2023-12-27

[HK]Food Safety Focus-食品検査と分析-正しさをどうやって確保する?

Food Safety Focus- Food Test and Analysis - How to Ensure Accuracy?

20 Dec 2023

https://www.cfs.gov.hk/english/multimedia/multimedia_pub/multimedia_pub_fsf_209_02.html

食品産業のグローバル化は近代的な物流の結果である。この移動性は国際的な食品貿易を支え、様々な場所から香港に多種多様な食品が輸入されるようになった。食品の安全性を保証するために、食品検査は健康ハザードの可能性を同定し、食品中の特定の化学物質の含有量を決定することができるため、重要な役割を果たしている。検査結果の正確さは、人々の健康とフードサプライヤーの評判を保護する上で間違いなく重要である。汚染物質とその量の誤った測定は人々の健康を危険にさらす可能性があるが、誤った測定と偽陽性結果は不必要なパニックを引き起こす可能性がある。したがって、すべての食品検査機関は、厳格で堅牢で信頼性の高い食品検査結果を保証するために、良好な品質システムを維持すべきである。

食品検査における品質システム(Quality System)とは何か?

品質システムとは、品質管理を実施するための組織的リソース、プロセス及び手順を指し、品質保証(QA)と品質管理(QC)の2つの主要な側面が含まれる。

QAは、品質問題を防止し、検査サービスの完全性を保証するためのものである。認定機関によって認定されれば、検査機関が設定した品質マネジメントシステムが、ISO 17025の一般ガイダンスに準拠した正確で信頼できる測定を行うことができることを証明することができる。例えば、香港では、香港認定サービス(HKAS)が第三者認定機関であり、ISO17025に基づく具体的な要件を定め、香港試験所認定制度(HOKLAS)の審査を行い、香港の検査機関に認定証を付与するのに役立つ。

QCは、すべての検査結果が正確で信頼できることを保証するための測定プロセスである。この点に関して、CODEX(コーデックス委員会)、AOAC:Association of Official Analytical Chemists(公認分析化学者協会)、IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry(国際純正応用化学連合)、ISO:International Organization for Standardization(国際標準化機構)などの国際的に認められた団体や機関は、方法の検証、品質管理及び検査機関の能力に関する関連するガイドラインや基準を公表している。

食品検査における潜在的なエラー

a.分析前段階

分析前に食品サンプルの取扱いを誤ると、測定結果に影響を及ぼす可能性がある;これらのエラーには、サンプルの取違え、ラベルの貼り間違い、不適切なサンプリング方法及び不適切な保管又は輸送が含まれる。これは、汚染、誤ったサンプルの分析及びサンプルの劣化を引き起こし、誤った結果につながる可能性がある。

分析前のエラーを最小限に抑えるために、次のことを行う必要がある:

確立された標準操作手順を厳密に遵守する。

サンプルには、採取日、採取源及び実施すべき検査を明確に表示する。

サンプルは適切な容器に保管及び輸送し、推奨温度に保つ。

b.分析段階

分析段階では、検査の過程でエラーが発生する可能性がある。これは、抽出効率と回収率が低い不適切な方法の使用、誤った分析条件(例えば、不正確な温度)、不適切な機器の使用などが原因である可能性がある。

例えば、無機ヒ素を分析する場合、抽出効率が低い不適切な抽出液を使用すると、サンプル中の無機ヒ素の実際の量を過小評価する可能性がある。キャンディ中のアスパルテームを検査する場合、フォトダイオードアレイ検出器の代わりに屈折率検出器などの不適切な検出器を使用すると、アスパルテームの特異的な検出に影響を与え、アスパルテームの実際の量を過大評価する可能性がある。分析段階で食品中の残留農薬を抽出するためにあまりにも高い温度を採用するなどの不適切な分析条件は、サンプル中の農薬の実際の量を過小評価する可能性がある。農薬の種類によっては、高温で容易に分解することがあるためである。

これらのエラーは、次の方法で最小限に抑えることができる:

