2019-08-29

[BfR]BfREuroMixプロジェクトで物質混合物の健康リスク評価の改善に寄与する

The BfR contributes to the improved assessment of health risks from substance mixtures in the EuroMix Project

19.08.2019

https://www.bfr.bund.de/en/press_information/2019/31/the_bfr_contributes_to_the_improved_assessment_of_health_risks_from_substance_mixtures_in_the_euromix_project-241836.html

EuroMixプロジェクト(欧州の混合物質のための検査及びリスク評価戦略)は、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)4年間関与した後に無事終了した。EU助成研究プロジェクトでは、欧州の26機関が共同でよりよい検査戦略を開発し、食品中の物質混合物の健康リスクを評価している。「食品と一緒に、私達は多くの様々な物質を同時にとっている。健康リスクを評価するために、起こりうる組み合わせの影響を将来的によりよく説明する必要がある。EuroMixプロジェクトは物質混合物を評価するための新たな試験戦略の設計で成功している。動物実験数を削減する可能性もある」とBfR長官Andreas Hensel医学博士は述べた。

 

[BfR]卵の前は何?植物でできた世界最大の鶏が答えを知っている

What came before the egg? The world’s largest chicken made of plants knows the answer

08.08.2019

https://www.bfr.bund.de/en/press_information/2019/28/what_came_before_the_egg__the_world_s_largest_chicken_made_of_plants_knows_the_answer-241831.html

卵は鳥小屋から食卓までどうやって来るのだろう?いい卵を作るものは何?卵や家禽などの食品を扱う際に、食べて安全であるには何を考慮する必要があるのだろう?89日に公開したBfRたまごランドへの訪問者には、これらの質問への答えがインタラクティブな植物迷路で分かる。トウモロコシやヒマワリやその他の植物の広い野原を通る発見ツアーで、卵と鶏肉についての面白い事実を発見できる。養鶏、卵生産と実務、日常のヒントが話題に含まれている。「情報とエンターテイメントを混ぜて食品の安全性を教えることが私達の目標である。これは特に子供や若い人たちに、だがこのツアー中に何か新しいことを学ぶ大人にも重要である」とBfR長官Andreas Hensel医学博士は述べた。BfRたまごランドは2019913日まで開催している。入場無料。

 

[BfR]植物保護製品利用者の健康リスクはどのように評価されている?

Plant protection products - how is the health risk for users assessed?

20.08.2019

https://www.bfr.bund.de/cm/349/plant-protection-products-how-is-the-health-risk-fur-users-assessed.pdf

植物保護製品は健康へのどんな有害影響もあってはならない。そのため、植物保護製品の認可では、消費者に起こりうる健康リスクの評価だけでなく、利用者へのリスクも中心的な問題である。欧州統一評価基準に従って、その製品が使用目的に従って適切に利用されている場合、BfRは申請の間にその製品と接触する可能性のある全ての人々の健康保護が保証されるかどうかを評価している。これには、農業労働者や、園芸の従業員あるいは家庭や市民農園部門の素人の利用者も含まれる。専門家は、とりわけ、肺や皮膚から吸収される植物保護製品の量を評価している(食品からの摂取は別に評価されている)。暴露が毒性学的参照値を超える場合、認可は制限がある場合のみ可能である。すなわち植物保護製品の利用者は、許容できる量まで暴露を削減するために、作業着、手袋、他の防具を着用しなければならない。これは例えば、収穫中に処理された植物と接触する作業者にも当てはまる。居住者や他の関与しない団体へのリスクは、植物保護製品の散布の際にドリフトを減らす技術を用いて減らすことができる。

 

2016年以来、EUにおける利用者暴露評価は現在のEFSAモデル(Agricultural Operator Exposure Model; AOEM)に基づいていて、それは、暴露評価に関するEFSAのガイダンスにまとめられている(EFSA ガイダンス 2014)。その概念は作業着を着た人が実際の条件で植物保護製品を散布した時の測定に基づいている。その後、衣服を貫通する残留物が測定された。手の暴露を決めるために、検査する人が手を洗ったあとに洗浄水の化学物質量が分析された。

