[EFSA]新規食品としてまた鉄源としての水酸化鉄アジピン酸酒石酸塩の安全性
Safety of iron hydroxide adipate tartrate as a novel food pursuant to Regulation (EU) 2015/2283 and as a source of iron in the context of Directive 2002/46/EC
EFSA Journal 2021;19(12):6935 10 December 2021
https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/6935
(科学的意見)
欧州委員会からの要請を受けて、栄養・新規食品及び食物アレルゲンに関するEFSAのパネル(NDA)はEU規則2015/2283に従って、新規食品として、またEC指令2002/46/ECに関連した、鉄源としての水酸化鉄アジピン酸酒石酸塩に関する意見を出すよう求められた。このNFは、鉄の最大一日摂取量36 mgに相当する最大用量100 mg/日まで、食品サプリメントに使用することを意図している。申請者が提案する対象集団は3歳以上の一般人である。この申請の対象となるこのNFは、ほぼ球形で、通常直径が5nmより小さい一次粒子を持つ加工ナノ材料である。吸収・分布・代謝・排出(ADME)と生物学的利用能のために提出された研究は、いったん腸の上皮細胞に取り込まれた鉄は、他の形態の鉄と同じ調節機構と吸収の対象であることが示された。毒性評価の文脈で提出された追加試験から、このNFが調べた用量で細胞や臓器の鉄の生体内蓄積には結びつかないことが示された。パネルはこのNFには10歳までのニッケルに感作した子供の再燃反応のリスクが増す可能性があるとした。90日間毒性試験では、血液学、臨床生化学、臓器重量で所見が観察され、パネルは無毒性量(NOAEL)を試験で使用した中用量である231 mg/kg 体重 (bw) /日とした。パネルは、このNFは鉄が生物学的に利用可能な供給源であり、提案した使用条件で安全だと見なした。
[EFSA]ビスフェノールA:EFSAの意見案は耐容一日摂取量の引き下げを提案する
Bisphenol A: EFSA draft opinion proposes lowering the tolerable daily intake
15 December 2021
欧州食品安全機関(EFSA)は食品中のビスフェノールA(BPA)のリスクを再評価し、2015年の以前の評価と比べて耐容一日摂取量(TDI)を大幅に下げることを提案している。BPAに関するEFSAの結論は、2022年2月8日まで公開されているパブリックコメント募集のための科学的意見案で説明されている。全ての利害関係者にパブリックコメントへの寄与を奨励している。
TDIとは、感知できるリスクなく生涯にわたって毎日摂取できる物質の推定量のことである(体重あたりのkgで表現される)。2015年のBPAのリスク評価で、EFSAは暫定TDI 4マイクログラム/体重kg/日を設定した。
本日発表したBPAの再評価案では、食品と接触する物質・酵素及び加工助剤に関するEFSAの専門家パネル(CEP)は、TDI 0.04ナノグラム/体重kg/日を設定している。このTDIの引き下げは、2013年から2018年までの文献で明らかになった研究の評価、特に免疫系に関するBPAの有害影響を示した研究による。動物実験では、細胞性免疫機構で重要な役割を果たし、上昇するとアレルギー性肺炎の発症につながる可能性のある白血球の一種である、ヘルパーT細胞の数の増加が観察された。
この新しいTDIを消費者の食事中のBPAへの暴露推定量と比較して、EFSAは、全ての年齢集団のBPAの平均及び多量暴露どちらも、この新しいTDIを超過し、健康上の懸念を示していると結論した。
体系的アプローチ
CEPパネルの議長であるClaude Lambré博士は、「この更新案は数年にわたる徹底的な評価の結果である。私達は利用可能な根拠の選択と評価に体系的アプローチを使用した。文献で明らかになった新しい科学的研究が、BPAの毒性についての重要な不確実性を扱うのに役立った」と述べた。
EFSAは以前、2006年と2015年に食品と接触する物質に使用するBPAの安全性を評価した。EFSAの最新の評価時に、専門家は不確実性のため暫定TDIしか設定できず、データのギャップを満たす必要性を強調した。
EFSAの専門家は、2017年と2019年のハザード評価プロトコルの発表やテストなど、この新しい評価のために大規模な準備作業を実施した。
意見募集!
