2023-07-14

[WHO]アスパルテーム:ハザード及びリスク評価の結果発表

Aspartame hazard and risk assessment results released

14 July 2023

https://www.who.int/news/item/14-07-2023-aspartame-hazard-and-risk-assessment-results-released

PDF版

https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2023/07/Aspartame_PR.pdf

ノンシュガー甘味料アスパルテームの健康への影響に関する評価が、国際がん研究機関(IARC)と世界保健機関(WHO)及び食糧農業機関(FAO)の食品添加物合同専門家委員会(JECFA)により本日発表された。IARCは、ヒトにおける発がん性の「限られた根拠(limited evidence)」を挙げて、アスパルテームをヒトに対して発がん性がある可能性がある(IARCグループ2B)と分類し、JECFAは許容一日摂取量(ADI)を40 mg/kg体重と再確認した。

アスパルテームは、1980年代以降、ダイエット飲料、チューインガム、ゼラチン、アイスクリーム、ヨーグルトなどの乳製品、朝食用シリアル、歯磨き粉、咳止めやかみ砕けるタイプのビタミンなどの医薬品など、さまざまな食品・飲料製品に広く使用されている人工(化学)甘味料である。

「がんは世界的に主要な死因の一つである。毎年、6人に1人ががんで死亡している。がんを誘発・促進する可能性のある因子を減らして死者数を減少させるために、科学は、がんの可能性のある発生因子または促進因子についての評価を拡大させ続けている。アスパルテームに関する評価では、一般的に使用されている量では安全性に大きな懸念はないが、潜在的な影響が報告されており、より多くの優れた研究によって調査する必要がある」と、WHOの栄養・食品安全部長であるFrancesco Branca博士は述べた。

この2つの機関は、アスパルテームの摂取に関連する潜在的な発がんハザードとその他の健康リスクを評価するために、独立した、しかし相補的なレビューを行った。IARCがアスパルテームを評価するのは今回が初めてであり、JECFAとしては3回目である。

入手可能な科学文献を検討した結果、両評価とも、がん(及びその他の健康影響)に関する入手可能な根拠には限界があると指摘した。

IARCは、ヒトにおけるがん(特に肝がんの一種である肝細胞がん)に関する限られた根拠に基づき、アスパルテームをヒトに対して発がん性がある可能性がある(グループ2B)と分類した。また、実験動物における発がん性に関する根拠も限られており、がんを引き起こす可能性のあるメカニズムに関する根拠も限られていた。

JECFAは、評価されたデータから、アスパルテームのADIである0~40 mg/kg体重を変更する十分な理由はないと結論づけた。したがってJECFAは、ヒトが1日に摂取する量はこの範囲内であれば安全であることを再確認した。例えば、200 mg又は300 mgのアスパルテームを含むダイエット清涼飲料1缶の場合、体重70 kgの成人がADIを超えるには、他の食品からの摂取がないと仮定して、1日に9~14缶以上を摂取する必要がある。

IARCのハザード同定は、ある作用因子の特異的な性質とその有害性、すなわちがんを引き起こす可能性を特定することにより、その作用因子の発がん性を理解するための最初の基本的なステップである。IARCの分類は、ある作用因子がヒトにがんを引き起こす可能性があるかどうかについての科学的根拠の強さを反映したものであるが、特定の暴露量でがんを発症するリスクを反映したものではない。IARCのハザード評価では、あらゆる種類の暴露(食事や職業など)が考慮される。グループ2Bの根拠の強さの分類は、4段階中3番目に高いレベルであり、一般に、ヒトにおける発がん性について限られた(しかし説得力はない)根拠がある場合、又は実験動物における発がん性について説得力のある根拠がある場合に使用され、両方ある場合には使用されない。

「ヒト及び動物における発がん性の根拠が限られていること、また発がん性がどのように引き起こされるかについてのメカニズム的根拠も限られていることから、アスパルテームの摂取に発がんハザードがあるかどうかについての理解を深めるため、さらなる研究が必要であることが明らかになった」と、IARCモノグラフプログラムのMary Schubauer-Berigan博士は述べた。

JECFAのリスク評価は、ある特定の条件と暴露量において、特定の種類の害(すなわち、がん)が発生する確率(probability)を決定するものである。JECFAがその検討にIARC分類を考慮することは珍しいことではない。

「JECFAはまた、動物実験及びヒト実験における発がんリスクに関する根拠を検討し、アスパルテームの摂取とヒトにおける発がんとの関連を示す根拠には説得力がないと結論づけた。既存のコホートにおいて、より長期間の追跡調査や食事に関するアンケート調査を繰り返す、より良い研究が必要である。インスリン調節、メタボリックシンドロームや糖尿病、特に発がん性に関連するメカニズム経路の研究を含む無作為化比較試験が必要とされる」と、WHOの食品・栄養基準・科学的助言ユニット長であるMoez Sanaa博士は述べた。

アスパルテームの影響に関するIARCとJECFAの評価は、査読論文、政府報告書、規制目的で実施された研究など、さまざまな情報源から収集された科学的データに基づいている。これらの研究は独立した専門家によってレビューされており、両機関は評価の独立性と信頼性を確保するための措置を講じている。

IARCとWHOは今後も新たな根拠をモニターし、アスパルテームへの暴露と消費者の健康影響との関連性について、独立した研究グループがさらなる研究を行うよう奨励していく。

 

<IARC&JECFA

アスパルテーム:ハザード及びリスク評価の結果発表

Aspartame hazard and risk assessment results released

13 July 2023

https://www.iarc.who.int/news-events/aspartame-hazard-and-risk-assessment-results-released/

 ノンシュガー甘味料アスパルテームの健康への影響に関する評価が、国際がん研究機関 (IARC)、WHO及びFAO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)によって本日発表された。IARCは、ヒトに対する発がん性についての「限られた根拠(limited evidence)」をもとに、アスパルテームをヒトに対して発がん性がある可能性がある(IARCグループ2B)に分類し、JECFAは許容一日摂取量(ADI)40 mg/kg体重を再確認した。

 

IARCモノグラフプログラム第134巻会合(2023年6月6日~13日)及びJECFA第96回会合(2023年6月27日~7月6日)によるアスパルテーム評価の知見に関する要約

Summary of findings of the evaluation of aspartame at

the International Agency for Research on Cancer (IARC) Monographs Programme’s 134th Meeting, 6–13 June 2023

and

The JOINT FAO/WHO EXPERT COMMITTEE ON FOOD ADDITIVES (JECFA)

96th meeting, 27 June–6 July 2023

https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2023/07/Summary_of_findings_Aspartame.pdf

 

IARC評価

 利益相反がないと評価された、12カ国から25名の独立した専門家からなるIARCモノグラフの作業部会が、2023年6月6~13日にリヨンで開催された。専門家らは、ヒト及び実験動物におけるがん、そして発がん物質の主要特性に関するメカニズムの根拠に関連して発表又は公開されたすべての研究をレビューした。これらの研究は、IARCモノグラフの序文(Preamble to the IARC Monographs)に記された厳格な科学的プロセスに従ってレビューされた。

 

 作業部会は、ヒトにおけるがんに関する限られた(limited)根拠に基づいて(肝がんの一種である肝細胞がん)、アスパルテームをヒトに対して発がん性がある可能性がある(グループ2B)と分類した。ヒトを対象とした入手可能ながん研究の中で、アスパルテームと肝がんとの関連性の評価を可能にした人工甘味料入り飲料の摂取に関する研究は3件のみであった。これらの研究では、人工甘味料入り飲料の摂取は、その国のその期間での飲料へのアスパルテームの使用に関する根拠によって支持されているため、アスパルテーム暴露の良い代用になると考えられた。3つの研究すべてにおいて、人工甘味料入り飲料の摂取と肝がんリスクとの間には、研究の対象集団全体又は重要なサブグループのいずれかにおいて正の関連が認められたが、陽性所見の説明として、偶然性(chance)、バイアス(bias)又は交絡(confounding)を排除することはできなかった。

 実験動物におけるがんの根拠も限られていた(limited)。発表されている3つの研究では、両性別(オス・メス)のマウスとラットの2種で腫瘍の発生率が増加していた。しかしながら、研究デザイン、データの解釈及び報告に関する懸念に基づき、作業部会は実験動物におけるがんの根拠は限られていると結論付けた。

 さらに、アスパルテームが実験系において酸化ストレスを誘発するという首尾一貫した根拠や、アスパルテームが実験系において慢性炎症を誘発し、細胞増殖、細胞死及び栄養供給を変化させるという示唆的な(suggestive)根拠に基づき、アスパルテームが発がん物質の主要特性を示すという限られたメカニズムの根拠があった。

 評価の要約は、短い論拠とともに、7月14日(00:30 CEST)にThe Lancet Oncology誌オンライン版に掲載される予定である。完全な評価結果は、IARCモノグラフ第134巻に掲載される予定である。

 

JECFA評価

 JECFAパネルは、15カ国から13名のメンバーと13名の専門家で構成され、全員が審査を受け、利益相反がないと認められた。JECFAの会合は2023年6月27日から年7月6日までジュネーブで開催された。

 

 全体として、JECFAは、アスパルテームが摂取後に有害影響を及ぼすという説得力のある(convincing)根拠は、動物実験データからもヒトのデータからも得られなかったと結論付けた。この結論は、アスパルテームが消化管内で完全に加水分解され、一般的な食品の摂取後に吸収されるものと同一の代謝物になり、アスパルテームがそのまま全身循環に入ることはないという情報によって裏付けられている。JECFAは、今次会合で評価されたデータによると、以前に設定されたアスパルテームの許容一日摂取量(ADI)0~40 mg/kg体重を変更する理由はないと結論した。そのためJECFAは、アスパルテームのADI 0~40 mg/kg体重を再確認した。

 

 経口暴露後、アスパルテームはヒトや動物の消化管内で完全に加水分解され、フェニルアラニン、アスパラギン酸、メタノールの3つの代謝物になる。したがってJECFAは、食事暴露後のアスパルテームへの全身暴露はないことを再確認した。フェニルアラニン、アスパラギン酸、メタノールは、酵素触媒による加水分解によって一般的に消費される食品からも放出される。JECFAは、現行のADIまでの用量でヒトを対象とした経口アスパルテーム暴露試験において、アスパルテームの代謝物の血漿中濃度の上昇は認められなかったことに留意した。

 アスパルテームは、いくつかのin vitro及びin vivo遺伝毒性アッセイで試験されている。相反する結果と試験の質の限界を考慮して、JECFAは、アスパルテームは遺伝毒性作用を示さないと結論付けた。

 JECFAはアスパルテームの12件の経口発がん性試験のデータを評価し、それらすべてに限界があることを特定した。JECFAは、Soffrittiら(2005;2006;2007;2010)による試験を除いて、すべての試験が否定的な結果を示していることに留意した1)。JECFAは、Soffrittiらの肯定的な所見を検討したが、これらの試験デザイン、実施、報告、解釈には限界があることに留意した。

 

  • Soffrittiら(2005;2006;2007;2010)
  • Soffritti, M., Belpoggi, F., Degli Esposti, D., Lambertini, L. (2005) Aspartame induces lymphomas and leukaemias in rats. Eur. J. Oncol., 10, 107-116
  • Soffritti, M., Belpoggi, F., Degli Esposti, D., Lambertini, L., Tibaldi, E., Rigano, A., (2006). First experimental demonstration of the multipotential carcinogenic effects of aspartame administered in the feed to Sprague-Dawley rats. Environ. Health Perspect. 114, 379–385. https://doi.org/10.1289/ehp.8711
  • Soffritti, M., Belpoggi, F., Tibaldi, E., Esposti, D.D., Lauriola, M. (2007). Life-span exposure to low doses of aspartame beginning during prenatal life increases cancer effects in rats. Environ. Health Perspect. 115, 1293–1297. https://doi.org/10.1289/ehp.10271
  • Soffritti, M., Belpoggi, F., Manservigi, M., Tibaldi, E., Lauriola, M., Falcioni, L., Bua, L. (2010). Aspartame administered in feed, beginning prenatally through life span,induces cancers of the liver and lung in male Swiss mice. Am. J. Ind. Med. 53,1197–1206. https://doi.org/10.1002/ajim.20896

 

 アスパルテームの経口発がん性試験の結果、遺伝毒性の根拠の欠如、経口暴露ががんを誘発するというメカニズムに関する根拠の欠如に基づいて、JECFAは、動物におけるアスパルテーム暴露とがんの発現との関連を確立することは不可能であると結論付けた。

 

 JECFAは、アスパルテーム摂取とヒトにおけるがん、2型糖尿病(T2D)及びその他のがん以外の健康エンドポイントなどの特定の健康影響との関連を検討するために、無作為化比較試験(RCT)と疫学研究のデータを評価した。

 

 JECFAは、アスパルテーム又は高強度甘味料(intense sweetener)としてアスパルテームを含む飲料を用いて実施されたいくつかのコホート研究において、肝細胞がん、乳がん、血液学的(非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫)がんなどの一部のがんで統計的に有意な増加が報告されたことに留意した。しかしながら、アスパルテームの摂取と特定のがんの種類との間の一貫した関連性は実証できなかった。いずれの研究も、暴露の推定方法に限界があり、特にアスパルテーム暴露の代用としてノンシュガー甘味料暴露を用いた研究では限界があった。因果の逆転、偶然性、バイアス、そして社会経済的・生活様式的要因や他の食事成分の摂取による交絡は完全には排除できなかった。

 

 評価の概要は、短い論拠とともに、7月14日にWHO及びFAO JECFAのウェブページにオンラインで公表される予定である。JECFA第96回会合の報告書及びモノグラフは、6カ月以内に公表される予定である。

 