例えば、処理した区域で作業する(例えば収穫中)作業者の暴露もEFSAのガイドラインに基づいて算出された。一般的に人々は散布された植物保護製品が完全に乾いたときだけ処理面に立ち入る可能性がある。その後の作業中に暴露が参照値を超えるなら、対策を講じる必要がある。従業員は健康リスクを減らす必要性により、必要であれば作業着や手袋さえ着用が求められる場合がある。さらに、作業時間は最大12時間に制限される場合がある。これはたいてい短時間のケースだけである。保護手段をとるべき時間の長さが記載されている。

原則として、植物保護製品が認可される申請の全ての分野の暴露に関する情報がなければならない。これは大抵EFSAのガイドラインの基準値を用いて行われる。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)はそのため、植物保護製品の製造者に、例えば、植物上の植物保護製品がどれだけ早く分解されるかなど、認可手順でのさらなる測定を求める。

既に認可された植物保護製品の新しいより現実的な暴露計算がドイツ消費者保護・食品安全庁に提出される場合ある。その後BfRがそのデータを評価する。その結果、植物保護製品の認可条件は改訂され、安全条件が調整されることがある。一般的に、BfRは必要があれば、製造業者が提出した評価をチェックし安全条件を規定している。

 

[EU]RASFF Week34-2019

警報通知(Alert Notifications

スペイン産桃のジメトエート(0.04 mg/kg)及び未承認物質オメトエート(0.039 mg/kg)、ギリシャ産スマの水銀(2.1 mg/kg)、スペイン産冷凍鹿肉の鉛(9.64 mg/kg)、中国産海藻のヨウ素高含有(178.98 mg/kg)、オランダ産パプリカのフロニカミド(0.52 mg/kg)、ベトナム産冷凍ナマズのカドミウム(1.6 mg/kg)

注意喚起情報(information for attention

タイ産カイランの未承認物質プロチオホス(10 mg/kg)、タイ産チリの未承認物質トリシクラゾール(0.037 mg/kg)、タイ産マンゴーのクロルピリホス(0.015 mg/kg)、トルコ産黒目豆のクロルピリホス(0.029 mg/kg)、ベトナム産冷凍エビのドキシサイクリン(217 µg/kg)、英国産亜塩素酸ナトリウムの錠剤と溶液の未承認食品添加物亜塩素酸ナトリウム、ベラルーシ産オランダ経由アンズタケの高濃度の放射線量(854 BQ/kg)、タイ産コリアンダーの葉のクロルピリホス(1 mg/kg)、スペイン産チルドメカジキロインのカドミウム(0.313 mg/kg)及び水銀(0.264 mg/kg)

フォローアップ用情報(information for follow-up

ドイツ産豚肥育用補完飼料の亜鉛(435 mg/kg)・セレン(1.56 mg/kg)・マンガン(291 mg/kg)及び銅(57.8 mg/kg)高含有、酢漬けのタマネギの亜硫酸塩高含有(84.8 mg/kg)及び不適切な照射、中国産チリ油漬竹細切りのエポキシ化大豆油(ESBO)の溶出(170 mg/kg)、ブラジルで生産したアイルランド産飼料添加物のセレンの少なすぎる含有量(セレノメチオニンとして:25.32 %)、オーストリア産エストニア経由食品サプリメントの未承認新規食品成分カンナビジオール(CBD)

