2020-01-22

[EFSA]意見等

-遺伝子組換えAspergillus luchuensis Inui RF7398株由来食品酵素キシラナーゼの安全性評価

Safety evaluation of the food enzyme xylanase from the genetically modified Aspergillus luchuensis Inui strain RF7398

EFSA Journal 2020;18(1):5971  20 January 2020

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5971

この食品酵素キシラナーゼ(4‐β‐d‐キシラン キシラノヒドロラーゼ; EC 3.2.1.8)は、AB Enzymes GmbH社が遺伝子組換えAspergillus luchuensis Inui RF7398株で生産した。この遺伝子組換えは安全上の懸念を生じない。この食品酵素に生産生物の生きた細胞や組換えたDNAは含まれない。この食品酵素は焼成及びシリアルベース工程で使用することを意図している。最大使用量に基づき、この食品酵素への食事暴露―総固形有機物量(TOS)は欧州人で最大0.008 mg TOS/kg 体重(bw)  /日と推定された。遺伝毒性試験は安全上の懸念を生じなかった。全身毒性はラットの90日間反復経口投与毒性試験で評価された。パネルは無毒性量を試験した最大量の1,000 mg TOS/kg bw /日と確認し、これを推定した食事暴露と比較すると、暴露マージンは少なくとも125,000となった。既知のアレルゲンに対するこの食品酵素のアミノ酸配列の類似性が調査され、一致はなかった。パネルは、意図した使用状況で、食事暴露によるアレルギー感作リスクや誘発反応は除外できないが、これが起こる可能性は低いと考えた。提出されたデータに基づき、パネルは、意図した使用状況で、この食品酵素は安全上の懸念を生じないと結論した。

 

-遺伝子組換えダイズSYHT0H2の食品及び飼料としての使用、輸入、加工のための評価(認可申請 EFSA‐GMO‐DE‐2012‐111)

Assessment of genetically modified soybean SYHT0H2 for food and feed uses, import and processing, under Regulation (EC) No 1829/2003 (application EFSA‐GMO‐DE‐2012‐111)

EFSA Journal 2020;18(1):5946  20 January 2020

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5946

この申請で記述されているダイズSYHT0H2は、ヒトと動物の健康と環境への潜在的な影響に関して、従来対象種及び検査した非GMダイズ参照種と同様に安全である。

 

-Bacillus amyloliquefaciens BANSC株由来食品酵素α-アミラーゼの安全性評価

Safety evaluation of the food enzyme α‐amylase from Bacillus amyloliquefaciens strain BANSC

EFSA Journal 2020;18(1):5976  20 January 2020

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5976

この食品酵素α‐アミラーゼ (4‐α‐d‐グルカン グルカノヒドロラーゼ; EC 3.2.1.1)はAdvanced Enzyme Technologies Ltd社が非遺伝子組換えB. amyloliquefaciens BANSC株で生産した。このα-アミラーゼは醸造及び焼成工程、グルコースシロップ生産や他の澱粉加水分解物の澱粉加工での使用を意図している。この食品酵素の残留量はグルコースシロップ生産の澱粉加工中に除去されるため、食事暴露の推定から除外されている。醸造及び焼成工程の最大推奨使用量とEFSAの包括的欧州食品データベースの個別のデータに基づき、食事暴露―総固形有機物量(TOS)は最大0.468 mg TOS/kg 体重 (bw) /日と推定された。親株は安全性適格推定(QPS)生物とみなすのに必要な資格を満たしており、それゆえ安全だと推測される。この食品酵素の安全性の結論は、製造条件をさらに考慮して、生産株に関するQPSアプローチに従って作られた。その結果、パネルはアレルゲン性の評価以外の毒性学的研究は必要ないと考えた。パネルは、意図した使用状況で、この食品酵素に対する食事暴露上のアレルギー感作リスクや誘発反応は除外できないが、そのような可能性は低いと考えた。この生産株のQPSステータス及び提出されたデータに基づき、パネルは、この食品酵素は意図した使用状況で、安全上の懸念を生じないと結論した。

 