化学物質の評価におけるIARC及びJECFAの役割

  • IARCとJECFAは、化学物質評価において異なるが相補的な役割を果たしている。
  • IARCは、アウトカムとして「がん」に的を絞り、発がん性を理解するための最初の基本的なステップであるハザードの同定を行う。ハザード同定は、食事暴露と非食事暴露の両方を検討して、その作用因子(agent)の特異的特性と危害を及ぼす可能性、すなわち、ある作用因子ががんを誘発する可能性を特定することを目的とする。
  • 2023年6月6~13日、フランスのリヨンにおいて、作業部会はアスパルテームの発がん性を初めて評価するためにIARCモノグラフ第13回会合を開催した。
  • JECFAは、考えられるすべての健康影響を考慮し、リスク評価を実施している。リスク評価では、特定の種類の危害(例:がん、その他の非伝染性疾患、生殖機能の障害、身体的・精神的発育障害など)が、特定の条件と暴露量において発生する確率(probability)を決定する。リスク評価は、作用因子の同定されたハザードの特性と特定のシナリオで予想される暴露に基づいている。したがって、すべての食事、条件、頻度及び暴露量が考慮される。JECFAの役割は、特に食事暴露シナリオについてのリスク評価を実施することである。
  • JECFAは、化学物質の安全性を評価する際に、IARCモノグラフによるハザード同定も含めて入手可能なすべてのデータと評価を使用する。
  • 2023年6月27日~7月6日に開催された第96回JECFA会合において、アスパルテームが再評価された。最後の評価は2016年に行われた。IARCは、2023年6月の第134巻会合において、アスパルテームの発がんハザードに関する議論、重要な討議、結果について、内密に報告した。さらに、2つの専門家パネルのアプローチの一貫性を確保するため、IARCモノグラフ会合にはJECFAメンバー3名がオブザーバーとして参加し、IARCとJECFA事務局はIARCとJECFAの両会合に出席した。

 

WHOとIARC及びJECFAとの関係性

 IARCは、独立した国際的ながん研究機関であると同時に、1965年5月に世界保健総会の決議によって設立された国連システムにおけるWHOのがん専門研究機関であるというユニークな二重の立場を有する。IARCは、運営評議会と科学評議会によって管理されており、前者は各参加国の代表とWHO事務局長で構成される。IARCには、IARCモノグラフの序文に定められたような独自の科学的方法がある。IARCの運営の詳細については、以下URLを参照のこと。

https://www.iarc.who.int/cards_page/organization-and-management/

 

 FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)は、FAOとWHOが共同で運営する国際的な科学専門委員会である。1956年から開催されており、当初は食品添加物の安全性を評価することが目的であった。現在では、汚染物質、天然に存在する毒素、食品中の動物用医薬品の残留物の評価も行っている。JECFAの詳細については以下URLを参照のこと。

https://www.who.int/groups/joint-fao-who-expert-committee-on-food-additives-(jecfa)/about

 

 

<FAQ

IARCのハザード同定の結果は?

 利益相反がないと評価された、12カ国から25名の独立した専門家からなるIARCモノグラフの作業部会(WG)が、2023年6月6~13日にリヨンで開催された。WGは、IARCモノグラフの序文に記された厳格な科学的プロセスに従って、公開されているすべての入手可能なデータをレビューした。

 

 作業部会は、以下に基づいて、アスパルテームをヒトに対して発がん性がある可能性がある(グループ2B

 

 肝がん(特に肝細胞がん)の所見に基づく、ヒトにおけるがんに関する限られた根拠(limited evidence)。ヒトを対象とした入手可能ながん研究の中で、アスパルテームと肝がんとの関連性の評価を可能にした人工甘味料入り飲料の摂取に関する研究は3件のみであった。3件の研究(4つの大規模コホートを含む)は、European Prospective Investigation of Cancer and Nutrition (EPIC) コホート2、National Institutes of Health (NIH) -American Association of Retired Persons (AARP) コホート及びProstate, Lung, Colorectal and Ovarian Cancer Screening (PLCO) コホートのプール分析3、the Cancer Prevention Study (CPS) -IIコホート4において実施された。これらの研究では、人工甘味料入り飲料の摂取は、その国のその期間での飲料中のアスパルテーム使用に関する根拠によって支持されているとして、アスパルテーム暴露の代用になると考えられた。3つの研究すべてにおいて、人工甘味料入り飲料の摂取と肝がんリスクとの間には、研究の対象集団全体又は重要なサブグループのいずれかにおいて正の相関が認められたが、陽性所見の説明として、バイアス又は交絡を排除することはできなかった。

 

  • Stepien M, Duarte-Salles T, Fedirko V, Trichopoulou A, Lagiou P, Bamia C, et al. (2016). Consumption of soft drinks and juices and risk of liver and biliary tract cancers in a European cohort. Eur J Nutr. 55(1):7–20. https://doi.org/10.1007/s00394-014-0818-5 PMID:25528243
  • Jones GS, Graubard BI, Ramirez Y, Liao LM, Huang WY, Alvarez CS, et al. (2022). Sweetened beverage consumption and risk of liver cancer by diabetes status: a pooled analysis. Cancer Epidemiol. 79:102201. https://doi.org/10.1016/j.canep.2022.102201 PMID:35728406
  • McCullough ML, Hodge RA, Campbell PT, Guinter MA, Patel AV (2022). Sugar- and artificially-sweetened beverages and cancer mortality in a large U.S. prospective cohort. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 31(10):1907–18. https://doi.org/10.1158/1055-9965.EPI-22-0392 PMID:36107009

 

 実験動物におけるがんについても限られた根拠(limited evidence)があった。発表された3つの研究では、両性別の2種の動物(マウスとラット)において、悪性新生物又は良性新生物と悪性新生物の合計の発生率が増加していた。しかしながら、研究デザインに関する懸念に基づき、作業部会は、実験動物におけるがんの根拠は限られていると結論付けた。具体的には、2つの出生前暴露試験の解析において、同腹効果(例:同腹子数litters、投与群当たりの子数pupsなど)の調整は行われておらず、遺伝的因子のために同腹の子が投与に対して同じように反応した場合、偽陽性の結果につながる可能性があった。リンパ腫(主に肺に発生するが、それだけに限らない)の診断に関しても懸念が表明された。また、肝細胞増殖と細気管支肺胞病変の組織像の解釈についても未解決の疑問があった。

 

 さらに、アスパルテームが実験系において酸化ストレスを誘発するという首尾一貫した根拠や、アスパルテームが実験系において慢性炎症を誘発し、細胞増殖、細胞死及び栄養供給を変化させるという示唆的な(suggestive)根拠に基づき、アスパルテームが発がん物質の主要特性を示すという限られたメカニズムの根拠(limited mechanistic evidence)があった。遺伝毒性に関するいくつかの入手可能な試験において、いくつかの肯定的な所見があったが、多くは試験デザイン、データ分析、解釈に限界があった。

 

 評価の要約は、短い論拠とともに、The Lancet Oncology誌オンライン版に掲載されている5。完全な評価結果は、IARC モノグラフ第134巻に掲載される予定である。

 

 

グループ2Bのがんハザード分類は何を意味するのか?

 IARCモノグラフのがんハザード同定は、ある作用因子がヒトにがんを引き起こす可能性があるという根拠の強さを示している。グループ2Bの分類は、その作用因子が「ヒトに対して発がん性がある可能性がある(possibly carcinogenic to humans)」と分類されたことを意味する。グループ2Bに分類されるのは、その作用因子がヒトにがんを引き起こす可能性があるという限られた根拠があるが、実験動物におけるがんの根拠が限られている又は不十分である場合;又は、その作用因子が実験動物にがんを引き起こすという説得力のある(十分なsufficient))根拠があるが、それがヒトにがんを引き起こすかどうかに関する情報がほとんどない又は全くない(不十分な根拠inadequate evidence)の場合;あるいは、その作用因子がヒトへの発がん物質として認識されている主要特性を1つ以上有することを示すメカニズムの強い(strong)根拠がある場合である。

 

IARC分類は何を示しているか?

 IARCモノグラフの分類は、ある作用因子がヒトにがんを誘発する可能性があるかどうかについての科学的根拠の強さを反映したものであり、ある暴露レベルや暴露経路におけるがんの発症リスクの程度を示すものではない。暴露のタイプ、リスクの程度、リスクのある可能性がある人、その作用因子に関連するがんの種類は、作用因子ごとに大きく異なる可能性がある。

 IARCグループは、がんハザードに関する根拠の強さを示すものであり、ある暴露レベルでのがんリスクを示すものではないことから、同じIARCグループに分類される2つの物質でも、がんリスク(典型的な暴露レベルによる)も大きく異なる可能性がある。

 

これらの分類はどのように使用されるのか?IARCはこれらの分類に基づく規制を実施できるか?

 IARCは、がんの誘発性に関する根拠を評価する研究機関であり、健康の助言を出すわけではない。衛生・規制機関は発がん物質への暴露予防のための対応を検討する際にIARCモノグラフ評価を考慮に入れることができるが、IARCは規制、法律、公衆衛生上の介入について助言しない、それらは各国政府と他の国際機関の責任である。

 

IARCによるアスパルテーム評価では、いくつの研究が評価されたのか?

 7,000以上の参考資料を収集し、スクリーニングされた。約1,300の研究がレビューに含まれ、それらを作業部会が利用可能であった。

 

IARC作業部会のレビュー対象となる研究の種類とそれらの出典は?

 IARCモノグラフの現行の序文(最終改訂は2019年)に記述されているように、作業部会は、科学文献の査読論文などの公開されている入手可能な科学的データをレビューし、また政府機関によって最終版が入手可能であり、批判的な吟味を行うのに十分な詳細が含まれている場合には、未発表の報告書もレビューすることもある。アスパルテームの場合、作業部会は、欧州食品安全機関(EFSA)のリスク評価のための2011年のデータ募集で得られた文献を参照し、レビューすることができた。さらにIARCは、第134巻会合の1年前に、ウェブサイト上でデータ募集を開始した。適格な研究は、作業部会の会合までに公開され入手可能な科学文献に掲載されたか、掲載が受理されたものに限られる。

 

IARCモノグラフプログラムは、以前にも食品添加物を評価したことがあるか?

 IARCモノグラフプログラムは、51年の歴史の中で、食品添加物として使用されていた又は使用されている70以上の様々な物質を評価している。例えば、1968年に評価した最初の甘味料ズルチンのほか、チクロ、d-リモネン、クマリン、人工甘味料サッカリン、キノリン、ミネラルオイルなどである。

 

なぜIARCはアスパルテームを評価することにしたのか?

 国際的な専門家からなる独立的な助言グループが、発がん性が疑われるどの作用因子をIARCのモノグラフプログラムで評価すべきかについて勧告を行う。ヒトが暴露される可能性を示す根拠があり、発がん性(又はおそらく発がん性probable、あるいは発がん性がある可能性があるpossible)の判定を可能にするであろう科学的根拠が入手できる場合に、作用因子が評価の対象として勧告される。

 2019年、IARCモノグラフの優先順位を勧告する助言グループが、2020-2024年のIARCモノグラフの評価候補(新規・更新)として様々な作用因子又は物質を勧告した。食品添加物のアスパルテームは、ヒトと実験動物における新たながんの根拠に基づいて、評価候補としての優先順位が高いと判断された。

 

 作業部会は、2023年6月6~13日にフランスのリヨンで開催されたIARCモノグラフ第134巻会合で初めてアスパルテームの発がん性を評価した。

 

JECFAとIARCの評価の違いは何か?

 IARCモノグラフでは、ハザード同定を実施しており、それは発がん性を理解するための最初の段階である。ハザード同定の目的は、その作用因子の特定の性質と危害を誘発する可能性potential(すなわち、作用因子ががんを引き起こす可能性)を同定することである。

 JECFAは、リスク評価を実施しており、ある条件と暴露量のもとで、特定の危害(例えば、がん、生殖毒性、遺伝毒性)を誘発するであろう確率probabilityを決定する。したがって、作用因子の同定されたハザードの特性と、特定シナリオで予測される暴露、つまり暴露経路、状況、頻度、暴露される量、をもとに評価している。JECFAは食品添加物を評価するので、特に食事暴露シナリオについてのリスク評価を行う。

 

これらの評価で使用されている方法論はどのように異なるのか?

 IARCとJECFAでは、評価する根拠のタイプが異なる。IARCは、公開されている入手可能な研究と報告書のみを考慮する。JECFAは、公開されている入手可能なすべての研究と報告書を考慮し、さらに規制目的で実施された研究も考慮することがある。

 アスパルテームについては、IARCモノグラフ作業部会が欧州食品安全機関(EFSA)によって公開された多くの未発表の研究を検討することができたため、公開されている研究と報告書に関して、かなりの重複があった。

 IARCは、ヒト及び動物におけるがんに関する根拠と、様々な異なる作用因子への暴露に関するメカニズムの根拠の評価を通じて発がんハザードを評価している。IARCモノグラフ評価では、根拠は、ヒトが経験する可能性のある、職業的、環境的、栄養的、その他の暴露に由来する可能性がある。IARCモノグラフ評価は、IARCモノグラフの最近改訂された序文に記載されているように、厳格な規準に従って実施される。JECFAは、食品添加物を評価するため、食事暴露シナリオについてのリスク評価を実施する。

 

これらのハザード及びリスク評価についてIARCはJECFAと協力したか?

 2つの評価は独立している。IARCモノグラフプログラムとFAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)には、それぞれ異なる役割、作業部会メンバー、ハザードとリスクの評価を規定するルールと原則がある。しかし、アスパルテームの場合、両者の事務局が互いに評価の進捗をフォローし、入手可能なデータについて情報を提供し合い、事務局のメンバーも共有した。

 

 さらに、2つの専門家パネルのアプローチの一貫性を確保するため、IARCモノグラフ会合にはJECFAの3名のメンバーがオブザーバーとして参加し、IARCとJECFAの事務局は両方の会議に出席した。

 

なぜIARCとJECFAの評価は補完的なのか?