通関拒否通知(Border Rejections

パキスタン産玄米の不適切な認証分析報告書(結果がアフラトキシンB1の法定限度を超えている)、ウガンダ産グリーンチリのジメトエート(0.016 mg/kg)及び未承認物質オメトエート(0.036 mg/kg)、トルコで製造した米国産ピスタチオのアフラトキシン(B1 = 27.2; Tot. = 37 µg/kg)、ドミニカ共和国産ナスの未承認物質カルボフラン(0.017 mg/kg)、エジプト産ネクターカクテルの着色料カルミン(E120)の未承認使用(非表示)、ミャンマー産パーボイルド玄米の不適切な認証分析報告書(結果がアフラトキシンB1の法定限度を超えている)、米国産殻をとったピーナッツのアフラトキシン(B1 = 81.3; Tot. = 93.5 µg/kg)、ウガンダ産チリの未承認物質カルベンダジム(0.52 mg/kg)、パキスタン産マンゴー果肉の着色料タートラジン(E102)及び着色料サンセットイエローFCF(E110)の未承認使用、フィリピン産未承認新規食品ピリナッツ、ブラジル産ステーキナイフからのクロムの溶出(0.6 mg/kg)、イラン産殻付きピスタチオのアフラトキシン(B1 = 45; Tot. = 49.2 µg/kg)

 

[FSAI] 持続可能な食糧供給には科学と良い規制が必要不可欠

Science and Good Regulation Imperative for Sustainable Food Supply

Wednesday, 21 August 2019

https://www.fsai.ie/news_centre/press_releases/food_science_conf_21082019.html

本日、世界的な食品供給の安全性に直面する課題と機会を考える国際会議では、持続的な食品生産は主要な問題であるが、食品生産の革新が公衆衛生を守る食品安全性リスク評価と合致することを確実にするために、食品安全性は常に議論の中心である必要がある、とした。FSAICEO Dr Pamela Byrneは、ダブリンのコンベンションセンターのThe Science of Food Safety – What’s our Future?(食品安全の科学我々の未来は何か?)で、世界の人口が増加し、食品生産供給は進化するので、科学的な研究により消費者を守る規制の適応及び発展が重要であると概要を述べた。会議では、国内外の様々な専門家が、2050年までに地球上100億人に必要な食料の持続的な食品システムを構築する目的のため、より健康的でより安全な食品に導く食品科学の急速な発展の概要を説明した。

この会議では規制者、検査官、業界関係者、科学者及び学者が食品の最新科学を利用するために協力し取り組むことを議論するよう、重要な人たちが集まり、微生物及び食品化学物質の安全性及び公衆衛生の予測と将来の効果的な規制管理戦略に必要なものを考える。

EFSAのエグゼクティブディレクターであるDr Bernhard Urlは、より持続可能な世界的食品システムの設計を目的とした、裏付けある大胆な政策における科学の信頼性の重要性を述べた。「食品システムに科学が重要な役割を果たしており、欧州の食品はかつてないほど安全になった。このシステムは毎年40億ユーロの売上高に相当し、市民の健康を実現している。現在と将来の課題、及び減りつつある資源を利用し、環境を元に戻しつつ、どのように増加する世界の人々に食糧を供給するかという緊急の問題について、私は科学的プロセスに解決法はあると改めて思う。食品安全性の食糧安保への統合は、国連の世界的課題「one-health one planet」政策を可能にするだろう」とDr Urlは述べた。

FSAIのチーフエグゼクティブであるDr Pamela Byrneは、今が食品システムの発展の重要な節目だと述べた。より持続可能で、栄養があり、より健康的な食品の創造のために科学が必要だが、生産プロセスの急速な変化に、食品の完全性及び安全性確保のために安定した分析と監視が必要である。食品購入時に食品の安全性を重視するアイルランド人は半数以上(51%)だが、倫理や信仰を気にするのはわずか16%であり、5分の2(40%)の人は、1度食品リスクを聞くと、その後ずっと消費行動を変えてしまう。「消費者保護のため、新たな食品プロセスの適切な分析技術と研究能力がもてるように、食品規制は、能力を広げなければならないという課題に直面する。今では食品の国際化及び科学の発展による新しい食品生産が数多くあり、確実で安全、栄養がある本物の食品供給チェーン確保の必要性がある。」とDr Byrneは述べる。