-遺伝子組換えStreptomyces rubiginosus DP‐Pzn37株由来食品酵素キシロースイソメラーゼの安全性評価

Safety evaluation of the food enzyme xylose isomerase from the genetically modified Streptomyces rubiginosus strain DP‐Pzn37

EFSA Journal 2020;18(1):5978 20 January 2020

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5978

この食品酵素はDanisco US Inc社が遺伝子組換えStreptomyces rubiginosus DP‐Pzn37株で生産したd‐キシロース アルドース‐ケトース‐イソメラーゼ (EC 5.3.1.5)である。この生産株には抗生物質耐性遺伝子が含まれているが、この食品酵素はその生産生物の生きた遺伝子やそのDNAがないことが示された。この食品酵素は高フルクトースシロップ生産のためのグルコース異性化の固定化型での使用を意図している。総固形有機物量(TOS)の残留量は、固定化した食品酵素の使用により除去され、固定化した酵素を用いた高フルクトースシロップ生産中に適用される精製段階でさらに取り除かれる。その結果、食事暴露は算出されなかった。遺伝毒性試験は安全上の懸念を生じない。全身毒性はラットの90日間反復経口投与毒性試験で評価された。パネルは、無毒性量を、検査した最大用量の85.2 mg TOS/kg bw / 日と確認した。既知のアレルゲンに対するアミノ酸配列の類似性が調査され、マッチは見つからなかった。パネルは、意図した使用状況で、この食事暴露によるアレルギー感作リスクや誘発反応は除外できないが、そのような反応が生じる可能性は低いと考えた。提出されたデータ、固定化工程、高フルクトースシロップ生産中の総固形有機物量の除去に基づき、パネルはこの食品酵素は意図した使用状況で安全上の懸念を生じないと結論した。

 

[FDA]FDAはグルコマンナンを食物繊維として加える市民請願を承諾

FDA Grants Citizen Petition on Glucomannan as a Dietary Fiber

January 10, 2020

https://www.fda.gov/food/cfsan-constituent-updates/fda-grants-citizen-petition-glucomannan-dietary-fiber

 FDAは本日、市民請願への対応として、「グルコマンナン」を食物繊維の定義に追加することを提案する意向を発表した。

 栄養及びサプリメント成分表示に記載される食物繊維には、植物に固有で完全なままに天然に存在するある種の繊維を含み、FDAがヒトの健康に有益な生理学的影響があると判断した、単離された、あるいは合成の難消化性の水溶性及び不溶性炭水化物が追加される。FDAは2016年の栄養成分表示最終規則の中で「食物繊維」を定義した。入手可能な根拠に基づき、FDAは、科学的根拠はグルコマンナンが血中コレステロールの低下に役立つ可能性があることを示唆する、と決定した。グルコマンナンは一般的にコンニャク植物として知られるゾウコンニャク(elephant yam)の塊茎又は根に存在する。

 今回のグルコマンナンに関する通知とともに、難消化性炭水化物の17カテゴリーが、食物繊維の定義に合致して含まれるか又は食物繊維の定義に追加されることが提案されている難消化性炭水化物に含まれている。

 7種の繊維が栄養成分表示最終規則において食物繊維の定義に合致するものとして特定されている。FDAが追加の繊維を加えるための規則の策定を完了するまでは、製造業者には、追加の繊維の量を表示に含めることを認める執行裁量を行使する。食物繊維の定義に追加したい繊維があれば、いつでも市民請願ができ、それらは定期的に検討されるだろう。

*FDA が食物繊維の定義に合致すると判断した 7 種:ベータグルカン可溶性繊維、サイリウムハスク(Psyllium husk)、セルロース、グアガム、ペクチン、ローカストビーンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース

*FDAが食物繊維の定義に追加される難消化性炭水化物として提案する意向の10種:混合植物細胞壁繊維(サトウキビ繊維やリンゴ繊維のようなその他多くの繊維を含む広いカテゴリー)、アラビノキシラン、アルギン酸、イヌリン及びイヌリン型フルクタン、高アミロースデンプン、ガラクトオリゴ糖、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、リン酸架橋RS4、グルコマンナン

 

[FDA]これからの10年の大麻政策

Cannabis Policies For the New Decade

January 15, 2020

https://www.fda.gov/news-events/congressional-testimony/cannabis-policies-new-decade-01152020