特定の化学物質を適切に分析するために、検証済み及び認定済みの方法を使用する。

検証済みの検査方法で要求されるQC対策に厳密に従う。

すべての実験装置を適切な状態に維持し、適切な較正を行う。

c.分析後の段階

分析後のエラーは、主にデータ処理プロセスに焦点を当て、結果の誤った記録、計算及び解釈を含む。例えば、誤った方程式、古いワークシートなどを使用すると、誤った結果につながる可能性がある。

この種のエラーを最小限にするには、次のようにする:

十分な訓練を受けた人だけが結果を解釈し、記録するようにする。

ワークシートや計算式を頻繁に更新し、意図しない変更から保護する。

認定と品質システムは、正確な検査と測定をサポートするために不可欠な要素である。したがって、必要な検査のために認定された分析室を使用することが推奨される。

 

[EFSA]PLS:食品添加物としてのエリスリトール(E 968)の再評価

PLS: Re-evaluation of erythritol (E 968) as a food additive

20 December 2023

https://www.efsa.europa.eu/en/plain-language-summary/re-evaluation-erythritol-e-968-food-additive

(わかりやすい要約)

限界・不確実性は何か?

以下の限界と不確実性が確認されたが、それらはエリスリトールの安全性に関する結論に影響を及ぼさなかった。

分析したデータセットは少人数の参加者によるヒト介入試験からなる。この研究は全ての年齢集団の参加者を含まなかった。

急性・慢性暴露評価には様々な不確実性が含まれており、エリスリトール暴露を過大評価している可能性がある。

一部の疫学研究では循環器疾患や関連するリスク要因に関する循環エリスリトールの役割を調査したが、食品添加物としての使用による食事暴露を反映したこれらの研究において、エリスリトールの循環レベルが食品添加物としての使用による食事暴露を反映しているかどうかという不確実性がある。

結果とその意味は?

・非遺伝子組換え酵母(Moniliella pollinis strain BC あるいは Moniliella megachiliensis KW3-6株)によるエリスリトール製造工程は安全である。

・評価された製造工程を用いて生産したエリスリトールに含まれているただ1つの不純物は、鉛だった。

・この食品添加物の使用による消費者の鉛摂取量を減らすために、エリスリトールの鉛の最大含有量の制限値、現在0.5 mg/kgを下げるよう助言された。

・エリスリトールが微生物で汚染される可能性は低いため、EU規格の微生物学的基準は必要ない。

・エリスリトールの化学物質の特性から、様々な温度や酸度で、食品中に全般的に安定している。

・エリスリトールは遺伝毒性ではない。

・長期研究はないが、エリスリトールはヒトの血糖値に影響しないという、限定的だが一貫した根拠がある。

・現在の根拠から、エリスリトールを含む食品の摂取と、心血管疾患のリスクや関連するリスク要因の増加との関連性(すなわち因果関係)は示されていない。にもかかわらず、いくつかの観察に基づく研究で見つかった関係性の性質を明らかにするために、更なる研究が役立つ可能性があった。

下剤警告表示に関して:

・ヒトの研究で下痢を引き起こさなかったエリスリトールの無毒性量(NOAEL)は、0.5 g/ kg体重だった。

・このNOAELに基づき、エリスリトールの即時的な下剤効果だけでなく、電解質の不均衡など、二次的な下痢に伴う長期有害影響の可能性からも保護するために、許容一日摂取量(ADI) 0.5 gエリスリトール/ kg体重が保護として設定された。

・全ての人々のグループにおいて、エリスリトールの急性及び慢性暴露は、新たに設定されたADIを超えている。エリスリトール(E 968)の摂取量が多い人は、単回あるいは反復暴露後に有害影響を被る可能性がある。

・警告「過剰摂取は下剤効果をもたらす可能性がある」、は依然として有効である。

 

[BfR]クリスマスツリー:常緑で有毒?!

Christmas trees: green and poisonous?!