EFSAは全ての利害関係者に専用のパブリックコメント募集ページから意見案に関するフィードバックを提出するよう勧めている。コメントの締め切りは2022年2月8日。
技術会議
EFSAのCEPパネルの専門家とBPAの再評価に関する作業グループは、2022年1月24日の技術会議でBPAの意見案の背後にある科学を提示する。
編集覚え書き
ビスフェノールA (BPA)は、ウォーターディスペンサーや食品生産用製品など、特定の食品と接触する物質を作るのに使用される可能性のある、ポリカーボネートプラスチックを製造するのに使われる化学物質である。BPAは食品や飲料の缶詰の保護コーティングやライニングを形成するためのエポキシ樹脂を製造するのにも使われる。少量のBPAは食品と接触する素材から食品や飲料に移行する可能性がある。
BPAについての更なる情報はEFSAのウェブサイトで入手可。
[FSANZ]第27回オーストラリアトータルダイエットスタディ発表
Results of 27th Australian Total Diet Study released
10/12/2021
オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)は、本日、食品中のパー及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)の濃度を調査する第27回オーストラリアトータルダイエットスタディの結果を発表した。その結果から、オーストラリアの消費者の食品によるPFASへの暴露はとても少なく、食品安全上の懸念はないことが示された。
暫定最高責任者Sandra Cuthbert博士は、この結果はオーストラリアの消費者にとって良い知らせだと述べた。
「ATDSはオーストラリアの消費者の食品による化学物質への暴露の最も包括的な研究である。第27回ATDSでは、全オーストラリア州及び準州から調達した112の一般に食べられている食品を代表する1,336の複合サンプル中の30種類のPFASを調べた。1種類のPFAS、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)だけがサンプリングした全ての食品の2%未満で低濃度で検出された。全体的に一般的なオーストラリア人のPFOSへの食事暴露は耐容一日摂取量を十分下回っていた。ATDSから、PFASの濃度が、FSANZの現地調査のトリガーポイントや国立健康医療研究評議会の飲料水ガイドラインなど、オーストラリアのガイダンス値を十分下回っていることもわかった。」
調査結果:
・一般的なオーストラリアの食品供給におけるPFASの濃度は、合理的に達成可能な限り低い
・一般的なオーストラリア人に公衆衛生や安全上の懸念はない
・オーストラリアの食品中のPFAS濃度は、欧州、米国、英国、中国で実施した海外の研究で見つかった量より一貫して低い
・オーストラリア・ニュージーランド食品基準規約で追加リスク管理対策(最大濃度など)の必要性は今のところない。
ATDSは、オーストラリア人の典型的な食事の広範な食品や飲料中の、農薬および動物用化学物質、汚染物質、自然毒、栄養素及び食品添加物などの物質の濃度を測定している。1970年に着手したこの調査は、FSANZが食品供給の安全性を監視するのに役立っている。
報告書本文
27th Australian Total Diet Study
Per- and poly-fluoroalkyl substances
December 2021
https://www.foodstandards.gov.au/publications/Documents/27th%20ATDS%20report.pdf
PFOSが検出されたのは哺乳類の内臓肉(0.63µg/kg)、ツナ缶(0.070 µg/kg)、エビs (0.018 µg/kg)、海水魚s(0.011 µg/kg) 、鶏卵(0.0069 µg/kg)など
FSANZによるPFOSのTDIは 20 ng/kg bw/day、 PFOAは160 ng/kg bw/day
NHMRCによる飲料水ガイドライン値は
PFOAについて 0.56 µg/L PFOSとPFHxSの合計について 0.07 µg/L
(なにげに重要文書発表している)
Perfluorinated compounds
December 2021
https://www.foodstandards.gov.au/consumer/chemicals/Pages/Perfluorinated-compounds.aspx
PFASと免疫調節 レビューと更新
PFAS and Immunomodulation Review and Update
PFASとワクチンへの免疫応答、感染感受性、アレルギーを含む過敏反応の関連についてレビューした。結論としては、一部に統計的関連がみられるものの、環境曝露レベルのPFASがヒト免疫系に有害だという一貫した根拠は無い。
[FDA]シーフード
Seafood
https://www.fda.gov/food/resources-you-food/seafood
病気とアウトブレイクの表更新
How to Report Seafood-Related Toxin and Scombrotoxin Fish Poisoning Illnesses
のTable1 の21-09-09から21-11-13まで追加