医薬品評価研究センター副所長のDouglas Throckmorton博士の声明。

(以下、食品関連のみ抜粋)

 2018年12月に法改正によりデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)の濃度が低い大麻であるヘンプがControlled Substances Actのマリファナの定義から除外され、ヘンプ製品やその成分カンナビジオール(CBD)の製品は他のFDA規制製品と同様にFDAの管理下に置かれることになった。現在、ヘンプから製造された製品やヘンプ(CBD含む)含有製品の全てが合法的に州間通商上の取引ができるという誤った認識がなされているとともに、店舗やオンライン上には根拠のない治療効果の謳い文句とともに製品があふれている。しかし、CBDを含む食品やダイエタリーサプリメントの州間取引はFD&C Actのもと違法である。CBD製品については、科学、安全性、品質について未解決の問題が多くある。食品やダイエタリーサプリメントとして使用する場合、FDAは医薬品とは異なる因子について評価し、長期使用による安全性を検討しなければならない。

消費者はCBD製品の使用に関連する次のリスクに気づかなければならない:肝臓傷害、医薬品との相互作用、動物試験で確認されたオスの生殖毒性。さらに、不眠や消化器障害(下痢、食欲不振、腹痛)、いら立ちなどの副作用もある。

 FDAは、CBDとCBD製品の安全性についてより多くのことを学ぶために行動しており、先に述べたリスクの他に、累積暴露、特殊集団(高齢者、子供、妊婦など)への影響、動物への安全性などを明らかにしようとしている。その上、CBDそのものの安全性だけでなく、その製品の製造工程における安全性にも着目している。FDAが試験したCBD製品のラベルにはCBD量が記載されておらず、その他に記載されていない有害の可能性のある物質を含む可能性すらある。そのため、FDAはCBD製品のGMPに関連した疑問についても検討しなければならない。現在FDAは、CBD製品の販売を許可すべきなのかどうか、安全に販売するにはどのような制度を策定すべきなのか検討している。

 

[ヘルスカナダ]保健省主席医務官会議(CCMOH)の大麻抽出物、食用及び局所用製品に関する声明

Council of Chief Medical Officers of Health (CCMOH) Statement on Cannabis Extracts, Edibles and Topical Products

January 6, 2020

https://www.canada.ca/en/public-health/news/2020/01/council-of-chief-medical-officers-of-health-ccmoh-statement-on-cannabis-extracts-edibles-and-topical-products.html

 大麻製品の使用、特に国で合法になりつつある新たな大麻製品に関する健康リスクを減らす方法について市民に助言する。

 アルコールやタバコのように大麻には害もリスクもある。大麻を使用する人は、大麻抽出物、食用大麻、大麻局所製品といった異なる製品に応じたそれぞれのリスクがあることを知るべきである。大麻をどのように摂るのか(経口なのか、吸入なのか)や、摂取するテトラヒドロカンナビノール(THC)やカンナビジオール(CBD)の量、そしてどのくらいの早さで摂取するのかによって有害影響が出るのか出ないのかが変わる。低量でゆっくりと始めるように。

 近頃、蒸気吸入に関連した肺損傷が懸念されており、蒸気吸入の短期・長期リスクの全容が理解できていないことから、最も安全なのは大麻抽出物を利用しないことである。吸入製品を利用したい人は、リスクを減らすために、正規品を使う、何かを添加したりせずにそのまま使う、量と頻度を制限する、表示を必ず読む(THC量、正規品なのか)、深く吸い込んだり吐き出すのを止めたりしない、アルコールやその他の大麻製品と併用しないこと。

 また、大麻製品を経口摂取すると吸入とは異なる精神的な影響を生じる可能性がある。経口摂取の大麻製品による精神的影響の発現が遅れると過剰摂取になったり、中毒リスクが上昇する。食用大麻には、普通の食品や飲料品と間違えることにより、特に子供やペットに偶発的な中毒を起こす高いリスクもある。大麻製品を経口で摂取することによるリスクを最小限にするためには、次のことに気をつけるように。