22.12.2023 

https://www.bfr.bund.de/cm/349/christmas-trees-green-and-poisonous.pdf

「クリスマスツリー、クリスマスツリー!全ての木の中で最も素敵!」は有名なドイツのクリスマスキャロルである。残念なことに、常緑樹は、シラミ、ダニ、真菌などの有害生物にも好まれる。その針葉は、害虫から身を守るためにテルペンやピネンを含んでいるにもかかわらず、それらに対しては無力である。そのため、クリスマスツリーの栽培には植物保護製品が使われることもある。この文脈で毎年、疑問が生じている(懸念が多かったり少なかったりする):クリスマスの常緑樹の仲間の「大枝」は、「癒やしと力」を与えてくれるだけでなく、我々の健康にハザードをもたらすものである可能性はある?クリスマスツリーの残留農薬はヒトに健康上のリスクをもたらすのか?

ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、クリスマスツリーも含めた「観葉植物の植物保護製品の残留物」のトピックを数回調査し、ごく最近では切り花の検体を用いて調べた。必ずしも明らかではないが、リスク評価へのアプローチは、ここでは確かに比較可能である。切り花も同様で、承認されている植物保護製品が正しく使用されていると仮定すると、現在の科学的知見に基づき、クリスマスツリーが消費者の健康上のリスクを引き起こす可能性は低い。これは、少量の残留物の存在がすでに評価されている厳しい認可手続きによるもので、また、観葉植物は一般的に全体でも部分的にも消費されることはないため、暴露は通常少ないと想定されるという事実による。そういう意味では、消費者の健康保護の観点から、クリスマスツリーは「最も素敵」であり続けられる!

観葉植物(切り花、クリスマスツリーなど)の残留農薬は、頻繁に公開討論のテーマとなる。

観葉植物に残留物が検出されると、消費者の健康にリスクをもたらすかどうかという疑問が生じる。その使用は園芸栽培の慣習の一環であるため、観葉植物に残留物が検出されることは予想外ではない。

EUでは、観葉植物を市販する際の残留農薬の法的規制はない。そのため最大残留基準値は設定されていない。しかし、規則(EC) No. 1107/2009で、植物保護製品に対して予想される担当者の暴露を認可手続きの中で評価する必要があると規定している。さらに、植物保護製品の散布中や散布後に作業者や処理地域の隣の無関係者が暴露する可能性があるかどうか、またどの程度かも評価する。基礎となる暴露シナリオは、皮膚や室内の空気の吸入暴露を介した消費者の潜在的な健康上のリスクも含み、現実的な最悪のケースと見なされる可能性がある。その結果、最近の研究では、委託しているNGOは、「木の濃度が低いため、消費者の健康上の急性リスクは想定されない」という結論に達した。

科学的見解によると、現在の科学的知見により、クリスマスツリーの残留農薬に関する健康上の懸念は必要ない。低濃度により、現在流通している研究に基づくものでも一般的でもない(指示通りに使用した場合)。クリスマスツリーは、意図した通りに使用されれば通常摂取されることはないという事実に鑑みて、これは特にあてはまる。さらに、針葉樹の大量摂取は、テルペンとピネンの混合物が通常天然に含まれるという理由だけでも、毒性学的観点から疑わしい。これらの物質は、とりわけ有害生物から守るために木が生成するため、生物学的機能に関しては、むしろ健康に有害である。多くの木と同様、同じことがクリスマスツリーにも当てはまる:残留物がなくても、「全てのものは有毒で、毒のないものはない。有毒にしないのは用量だけである」。

BfRはこれを念頭に置いて、楽しいホリデーシーズンを過ごされますようお祈りします、そして素敵なツリーを楽しんでください。

この話題に関するBfRのウェブサイト上の詳細

https://www.bfr.bund.de/cm/349/assessment-of-health-risks-from-pesticide-residues-on-cut-flowers.pdf

 

[BfR]甘草の根の植物性アルカロイド:マトリンとオキシマトリンによる遺伝的損傷の可能性は低い

Plant alkaloids in liquorice roots: genetic damage by matrine and oxymatrine unlikely