欧州委員会のHealthy Planet DirectorateのディレクターであるDr John Bellは、国連の持続可能な開発目標である食品供給にとって、食品は安全でなければならないと説明した。気候変化、新技術及び炭素排出量の制限目標の結果として、現在及び新興のリスクが今後食品環境を取り巻くことになるだろうと述べた。「安全で栄養ある食品需要の増加と生物資源及びバイオマスとの競合増加に対処しつつ、時代に即したシステムアプローチで、その復元力及び公正性を向上させる。また、食品安全システムが今後の生産と消費の変化に対し、時代に即し、信頼され、透明性をもって新たな懸念に対処しながら、市民が情報を与えられた上で、健康的な食品選択を効果的にできるようにする必要がある。将来的な食品安全システム及び規制の枠組みは変える必要があるだろうが、科学研究のエビデンスベースが必要である。国内と欧州連合の食品安全研究資金は、この新たな状況を反映し、よりよい調整が必要である。H2020 Horizon Europeを通じた欧州委員会による利用できる資金を研究者が様々な企業と一緒になり確保することは意味がある。」と述べた。

 アイルランド科学基金及びアイルランド政府科学顧問チーフのディレクタージェネラルであるProf. Mark Fergusonは、公衆衛生を保護し、アイルランド食品業界の改革を促進するために食品安全性分野の研究資金の必要性を強調した。「研究者及びFSAIが数か月でできる短期間の研究プロジェクトに取り組むことができる適切な研究予算を利用できるようにすることは価値がある。科学の進歩は、食品生産、輸送そして加工方法を革命的に変化させ、革新的かつ競争力を高く保ち続ける業界及び研究による説得力のあるエビデンスベースに不可欠である」とProf. Fergusonは述べた。

 

[NHS]赤ワインでスリムになることや胃腸の健康に良いという証拠はない

No proof red wine makes you slim or is good for your gut

Wednesday 28 August 2019

https://www.nhs.uk/news/food-and-diet/no-proof-red-wine-makes-you-slim-or-good-your-gut/

「ワインを飲んで痩せられる!ワインは胃腸によくスリムを維持できる」とSunは報道する。

「話がうますぎる」多くの見出しと同じように、この話はその見出し以上に複雑である。

研究者は英国の916組の女性の双子の自己報告の飲酒習慣を調べ、米国やベルギーの同様のグループの知見を照合した。研究者は女性の胃腸に住む細菌のような微生物も評価した。胃腸の微生物がより多様な種類であるほど、胃腸はより健康であるとされる。赤ワインを飲んだ女性にはより多種の腸微生物がいることがわかった。また、赤ワインを飲む女性は肥満度指数(BMI)が低い傾向にあった。そのことは彼らの解析では微生物への影響に関連する可能性があることを示唆した。研究者は赤ワインのポリフェノールと言われる化学物質が、より多様な胃腸の微生物を好む条件を作り出すかもしれないと推測した。

しかしこのタイプの研究では、赤ワインが胃腸の多様性あるいは低いBMIの原因であったかどうかわからない。 女性の全体的なライフスタイルといった、他の要因が含まれたかもしれない。研究者は実際、他のいくつかの要因の影響を調整しようと試みたが、他の要因を完全に取り除くことは難しかった。

赤ワインを飲むことは減量する方法として推奨されない。さらに、この研究は赤ワインを飲むことが胃腸の健康の役に立つとも証明しない。研究者は明確にしたが、赤ワインの摂取に関するどんな有益な影響も2週間ごとにグラス1杯だけの赤ワインで達成できる可能性があると。

推奨量(1週間に14ユニットのアルコール)以上定期的に飲酒することは、肝臓疾患及びがんのような長期的なさまざまな健康疾患のリスクがある。過度のアルコール摂取のリスクに関しては以下。(https://www.nhs.uk/live-well/alcohol-support/the-risks-of-drinking-too-much/

 

