜日にPMRAは農家は作物を破壊する害虫をコントロールするために厳しい制限下でイミダクロプリドを使い続けられる,といった。初期の禁止提案から軟化した。

PMRAは2016年に、リスクがあるのでイミダクロプリドを段階的に使用禁止にすると提案した。しかし最終決定では新しい水監視データを検討して、そのようなリスクを一定限度許容できるという。

農家は歓迎、環境団体は批判している

 

本の紹介

ナチュラル ミステイク-食品安全の誤解を解く- 自然食品,オーガニック食品,植物由来製品は

あなたが考えるほど安全ではない理由

“A natural Mistake: Why natural, organic, and botanical products are not as safe as you think”の日本語訳

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4904397088

 

著者のサイト

James MacGregor, Ph.D., D.A.B.T

https://jtmacgregor.com/

動画シリーズ

https://jtmacgregor.com/nutrition-%26-health-videos

 

(基本的に「「健康食品」のことがよくわかる本」と同じ見解。毒性学を勉強したら当然なのだけれど。)