[NTP]ニュースレター
NTP Update
December 2018
https://ntp.niehs.nih.gov/update/index.html
・新しい化学物質安全性試験法の信頼構築が課題
・GEMS会合 大気汚染の恐ろしさ、天然殺虫剤ロテノンのミトコンドリアへの影響、など
・ICCVAM
-次回ピアレビュー委員会
Upcoming Peer Review Panels
https://ntp.niehs.nih.gov/events/panels/index.cfm
「サリンについてのNTPモノグラフ案:長期神経学的影響の可能性」についてパブリックコメント募集
サリンへの急性暴露後の長期神経影響についてのレビュー。ヒトデータの多くは松本サリン及び地下鉄サリン事件
(それはそうと個々のエビデンスのレベルやエビデンス全体としての信頼性の評価方法についてかなり詳しく説明している)
[CDC]一部の休日のおもちゃとおもちゃのジュエリーの鉛ハザード
Lead Hazards in Some Holiday Toys and Toy Jewelry
November 27, 2018
https://www.cdc.gov/features/leadintoys/index.html
子どもたちを金属やプラスチックのおもちゃの鉛から守ろう、特に輸入、アンティーク、ジュエリー。
ホリデーシーズンには多くの子どもたちがおもちゃやおもちゃのジュエリーを手に入れるが一部のおもちゃには鉛が含まれる
(以下略)
(おもちゃの鉛と聞くとどうしても思い出すのがこの「鉛の兵隊」なんだけど、錫の訳し間違いらしいので。食器だったり魚が食べたり燃やしたりしているので鉛だったら大変。http://mcsammy.fc2web.com/an.html)
論文
-減塩食で女性のほうが利益が多いかもしれない新しい証拠
New evidence that females might benefit most from a low-salt diet
11-Dec-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-12/mcog-net121018.php
Hypertensionに発表されたマウスでの新しい研究。アルドステロン濃度の影響を示唆
-研究が頻繁な赤肉摂取と心疾患に関連する化合物の高濃度を関連させる
Study links frequent red meat consumption to high levels of chemical associated with heart disease
11-Dec-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-12/nhla-slf121018.php
赤肉を多く食べるヒトのトリメチルアミン N-オキシド (TMAO)濃度が高く、赤肉を食べなくなると下がる。TMAOは赤肉に多く含まれる栄養成分から腸内細菌が作る化合物。
113人の健康な男女に赤肉、白肉、肉以外のタンパク源を一ヶ月食べてもらって血中TMAO濃度を調べた。概ね毎日8オンス(230gくらい)のステーキを食べるのに相当。赤肉群でそれ以外の群よりTMAO濃度が3倍になった。脂肪の摂取量とは関係がなかった。
European Heart Journal
(TMAOのもとはコリン、カルニチン。サプリメントで売っているけど)
-父方の祖父が食品を多く入手できることは孫息子の死亡リスクの高さを示すかもしれない
Paternal grandfather's high access to food may indicate higher mortality risk in grandsons
11-Dec-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-12/su-pgh121118.php
ストックホルム大学の大規模三世代研究で、父方の祖父が子どもの頃に食品を多く入手できることとその孫息子のがんによる死亡リスクと関連する。9039人の祖父母について1974-1910年の地域の収量データと1961-2015年の孫の死亡率データを使った。
栄養の影響がエピジェネティックに男の子にだけ伝わると考察
Nature Communications
-BMIは結局のところ健康の良い指標、新しい研究が発見
BMI is a good measure of health after all, new study finds
11-Dec-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-12/uob-bia121118.php
Journal of the American College of Cardiology
(どの疫学研究でも身長体重が一番信頼できる測定値だからというのもあるのでは。日によって変わったりせず測定技術に影響されにくい)
その他
-イチョウは害がないと私は考えていた。しかし間違っていた:中国の研究者の助けを得て、それは何千人も殺す可能性がある
Ginkgo is harmless, I thought. But I was wrong: with the help of Chinese researchers, it could kill thousands
Published Wednesday 05 December
Edzard Ernst
イチョウ葉はよく研究されているハーブ医薬品で多数の期待される兆候がある。しかしその中に冠動脈心疾患は含まれるだろうか?