[HSA] HSAは他国で発見された不純健康製品に関する情報を更新(5-62019

HSA Updates on Adulterated Products Found Overseas (May - Jun 2019)

28 AUGUST 2019

https://www.hsa.gov.sg/content/hsa/en/News_Events/HSA_Updates/2019/foreignalertsmayjun2019.html

硝酸アルキル、クロラムフェニコール、塩化エチル、鉛、フェノールフタレイン、PDE5阻害物質、レパグリニド、センノシド、シブトラミン、デスメチルシブトラミン、ヨヒンビンを含む製品を掲載。製品写真あり。

https://www.hsa.gov.sg/content/dam/HSA/News_and_Events/HSA_Updates/2019/HSAUpdates_Foreign%20Alert%20_2019_May_June_final.pdf

 

[DHSC]政府による病院食レビュー発表

Hospital food review announced by government

23 August 2019

https://www.gov.uk/government/news/hospital-food-review-announced-by-government

政府はNHSと協力して病院の食事の質を改善する

このレビューでは以下の点を検討する

・食事が回復に役立つか

・冷凍食品や包装済み食品への依存を減らして地元の食品を使うために全国団体から支援

・食品の安全性と質をより透明に監視するシステム

・患者や職員や訪問者により健康的選択のための基準を示せるか

・特に夜間勤務の職員により健康的な選択肢

・持続可能性と環境影響

・品質を確保し納税者の価値を守る

(もともと病院食は評判が悪かったがリステリア中毒アウトブレイクをおこし6人死亡したので)

 

[FSSAI]メディアコーナー

FSSAIは異物混入の疑いのある1500リットルの油を押収

FSSAI seizes 1,500 litres of edible oil on suspicion of adulteration  

Dated: 27-08-2019

https://fssai.gov.in/upload/media/FSSAI_News_Edible_Hindu_27_08_2019.pdf

Annur近くの倉庫に保管されていた缶入り油を押収。情報に基づいて担当者が強制捜査を行い、父子が精製パーム油を加えた落花生油、ココナツオイル、ヒマワリ油を売っていたことを発見。精製パーム油は1L 70ルピー程度、落花生油は240-280ルピー

(写真あり)

 

[WHO]健康情報におけるソーシャルメディアプラットフォームの役割についてのWHO事務局長の声明

WHO Director-General Statement on the Role of Social Media Platforms in Health Information

28 August 2019

https://www.who.int/news-room/detail/28-08-2019-who-director-general-statement-on-the-role-of-social-media-platforms-in-health-information

予防接種についての間違った情報は病気の拡散を促進し伝染性があり危険である。WHOPinterestがワクチンについての根拠に基づいた情報のみを提供することで公衆衛生を守るリーダーシップをとることを歓迎する。他の世界中のソーシャルメディアプラットフォームもPinterestに続くことを期待する。

 

[WHO]脆弱なシステムと資金不足が世界の最も貧しい国々の飲料水と衛生を脅かしている

Weak systems and funding gaps jeopardize drinking-water and sanitation in the world’s poorest countries

28 August 2019

https://www.who.int/news-room/detail/28-08-2019-weak-systems-and-funding-gaps-jeopardize-drinking-water-and-sanitation-in-the-world%E2%80%99s-poorest-countries

世界水週間(2019825-30日)にストックホルムで開催された年次会合で、WHOと国連水資源会議が新しい報告書を発表し飲料水と衛生システムへの投資を呼びかけた

(飲料水についてはマイクロプラスチックのような目新しいものに注目して基本を疎かにするなというメッセージを先日も出している。途上国の研究者でも地味で大事なことより最新話題のものをやりたがるのは研究業界の悪いところ)

 

[FDA]ARB医薬品の安全性問題を解決するためのFDAの現在進行中の努力についての声明

Statement on the agency’s ongoing efforts to resolve safety issue with ARB medications

August 28, 2019

https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/statement-agencys-ongoing-efforts-resolve-safety-issue-arb-medications