 IARC作業部会はアスパルテームの潜在的な発がん作用を評価したが、JECFAは現行の許容一日摂取量(ADI)の見直しとアスパルテームの食事暴露評価を含む前回のリスク評価を更新した。これらの一連の評価とIARCモノグラフ事務局及びJECFA事務局の緊密な連携により、入手可能な最新の根拠に基づくアスパルテーム摂取の健康影響に関する包括的な評価が可能となった。

 

なぜIARCとJECFAは一緒に結果を発表したのか?

 新たな研究結果が入手可能になったことから、アスパルテームは、IARCモノグラフの優先候補を勧告する助言グループと、JECFAによる評価を提案したコーデックス食品添加物部会(CCCF)の両方によって、優先順位が高い作用因子として推奨された。IARCはアスパルテームの潜在的な発がん作用(ハザード同定)を評価し、JECFAはADIの見直しを含むリスク評価の更新と食事暴露評価を行った。

 評価は補完的なものであり、2023年6月と7月に相次いで実施された。

 

JECFAの結論はIARCの分類と一致しているか?

 JECFAの結論は、様々な根拠を定性的に統合した結論に基づいており、その要約は以下の通りである:

  • ヒトにおける発がん性に関する限られた根拠:IARC作業部会とJECFAはともに、ヒトにおける入手可能ながん研究に注目し、レビューを行った。IARC作業部会とJECFAは、肝がん(特に、肝細胞がん)について統計的に有意な増加が観察されたことに留意したが、因果の逆転、偶然性、バイアス、社会経済的・生活様式的要因や他の食事成分による交絡を排除できなかった。JECFAは、IARCモノグラフプログラムで使用されている「限られた(limited)」根拠の代わりに、「説得力のない(not convincing)」という用語を使用している。
  • フランスで2009~2021年に実施された約100,000人が参加した研究(NutriNet-Sante)では、アスパルテームの非摂取者と、低摂取者(平均:24 mg/日、SD: 4.06)及び高摂取者(平均:47.42 mg/日、SD: 60.75)を比較した場合、健康リスクの増加が観察された(Debras et al., 2022, 2023)。統計的関連は、現行ADIの20倍又は40倍低い暴露量で見られた。
  • 実験動物におけるがんに関する限られた根拠もあった。IARC作業部会とJECFAはともに、肯定的な動物試験(Ramazzini研究所の試験)には同様の限界があると指摘している。
  • メカニズムに関する限られた根拠もあった。IARC作業部会とJECFAは、アスパルテームの可能性のあるメカニズム(IARC)又は作用機序modes of action(JECFA)を分析した。遺伝毒性を検討した研究は、デザインの限界により、JECFAとIARCは結論が出ないと考えられた。しかし、IARCの評価では、アスパルテームが実験系において酸化ストレスの首尾一貫した根拠や、実験系において慢性炎症を誘発し、細胞増殖、細胞死及び栄養供給を変化させるという示唆的な根拠が特定された。
  • さらに、JECFAとIARCはともに、アスパルテームが消化管内で完全に加水分解され、他の食品や飲料の摂取後に吸収される代謝物と共通の代謝物になることを指摘した。アスパルテームが、そのまま全身循環に入ることはない。

 

 結論の表現は、それぞれの使命の要件に沿って異なっている。

 IARCの評価では、3つの根拠の流れ(ヒトのがん、実験動物のがん、メカニズムに関する根拠)のすべてに限界があることが指摘された。ヒトにおける肝細胞がんの「限られた」根拠は、IARCモノグラフの序文に従ってGroup 2B評価につながった。

 IARCとは異なり、JECFAには分類システムがない。JECFAは、動物又はヒトにおける有害影響につながるもっともらしいメカニズムに関する説得力のある根拠も、そのような影響を実証する十分な数の研究も見いだしていない。

 

非がん影響についてはどうだろうか?

 JECFAは、IARCとは異なり、がん以外の有害影響についても調査している。アスパルテーム摂取と2型糖尿病、アスパルテーム摂取と脳血管疾患との統計的な関連性を示す、よく実施された(well-conducted)コホート研究からの最近のデータは、JECFAによって説得力があるとはみなされなかった。関連性は、交絡及び逆因果関係の可能性を制限するためにデザインされた様々な感度分析でも維持されたが、コホート研究に固有のある種のバイアス及び残余交絡の可能性を排除することはできない。関連に因果関係があると推論するために、疫学者は、強さ、一貫性、特異性、時間性、生物学的勾配、妥当性、首尾一貫性、実験、類推などの多くの規準を用いる。現時点で、これらの規準のすべて又は一部を満たすことは困難である。これらの関連性について確固たる結論を出すためには、さらなる研究が必要である。

 

JECFAが対処していない他の作用メカニズムはあるか?

 動物及びヒトにおける研究では、アスパルテームが微生物叢を変化させる可能性が示唆されている。しかし、結果は一貫しておらず、ヒトの疫学研究で観察されたアウトカムに結びつく可能性のあるメカニズムは不明である。ヒトを対象とした1件の無作為化比較試験では、アスパルテームの摂取が口腔内及び腸内の微生物叢を機能的に変化させることが見出された。アスパルテームは被験者自身の血糖応答を有意に変化させなかったが、これらの被験者から細菌移植を受けた無菌マウスでは血糖応答が損なわれていた。本研究の結果は、アスパルテームに対する反応に個人差がある可能性も示唆している。アスパルテーム摂取による健康影響の可能性において、微生物叢の変化が果たす役割を理解するためには、さらなる研究が必要である。

 IARCの評価では、げっ歯類における関連研究において、アスパルテームへの暴露がインスリンの血清濃度を上昇させることが示されていることが見出された。これらの知見はインスリン感受性の変化を示唆しているが、発がんメカニズムとの関連性は注目すべき研究ギャップである。

 

WHOはアスパルテームに関する追加研究を推奨しているか?

 はい。IARCとWHOは、独立した研究グループに対し、より適切に実施されたコホート研究(既存のコホートにおける長期追跡調査及び反復食事アンケート調査を含む)及び無作為化比較試験について、インスリン調節、メタボリックシンドローム、糖尿病、特に発がん性に関連するメカニズム経路に関するものを含めた研究を開発するよう奨励している。実験系における発がん性の追加研究も、アスパルテームの摂取により発がんハザードがあるかどうかを解明するのにも役立つだろう。

 

WHOは砂糖と砂糖以外の甘味料の摂取について何を推奨しているのか?

 成人と子供の両方において、WHOは遊離糖類の摂取量を総エネルギー摂取量の10%未満に減らすことを推奨している(強い勧告)。WHOは、遊離糖類の摂取量を総エネルギー摂取量の5%未満にさらに減らすことを推奨している(条件付き勧告)。

 WHOは、ノンシュガー甘味料を、体重管理の達成や、非伝染性疾患のリスク低減のための手段として使用しないよう推奨している(条件付き勧告)。WHOは、ノンシュガー甘味料の使用が長期的な体重管理に役立たず、2型糖尿病、心血管疾患、早期死亡のリスクを増大させる可能性がある根拠が依然として示唆されているため、ノンシュガー甘味料を、体重管理の達成や、非伝染性疾患のリスクを減らす手段として使用しないことの推奨を再確認している。

 

<JECFA要約>

 

第96回会合:FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会

Ninety-sixth meeting - Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives (JECFA)

14 July 2023

https://www.who.int/publications/m/item/ninety-sixth-meeting-joint-fao-who-expert-committee-on-food-additives-(jecfa)

<概要>

 第96回FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会が、2023年6月27日から7月6日までジュネーブで開催された。会合の目的は、特定の食品添加物及び香料の安全性を評価することであった。今次会合、同様の一連の会合の96回目であった。委員会に課せられた任務は、(a)食品添加物の評価を規定する原則をさらに精緻化すること、(b)特定の食品添加物の安全性評価を実施すること、(c)特定の食品添加物の規格を見直し、作成すること、(d)特定の香料に関する規格を確立すること、であった。

会合の報告書はWHOテクニカルレポートシリーズ(No.1050)に掲載される。この報告書には、許容一日摂取量(ADI)及びその他の毒性学的な、食事暴露及び安全性に関する勧告について、委員会の主な結論が要約される。委員会で検討された特定の食品添加物の同一性と純度に関する規格、並びに香料に関する規格についての検討及び結論に関する情報も含まれる。

 

  • 第96回JECFA会合報告書 概要と結論

SUMMARY AND CONCLUSIONS

Issued on 14 July 2023

https://cdn.who.int/media/docs/default-source/food-safety/jecfa/summary-and-conclusions/jecfa96-summary-and-conclusions.pdf?sfvrsn=f7b61f6c_4&download=true

委員会は、1つの食品添加物の安全性を評価し、3つの食品添加物の規格を改訂し、2つの香料グループの安全性を評価し、8つの香料の規格を改訂した。ADIを設定する際に委員会が考慮したデータをまとめた毒性学的モノグラフは、WHO食品添加物シリーズNo.87として出版される予定である。化合物の同一性と純度に関する新しい規格及び改訂版は、FAO JECFAモノグラフ第31号に掲載される。

 

毒性学的及び食事暴露情報と結論

毒性学的に評価され、食事暴露が評価され、規格が改訂された食品添加物

アスパルテーム

第25回会合で、JECFAはアスパルテームのADIを0~40 mg/kg体重に設定した1。このADIは、Ishiiら2報告した餌に含まれるアスパルテームに暴露されたラットの104週間試験から、無毒性量(NOAEL)4000mg/kg体重/日(試験された最高用量)に基づいており、不確実係数として100を適用している。今次会合では、前回のJECFA評価以降に入手可能となったアスパルテーム及びその代謝物と分解産物に関する生化学的、毒性学的、疫学的研究を評価した。また、アスパルテームへの推定食事暴露量を初めて評価した。

経口暴露後、アスパルテームはヒトや動物の消化管内で完全に加水分解され、フェニルアラニン、アスパラギン酸、メタノールの3つに代謝されるため、JECFAは、食事暴露後のアスパルテームの全身暴露はないことを再確認した。フェニルアラニン、アスパラギン酸、メタノールはまた、一般的に摂取される食品から酵素触媒による加水分解によっても放出される。全身循環に入る前にアスパルテームは加水分解され、これらの代謝物は一般的な食品を摂取した場合よりも低い濃度で全身循環に入る。JECFAは、現行のADIまでのアスパルテーム経口暴露試験において、アスパルテームの代謝物の血漿中濃度の上昇は見られなかったことに留意した。

JECFAは、アスパルテームの経口暴露による遺伝毒性の懸念はないと結論づけた。

JECFAは、アスパルテームに関する12の経口発がん性試験のデータを評価し、そのすべてに欠陥を特定した。Soffrittiら3-6の研究を除いて、すべての研究が陰性(negative)結果を示したことに注目した。JECFAはSoffrittiらの陽性(positive)所見を検討し、これらの研究の研究デザイン、実施、報告、解釈に限界があることを指摘した。特に、ほとんどの動物を自然死に至らせるという試験プロトコルを使用したことが(限界があることの)理由である。その結果、これらの研究の解釈は、加齢に伴うがん発生の増加という既知の事実によって複雑になった。Soffrittiらの研究結果は妥当性が不確かであるため、アスパルテームのリスク評価に用いることはできないとの見解に達し、JECFAは、Ishiiらによる発がん性試験2は現行の試験ガイドラインに近いもので、結果は陰性であると結論づけた。JECFAは、酸化ストレスなど、がんの誘発に関係する可能性のあるメカニズムを調査した、最近発表されたいくつかの研究を検討した。酸化ストレスマーカーの変化を報告した研究は、そのデザインに限界があった。JECFAは、長時間の酸化ストレスから予想される病理組織学的変化は、アスパルテームの他の短期及び長期毒性試験では観察されなかったことを指摘した。

JECFAは、Ishiiらによる試験とその他の発がん性試験のネガティブな(陰性)結果、遺伝毒性の懸念がないこと、そしてアスパルテームの経口暴露ががんを誘発する理にかなったメカニズムがないことから、アスパルテームの経口暴露による動物での発がん性の懸念はないと結論づけた。

ラットを用いた1世代または2世代にわたる生殖・発生毒性試験のNOAELは、試験した最高用量である4000 mg/kg体重/日であった。マウスにおける発生毒性のNOAELは、試験した最高用量である5700 mg/kg体重/日であった。したがってJECFAは、アスパルテームは動物における生殖・発生毒性物質ではないと結論づけた。

JECFAは、アスパルテームの摂取と、ヒトにおけるがん、2型糖尿病(T2D)、その他の非がん健康エンドポイントなどの特定の健康影響との関連を調べるために、無作為化比較試験(RCT)と疫学研究から得られたデータを評価した。

JECFAは、アスパルテーム又はアスパルテームを高強度甘味料(intense sweetener)として含む飲料を用いて実施されたいくつかのコホート研究において、肝細胞がん、乳がん、血液がん(非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫)など、一部のがんについて統計的に有意な増加が報告されていることに注目した。しかし、アスパルテームの摂取と特定のがんの種類との間に一貫した関連性は認められなかった。すべての研究は暴露の評価に関して限界があり、多くの研究では、特にアスパルテームと高強度甘味料全般に関して限界がある。逆の因果関係、偶然性、バイアス、社会経済的・生活様式的要因や他の食事成分の摂取による交絡を排除することはできない。全体として、アスパルテームの摂取とヒトにおけるがんとの関連を示す根拠には説得力がないと結論づけた。