この系統的レビュー(https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11655-018-2557-6)では狭心症(AP)にイチョウ葉抽出物とジピリダモール注射(GD)の有効性と安全性についての情報を提供することを目的とした。GDは中国の複合処方である。結果はGDと西洋薬(WM)の組み合わせはAPに対して総有効性率が高く、著者はWM単独よりGDとWMの組み合わせの方がAP患者により良い影響と関連したと結論している。もしこの結論を誰かが読んだら、GDを使いたくなるだろう。しかし私は強く警告したい。
・全てのRCTが中国のものである。そして中国のTCM試験は信頼性が非常に低い。
・研究の質は低い
・ジピリダモールはAPには適応がない
・私の知る限り中国以外でAPにイチョウが有効だという根拠はない
・APは冠動脈疾患で、これが医薬品で「治癒」できるというのはありそうにない
つまり我々が見ているのはもう一つの、一見信頼できそうな出版社からだされた無責任な査読者を使った疑わしい雑誌に掲載されたナンセンスな論文である可能性がある。恐ろしいことに私は自分の分野の探索をしていて毎日のようにこのようなものに出くわす。
このような絶え間のないナンセンスの奔流は以下の二つのうちどちらかの影響をもつ:
- 人々がこの「エビデンス」を重大に受け止め多くの患者が命を賭ける
- 人々は全ての医学研究は疑わしいと結論する
どちらにしても結果は恐ろしくネガティブであろう。こんな馬鹿げたことは止めるべきだ、でもどうやって?答えがわかればいいのに。
-ベルギーは甜菜にネオニコチノイドを使うことを認める予定
Belgium to allow use of neonicotinoids on sugar beet crop
06 Dec 2018
ポーランド、チェコ、ハンガリー、クロアチア、スロバキア、ルーマニアも免除
ベルギーは2019年の栽培シーズンに甜菜にネオニコチノイドを使うことを許可する西ヨーロッパでは最初の国になった
-女性が醤油「クレンズ」を試みて死にそうになって広範な脳傷害を負った
Woman Nearly Dies And Sustains Extensive Brain Damage After Attempting A Soy Sauce "Cleanse"
YouTubeメディカルチャンネルChubbyemuで39才のアメリカ人女性の症例をシェアしている。極端なクラッシュダイエットをした後醤油で「大腸洗浄」を試みて不可逆的脳傷害を負った。詳細は確認できないが2012年のイリノイの救急に来た例だという。認知機能の急速な低下を示し、患者の夫の話でその日その女性が醤油を1L飲んだことを知った。ナトリウムで約66gに相当する。さらに悪いことにこの女性の健康は既に脆弱だった。過去6か月に白パンと缶詰魚しか食べないダイエットをしていて過去3週間で11.3kg減らしていた。さらに統合失調症とパラノイアと診断されていた。
(こういうのは変な食事のせいでおかしくなったのか病気のせいで変な食事をするのかわからない)
-専門家に聞こう スコットランドのハギスは食べても安全?
Is Scottish Haggis Safe to Eat?
Published December 07, 2018
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/food-safety/article/scottish-haggis-safe-eat
Q:友人がスコットランドからハギスの缶詰を私に持ってきてくれた。それは羊の内臓を含む。私は米国とカナダではハギスの輸入は禁止されているのを知っている。食べても安全?
A:リスクに値しないだろう。ハギスは伝統的なスコットランドの料理で羊の心臓、肝臓、肺を細切れにしてタマネギやスパイスやオートミールと混ぜたものである。混合物を伝統的には動物の胃の袋に入れるが最近では人工ケーシングを使うこともある。そしてスエット(内臓脂肪)で料理する。オンラインでの記述では味は唐辛子のきいたソーセージのようでざらざらしてぼろぼろなオート麦のようなテクスチャーであるとされる。
ハギスの原料はほとんどの場合羊の内臓だが子羊や豚や牛や鹿などの内臓が使われることもある。
米国では1971年以降輸入が禁止されているので伝統的スコットランドハギスをアメリカのレストランや店舗で見つけることは困難だろう。この禁止は羊の肺を使った食品についてのもので、それは羊の四つの部分からなる胃の一つである第一胃由来の液体を含む可能性がある。その液体は屠殺工程で肺に移行する可能性がある。
第一胃は発酵タンクであり羊が食べた餌で生活する微生物で一杯である。屠殺時に空っぽでないと微生物だらけのものが肺に入る。屠殺前の絶食と適切な調理でこうした微生物学的リスクは対策できるものの、多分ハギスは食べない方がベストであろう、少なくともスコットランド以外では。安全上のリスクが気にならないとしても、飽和脂肪とカロリーが多い。
(缶詰ならしっかり加熱してあるのでは?こういうできるだけ捨てないという工夫に難癖つけるの、いかにも富裕層だなぁって思う)