最近のアンジオテンシンII受容体阻害剤(ARB)のリコールが患者や医療コミュニティ、FDA、国際規制機関の大きな懸念となっている。FDAは多くの患者がARBを使用していてこれらのニトロソアミン不純物の存在を心配していることを承知している。

リスクと暴露の範囲を明確にする

我々は患者にこれらの不純物がどう影響するのかを完全に理解することを確実にしたい。特に、実際の患者のリスクは我々の最大の暴露の可能性からの科学的推定より相当低いだろうことを強調したい。我々は当所、もし8000人の人がリコールされたNDMAを含む最大用量のバルサルタン(320 mg)を4年間毎日使用したなら、その8000人中の生涯のがん症例に1例追加されるだろう、と推定した。実際には、ほとんどの患者はこの最悪ケースシナリオより少ない量のNDMAに暴露されていて、全てのARBが不純物を含むわけではないので一人の患者が4年間ずっと不純物を含む製品を使い続けることはないだろう。

多かった質問の一つはこの汚染の影響の大きさがどのくらいなのか-どのくらいの人数の患者が影響あるのか、である。我々はARBを使用している患者数を知っているものの、リコールされたARBを使っている患者の正確な数はわからない。理由は微妙である。例えば、医師の中にはリコール対象ではないがARB処方を念のため別のものに代えた場合があることを知っている。患者の処方瓶には必ずしもロット番号は記載されていないので患者や薬剤師がその製品がリコール対象かどうかを知るのは難しい。患者はリコール対象かどうかよくわからないので不必要な返品をしたかもしれない。従ってリコールにより変更された医薬品は必要以上に多かったと考えている、つまり不純物に暴露されたとは限らない患者にも影響があった。

製造業者が知っているのはリコール対象製品がどのくらいまだ市場にあるかの推定数だけで、患者の数ではない。しかし我々の追跡努力でサプライチェーンにある危険な可能性のある医薬品の追跡能力を改善しつつある。高血圧や心不全の治療のためのARB製品の使用を止めることのリスクのほうが微量のニトロソアミン暴露のリスクよりはるかに大きいので、患者は薬について疑問があれば専門家に相談するように。

 

論文

-危険なバランスの取り方

A dangerous balancing act

David Rober Grimes

EMBO Rep (2019)20:e48706|

https://www.embopress.org/doi/full/10.15252/embr.201948706

科学については、全ての見解を同等に提示するという善意の願望は、損害を与える嘘のトロイの木馬になり得る

議論がますます極端に分断された時代に、報道の不偏性は重要で、メディアはバイアスのない中立的情報を届けるべきである。しかしそのためにあまりにも厳密に両論併記をあてはめることは悪影響のほうが大きくなることがある-特に科学のトピックでは。

例えば気候変動では人間活動が原因の温暖化についての根拠は圧倒的であるが気候変動否定論が常に存在し科学的事実と同じ重さで報道され一般の人々の認識を歪めている。これは間違ったバランスの取りかたの一例である。

タバコ企業や化石燃料業界のように、経済的意図で議論を濁そうとする場合もあるが、多くの場合いつわりのバランスは意図的ではない信念による。進化論は現代生物学の基礎だが、聖書を信じる創造論者には冒涜と感じられる。そしてインテリジェントデザインを進化論と同じただの理論として推進している。インテリジェントデザインは笑い事かもしれないが、それがヒトの健康に関係することだと恐ろしい結果につながる。それが予防接種を巡る議論である。反ワクチン活動家は虚偽のバランスを悪用することに恐ろしく長けている。Andrew Wakefield によるMMRワクチン騒動が良い例である。Wakefieldの根拠は極めて弱いものだったが反ワクチン活動家と専門的訓練をうけていないライターは「両論併記」の記事を書いた。これが非常に有効だった。2000年までに英国の全ての科学ニュースの10%MMRに関するものだったが、その80%以上が科学ジャーナリストではないライターによるものだった。科学者や公衆衛生専門家は事実を伝えようと絶望的な努力をしたが、科学知識のない編集者やライターは同等の重みで反対する意見を出した。彼らは反対意見は同じ程度報道する必要があると自然に考えたのだろう。その帰結は予防接種率の著しい低下となった。そしてこの経験が学習されなかったのが日本のHPVワクチン報道である。

