2022-04-14

論文

-小麦のクラスター化合物防御の発見は新たな研究分野を創り出す

Discovery of wheat’s clustered chemical defenses creates new avenues for research

13-APR-2022

https://www.eurekalert.org/news-releases/949696

John Innesセンターの研究者らがパン小麦の複雑なゲノムのマッピングの進歩を利用して発見した。小麦が病気の原因になる微生物に攻撃されると、いくつかのセットの遺伝子にスイッチが入る。これらの遺伝子は、小麦ゲノム中の6つのいわゆる生合成遺伝子クラスターと呼ばれる場所にあり、防御分子を作る。研究者らは問題の遺伝子をNicotiana benthamianaの導入して発現させ、トリテルペン類、ジテルペン類、フラボノイドを含む多彩な一連の分子をコードしていることを発見した。PNAS

 

-米国と21の同等の国の2019年と2020年の寿命の変化

Changes in Life Expectancy Between 2019 and 2020 in the US and 21 Peer Countries

Steven H. Woolf, et al.,

April 13, 2022 JAMA Netw Open. 2022;5(4):e227067.

https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2791004

公的死亡数をもとに計算した米国の寿命は、全体として1.87年短くなったが、ヒスパニックは3.70、非ヒスパニック黒人は3.22年だった。同様の他国の寿命の減少は平均で0.58年で、米国ほど減った国はどこにもない

(比較されている国に日本は入っていない。韓国、台湾は含まれる。スペインが1.43年減少で他の国としては最大)

 

-19世紀のオランダでは忙しい母親はあまり母乳を与えていなかった

Busy mothers did less breastfeeding in 19th century Netherlands

13-APR-2022

https://www.eurekalert.org/news-releases/948884

19世紀のオランダの田舎の村では、おそらく母親達が仕事に忙しかったために、母乳を与える率が異常に低かった。PLOS ONE

母乳を与えると乳児の骨の炭素と窒素の安定同位体比が変わる。研究者らはNorth HollandのBeemsterの約90人の乳児を含む277人の遺骨を調べた。その結果驚くべきことにほとんど母乳を与えていなかった。他の根拠から、19世紀のBeemsterでは母親達は酪農で忙しく牛乳がすぐ手に入ることが原因のようだ

 

-Bifidobacterium infantis処理はバングラデシュの重症急性栄養不良乳児の体重増加を促進する

Bifidobacterium infantis treatment promotes weight gain in Bangladeshi infants with severe acute malnutrition

MICHAEL J. BARRATT et al.,

SCIENCE TRANSLATIONAL MEDICINE • 13 Apr 2022 • Vol 14, Issue 640

https://www.science.org/doi/10.1126/scitranslmed.abk1107

バングラデシュの重症急性栄養不良(SAM)の2-6ヶ月齢の乳児に毎日Bifidobacterium infantisを28日間与えた単一盲検プラセボ対照試験(SYNERGIE)

 

-Natureニュース&ビューズ

突然変異の時計は種によって異なる時間を刻む

Mutational clocks tick differently across species

13 April 2022 Alexander N. Gorelick & Kamila Naxerova

https://www.nature.com/articles/d41586-022-00976-w

生涯を通じて、細胞は突然変異を蓄積する。長生きする動物は短命な動物より変異が遅いことが明らかになり、何故寿命に比例してがんリスクが増えないのかを説明する可能性がある

がんは不運な遺伝的変異が一定数以上になった細胞から生じる。ならばそのようなたちの悪い細胞は寿命と身体の細胞の数が増えれば増えるはずだがそうはなっていない。これはPetoのパラドクスと呼ばれている。最新の二つの報告はこのパラドクスについて新たな考えを提供する。Vinczeらは動物園の191種の死亡率を解析してPetoが正しいことを確認した-体が大きくて長生きする動物が寿命が短くて小さい動物よりがんで死亡する可能性が高いということはない。CaganらはPetoのパラドクスのメカニズムを探り、長生きする動物の細胞は短命の種の細胞より突然変異がゆっくりであると結論した

(以下略。マウスってほんとうに都合の良い実験動物なんだなと思う)

 

-Nature 研究ハイライト

水の節約方法:配管工事は変えられるが人々はできない

How to save water: plumbing can be changed but people can’t

05 April 2022

https://www.nature.com/articles/d41586-022-00947-1

シンガポールの人々に「ナッジ」で節水を呼びかけるのは失敗したが浴室の機能向上は成功した

節水には人々の行動を変えようとするより配管工事のほうが重要かもしれない

シンガポール国立大学のSumit Agarwalらが150万家庭の10年にわたる水の使用量を比較した。チームは水の使用量の少ない水洗トイレのような新しい設備を導入した建物に住む家庭は水の使用量が約3.5%減ったことを発見した。一方、節水の呼びかけは継続した影響はなかった