ヒトにおけるアスパルテーム摂取がT2Dや他のがん以外の健康エンドポイントに及ぼす影響を評価したいくつかの研究では、一貫性のない結果が示された。例えば、RCTではアスパルテーム摂取後の血糖反応の低下が示されたが、疫学研究ではアスパルテーム摂取はより大きなT2Dリスクと関連していた。JECFAは、疫学研究の結果がT2D症例の同定方法(特定の薬剤と自己申告による医師の診断のいずれか)によって偏っている可能性があることに留意し、アスパルテームの摂取と評価されたがん以外の健康エンドポイントとの関連を示す根拠には説得力がないと結論づけた。

全体として、JECFAは、アスパルテームが摂取後に有害影響を及ぼすという説得力のある根拠は、実験動物やヒトのデータにはないと結論づけた。この結論は、アスパルテームは消化管で完全に加水分解され、一般的な食品の摂取後に吸収される代謝物と同じになるという情報と、アスパルテームが全身循環に入ることはないという情報に支えられている。JECFAは、今次会合で評価されたデータから、アスパルテームのADIである0~40 mg/kg体重を変更する理由はないと結論し、アスパルテームのADIである0~40 mg/k体重を再確認した。

本評価でJECFAは、アスパルテームの推定食事暴露量を、平均については子供は最大10 mg/kg体重/日、成人は最大5 mg/kg体重/日、高食事暴露について子供は最大20 mg/kg体重/日、成人は最大12 mg/kg体重/日とし、これらは現在の評価として適切であると判断した。

JECFAは、これらの推定食事暴露量がADIを超えないことに留意し、アスパルテームへの食事暴露は健康上の懸念をもたらすものではないと結論づけた。

提出されたデータを検討した結果、第80回会議7で改訂されたアスパルテームの規格モノグラフについて、以下の修正を行った:製造に関する詳細を含む記述の更新、機能的用途に風味増強剤を追加、測定方法を高速液体クロマトグラフィー法に置き換え、「その他の関連不純物」の試験と規格を追加、「その他の光学異性体」の試験と規格を削除。

毒性学および食事暴露モノグラフの補遺が作成され、規格書は改訂された。

 

アスパルテーム参考文献

  1. Evaluation of certain food additives (Twenty-fifth report of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives). Geneva: World Health Organization; 1981. WHO Technical Report Series, No. 669.
  2. Ishii H, Koshimizu T, Usami S, Fujimoto T. Toxicity of aspartame and its diketopiperazine for Wistar rats by dietary administration for 104 weeks. Toxicology. 1981;21(2):91–4. doi:10.1016/0300-483x(81)90119-0
  3. Soffritti M, Belpoggi F, Degli Esposti D, Lambertini L. Aspartame induces lymphomas and leukaemias in rats. Eur J Oncol. 2005;10:107–16.
  4. Soffritti M, Belpoggi F, Degli Esposti D, Lambertini L, Tibaldi E, Rigano A. First experimental demonstration of the multipotential carcinogenic effects of aspartame administered in the feed to Sprague-Dawley rats. Environ Health Perspect. 2006;114:379–85. doi:10.1289/ehp.8711
  5. Soffritti M, Belpoggi F, Tibaldi E, Esposti DD, Lauriola M. Life-span exposure to low doses of aspartame beginning during prenatal life increases cancer effects in rats. Environ Health Perspect. 2007;115:1293–7. doi:10.1289/ehp.10271
  6. Soffritti M, Belpoggi F, Manservigi M, Tibaldi E, Lauriola M, Falcioni L, Bua L. Aspartame administered in feed, beginning prenatally through life span, induces cancers of the liver and lung in male Swiss mice. Am J Ind Med. 2010;53:1197–206. doi:10.1002/ajim.20896
  7. Safety evaluation of certain food additives. Geneva: World Health Organization; 2017. WHO Food Additives Series, No. 73.

 

[FSANZ]アスパルテームに関するメディア声明

Media statement on aspartame

14/07/2023

https://www.foodstandards.gov.au/media/Pages/Media-statement-on-aspartame.aspx

世界保健機関(WHO)は、アスパルテーム(人工甘味料)に関する2つの科学的レビューを受けて、アスパルテームの許容一日摂取量(ADI)を再確認した。

国際がん研究機関(IARC)のモノグラフ及びFAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)によるアスパルテームの評価の要約が本日(2023年7月14日金曜日)発表された。

オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)のCEOであるSandra Cuthbert博士は、JECFAの評価では、食品及び飲料中のアスパルテームに関する現行のADIが適切であると判断されたと述べた。

 「これは、オーストラリアとニュージーランドの消費者にとって朗報で、アスパルテームの食品基準が国際的な指標と一致していることを保証するものである。JECFAの結論は、ADI未満の暴露となる現行の許可されている使用量ではアスパルテームが安全であることを確認した多くの国際的な研究と一致している。FSANZは、安全なフードサプライを確保することで公衆衛生と安全を保護する、根拠に基づいた基準を設定している。JECFAの作業は、New Zealand Food Standards Codeのアスパルテームの基準が適切かつ最新であることを確認するものである。」とCuthbert博士は述べた。

 

-アスパルテーム

Aspartame

updated May 2022

https://www.foodstandards.gov.au/consumer/additives/aspartame/Pages/default.aspx

アスパルテームは、低エネルギー又はシュガーフリーの食品に添加される高強度甘味料(intense sweetener)である。ヨーグルト、菓子及び炭酸飲料などの食品に使用されている。

アスパルテームの安全性は、FSANZ及びその他の国際機関(以下)によって包括的にレビューされている:

  • 国連食糧農業機関(FAO)/ 世界保健機関(WHO)
  • FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)
  • 欧州食品安全機関(EFSA)
  • 米国食品医薬品局(US FDA)

現在までのすべての科学的根拠は甘味料としてのアスパルテームの安全性を支持しているが、再評価作業が提案されている。2021年11月に、アスパルテームは評価のために提案された食品添加物として使用される物質のJECFA優先リストに最優先度(優先度1)で指定された。

要請された情報と再評価は、以下に関するものである:

  • 食事摂取評価、及び
  • 全般的な発がん性評価におけるメカニズムデータの系統的評価。

1980年にJECFAはアスパルテームの許容一日摂取量(ADI)を40 mg/kg体重と設定した。ADIは、毎日、生涯にわたって摂取しても検知できる健康上のリスクがない食品添加物の量である。

2007年、European Ramazzini Foundation (ERF)の研究は、アスパルテームがヒトの許容一日摂取量に近いレベルでラットにがんを引き起こす可能性があることを示唆した。EFSAはこの研究をレビューし、2009年3月に最新の科学的見解を発表した。EFSAは、ERF研究を含むすべての利用可能な根拠に基づいて、アスパルテームはがんを発生させず、アスパルテームのADIを改訂する理由はないと結論付けた。研究を検討した後、FSANZはEFSAに同意した。

2010年には、さらに2つの研究が発表された。最初の研究は、ERFのSoffrittiら(2010)によるもので、マウスの平均寿命は、アスパルテームに毎日生涯にわたって暴露しても変化しないことを示している。しかし、この研究は、アスパルテームを与えられたマウスでは、死亡時のいくつかの種類のがんの発生率がわずかに増加するとも主張している。もう1つは、Halldorssonら(2010)による疫学的研究で、デンマークの妊娠女性を対象に、砂糖入り及び人工甘味料入りの清涼飲料の摂取と早産のリスクとの関連性を研究している。

EFSAはこれらの研究を評価し、2011年2月28日の声明で、アスパルテームや現在EUで認可されている他の甘味料の以前の安全性評価を再検討する理由にはならないと述べた。

2013年12月、EFSAはアスパルテームの完全なリスク評価を完了し、現在の暴露レベルでは安全であると結論付けたと発表した。リスク評価には、アスパルテームとその分解産物に関するすべての科学的研究のレビューが含まれていた。

 

[MPI]アスパルテームについての質問に回答

Aspartame questions answered

July 2023

https://www.mpi.govt.nz/dmsdocument/58054-Aspartame-questions-and-answers-fact-sheet

人工甘味料アスパルテームの安全性について最近二つの国際専門家団体が再評価した。ここにアスパルテームとその健康リスクの可能性についていくつかのFAQを示す

2023年7月14日にIARCとJECFAは合同声明でアスパルテームに発がんの可能性はあるものの、現在のADI 40mg/kg体重は正しいと結論した。

二つの報告書で、アスパルテームをほどほどに摂取した場合にヒトに有害影響があるという説得力のある根拠はみつからなかった。

つまりアスパルテームが安全でないと考えられる可能性のある量はオーストラリアニュージーランド合同食品基準で認可されている食品や飲料を介して摂取するものよりはるかに過剰であるだろう。

以下FAQ

・アスパルテームとは?

・どの食品に使われている?

・アスパルテームはニュージーランドで食品成分として表示する必要がある?

・ニュージーランドではどのように規制されている?

オーストラリアニュージーランド食品基準ではアスパルテームを含む高強度甘味料は、通常砂糖により提供される甘みの一部または全部を置き換えるのに必要な量使うことを認めている。これは通常38gの砂糖を含む355mLのソフトドリンクなら、そのダイエットドリンクバージョンには最大約0.19gのアスパルテームが使えるだろうことを意味する。

お菓子や電解質飲料、醸造ソフトドリンクなど一部の食品にはアスパルテームの最大許容量が設定されている。

これまでの包括的食品安全評価ではアスパルテームは安全であることを示している。それはニュージーランド及び世界的に、40年以上使用が認められている。

IARCとJECFAの再評価は、適切に食品に使われればアスパルテームは安全であることを支持している。

・アスパルテームを摂取することに関連するリスクはある?

1970年代からの膨大な研究は、人々が通常摂取するレベルでのアスパルテームの摂取がリスクとなる根拠を発見していない

・アスパルテームのリスクはどう評価されている?

・最新の二つのWHO評価は何を示した?

・IARCとは何で何をしている?

・IARC分類とは?

・アスパルテームをIARCグループ2Bに分類した意味は

・JECFAとは何で何をしている?

・私は砂糖入りのソフトドリンクあるいはアスパルテーム入りのソフトドリンクを飲むべき?

ニュージーランド成人のための食事と運動ガイドラインは第一選択肢として他の飲み物より水を薦めている。また砂糖の代わりに高強度甘味料を含むダイエットドリンクは、ほどほどなら砂糖入り飲料より良い選択肢だとも述べている。

・消費者はアスパルテームの発がん可能性を心配すべき?

全ての人は食事ガイドラインに従った食事を試みるべきである。

どんな甘味料でも食べ過ぎは助言に反する

・この報告に対応して何がおこる?

両評価の結果はニュージーランド食品安全局、FSANZ、国際規制機関で検討されるだろう。

アスパルテームの安全性に関する助言に影響する可能性のある新しい根拠と食品中の使用規制に変更が必要かどうかに焦点が当てられるだろう。

JECFAは現行のADIを変更する根拠はないと示している。

食品安全は重要なので、もし許容できないリスクがあればニュージーランド食品安全局は対応するだろう

 

[MFDS]食薬処、アスパルテームの安全性に問題ない、現行の使用基準を維持 

添加物基準課 2023-07-14

https://www.mfds.go.kr/brd/m_99/view.do?seq=47460

食品医薬品安全処は最近、発がんの可能性をめぐる論争が起きているアスパルテーム(甘味料)に対し、国連食糧農業機関/世界保健機関合同食品添加物専門家会議(JECFA*)が現在の摂取水準で安全性に問題がないと発表したことを受け、現行の使用基準を維持する予定である。

* JECFA:Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives

これまで世界保健機関(WHO)傘下の2つの専門機関である国際がん研究機関(IARC*)とJECFAは、アスパルテームの安定性についてそれぞれ評価しており、その結果を本日発表した。

* IARC:International Agency for Research on Cancer

評価の結果、IARCはアスパルテームを発がん性物質分類のグループ2B(人に発がん可能性がある)に分類した。

しかし、JECFAは以前に設定された1日摂取許容量*(40 mg/kg.bw/day)を維持し、現在の摂取水準で安全であると評価した。

*1日摂取許容量(ADI、Acceptable Daily Intake):意図的に使用する物質に対して生涯摂取しても有害影響が現れない一人当たり1日最大摂取許容量。

JECFAでは食品を通じて摂取した際の安全性について評価しており、各国の規制機関はJECFAの評価結果を参考に、自国の実情に合わせて安全管理基準を定めている。

今回の評価において、JECFAは、▲消化管でフェニルアラニン、アスパラギン酸、メタノールへと完全に加水分解され、体内のアスパルテーム量が増加していない点、▲経口発がん性研究結果がいずれも科学的に限界がある点、▲遺伝毒性の証拠が不足している点などを考慮して、現在の1日摂取許容量(40 mg/kg.bw/day)を変更する科学的な根拠がないと結論付けた。

 

IARCは、アスパルテームなどの物質自体のがん発生を評価する機関であり、実際の摂取量を考慮して評価することはない。摂取量に関係なく、ヒトや実験での動物からがんを誘発するかについての研究データに基づいて発がん可能物質を分類しており、実験動物やヒトにがんを誘発するという証拠が十分でない場合、グループ2Bに分類している。

ちなみに、IARCは酒、加工肉などを発がん物質グループ1に、65度以上の熱い飲料摂取、牛肉・豚肉などの赤肉などをグループ2Aに分類しており、アスパルテームがグループ2Bに分類されても食品として摂取が禁止されたわけではない。

 

食薬処は、今回のJECFAの評価結果と2019年に調査された韓国国民のアスパルテーム摂取量を考慮したとき、現在のアスパルテームの使用基準を維持することが妥当だと判断した。当時調査された韓国国民のアスパルテーム平均摂取量はJECFAが定めた1日摂取許容量対比0.12%で非常に低い水準であった。

ただし、食薬処はIARCの発がん誘発可能性提起による消費者の懸念やシュガーレス飲料の人気などを考慮し、甘味料全般に対する摂取量を周期的に調査し、必要に応じて基準・規格の再評価を推進する計画である。

食薬処は、今後も食品添加物の安全管理を持続的に強化し、国民が安全な食品を消費できる環境づくりに最善を尽くす。

<添付> アスパルテーム関連Q&A

アスパルテーム関連Q&A

□ アスパルテーム(Aspartame)とは何ですか?