地獄への道は善意で舗装されている

科学についてバランス良く報道する、というのは主張の両極端を同程度の重みで報道することではない。根拠の重みに応じたバランスをとることである。

嘘情報(disinformation)の時代

メディアはますます断片化し、真実かどうかと関係なく怒りや情動的反応を呼ぶメッセージがより拡散しやすい。

メディアだけの責任ではない、科学と医学の適切な理解のために、科学者もメディアに関与することはお互いにとって利益となる。

 

-グルテンは健康なボランティアに消化器症状を誘発しない:二重盲検RCT

Gluten Does Not Induce Gastrointestinal Symptoms in Healthy Volunteers: A Double-Blind Randomized Placebo Trial

Iain David Croall et al.,

Gastroenterology, September 2019Volume 157, Issue 3, Pages 881–883

https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(19)40896-2/fulltext

グルテンフリーダイエットの流行でグルテンが悪いものというイメージになった。一方グルテンフリーは流行の気まぐれなダイエット法であるという見方はセリアック病患者などにとっては必要性がレストラン従業員に真剣に受け取ってもらえないという不幸を生んでいる。明確な区別が必要である。健康な30人の18才以上のボランティアを二群に分けてグルテンを与えた場合の消化管症状を調べた。グルテンによる差はなかった。

 

-イングランドの喫煙推定

Estimate of cigarette consumption in England

28-Aug-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-08/jn-eoc082719.php

2011年から2018年の間に、イングランドの喫煙は約1/4減った。これは年14億本のタバコに相当する。JAMA Network Open

 

-心疾患リスクを減らすには食事法より健康的な食品のほうが重要

Healthy foods more important than type of diet to reduce heart disease risk

28-Aug-2019

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-08/bidm-hfm082819.php

人気のある3つの食事法を比較し、全て心疾患を減らすことを発見

International Journal of Cardiologyに発表されたBeth Israel Deaconess医療センターの研究。炭水化物が半分以上のDASH食に似た食事、炭水化物のカロリーが10%で炭水化物をタンパク質に代えた食事、炭水化物を不飽和脂肪に代えた食事、の参加者の血液を調べた。いずれも心疾患や炎症マーカーを減らしたが、マクロ栄養素の影響はなかった。炭水化物と脂質の割合について議論が多いが、この研究からのメッセージは野菜や果物の多いバランスの良い食事を、である。

 

その他

-製品レビュー:栄養バーとクッキーのレビュー(エネルギー、繊維、タンパク質、食事代用品およびまるごとの食事として)

コンシューマーラボ

Nutrition Bars & Cookies Review (For Energy, Fiber, Protein, Meal Replacement, and Whole Foods)

Initial Posting: 8/28/19

https://www.consumerlab.com/reviews/Protein-Energy-Fiber-Meal-Replacement-Fruit-Nut-Bars/NutritionBars/

コンシューマーラボの検査は、全ての栄養バーやクッキーが表示されたとおりのものを含むわけではないことを明らかに

(表示で計算が合わないのもあるらしい)

 

-EPAの議論の多い「秘密科学」計画はまだ詳細不明、アドバイザーが言う

Scienceニュース

EPA’s controversial ‘secret science’ plan still lacks key details, advisers say

By Sean Reilly, E&E NewsAug. 28, 2019

https://www.sciencemag.org/news/2019/08/epa-s-controversial-secret-science-plan-still-lacks-key-details-advisers-say

E&E Newsから

EPAが利用する科学研究を制限する計画を発表して議論を巻き起こしてから1年以上経ったが、まだその提案の基本的性質について明確な答えがない、最近更新された独立助言委員会によると。