 

その他

米国上院保健教育労働年金委員会からFDAへの手紙

April 11, 2022

https://www.help.senate.gov/imo/media/doc/220411%20Murray%20FDA%20Letter%20re%20Food%20Safety%20Issues.pdf

最近のメディア報道(注)によるとFDAの食品安全のための努力はFDAの中で注目度が低く何年も問題がある。FDAはアメリカの食品供給の約80%を管轄しているにも関わらず、FDAの活動は医薬品や医療機器に優先的で食品安全は後回しになっている。

FDAに食品安全努力の強化を求める

 

THE FDA’S FOOD FAILURE

BY HELENA BOTTEMILLER EVICH

04/08/2022

https://www.politico.com/interactives/2022/fda-fails-regulate-food-health-safety-hazards/

50以上のインタビューに基づくPOLITICOの調査は、FDAがアメリカの消費者の食品安全と栄養についての期待に応えることに失敗している

主なポイントは4つ

食品部門は構造的およびリーダーシップの問題がある

議会はFDAに農産物に病原菌を寄せ付けないために水を規制するよう求めたが、11年経ってまだできていない

FDAはベビーフードの有害元素を排除することにほとんど進歩がない

FDAは減塩対策に迅速な処置をしていない

 

(すごい難しいことを要求されているという感想。FDAの医療部門に比べて食品部門の予算と人員が少ないなんて言われても当然だろうし、農業用水規制って雨も規制するの?コメのヒ素ゼロにはならないよ?トランス脂肪酸並みに塩制限していいの?FDAでここまでダメだと言われるなら日本なんて…。)

 

-SMC NZ

NZはオレンジ信号に移行-専門家の反応

NZ moves to the Orange traffic light setting – Expert Reaction

13 April 2022

https://www.sciencemediacentre.co.nz/2022/04/13/nz-moves-to-the-orange-traffic-light-setting-expert-reaction/

オレンジではマスク要求が一部解除されテレワークももはや推奨しない

8人の専門家のコメント

(政府のマスク制限緩和には反対の意見が多いようだ)

 

-ブルーベリー:認知症を予防する魔法の食品?可能性は低い

Blueberries: Miracle Food That Prevents Dementia? Unlikely.

By Cameron English — April 13, 2022

https://www.acsh.org/news/2022/04/13/blueberries-miracle-food-prevents-dementia-unlikely-16243

年をとっても「集中できて頭が切れる」ままでいられる魔法の食品はおそらく存在しない。人気のニュースは別の主張をするが、それは薄っぺらな根拠に基づく。

ハーバードの栄養精神科医Uma Naidooによる「ハーバードの栄養士が脳をシャープに維持し健康的に年をとるために毎朝食べるNo.1食品を教える」という記事の根拠として引用されている論文(Long-term dietary flavonoid intake and risk of Alzheimer disease and related dementias in the Framingham Offspring Cohort. Esra Shishtar,et al.,The American Journal of Clinical Nutrition, Volume 112, Issue 2, August 2020, Pages 343–353, https://academic.oup.com/ajcn/article/112/2/343/5823790 オープンアクセス)の解説。

このデータはFramingham心臓研究のデータで、フラボノイドを多い食品を食べることと認知症リスクの低さに関連があることを報告したものである。2801人の参加者のうち193人がアルツハイマーと関連認知症(ADRD)になり、158人はアルツハイマーに分類されている。総フラボノイド摂取量が最も多い人は概ね40%ADRDになりにくかったがこの関連のどれも統計的には有意でない。さらに総フラボノイド摂取量が最も多い群の参加者は、教育レベルが高く、活動的で、カロリー摂取量が多く、全体的食事の質が良く、オメガ3脂肪酸・ルテイン・ゼアキサンチン・マルチビタミンおよびミネラルサプリメント摂取量が多く、喫煙率が低くBMIが低く高コレステロール血症が少ない。つまり全体的に健康的な習慣を持つ人は長期的にちょっと良くやっていけるということで全然ショッキングな結果ではない。でもブルーベリーを食べることが年をとっても子どもの名前を覚えていられる良い根拠にはならない。

ほとんどの疫学研究同様、このデータは自己申告による食品頻度質問表(FFQs)による。これは一般的に人々が正確に食べたり飲んだりするものを報告しないため信頼できないデータ源である。Framingham研究の参加者は130の食品の毎日の摂取量を記録して報告するよう求められている。

方法

FFQsは自由に生活している個人に郵送し、過去12ヶ月に食べた食品の頻度についての質問に答える。FFQsには標準一回分の食事量の126の食品のリストがあり、頻度は月に一回未満から一日6回分までの9段階で、参加者は126の食品に含まれないものを4つまで加えることができる。