その製品の強さ(THC量)を知るために製品の表示を必ず読むこと。食用大麻の1包装分のTHC量は最大10 mgである

食用大麻は普通の食品(焼き菓子、キャンディ)のように見えるので、明確にラベルをつけ、子供やペットが届かず開けられないように安全に保管する

少量から始める(2.5 mg THC以下)

もっと摂取しようとする前に、影響が出るまで待つこと。大麻の影響を感じるには最大で2時間かかり、最大の影響を感じるには最大4時間かかる

大麻使用後は自動車の運転や重機を扱ったりしてはいけない。判断力も鈍る。食用大麻による影響は最大24時間続くこともある。有害な影響が出たら適切な医療従事者を探し、ヘルスカナダへ報告すること。

 どの大麻製品を使う場合も、依存や中毒になる可能性があり、頻繁に利用すると精神に害を与え得ることを覚えておくことが大切である。事実、大麻を使用した成人の10%が不調を訴えている。より若い時に始めると使用頻度も期間も長くなり、健康への有害影響が出やすくなるだろう。情報を得て、自分や家族の健康を守ること。

 

[FSANZ]食品基準通知

Notification Circular 109–20

22 January 2020

https://www.foodstandards.gov.au/code/changes/circulars/Pages/NotificationCircular109%E2%80%9320.aspx

新規申請と提案

還元糖が少なく、アクリルアミドを作る可能性が少なく、褐変しにくく葉枯れ病に耐性の遺伝子組合えInnate ジャガイモ系統 V11 & Z6由来食品

 

[FSANZ]食品基準ニュース 2020年1月

Food Standards News - January 2020

https://us2.campaign-archive.com/?e=&u=700bf5d7b419cc12102524e87&id=e1dd7e7d1d

https://www.foodstandards.gov.au/media/pages/foodstandardsnews/Default.aspx

・緊急時の食品安全 山火事に影響を受けた人向けの助言

・学校の新学期 アレルギーに注意

・リコール あなたの事業は準備できている?

他意見募集や通知

 

論文

-食品ごみ禁止:アメリカの地方の教訓

Banning food waste: Lessons for rural America

21-JAN-2020

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-01/uov-bfw011420.php

バーモント州民は食品ゴミの埋め立て禁止を支持していて、既に72%が肥料や飼料にされているが、歩道のコンポストにお金を払う意思はない。バーモント大学の新しい研究。

バーモント州では2020年7月1日から食品をゴミ箱に捨てることが違法になる。サンフランシスコやシアトルのような大都市では既に同様の政策が実施されているが、州レベルで家庭の食品ゴミの埋め立てを禁止するのはバーモントが初めてである。都市部では食品専用ゴミ収集箱の設置に賛成が多いが地方では自宅の裏庭でコンポスト化したり動物に与えたりすることが好まれる

(ゴミ処理システムが国によって全然違っていて全く参考にならない場合もある。プラゴミ問題も焼却がデフォルトの場合と埋め立てでは全然違うのに何故か同じ対策を消費者に要求している)

 

-低炭水化物、低脂肪ダイエット、死亡リスクを吟味する

Examining low-carbohydrate, low-fat diets, risk of death

21-JAN-2020

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-01/jn-ell011620.php

JAMA Internal Medicineの予告

 

-日焼け止めの有効成分の吸収と血中濃度を評価する研究

Study assesses absorption, blood levels of active ingredients in sunscreen

21-JAN-2020

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-01/jn-saa011620.php

JAMAの予告

 

-オーストラリアの子どものライススナックはEUガイドラインを越えるヒ素を含む:研究

Kids rice snacks in Australia contain arsenic above EU guidelines: Study

21-JAN-2020

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-01/ru-krs012120.php

オーストラリアのスーパーマーケットで販売されている子ども向けライススナックの75%がEUの乳幼児向けの安全なコメの摂取ガイドラインを超過するヒ素を含む。

International Journal of Environmental Research and Public Healthに発表されたRMIT大学の研究。

オープンアクセス

Arsenic Concentrations and Dietary Exposure in Rice-Based Infant Food in Australia

https://www.mdpi.com/1660-4601/17/2/415

(欧州基準無機ヒ素0.1mg/kg。コメ製品は大体ダメ。)

 