 

-Pinterestはワクチンの検索を保健サイトにつなげる

Pinterest to direct vaccine searches to health sites

https://www.bbc.com/news/business-49506011

ワクチン関連情報を探すPinterestユーザーは「公衆衛生機関」からの結果に導かれるだろう

 

-2018年のアスベストによるがん死は約700

Asbestos cancer deaths neared 700 in 2018

28 August 2019

https://7news.com.au/news/health/asbestos-cancer-deaths-neared-700-in-2018-c-421971

昨年の、通常アスベスト暴露が原因の進行性のがんで死亡したオーストラリア人は700人程度(699)だった。オーストラリア保健福祉研究所が水曜日に発表したデータではまた昨年新たに中皮腫と診断された人は662人だったことも明らかにした。アスベストは2004年から禁止されているが毎年数百人が新たに中皮腫と診断されている。平均すると診断後11か月で死亡している。中皮腫の患者の調査では93%がアスベストに暴露された可能性がある

 

SMC UK

-労働党の動物の福祉マニフェストへの専門家の反応

expert reaction to Labour’s manifesto on animal welfare

August 28, 2019

https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-labours-manifesto-on-animal-welfare/

労働党が「動物の福祉についてのマニフェスト」を発表し、科学研究における動物の使用を廃止する計画を記述している

City University of Hong Kong神経科学教授、もとOxford大学、Jan Schnupp教授

労働党のマニフェストは、有権者を惹きつけるために自分たちを可愛らしいウサギちゃんに見せようとしてかつては卓越していた英国の生命医学研究を取り返しのつかないほど毀損する恐ろしく無知な試みである

(以下個別の文言への反論略)

動物研究理解最高責任者Wendy Jarrett

労働党は昨年の夏この提案に意見を募集したが科学、獣医、医学部門からの意見は無視したようだ。動物実験はヒトや動物のための新しい治療法の開発のためには、僅かではあるが必須の一部である。

 

-赤ワインと腸マイクロバイオームを調べた研究への専門家の反応

expert reaction to study looking at red wine and the gut microbiome

August 28, 2019

https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-red-wine-and-the-gut-microbiome/

Gastroenterologyに発表された研究が赤ワインを飲むことが腸マイクロバイオームに利益があるかもしれないと報告

UCL Queen Square神経学研究所名誉コンサルタント神経学者Nik Sharma博士

近年腸マイクロバイオームが病気に重要な役割を果たすことが明らかになってきた。この研究は赤ワインを飲むことのBMIと「悪玉」コレステロールへのポジティブな影響が腸マイクロバイオームによって影響を受けるかもしれないと報告する。多数の人の関係した仕事(疫学)に合わせて、この仕事は因果関係ではなく関連を報告している。さらなる研究が必要である。それでも双子を使うことで結論の重みは増す。また異なる三つのコホートで概ね再現性があることは頑健さを示唆する。

アルコール研究所研究コーディネーターSadie Boniface博士

この研究は900の英国人女性双子で異なる種類のアルコールを飲むことが腸マイクロバイオームに関連するかどうかを探った。決定的ではないが赤ワインと腸内細菌の多様性の増加とが関連することを発見した。しかし医学的理由で飲酒を勧める医者はいないだろう、赤ワインのポリフェノールにどんな利益の可能性があったとしてもアルコールは心疾患やがんを含む200以上の病気と関連する。ポリフェノールは赤ワイン以外のたくさんの他の食品からも摂れる。

UC San Diego著名医学教授Kim Barrett教授

これはとてもよくできた研究であるが他の多くのマイクロバイオーム研究同様、知見は因果関係ではなく関連である。著者自身が言及しているように、因果関係を探るにはRCTが必要であるが、行われることはないだろう。ここで見られた影響の原因となる赤ワイン成分を分離して調べるにはさらなる研究が必要であろう。