この研究の場合は、認知症リスクの高い集団の自己申告に依存しなければならないことで問題が大きくなっている。認知症患者は、診断される前に認知機能が低下することがしばしばで、そのような参加者のデータは実際には問題が多く解析から除外しなければならない。また使用されたFFQsでフラボノイド摂取量が推定できるのかどうかは評価されていない。さらに参加者の認知状態や精神衛生については情報が無い。そしてこれまでのフラボノイド摂取量とADRDリスクを調べた5つの前向き研究では結果は混合したものであったと著者らは書いている。つまり6つの疫学研究で結果は一貫しない。

それであなたはブルーベリーを食べるべきだろうか?好きにすればいい。脳に良いことをしているという妄想によって、でないなら。

 

(「ハーバードのなんとかが教える」、系のでたらめ、たくさんあるよね。栄養関係論文の摂取量評価の大雑把さはもっと知られた方がいい。細かい評価ができるレベルではない)

 

-罪悪のないイースターチョコレートを買いたい?環境と児童労働スコアでベストな「良い卵」リストから買おう

Want to buy guilt-free Easter chocolate? Pick from our list of ‘good eggs’ that score best for the environment and child labour

John Dumay et al., April 8, 2022

https://theconversation.com/want-to-buy-guilt-free-easter-chocolate-pick-from-our-list-of-good-eggs-that-score-best-for-the-environment-and-child-labour-180549

オーストラリアの慈善団体「Be Slavery Free奴隷解放」などが作ったチョコレート集Chocolate Collectiveが発表された。我々は38の企業を6つの指標で採点した。

・透明性とトレーサビリティ

・児童労働

・生活収入

・森林喪失と気候

・森林農業

・農薬

(これのお薦めリストgood eggに今世界中でサルモネラ中毒のためにキンダーチョコレートエッグがリコールされているFetteroが入っているのが皮肉が効いている。自分たちの気に入らないものを腐った卵Rotten eggsと呼ぶセンスがなんだかな。なお明治・森永・グリコが最低レベルの評価らしい)

 

-スリランカでは何が起こっていてこの経済危機はどうやって始まったのか?

What’s happening in Sri Lanka and how did the economic crisis start?

  1. Ramakumar  April 13, 2022

https://theconversation.com/whats-happening-in-sri-lanka-and-how-did-the-economic-crisis-start-181060

スリランカはこれまでで最悪の経済危機の最中で、独立以来初めて対外債務不履行になり2200万人の国民は12時間の停電と厳しい食料や燃料の不足に苦しんでいる。インフレ率は過去最高の17.5%で、コメの価格は通常1kgで80スリランカルピーだったものが500ルピーにまで上昇している。Gotabaya Rajpaksha大統領は4月1日に緊急事態を宣言したが怒れる市民の抗議により取り下げた。

スリランカは多くの必需品を輸入に頼っていて外貨不足が高値の理由だとされる。

何故中国が非難されるのか?

多くの人が中国を非難し、米国は「債務の罠外交」と呼ぶ。しかし中国からの借り入れはスリランカの2020年の総対外債務の10%でしかなく、約30%が国際ソブリン債で、実際のところ日本が11%と中国より多い

では危機の真の理由は?

1948年に英国から独立して以来、スリランカはお茶、コーヒー、ゴム、スパイスのような輸出用作物を主に栽培してきた。それが外貨を稼いで輸入に使われた。それから衣類の輸出、旅行業、送金でも稼ぐようになった。どの輸出の減少も経済ショックになるため頻繁に危機に陥っている。1965年以降16回IMFから融資を受けている。通常経済不調の場合には財政出動で経済を活性化すべきなのだがIMFはそれを認めず、負債は増えるばかりである。最近のIMFの融資は2016年だった。2019年に事態が悪化する二つの経済ショックがあった。コロンボの豪華ホテルと協会で爆弾事件があり旅行客が激減した。二つ目は新政府が税金を減らした。そして2020年にCOVID-19パンデミックがやってきた。さらにRajapaksa政府が致命的間違いをした-全ての肥料の輸入を完全に禁止した。スリランカは100%オーガニック農業を宣言し、2021年11月に取り下げられたもののそれが農業生産を劇的に減らし輸入を増やすことになった。

これから何が起こる?

17回目のIMFの融資を受けて経済再生を阻むデフレ政策でさらに苦しむことになるだろう。

 

-薹(とう)が立ったフキノトウを食べてみる

2022年4月14日

https://dailyportalz.jp/kiji/tou-ga-tatta-fukinotou

参考

食品中のピロリジジンアルカロイド類に関する情報

https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/pyrrolizidine_alkaloids.html

ふき・ふきのとうはあく抜きして食べましょう

https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/attach/pdf/pyrrolizidine_alkaloids-4.pdf

(食経験では発がん物質はわからない典型的な事例なので。添加物なら認可されない)