アスパルテームは、食物に甘みを与えるために使用する食品添加物で、タンパク質の構成成分であるアミノ酸2個(フェニルアラニン、アスパラギン酸)が結合した甘味料。1981年に米国で食品添加物として承認されて以来、日本や欧州など世界中のほとんどの国で使用されており、韓国も1985年から使用している。

□ アスパルテームにはどのような特徴がありますか?

アスパルテームのカロリーは砂糖と同じ(4 kcal/g)だが、甘味度は砂糖の約200倍高く、少量の使用で甘さを出すことができる。

□ 1日摂取許容量とは何ですか?

1日摂取許容量(Acceptable Daily Intake,ADI)とは、人がある物質(例:アスパルテーム)を一生毎日食べても健康上何の問題を起こさない一日摂取量をいい、人の体重1 kgあたりの量(mg)で表す。

1日摂取許容量は、FAOとWHOが共同で運営する国際機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives, JECFA)が設定し、欧州食品安全庁(EFSA)、食品医薬品安全評価院など各国の規制機関でも設定される。

□ アスパルテームの1日摂取許容量は?

FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)、欧州食品安全庁(EFSA)および韓国では、アスパルテームの1日摂取許容量(ADI)を40 mg/体重kg /1日に設定している。したがって、体重60 kgの成人のアスパルテーム一日(1日)摂取許容量は2.4 g(40 mg/kg  体重×60 kg=2,400 mg)に相当する。

※体重30 kgの子供の1日摂取許容量:1.2 g(1,200 mg)

参考に、米国はアスパルテームの1日摂取許容を韓国より高い50 mg/体重 kg/1日に設定している

 

□ アスパルテームを含む食品を1日にどのくらい食べると、1日摂取許容量まで到達しますか?

成人(60 kg)の場合、❶アスパルテームを含むゼロコーラ250 mL(アスパルテーム43 mg含有時)は1日55缶、❷アスパルテーム含有量750mLの濁酒(アスパルテーム72.7 mg含有時)は1日33本を摂取すると許容量に達する。

 

❶ゼロコーラ:2,400 mg/43 mg≒55缶

❷濁酒:2,400 mg/72.7 mg≒33本

 

□ 韓国国民のアスパルテーム摂取水準は?

2019年の調査結果、韓国国民のアスパルテーム平均摂取量は1日摂取許容量(ADI)対比約0.12%であり、アスパルテームを含む食品を好む国民(極端摂取者)の摂取量も約3.31%水準と評価された。

ちなみに、アスパルテーム以外に多く使われている甘味料(5種)*の平均摂取量も1日摂取許容量(ADI)比0.2~1.4%水準であった(’19年)。

*スクラロース0.2%、アセスルファムカリウム0.3%、ステビオール配糖体・酵素処理ステビア0.3%、サッカリンナトリウム1.4%

□ 韓国でアスパルテームを食品にどれくらい使用(使用基準)*できますか?

現在、韓国ではパン類、菓子、シリアル類、健康機能食品など8つの食品には使用できる最大量(0.8~5.5 g/kg)を定めているが、それ以外の食品には使用量を制限していない。

*使用基準:食品を製造・加工する際に守らなければならない基準として、食品添加物ごとに使用できる食品と使用できる量を定めており、これを遵守しなければ行政処分などの措置→使用基準は「食品添加物の基準及び規格」に収録

ちなみに現在、国内品目製造報告されている食品(約86万品目)のうち、アスパルテームを使用して生産する食品は0.47%水準(’22年基準、922品目×3,995品目)である。

 

<1日摂取許容量(ADI)と使用基準の比較>

1日摂取許容量(ADI)

使用基準

・「ヒト」が食品添加物(アスパルテーム)を安全に摂取できる一日最大量

 

⇒安全性評価に活用

・「食品」を製造する際に食品添加物(アスパルテーム)をどれだけ使用できるかを定めた法的基準

⇒違反した場合、行政処分など措置可能

 

□ 最近、国際がん研究機関(IARC)がアスパルテームを「人体発がん性物質(2B)」に分類したが、どういう意味ですか?

世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer)は、どのような物質ががんを誘発するかを評価し、4つのグループ(1、2A、2B、3)に分類している。

アスパルテームが分類されたグループ2Bは、人体発がん可能物質(possibly carcinogenic to humans)で実験動物またはヒトにがんを誘発するという科学的証拠が不十分な場合に該当する。

グループ2Bには、日常の食事で簡単に接する野菜の漬物なども含まれており、グループ2Bに分類されたからといって食品での摂取を禁止しなければならないわけではない。ちなみに酒、タバコなどはグループ1、65℃以上の熱い飲料摂取、高温の揚げ物、赤身肉などはグループ2Aと評価されているが、現在のところ摂取を制限したり禁止していない。

 

○(グループ1)「人体発がん物質(carcinogenic to humans)」

-人体発がん性に関する十分な根拠データがある場合

*例)タバコ、酒(アルコール)、加工肉、ヘリコバクターピロリ菌など

○(グループ2A)人体発がん推定物質(probably carcinogenic to humans)

-人体データは制限的だが、動物実験の根拠データは十分である場合

*例)65℃以上の熱い飲料摂取、高温の揚げ物、赤身肉など

○(グループ2B)人体発がん可能物質(possibly carcinogenic to humans)

-人体データが制限的で、動物実験データも十分でない場合

*例)野菜の漬物、電磁波など

○(グループ3)人体発がん性に分類できない物質(not classifiable as to carcinogenic to humans)

-人体と動物実験データの両方が不十分な場合

 

□ 甘味料の中で発がん性物質に分類された事例はありますか?

現在はアスパルテーム以外にはない。ちなみに現在甘味料として使用中のサッカリンナトリウムは動物(マウス)で膀胱がんを誘発できるという理由で2B群(人体発がん可能物質)に分類(’87年)されたが、がん誘発に対する科学的根拠不足で3群(人体発がん性に分類できない物質)に再分類(’'99年)された。

*コーヒーも2B群(’'91年)から3群(’'16年)に再分類された

 

□ 国際がん研究機関とFAO/WHO合同食品添加物専門家会議の2機関が評価した、アスパルテームの安全性に関する違いは?

IARCは、ある物質自体のがん発生ハザードを確認し、どれだけの量に暴露されると危険なのかについては評価しない。アスパルテームを食品を通じて実際に摂取(暴露)したとき、人体へのリスクの有無は食品添加物の安全性を評価する国際機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)でしている。

 

□ 今後もアスパルテームを使い続けることはできますか?

現在のアスパルテーム摂取レベルでは安全性に懸念がないため、引き続き使用できる。

 

[MFDS] [政府合同報道参考] 福島汚染水放出に関する説明(12次)

輸入食品政策課 2023-06-30

https://www.mfds.go.kr/brd/m_99/view.do?seq=47412

汚染水放出対応全般

説明:国務調整室パク・グヨン国務1次長

<政府側の目標及び要請事項>

□ 本日は韓国政府が汚染水放出対応過程で目指すように、この目標を達成するためにお願いしたい内容について簡略に申し上げる。

□ 韓国政府は、東京電力の汚染水海洋放出に関し、国民の健康と安全を確保し、水産業界の被害を最小限に抑えるために最善を尽くしている。

○ しかし、汚染水に対する過度の懸念が水産物消費の萎縮につながるという点で、政府の2つの目標はある程度相反する側面がある。これに対し韓国政府は汚染水がどの程度危険なのかを詳細に把握して国民に伝えることで、国民が正確な認識の下で決定を下せるように判断根拠を提供する役割を果たしている。そして、政府が国民に伝える情報は、当然客観的で科学的な事実に基づくものである。

□ 汚染水に関して野党やマスコミなどが提起する疑問は、国民が誤解していたり、これまで情報伝達が十分でなかった部分を指摘するという点で肯定的な側面があると考えており、これらの疑問については、政府でもできるだけ詳しく準備して国民に知らせる努力をしている。

○ ただし、政府がいくら熱心に国民に科学的事実を伝えても、誤った情報が繰り返し露出されるとその効果が半減する恐れがあり、野党とマスコミは発表または報道の際は事実関係の確認にもう少し努力することを要請する。

 

<食薬処の報告書公開に関する事実関係を確認>

□ 民主党福島汚染水院内対策団ソン・ギホ副団長が、食薬処報告書公開の有無に関して説明した内容のうち、事実関係確認が必要な部分があった。

□ ソン・ギホ副団長は、

❶食薬処が’14~’15年に3回にわたって福島付近の海域で放射能危険性現地調査を進め、

❷これらの活動により、「原発事故による輸入食品安全管理方針研究」という報告書が完成し、

❸食薬処はその結果を公開すると発表したが、これとは異なり報告書を隠していると主張した。

 

□ まず、ソン・ギホ副団長が主張した内容には2つの異なる活動が混ざっていて、整理が必要である点を指摘する。

□ 一つは、原発事故後の日本産水産物の安全性を検討するための民間専門家委員会の活動である。

○ 委員会は’14年9月に構成され、日本現地調査など活動をしていたところ、日本が我が国の水産物輸入規制措置をWTOに提訴したことにより活動が暫定中断された。

○ ソン・ギホ副団長がこの活動について述べたとすれば、その主張は事実ではない。

○ この活動はWTO提訴以降暫定中断され、報告書は作成されず、’15年にソン・ギホ弁護士が参加した行政訴訟で不存在が確認されている。

□ もう一つは、日本側のWTO提訴後の活動で、韓国政府が輸入規制措置の正当性を証明するために行ったリスク評価活動に関するものであり、ソン・ギホ副団長が食薬処が公開すると明らかにしたと述べた部分は、この報告書に対するものと考えられる。

○ ただし、ソン・ギホ副団長がこの報告書に対する公開を請求したとき、食薬処がこれを非公開にして、「韓国側がWTO紛争が終了し、結果が各国に回覧される時点で公開する」という条件を付けたことが分かっている。これはWTO紛争中の状況であることを念頭に置いた措置であり、日本産水産物輸入規制が進んでいる状況で、WTO紛争対応のために準備した資料を大量に公開することが国益に役立たないという判断で、現在も非公開で処理している。

□ 結論として、韓国政府が日本の福島汚染水放出の安全性論理に反論できる重要な資料を隠したり、日本の立場に同調するなどの主張は全く事実ではない。また、ソン・ギホ副団長はこの主張を続ける中で汚染水放出が日本産水産物輸入規制と緊密に連携していると仮定しているが、これも事実とは異なる。

○ 日本産水産物輸入規制措置は原発事故以後、何の制御もなく流れ出たきた放射性物質に対する懸念からであり、日本政府が一連の過程を経て実行しようとする汚染水放出とは別であることを改めて申し上げる。

 

[MFDS] [政府合同報道参考] 福島汚染水放出に関する説明(第8次)

有害物質基準課 2023-06-26

https://www.mfds.go.kr/brd/m_99/view.do?seq=47386

汚染水放出対応全般

説明:国務調整室パク・グヨン国務1次長

<日本側の動向>

□ 政府が把握している日本側の最近の動向について簡単に説明する。

□ 去る6月15日の説明会で申し上げたとおり、東京電力は1 kmの海底トンネルを含め、移送設備、希釈設備、放出設備などを対象に、実際に動作する際に問題がないかを点検するために6月12日付けで総合的な試運転を開始した。

○ 東京電力の資料によると、試運転は6月27日終了を目指しており、28日からは日本原子力規制委員会(NRA)が移送・希釈・放出設備に対する使用前検査を施行する予定である。

□ 原安委と外交部などが日本側に関連問合せをするなど状況を確認・検討中であり、詳細結果などについては、今後の説明会を通じて再度説明する。

 

我が海域の水産物の安全管理の現状

説明:海洋水産部ソン・サングン次官

<我が海域・水産物安全管理の現況>

□ 6月26日基準、我が水産物に対する安全管理の状況を説明する。

〇 先週金曜日までに追加された生産段階の水産物放射能検査の結果は合計53件(今年累積、4,578件)で、すべて適合している。

〇 検査件数上位5品目は、イワシ5件、メカジキ4件、カツオ33件、サバ2件、サザエ2件などである。

□ 「国民申請放射能検査掲示板」運営結果

〇 試料確保が出来た9件中7件の検査が完了し適合した。

〇 6月3週目の新規申請10件が追加選定され、品種はサバ、イワシ、アサリ、タチウオなどである。

○ 新規10件を追加した残り12件についても試料確保後検査が行われ次第、すぐに結果を公開する。

□ 輸入水産物放射能検査の現状

〇 6月22日に検査された日本産輸入水産物放射能検査は5件(今年累積、2,776件)であり、放射能が検出された日本産輸入水産物はなかった。

□ 海水浴場に対する緊急調査の現状

〇 海水浴場緊急調査は代表海水浴場20カ所を対象に海水浴場開場前調査完了を目指して推進している。 現在までに5カ所の調査が完了し6カ所は分析が進行中である。

○ 先週、海雲台広安里海水浴場以後、新たに調査結果が出た済州咸徳海水浴場、中文色達海水浴場と仁川乙旺里海水浴場も特異事項はなく、安全な水準であることが確認された。

〇 本日は慶南南海尚州銀砂海水浴場から試料を採取する予定で、忠南大川、江原慶浦、慶南鶴洞モンドル海水浴場など他の海水浴場に対する検査も支障なく進行し、結果が出次第発表する。