-新しい研究は塩を摂ると減量できるという考えを否定する

New study debunks notion that salt consumption contributes to weight loss

21-JAN-2020

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-01/bidm-nsd012120.php

400人以上の参加したよくコントロールされた研究は減塩が高血圧を減らすための重要な公衆衛生戦略であることを支持する

Hypertensionに発表された、Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH)-Sodium研究の二次解析。典型的なアメリカ人の食事と健康的な食事のヒトのエネルギー摂取、体重、自己申告による喉の渇き、24時間尿の容量へのナトリウム摂取量の影響を調べた。減塩は体重維持のためのエネルギー量には影響しないが喉の渇きと尿量と血圧を下げた

(塩をたくさんとるダイエット法なんてある?)

 

-ビタミンD補充は子どもの血圧改善の可能性と関連する

Vitamin D supplementation linked to potential improvements in blood pressure in children

21-JAN-2020

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-01/uop-vds012120.php

肥満か過体重でビタミンDが欠乏している子どもたちが毎日比較的高用量(2000IU)のビタミンDを6ヶ月間摂ると、低用量(600あるいは1000IU)を摂った群に比べて血圧が低くインスリン感受性が改善していた。しかし他の心血管系や代謝系の健康指標に改善は見られなかった。The American Journal of Clinical Nutrition

 

-難分解性環境汚染物質はマウスの腸のマイクロバイオームを変える

Persistent environmental contaminant changes the gut microbiome of mice

21-JAN-2020

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-01/ps-pec012120.php

Toxicologyに発表されたPFOSをマウスに与えた実験のペンシルベニア州立大学によるプレスリリース

(ヒト暴露とはかけ離れた暴露シナリオでのマウス実験なので実験そのものに特に注目すべきところはないのだが、資金提供者に3Mが含まれ著者に中国科学アカデミーの教授が含まれる。どちらも現在米国で排除すべきという声が強いが是々非々だろうという例として)

 

その他

-Natureワールドビュー

最良のがん対策は素晴らしい医薬品では無い

Our best weapons against cancer are not magic bullets

Vinay Prasad 21 JANUARY 2020

https://www.nature.com/articles/d41586-020-00116-2

洗練された医薬品よりもより良い健康と社会政策のほうが多くの命を救うだろう 

今月初め米国がん学会はがんの発症率と死亡率の最新統計を発表した。それには全国がん統計で最大の低下が見られ、メディアが注目した。米国のがんによる死亡率は1990年に最大で、2008-17年には毎年1.5%程度下がっていた。2016年から2017年の間はそれが2.2%だった。これは間違いなく良いニュースである。

しかしこの喜びは他の統計-特に寿命の減少で抑えられる。

がん死亡率低下の背景にあるのは肺がんの死亡率低下である。いくつかの反応はそれを新薬の開発のおかげだとしているがそうではない。肺がんの発症率が減ったのでありそれは薬ではできない。ゲノム標的医療などの新しい技術は確かにメリットはあるが集団の死亡率を大きく下げることはありそうにない。より公平な社会にすることのほうががん死亡率を大きく下げる。米国の寿命低下も同様である。

これまでのデータは、最も効果的な解決方法の多くは「最新の医薬品」の戸棚以外のところにあることを明確にしている。高血圧を治療しタバコを止めさせ肥満や環境中発がん物質を減らす必要がある。

私が最もフラストレーションを感じるのは社会全体として健康を最大化することに失敗していると結論せざるを得ないことである。我々は年に10万ドル以上もかかる薬の開発を優先して環境汚染は放置している。公衆衛生はどんな個人のためのものでもないが我々全員の長寿を推進できる。それには気分が良くなる物語も科学的革新も魔法の薬もいらない。個別化医療の熱狂の時代に、我々は全ての人のためのより良い健康を祝福することによる最大の利益から遠く離れていく。

 

-Natureニュース

武漢のウイルスはどのくらい早く拡大する?

How quickly does the Wuhan virus spread?

21 JANUARY 2020

https://www.nature.com/articles/d41586-020-00146-w

中国当局はこのウイルスがヒトからヒトに拡大していることを確認した

しかしどのくらい簡単に、なのかはまだわからない