[RIVM]オランダは2020年にEUの空気の質基準をほとんど守った
The Netherlands almost meets EU air quality limit values in 2020
12/15/2021
https://www.rivm.nl/en/news/netherlands-almost-meets-eu-air-quality-limit-values-in-2020
2009年に全国空気の質協調計画(NSL)が始まって以降初めて、オランダは道路沿いの二酸化窒素のEU基準を守った。またPM10もほぼ遵守した。
これらの濃度が低かった理由の一部はコロナウイルス対策の影響である。この影響は一時的なもので、新しい車や産業界の規制で今後空気の質は改善するだろう。
報告書本文はオランダ語
[IARC]ヒトの生殖能力低下における環境要因
Environmental factors in declining human fertility
15 December 2021
https://iarc.who.int/news-events/environmental-factors-in-declining-human-fertility/
Skakkebæk NEらによるNature Reviews Endocrinologyのレビュー紹介。著者らは生殖健康問題が、一部は化石燃料から直接間接的に由来する化合物への暴露増加によるとする仮説を提唱している。
Environmental factors in declining human fertility
Nat Rev Endocrinol (2021). https://doi.org/10.1038/s41574-021-00598-8
https://www.nature.com/articles/s41574-021-00598-8
(Skakkebækらは先進国の少子化の原因が人工化合物による精子の質の低下だと主張し続けて20年以上。しかしいまだに残る重要研究課題として生物的理由と社会経済的及び行動要因の区別ができないことがある、と書く。日本の少子化の原因として精子の質、の寄与はあったとしてもかなり低いと思うけど)
論文
-マスクはコロナの恐怖を活性化する
Masks activate corona fear
15-DEC-2021
https://www.eurekalert.org/news-releases/938089
ドイツ、バイエルンのJulius-Maximilians大学の心理学者によるCognitive Researchに発表された国際研究。多くの人にとってマスクがCovidの恐怖を喚起させるシンボルである。政策決定者はマスクをよりポジティブなものとして提示すべき。
(そんなにマスクが嫌い?食品扱うときもしたくないのだろうか?)
-CDCの内部調査はCOVID-19検査の最初のバッチを調べる
CDC internal investigation probes first batch of COVID-19 tests
15-DEC-2021
https://www.eurekalert.org/news-releases/937308
PLOS ONEに発表されたCDCの内部調査によると、CDCが配ったCOVID-19検査の最初のバッチは試験デザインの欠陥とアッセイ成分の一つのコンタミにより陰性対照に偽陽性を示した。
CDCはその後検査室品質改善を行っている
laboratory quality improvement activities
https://www.cdc.gov/labs/quality-activities.html
(全てのCDC検査室に認証を要求する(ISO 13485やISO/IEC 17025等)などが含まれる。2020年2月の失態はほんとうに痛かった)
-Nature volumes volume 600 issue 7889
エディトリアル
科学の結果を再現するのは困難だが必須
Replicating scientific results is tough — but essential
その他
-「何が大事?」:Covid-19の決定をするのにどんな根拠を入手して使ったかに関する質問
Sense about science
‘What Counts?’: an inquiry into obtaining and using evidence for Covid-19 decisions
https://senseaboutscience.org/activities/press-release-what-counts-inquiry/
Sense about scienceはCovid-19の決定のための根拠の入手と使用に関する調査を行う。
全国調査の初期の結果は、政府のCovid-19情報への関心が薄れてきていることを示す、特に若い人で、しかし、英国成人の半分以上は政府の統計ウェブサイトを使っている。
政府のCovid-19情報やガイドラインや規則を「よく知っている」と回答した人は、パンデミックの最初の6ヶ月に比べて2021年3月以降は21%低い。この最初の結果をもとに、Sense about scienceは人々の根拠の入手と使用についてさらなる調査を始めた。
2021年9-10月の2563人の英国成人への調査の最初の結果は以下から。