<個別説明事項>

□ 天日塩流通秩序に関連する政府合同点検、構成と運営に関する事項

○ 先週の説明会で申し上げたように、海洋水産部と海洋警察庁、管轄自治体は6月25日から、木浦・武安など天日塩産地にある流通業者3カ所をはじめ、合同点検班を本格稼動し始めた。

*(対象)’23年買取量・取引量が多い100業者のうち60業者、(期間)6.25~29

〇 今後、政府合同点検班は生産、流通業者の原産地、トレーサビリティ表示事項などを慎重に点検する一方、供給関連の人手不足など現場の困難を積極的に解消し、天日塩需給安定のために早期出荷を誘導し、市場全体の安定を誘導していく。

□ 国民は天日塩の安全性に対する懸念が依然として高いと聞いている。繰り返しになるが、政府は天日塩安全検査を徹底的しており、4月から毎月10カ所の塩田を対象に始めた放射能検査を、7月からは毎月35カ所以上に本格的に拡大する。

〇 これでも足りないと思われるため、国内外の認証を受けた民間専門業者とともに塩田と塩田保管倉庫まで直接訪問して、追加検査も実施する計画である。

□ 加えて、天日塩を安心して購入できるよう、天日塩の履歴や品質検査に関する事項もお知らせする。

○ まず、消費者が生産、流通情報を確認できる天日塩トレーサビリティは、現在希望する生産者と流通業者などが自発的に国立水産物品質管理院に登録して参加する制度である。

○ 繰り返しになるが、義務化された制度ではない。しかし、登録制であっても虚偽の履歴を表記したり、履歴表記製品と表記していない製品を混ぜて流通する場合、強力な処罰が伴う。

*「水産物流通法」上、3年以下の懲役または3千万ウォン以下の罰金:△履歴制参加登録をせず表記、△虚偽表記、△未表記製品と表記製品を混ぜて販売

〇 義務制ではなく、今も調査公務員が塩田を訪問して生産と出荷記録事項、出荷段階履歴表記適正性などを点検している。

○ 今後も政府は、合同点検班を通じて包装入れ替え、輸入品の混合販売など不法行為を徹底的に点検する。

○ 併せて、今年から生産、流通・加工、販売業者などと協議して、現在の登録制から義務制への転換案も積極的に講じている。

○ 最後に、我々の天日塩は、生産者が出荷するたびに関係法令により義務的に品質検査を受けている。

*「塩産業法」上、懲役3年以下の処罰または3千万ウォン以下の罰金:品質検査を受けなかったり、品質検査結果を虚偽表示、虚偽で品質検査を受ける行為、不合格塩販売

〇 すなわち、関係公務員などが直接確認した上で、「品質確認書」の発行を受けてこそ流通が可能だという点を申し上げる。

食品中の放射能基準の設定根拠

説明:食薬処カン・ユンスク食品基準企画官

<食品中の放射能基準の設定根拠>

□ 食品中の放射能基準設定根拠について

□ 食品中の放射能基準は、韓国国民の食品摂取量と摂取可能物中の放射能汚染率、放射能物質が汚染された食品摂取による人体への実質的な影響を考慮して、食品による放射線被ばく量が最大安全基準(1 mSv/年)を超えないように計算し設定する。

*ミリシーベルト(mSv):人が放射線を浴びたときの影響の程度を表す単位

□ したがって、食品中の放射能基準を調べる前に、放射線被ばくに対する最大安全基準についてまず見てみましょう。

○ 国際放射線防護委員会(ICRP)は、日本の広島・長崎原爆生存者が短期間(1~2週間)に放射線を100 mSv以上受けると、がんなどの疾病発症のリスクが高まるという研究結果に基づき、

○ 人が生涯暴露してもがん発生と同じ影響を与えない放射線量を保守的に100 mSvに設定した後、年間安全基準を1 mSv定め、我が国も放射能最大安全基準として1 mSvを使用している。

実験動物およびヒトにおけるほとんどの腫瘍型リスクの有意な増加は、約100 mSvを超える線量でのみ検出できる。

*国連科学委員会 (UNSCEAR、「UNSCEAR2000REPORT Vol.」Ⅱ」)

□ これらの最大安全基準を考慮して食品中の放射能基準を設定することになるが、国内基準は’86年チェルノブイリ原発事故以後、放射性物質による国民健康被害を予防するために’89年に初めて作られた。

○ 基準は以下の根拠で設定した。

○ 韓国国民が摂取する食品の10%が放射性セシウム370 Bq/kgで汚染されたと仮定すると、年間放射線被爆量は0.325 mSvで、先ほど申し上げた最大安全基準1 mSvの約1/3レベルである。

*ベクレル(Bq):放射能の強度(放射性物質の原子核が1秒あたり崩壊する数)を測定する単位

〇 韓国政府は、この程度は食品からの放射能暴露管理が十分な水準であり、当時すべての食品を対象にヨウ素300 Bq/kg、セシウム370 Bq/kg以下に基準を設定した。

年間食品による放射線最大暴露量(1 mSv/年)

≧ 食物中の放射線量(Bq/kg) × 食品放射能汚染率(%) × 食品摂取量(kg/年) × 線量換算係数(mSv/Bq)

□ 以後、’11年の日本原子力発電所事故をきっかけに放射能に対する安全管理を強化するため、ヨウ素とセシウム基準を食品kg当り100 Bq以下に改定した。

○ この時は’89年基準設定時とは異なり、原子力発電所事故の特殊性を考慮し、韓国国民が摂取する食品の半分の50%が放射能に汚染されたと仮定して、非常に保守的に基準を強化した。

○ 強化基準を適用すれと、セシウムの年間放射線暴露量は0.44 mSvで、これは最大安全基準の約1/2レベルである。

※従来のように10%汚染を仮定する場合、最大安全基準の約1/10レベルの0.09 mSvとなる。

年間最大安全基準(1 mSv/年)

>100 Bq/kg × 50%* × 550 kg/年** × 1.3 × 10-5 mSv/Bq***

* 年間総摂取量の50%が放射能汚染されていると仮定

** 成人の年間食品摂取量(WHO)

*** セシウム-137線量換算係数(放射性物質が汚染された食品摂取による人体への実質的な影響を表す数値)

○ 我が国の食品1 kg当たり100 Bq以下の基準は、世界どの国よりも厳しい基準であり、これは国際食品規格委員会(CODEX)の1000 Bq/kgよりも10倍厳しい水準である。

*セシウム(Bq/kg):(CODEX)1,000以下、(米国)1200以下、(欧州連合)1250以下

○ また、離乳食、牛乳など乳幼児が主に摂取する食品には、より厳しい基準である50 Bq/kgで管理している。

*乳幼児用食品:乳児用調整食、成長期用調整食、乳幼児用離乳食、乳幼児用特殊調整食品、乳児用調整乳、成長期用調整乳、原乳及び乳加工品、アイスクリーム類

 

[MFDS] [政府合同報道参考] 福島汚染水放出に関する説明(5次)

輸入検査管理課 2023-06-21

https://www.mfds.go.kr/brd/m_99/view.do?seq=47372

日本のWTO提訴関連、政府の立場

説明:国務調整室パク・グヨン国務1次長

□ 昨日、一部報道を通じて、日本政府が韓国政府に福島産水産物輸入禁止解除をこれ以上圧迫せず、WTOに再提訴しない方向で内部方針を定めたというニュースが伝えられた。

○ これに関する日本政府の公式発表はなく、外交部はその報道に対する事実関係を複数の経路で確認している。

□ もしこの報道が事実なら、日本のWTO提訴に対応すべき韓国政府の負担が減ることは事実である。

○ ただし、日本側の方針変化が福島産水産物の輸入に関わる韓国政府の立場に影響を及ぼすものではない。

○ 国民の健康と安全は何とも変えられない最大の国益であり、韓国政府もこの問題については他国の善意に依存して対応方向を決めるつもりはない。

○ 福島産水産物の輸入も国民の健康と安全に関する問題であるだけに、韓国政府が絶対に譲歩できない領域であることを重ねて説明する。

 

韓国海域水産物安全管理現況

説明:海洋水産部ソン・サングン次官

<我が海域・水産物安全管理の現況>

□ 6月21日基準、我が水産物と海域に対する安全管理の状況を説明する。

○ 昨日午前までに追加された生産段階の水産物放射能検査の結果は合計43件(今年累積、4,451件)で、すべて適合している。

○ 検査件数上位5品目は、イワシ6件、カニ3件、アワビ3件、タチウオ2件、コウイカ2件などである。

○ 去る6月5日から16日までの2週間の流通段階水産物放射能検査は合計298件(今年累積、2,362件)で、すべて適合している。

□「国民申請放射能検査掲示板」運営結果

○  試料確保が出来た16件中4件の検査が完了し適合した。

○ 残り12件についても試料確保後検査が行われ次第、すぐに結果を公開する。

□輸入水産物放射能検査の現状

〇 6月19日~20日に追加された日本産輸入水産物放射能検査は22件(今年累積、2,698件)行われ、放射能が検出された日本産輸入水産物はなかった。

<個別説明事項>

□ 次に、福島汚染水放出に関する個々の事項について説明する。

国民申請放射能検査関連

□ 先ず、昨日一部メディアで言及された「国民申請放射能検査結果」について説明する。

□「国民申請放射能検査申請時、どこの基礎自治体か、どこの委販場で流通している水産物か分からず、検査件数も66件に過ぎない」という内容であった。

□ 国民申請放射能検査制度は今年初めて導入され、現在は広域自治体基準で申請を受け付けている。

○ ただし、検査対象に選定された品目の検査結果をお知らせする際には、当該試料が採取された具体的な地域や委販場情報などを詳しく公開している。

○ 今後、国民の需要に合わせて申請地域を基礎自治体および主要委販場単位で申請できるように改善する。

□ 検査件数については、毎週申請が多い品目を中心に10品目を選定して検査を行っている。過去8週間で78件が選ばれ、そのうち66件の検査が完了した。

○ 今後、国民の申請需要に応じて政府装備の拡充、民間機関の装備活用などを通して検査件数を増やすようにする。

□ 参考に、水産物放射能検査結果をメールで送付する「メーリングサービス」は、現在898人が申請し円滑に運用中である。

 

②日本原子力発電所事故以後、東海海域のセシウム濃度関連

□ 昨日、国会農林畜産食品海洋水産委員会の懸案質疑で、日本原子力発電所事故以後、我が国東海海域のセシウム濃度が2倍以上増加したという言及があった。

○ 国民の皆様に正確な情報をお知らせするために、関連内容を詳細に説明する。

○ 原子力安全委員会で毎年発刊する海洋放射能調査報告書によると、原発事故以前の2005年から2010年までの東海海域のセシウム-137濃度は、約0.001ベクレル(Bq/kg)から約0.004ベクレル(Bq/kg)の間で観測された。

*’05~’10年、東海海域セシウム-137測定値:0.00125~0.00404ベクレル(Bq/kg)

〇 原発事故以後の2011年から2015年は約0.001ベクレル(Bq/kg)から約0.002ベクレル(Bq/kg)*、2016年から2020年は約0.001ベクレルから約0.002ベクレル(Bq/kg) の間**で観測された。

*’11~’15年、東海海域セシウム-137観測値:0.00116~0.00277ベクレル(Bq/kg)

**’16~’20年間、東海海域セシウム-137観測値:0.00107~0.00255ベクレル(Bq/kg)

〇 つまり、2011年の原発事故以降の濃度は事故前と比較して、特に増加したという傾向は確認しにくい。

〇 そして、これらのセシウム-137の濃度は、WHOが定める飲料水の基準である10ベクレル比約3,600分の1未満で、極めて低い水準を維持している。

重ねて申し上げるが、「私たちの海は安全だ」という点を強調したいと思う。

③天日塩関連

□ 最近、中古オンラインマーケットなどを通じて天日塩価格の引き上げをあおる事例が、マスコミの報道などを通じて知られている。

○ 去る16日、韓国消費者院が電子商取引プラットフォームに消費者被害注意報を発令し、公正取引委員会でも消費者不安を過度に引き起こす虚偽情報に対する対応を、主要オンラインマーケット事業者に要請した。

○ 政府は消費者不安を助長したり、非常識な高価格で天日塩購入を誘導するオンライン販売業者などに対するモニタリングをより強化していく。

○ 必要な場合、関係部署と協議して消費者不安を助長する流通秩序かく乱行為と価格形成に対する不公正行為に一層積極的に対処していく。

④放射能検査装置関連

□ 最近、マスコミで放射能検査装置と関連した国民不安により簡易検査機などを活用する場合などに対するの指摘があることを理解している。

○ 昨日の説明を通じて申し上げたように、韓国政府は継続的に韓国海域と水産物に対する放射能検査を拡大し、そのための装備、人材確保など検査能力の強化も継続的に推進してきた。今後も可能な政府の力量を総動員し、必要なら民間部門の検査装備と人材も積極的に活用する。

□ 放射能装備の基準と性能など詳細と今後の装備・人材拡充計画については、明日の説明会でもう一度説明する。

 

日本産水産物輸入検査システム

説明:食品医薬品安全処クォン・オサン次長

< 日本産水産物輸入検査システム>

□ 日本産水産物輸入検査システムについて説明する。

○ 福島原子力発電所事故以後、政府は韓国国民の健康と安全を守るために、’13.9月から福島を含む原子力発電所周辺8県で生産された全ての水産物の輸入を源泉禁止し、8県以外の地域産水産物も毎輸入時ごとに毎回基礎放射能検査を実施している。

*’13.9月臨時特別措置後の水産物の輸入:(‘13.9.9〜’22)58,783件、21,9245トン

〇日本産水産物検査方法は3段階であり、①書類検査、②現場検査、③精密検査の順番で行われる。

①書類検査

□ 書類検査方法

〇 輸入者が輸入申告書を作成して食薬処に提出すると、検査官は申告書と備品書類が適正であるか合計152項目を検討する。このとき最も重要に確認するのは、輸入禁止地域である福島県など8県*で生産された水産物ではないか、その他の地域で生産された場合は、生産地はどこかを確認する。