21.12.2023 

https://www.bfr.bund.de/cm/349/plant-alkaloids-in-liquorice-roots-genetic-damage-by-matrine-and-oxymatrine-unlikely.pdf

マトリンとオキシマトリンは植物性アルカロイドのグループに属する化学物質である。昆虫などの捕食者から自身を守るために、槐(エンジュ)属の槐に存在し、生成される。甘草の生産に使用される甘草の根や甘草の根抽出物の検体に、この物質の残留物が検出された。甘草の根は槐の根と似た外見をしており、野生では一緒に収穫されるため、残留物は、おそらく、甘草の根と混同した結果だろう。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、現在、マトリンとオキシマトリンの残留物が、消費者、特に子供に健康上のリスクをもたらすかどうか調査している。評価では、この物質がどの程度遺伝毒性の可能性があるかという問いに焦点を当てた。初期評価では、入手可能なデータの不確実性により、疑われる遺伝毒性は完全に除外できなかった。新たなデータが提出され、遺伝毒性の可能性を評価できた。その結果、マトリンとオキシマトリンによる遺伝毒性の可能性は低いことが示された。遺伝毒性ではないが、毒性を包括的に調べていない物質(この場合マトリンとオキシマトリン)には、毒性学的懸念の閾値(TTC) 1.5 µg/ kg体重 /日をベースとして使用できる。甘草の根とその抽出物の残留データに基づき、このTTC値を超えることはない。その結果、ヒトの健康上の有害影響の可能性は、現在の科学的知見では非常に低い。

 

その他

-FoodSafety magazine

2023トップ食品安全革新

Top Food Safety Innovations of 2023

By Bailee Henderson  December 26, 2023

https://www.food-safety.com/articles/9130-top-food-safety-innovations-of-2023

5.食中毒病原体、バイオフィルムに有効な殺菌剤として、持続可能な有機酸

イミノジコハク酸四カリウム塩tetrapotassium iminodisuccinic acid salt (IDSK)

4.乳中細菌をリアルタイムで検出する新しいセンサー技術

スクリーンプリント電極ベースの技術

3.食品加工工場でのリステリア不活性化のための抗菌性青色光の可能性

2.塩析に「亜硝酸を使わない」で塩析肉を作る研究

L-アルギニンを加えることでNOが生じ、それが色と抗酸化および抗菌作用を示せるのではないかという研究

1.食品に病原性細菌汚染がおこると警告するトレー

サルモネラ検出センサー付きトレー

 

-Scienceニュース

気候変動と戦うために、企業が植物廃棄物を海に埋める

To combat climate change, companies bury plant waste at sea

22 DEC 2023

https://www.science.org/content/article/combat-climate-change-companies-bury-plant-waste-sea

林業や農業由来の屑木材中の炭素は、海底では何世紀にもわたって隔離できる

黒海の海底には古代の難破船が低酸素環境下でほぼ完璧に保存されている。そこで海底に廃木材を埋めて炭素を貯蔵することで気候変動対策とすることをイスラエルの企業Rewindが検討している。

 

-Natureコメント

より良い世界を作るために、経済成長を追い求めるのを止めよ

To build a better world, stop chasing economic growth

20 December 2023 By Robert Costanza

https://www.nature.com/articles/d41586-023-04029-8

2024年は政策をGDPから持続可能な幸福に転換する岐路でなければならない

(食べ物がなくても幸福、と金持ちが言う。ブータンとか日本は教訓にならないらしい。欧州はしばらくダメかも)

 

-Scienceエディトリアル

2024年が近づく

2024 looms

HOLDEN THORP

SCIENCE 21 Dec 2023 Vol 382, Issue 6677 p. 1333

我々は二つの世界に住んでいる-一つは発見と驚きの、もう一つは分断の。このことは科学的リーダーシップは勇敢かつ穏やかでなければならいことを意味する。我々全員が科学のために立ち上がりつつ同時にそれを生み出すコミュニティへの気遣いも必要である。簡単ではないがかつてなく重要である。