*福島、群馬、栃木、青森、岩手、宮城、茨城、千葉

〇 輸入申告書に書かれている魚種、漁獲地域、加工・包装地域、製造会社、出荷地などの情報が生産地証明書*に記載された内容と一致するか、生産地証明書発行機関と署名権者が日本政府から事前に通知された内容と 同じかどうかを書類を通して慎重に確認する。

* 日本政府(水産庁)及び自治体(48都市・都・府・県)

〇 証明書の真偽が疑われる場合、在韓日本大使館を通じて正常発給可否を再確認します。また、国内輸入者の不適合輸入履歴はないか、ハングル表示事項がよく作成されているか、活魚貝の重量が出荷当時と国内到着後に変動がないかなどを届出書と備品書類で確認する。

 

②現場検査

□ 現場検査方法

○ 現場検査は、食薬処検査官が水産物を保管している倉庫に行き、保管された水産物の状態を直接確認する段階である。

○ 日本国内の地域別特性が異なり、生産・輸入される品目にも違いがある。寒流の影響を受ける北海道では冷蔵スケトウダラ、冷蔵ガンギエイ、活ホタテ、活ホヤなどが主に輸入され、養殖業が発達した三重県からは活真鯛、活ブリなどが、暖流の影響を受ける長崎県などでは冷蔵タチウオ、冷蔵イシモチ、冷蔵ヒラメなどが主に輸入される。

○ このように地域別特性を考慮し、輸入水産物の生産地が申告された内容と異なるか、現場で再度確認する。

○ 併せて、国際食品規格委員会(CODEX)が勧告している乱数表方式により水産物検体を採取し、外観、色、活力度(鮮度)、類似水産物混入の有無などを五感を用いて検査する。

*検体採取基準:検査対象が450個の場合、採取数Codex8個、韓国13個

〇 現場検査の結果に異常がなければ採取された検体を封印し、精密検査のため実験室に移送する。

 

③精密検査

□ 精密検査方法

○ 精密検査とは、水産物の中に放射性物質があるか、あればどれくらい含まれているかを高純度ゲルマニウム検出器を用いて検査することをいい、検査方法は次の通り。

○ まず現場で採取した検体を小さく切り、粉砕機に入れて均等に粉砕しする。

〇 少量の放射能を正確に分析するためには、残留農薬30分、動物用医薬品20分よりも長い2時間47分*(1万秒)の間、放射性物質を測定する。

*検出限界(0.2~0.3 Bq/kg)

〇 分析結果、基準値(セシウム100 Bq/kg)以下の微量(0.5 Bq/kg以上)でも放射性物質が検出されると、国際食品規格委員会(CODEX)が推奨する17種の追加核種証明書を要求しており、事実上国内に搬入されていない。

 

Lancet Oncology

-アスパルテーム、メチルオイゲノール、イソオイゲノールの発がん性

Carcinogenicity of aspartame, methyleugenol, and isoeugenol

Lancet Oncol 2023

Published Online July 13, 2023

https://doi.org/10.1016/S1470-2045(23)00341-8

IARC Monographs Working Group Members

2023年6月、12カ国25人の科学者からなるワーキンググループがフランス リヨンのIARCに集まりアスパルテーム、メチルオイゲノール、イソオイゲノールの発がん性分類を最終化した。アスパルテームはヒトでの「限られた」根拠に基づき「ヒト発がん性の可能性がある(注possibly,可能性は低い)」(グループ2B)に分類された。また実験動物動物のがんでも「限られた」根拠、メカニズムについても「限られた」根拠だった。メチルオイゲノールは実験動物での「十分な」根拠と、ヒト化マウスでの実験やヒト暴露実験でのメカニズムを含む「強い」メカニズム上の根拠に基づき「恐らくヒト発がん性(注probably,高い確率で)」と分類された。イソオイゲノールは実験動物での「十分な」根拠に基づき「ヒト発がん性の可能性がある」(グループ2B)に分類された。メチルオイゲノールとイソオイゲノールの両方が疫学研究がないためヒトでのがんに関する根拠は「不適切」だった。これらの評価はIARCモノグラフ134巻として発刊される。がんハザード同定のためのIARC会合の直後にJECFAがアスパルテームのADIの見直しを含むリスク評価を行った。これらの結果の要約が発表された。

アスパルテームは1980年代から食品や飲料に広く使われている低カロリー人工甘味料である。最も高濃度なのは卓上甘味料、チューインガム、食品サプリメントで;歴史的には人工甘味料を使った飲料がアスパルテームの主な暴露源だった(集団によっては総暴露量の>90%)。現在は人工甘味料を使った飲料は重要な暴露源のままではあるが、アスパルテームは通常は他の甘味料と混合して使われる。他のアスパルテーム暴露源には化粧品や医薬品がある。アスパルテーム含有製品を製造する際の吸入による職業暴露が報告されているがデータはわずかしかない。入手可能な情報はアスパルテームの代謝はヒトと実験系で同様であることを示している;アスパルテームはアスパラギン酸と必須アミノ酸であるフェニルアラニンとメタノールに加水分解される。霊長類の実験系ではアスパラギン酸とメタノールは主にCO2として排出されるが、フェニルアラニンの多くは保持される。

ヒトがんについては、アスパルテームが肝細胞がんを誘発するという「限定的な」根拠がある。人工甘味料で甘くした飲料の大部分がアスパルテームを含んでいてそれがアスパルテームの主な暴露源だった時期と国での人工甘味料入り飲料の摂取量を評価した前向きコホート研究が、人工甘味料入り飲料摂取をアスパルテーム暴露の信頼できる代理指標とみなせるために評価に有用と考えられた。NutriNet-Santé研究は全ての食事摂取源からのアスパルテーム暴露を包括的に評価した唯一の大規模前向き研究である。この研究ではアスパルテームと乳がん、肥満関連がん、およびがん全体のリスクとアスパルテームの関連が報告されているものの、そのような知見が入手可能な研究全てで一貫していない。NutriNet-Santé研究はアスパルテームと肝臓がんリスクの関連を調べていない。ワーキンググループは事項甘味料摂取と肝臓がんの関連を評価した4つの前向きコホートからなる3つの研究を同定した。これらは、人工甘味料で甘くした飲料と肝細胞がんの関連を評価した欧州10か国で実施された大規模コホート研究、米国の二つの大規模コホートのデータをプールして人工甘味料で甘くした飲料と肝細胞がんの関連を糖尿病の状態別に評価した研究、そして人工甘味料で甘くした飲料と肝臓がん死亡率の関連を評価したもう一つの米国大規模前向きコホート研究である。これら3つの研究全てで、人工甘味料で甘くした飲料の摂取と研究集団全体あるいは関連のある亜集団でのがんの発生率やがんによる死亡率との正の関連が報告されている。これら3研究は質が高く多くの交絡要因を調整している。しかしながらワーキンググループはこの一連の研究に合理的確信をもって偶然、バイアス、あるいは交絡が排除できないと結論した。従ってヒトでのがんの根拠は肝細胞がんについては「限定的」、他のがんについては「不適切」とみなされた。

ワーキンググループはEFSAが公開しているアスパルテームの経口暴露での陰性を報告した規制のための研究を含む複数の種(マウス、ラット、犬、ハムスター)でのいくつかの発がん性試験を評価した。陰性の試験のうちいくつかはGLPガイドラインができる前のもので、つまり被検物質の純度の情報がなく組織病理が限定されていることを注意する。雌雄トランスジェニックマウスでの3つの質の高いGLP試験では腫瘍発生率に有意な増加は観察されていない。ワーキンググループは新しいトランスジェニックマウスモデルには慢性アスパルテーム暴露の発がん性を検出するのに十分な感度がないのかもしれないと注記した。周産期から産後は経口(餌)でアスパルテームを投与したSwissマウスとSprague-Dawleyラットでは、アスパルテームは雄マウスで肝細胞がん、肝細胞腺腫、および肝細胞がん(合計)、細気管支肺胞がん、細気管支肺胞腺腫あるいはがん(合計)、リンパ芽球性白血病、単球性白血病、送骨髄腫瘍;雌マウスでリンパ芽球性白血病と白血病(全てのタイプ);雄ラットで悪性神経鞘腫;雌ラットで乳腺がん、腎盂乳頭腫、白血病(全てのタイプ)を誘発した。経口投与(餌)したSprague-Dawleyラットでは、アスパルテームは雌で腎盂と尿管がん、腎盂と尿管乳頭腫あるいはがん(合計)、および乳腺がん;雄で単球性白血病、組織球肉腫、総骨髄腫瘍合計を誘発した。これらの試験でのリンパ腫と関連する合計及びその他のリンパの増殖の診断のいくつかに懸念があったためワーキンググループは他の全ての腫瘍性病変について評価を集中的に行った。上述の試験のデータはアスパルテームの発がん性を示唆するものの、全体としてワーキンググループは各試験のデザイン、実施、解釈、報告の適切性に疑問があるため実験動物でのがんの根拠は「限定的」とみなした。例えば同腹効果を調整していないことで発生率や傾向が偽陽性になる可能性がある。ワーキンググル-プの少数がこれらの研究のこうした懸念を否定し実験動物でのがんの根拠は「十分」だと考えアスパルテームをグループ2Bではなくグループ2Aに分類することを支持した。

発がん物質としての重要な特徴に関しては、実験系では、アスパルテームは複数の齧歯類研究で肝臓を含むいくつかの組織で脂質過酸化などの酸化的ストレスバイオマーカーを変動させることが示されている。他の実験系ではいくつかの研究がアスパルテームが慢性炎症を誘発し、ごく一部の研究で血管新生増加を示唆する。いくつかの試験で遺伝毒性に関する陽性の知見があるがその多くにデザイン、データ解析、解釈の限界がある。上述の知見に基づき、アスパルテームの発がん物質としての特徴に関するメカニズムについての根拠は「限定的」だった。さらに齧歯類での妥当な試験ではアスパルテーム暴露が血清中インスリン濃度を上げることが示された。これらの知見はアスパルテーム暴露がインスリン感受性を変えることを示すものの、ワーキンググループはこの知見が発がん性メカニズムに関連するかどうかは相当な研究上のギャップがあると考えた。

以下メチルオイゲノールとイソオイゲノール略

 

(文献が13でそのうちメチルオイゲノールとイソオイゲノールが各1であとは全部アスパルテーム)

 

-コメント(一部)

アスパルテーム:問題なのはハザードではなくリスク

Aspartame: it is the risk that matters, not the hazard

Kevin McConway

Published:July 13, 2023

IARCの要約として公表されたヒト発がん性ハザード評価の最新セットは3つの異なる物質をカバーする:アスパルテーム、メチルオイゲノール、イソオイゲノールである。ほとんどの関心がそのうちのたった一つ、人工甘味料アスパルテームに集中している。IARCはアスパルテームを初めてグループ2B、ヒト発がん性の可能性がある、に分類した。

IARCの分類はハザードの評価に基づく。リスクが増加するかどうかはIARCの評価に含まれない。IARCの分類によるグループは発がん性のハザードに関する根拠の強さだけが異なる。IARCモノグラフでは最初に「IARCモノグラフ分類はある量、あるいは暴露状況でのリスクのレベルを示すものではない」と述べている。

今回は例外的にアスパルテームのリスクについて何かしらが発表される-IARCによってではなくJECFAによって。JECFAの評価はADIのレビューを含みIARC分類と同時に発表される。JECFAの評価はアスパルテームを摂取することによる、がんだけではなく全ての健康ハザードを考慮する。

1981年以降JECFAはアスパルテームの上限ADIを40 mg/kg体重で維持してきた。今回の評価ではJECFAは実際の食事からの摂取推定を検討し、子どもや成人の高摂取群を考慮してもADIより相当低いとした。

こうした決定は一見IARCのハザード分類と矛盾するように見えるがそうではない。IARC分類はハザードであってリスクではない。さらにアスパルテームは発がん性ではない可能性は高い-IARCは確実certain、でも可能性が高いprobable、でもなく可能性はあるが低いpossible、に分類した。IARCとJECFAはその判断のもとになった根拠についてバイアスと欠陥と矛盾を指摘している。JECFAは「ヒトでのアスパルテーム摂取とがんの関連の根拠は説得力がない」と結論した。さらにJECFAはがん以外の健康リスクも検討し、アスパルテームが何らかの健康リスクとなる説得力のある根拠を見つけられなかった。

今回のIARC分類で分類されたもう一つのイソオイゲノールは天然に多くの植物に存在し食品や化粧品などの香料やフレーバーとして使われている。それはアスパルテームと同じグループ2Bに、そしてメチルオイゲノールはグループ2Aに分類した。

IARCはメチルオイゲノールが何らかの状況でヒトがんの原因になる根拠はアスパルテームやイソオイゲノールより強いとみなした。

IARCの分類は実際のがんリスクに基づいていないので、同じグループのものでも人々へのリスクは大きく異なる。IARCはアスパルテームとイソオイゲノールが概ね同じリスクだと言っているわけではなく、メチルオイゲノールのほうがリスクが大きいと言っているわけでもない。メチルオイゲノールとイソオイゲノールについては新たなリスク評価はない。

IARCとJECFAの評価の詳細は今後発表されるだろう。どちらも6ヶ月以内に発表すると約束した。

 

SMC UK

IARCとJEFCA のアスパルテームの要約への専門家の反応

expert reaction to IARC and JEFCA summary on aspartame

JULY 13, 2023

https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-iarc-and-jefca-summary-on-aspartame/

FSA主任科学アドバイザーRobin May教授

JECFAの報告は、アスパルテームは現在使用が認められている量での摂取は安全であるというFSAの見解を支持するものである。

IARCの報告でアスパルテーム摂取とヒトがんの関連についての根拠は限られているとされたものの、我々はこの問題についての理解を深めるためにより多くのより良い研究をとのWHOの呼びかけを歓迎する

さらなる情報

・FSAのアスパルテーム関連情報

https://www.food.gov.uk/safety-hygiene/food-additives

・JECFAがアスパルテームは現在の使用量で安全だと発見したため、アスパルテームについて新たにリスク評価を行う計画はない

(以下略)

Cambridge大学MRC毒性学ユニットAndy Smith教授

IARCが初めてアスパルテームがヒトでがんをおこすかどうか、つまりがんハザードかどうかを評価した。動物での限定的およびヒトでの限定的データに基づいてグループ2Bに分類した。これは強い意見ではない。議論された主な動物での知見は先にEFSAが2013年に検討済みのもので議論が続いている。他のより古い研究同様、最近のヒト研究はがんとアスパルテーム摂取は陰性または見かけ上の弱い関連を示すが、IARCはライフスタイルや食生活、背景にある健康上の問題が排除できないと認めている。さらにIARCはアスパルテームがどうやってがんをおこすのかについては明確ではないというこれまでの意見を繰り返している。なぜならアスパルテームは吸収される前に完全に天然の分子に分解されるからだ。報道されているIARCの議論はヒトでのアスパルテームに関連する肝臓がんに集中しているが、英国では喫煙、飲酒及び脂肪肝が肝臓がんの重要な要因であることを認識するのが重要である。

重要なことは、IARCが検討した同じ根拠をJECFAが検討して、長く維持している0-40 mg/kg体重というADIの助言を変える理由がないとしていることである。

全体としてIARCとJECFAの報告は大きな心配のもとにはならない。彼らは今後行う動物やヒトでの試験は、科学的及び一般の両方からの信頼を得るために、厳密な現代のガイドラインに従って行うべきだと呼びかけている。そのようなガイドライン要請は既に発表されている。

Open大学応用統計学名誉教授Kevin McConway教授

私はThe Lancet Oncology にIARC分類の要約と同時に発表される正体コメントを書くよう求められた。差し止め期間が終了したら私のコメントがメディアに提供されると理解している。ここでコメントの詳細を繰り返すことはしないが、私の主な懸念をここで簡単に紹介する。

これまでIARCのヒトがんハザード分類の実際の意味するところについてはひろく誤解されてきた。近年IARCはその意味の説明を大分改善してきた。しかしそれでも誤解は続き、2週間前のリークへの人々の反応はその誤解の実例となった。

簡潔に言うと、IARCの分類はハザードに基づくものでリスクではない。つまりIARCに助言する専門家はその因子(例えば化合物や消防士として働くことやシフトワークなど)がある状況でがんになる可能性を変える根拠について尋ねられる。実際にリスクが変わる状況がおこるかどうかはIARCは評価しない。どんな場合でも、特定の人あるいはある集団のリスクは発がん要因への暴露レベルによる。IARCが分類するのはがんハザードとなる科学的根拠の強さによって、である。

これまでIARCが分類してきた約1000の全ての要因のうち約半分が現在グループ3に分類されている。しばしばその理由は単に良い根拠がないから、あるいは異なる根拠が逆方向を指しているからである。しかし他の理由もあり、基本的にIARCは結論するのに十分な根拠が見つからなかったどんなものでもグループ3にする。

IARCは新しい根拠が出ると再評価してしばしばグループ間を移動させる。この動きは根拠の強さによってどちらの方向でもある。1990年にIARCはコーヒーを飲むことをグループ2Bに分類したが2016年にはグループ3に分類しなおした。コーヒーは根拠がないからグループ3になったのではなく、無限に研究され続けて新たな根拠をもとにグループ3になった。IARCはヒトのいくつかのがんでは発がん性がない根拠があり、むしろ一部のがんではがんを減らす根拠すらあるという。また1988年にIARCはディーゼルエンジンの排気ガスをグループ2Aに分類し、2012年には見直してグループ1にした。この場合は新たな根拠がある条件下での発がん性についての不確かさを排除した。しかしこの場合でもディーゼル排気に暴露されることのリスクの大きさについては何も言っていない。

もう一つの分類の変更例はハザードとリスクの違いについてさらに強調する。1,1,1-トリクロロエタンはIARCが何度か検討してきたが最も最近の2021年にグループ2Aに分類された。これはヒト発がん性の根拠がより多く入手可能になったからで以前はグループ3だった。しかし事実としては1,1,1-トリクロロエタンによる一般人のがんリスクは1990年代以降相当低くなっている。それまで溶媒などによく使われていたが1989年にモントリオール条約でのオゾン層枯渇物質リストに掲載されて生産と使用が減り、人々へのリスクは減った。

アスパルテームはこれまでIARCが分類したことはなく、分類の変更ではない。グループ3ではなく2Bに分類されようとしているが十分な良い根拠がないのはアスパルテームにもあてはまると思う。IARCと、リスクを評価するJECFAの両方が入手できる根拠のバイアス、欠陥、矛盾があることに言及している。将来より良い根拠が入手可能になったらどちらかあるいは両方が再評価をするだろう。しかしまだ根拠が存在しないため、再評価がどのような方向になるのかわからない。

現時点ではIARCはアスパルテームをグループ2に入れた、つまりある状況ではがんを起こす可能性があると言っている、しかしそれは確実とは言い難い。従ってアスパルテームは全く発がん性がない完全な可能性があるままである。

私はこれまでIARCのがんハザード評価と他のリスク評価団体が協調した例を思い出せない。何故今回こうなったのかの疑問が生じる。私は知らないが、おそらくアスパルテームが特にアメリカでずっと議論の種になってきたことと関係するのだろう。FDAのウェブサイトで、1969年からこれまでにおこったことの長いリストが掲載されている。FDAは1983年に炭酸飲料にアスパルテームの使用を認め、ADIを50 mg/kg体重/日とした。何度も何度も疑問を提示され再評価を受け続けても、それ以降ずっとそのままである。

私はIARCとJECFAの同時発表で人々が混乱するリスクがあることを認識している。しかし実のところそれは矛盾ではなくて違うことを言っている。JECFAはアスパルテームがどんな量を摂取しても何のがん影響もないと言っているのではなく、ADIの範囲内なら健康リスクの根拠はないと言っているだけである。それ以上を摂取してがんリスクが増える可能性は残されている。そしてIARCはアスパルテームががんハザードとなるかもしれないと言っているので、アスパルテームたとえ大量に摂取しても全くがんリスク卯が増加しない可能性も残ったままである。このような不確実性は居心地が悪いかもしれないが、それがなくなることはない、少なくともより良い研究が行われるまでは。

JECFAは再評価で人々が実際に食品や飲料からどれだけアスパルテームを摂取しているか推定している。これまでのところ詳細は発表されていない。完全報告書で詳細がわかるだろう。要約では高摂取群はこどもで20 mg/kg体重、成人で 12 mg/kg 体重で40 mg/kgのADIより十分低い。ADIを超える人もいるだろう。そういう人やアスパルテームが心配だという人はどうすればいい?他にも甘味料はある、その多くはアスパルテームほど研究されてはいないが。この文脈で、もう一つのWHOの声明、5月に発表された「体重管理や非伝染性疾患リスク削減のためにノンシュガー甘味料を使うことを薦めない」について思い出すのは意味があるだろう。これはアスパルテームを含む一連の甘味料に対してのものであるが、砂糖入り飲料に戻れと言っているのではない。WHOは水を飲むことを薦めるべきだと言っている。このガイドラインは甘味料の安全性ではなく有効性についてのもので、根拠は確実とはほど遠く、だから批判されている。

RMIT大学化学教授Oliver Jones教授

IARCはアスパルテームをグループ2bに分類するだろうとリークされた報告が示唆している。つまり関連については根拠が不十分だということだ。このカテゴリーには他に携帯電話やガソリンエンジン排気がある。

IARCがアスパルテームを検討したのは初めてで、それは2022年に発表された肝がんに言及した論文によるように見える。IARCは文献をレビューするが自分たちで新たに研究するわけではない。

ここで二つの用語を理解する必要がある。ハザードとリスクである。

IARCはハザードのみを検討しそのハザードがどのくらい起こりやすいかは評価しない。

JECFAはこれまでのアスパルテームの安全性評価を変えなかった。40mg/kg体重は、体重70kgの成人なら概ねダイエットコーク14缶を毎日長期間飲むことに相当する。この結論は他の世界中の主要食品安全機関と一致している

我々は毎日発がん物質に暴露されている。IARCクラス1の紫外線やアルコールでも、一回暴露されたからがんになるというものではない。夏にビーチで日焼けしても回復するだろう。しかし日光保護なしに日焼けをし続ければ皮膚がんリスクは上がる。

Queen Mary University of London病理学名誉教授Sir Colin Berry教授

注意深く行われた極めて大量の科学的根拠にも関わらず、IARCの分類で表明された見解は単一の異常な動物実験の解釈パターンとハザードの可能性を示すがリスクの同定には失敗している質の良くない疫学に基づいているようだ。さらにこうした見方に関連する腫瘍の「混合物」は非常に異なる病因の可能性が高く遺伝毒性は考えられない。

Cambridge大学統計学名誉教授Sir David Spiegelhalter教授

IARCの報告はいささか馬鹿げている。IARCの、メディアが注目している、アスパルテームは「ヒト発がん性の可能性がある」という結論にも関わらず、実際にリスクを検討しているJECFAは「アスパルテームに有害影響があるという実験動物あるいはヒトデータからの説得力のある根拠はなかった」としている。もう40年も、平均的な成人は1日に最大14缶のダイエット飲料を飲んでも安全、といってきた。そしてこの「ADI」には大きな安全係数が含まれる。

ロサンゼルスCedars-Sinai医学センターがん疫学教授Paul Pharoah教授

IARCが発表しているのは現段階では専門ワーキンググループが根拠をどう解釈したのかについての簡単な記述の要約のみであるため判断が難しい。簡単に言うとアスパルテームと原発性肝臓がんリスク増加の関連についての弱い疫学的根拠がある。その根拠は関連を報告した3つの研究に由来するがそれが因果関係だという根拠はそれほどない。皿に実験動物では限定的根拠があるが、その根拠には深刻な欠陥がある。そしてアスパルテームにがんと関連する化学的性質が幾分かある。

つまりアスパルテームが原発肝臓がんやその他のがんを引き起こすという根拠は極めて弱い。だから2Bになった。他に2Bに分類されているものはアロエベラ、ディーゼルオイル、お茶に含まれるカフェ酸、コーヒーがある。グループ2Bは非常に保守的な分類でほとんどどんな欠陥のある発がん性の根拠でもこのカテゴリーあるいはそれより上に分類される。

そのことは、アスパルテームの経口摂取で有害影響があるという実験動物あるいはヒトデータからの説得力のある根拠はなかった、というJECFAの見解に反映されている。アスパルテームは多くの普通の食品に存在する化合物に速やかに代謝される。従ってJECFAは現在のADIを変更する理由がない。

一般の人々はIARCがグループ2Bに分類した化合物に関連するがんリスクを心配する必要はない。

Imperial College London毒性学名誉教授Alan Boobis教授

IARCとJECFAのアスパルテームについての結論はそれぞれのアプローチを反映している。IARCはアスパルテームを2bに分類したがそれは実験動物やヒトでのデータが信頼性に欠け明確な結論に達せなかったことを反映している。しかしIARCは発がん性は遺伝毒性ではなく間接影響だろうと結論している。JECFAは発がん性や遺伝毒性を含む全ての毒性影響をレビューし、根拠の重み付けから発がん性は支持せず、先に確立されているADIを変える理由がないとした。つまり現在の暴露量では何ら有害影響は予想されない。

King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授

IARCの新しい報告では一部の観察研究で肝臓がんとアスパルテームの関連の可能性を示唆する。いくつかの西洋諸国、特に米国では、肥満に関連する肝臓がんが著しく増加していて、それは非アルコール性脂肪肝に関連する。これまで脂肪肝には、肝臓での脂肪合成を促す砂糖の摂取が関連するとされてきた。アスパルテームには肝臓に脂肪を蓄積させる根拠はない。糖尿病や肥満の人はそうでない人に比べて人工甘味料を使用する可能性が高く、従ってこの関連は一貫していても因果関係ではないだろう。

IARCは交絡を排除できないため根拠は限定的だと注記している。JECFAはADI以下ならアスパルテームのリスクに心配することはなく、そのADIは現実問題として超過する可能性はほとんどないとした。

Reading大学栄養と食品科学教授Gunter Kuhnle教授

IARCとJECFAの意見の発表は、アスパルテームの安全性に関する想像を終わらせるものとして歓迎する。

リークによって不必要な不確実性や懸念が生じたことは不幸だった。発表された意見は、現在の摂取量で心配することはないことを明確にしている。科学助言機関はしばしば迅速な対応ができないため、IARCとJECFAの両方の評価をかみ砕いて対応できるのは良いことだ。

このことはハザードとリスクの区別の重要性とハザードのコミュニケーションの難しさも強調する。日光は発がん性があるがリスクは日光を浴びた量と保護するかどうかによる。同様に、例えアスパルテームが極めて高用量でがんを起こすことがあったとしても、食品に認められている量で食べる場合にはリスクはない。

Aston大学医学部登録栄養士で上級講師Duane Mellor博士

WHOのプレスリリースでは成人は9-14缶のダイエット飲料を飲んでもアスパルテームについては安全だと示唆しているものの、それだけ飲むことを薦めているわけではないことを明確にしておきたい。どんなソフトドリンクでも、大量に飲めば健康的でない食生活につながる可能性がある