2023-06-22

[EFSA]新しい定期刊行物「Food Risk Assess Europe (FRAE)」

Food Risk Assess Europe

https://www.efsa.europa.eu/en/publications/food-risk-assess-europe

我々は、EU域の国立食品安全機関から選ばれた科学論文のオープンアクセスレポジトリである、新しい定期刊行物「Food Risk Assess Europe (FRAE)」(https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/journal/29401399)を正式に開始した。

EFSA Journal on Wileyに加えて、FRAEは、EUのリスク評価コミュニティとの協力を促進し、強力な根拠基盤を提供することを目的としている。

食品安全の優先順位はEU全体で大きく異なる可能性があるため、EFSAはその権限の範囲内で全ての分野の科学的知識のハブとしての役割を果たす。各国の食品安全機関は、主として国境内に関連する科学的評価を行い、これらはEUレベルで関連する可能性もある。

加盟国はFRAEに科学的評価を提出することで欧州の食品安全への寄与を強化でき、作業の可視化や全員の利益のために知識を活用できる。

認知度や影響を高める機会を提供するだけでなく、FRAEは必要に応じて英語の要約や概要を提供する。この記事は国や言語でフィルタリングをかけられる。

連絡を取りたい方はeメールを送ってください:efsa.author@efsa.europa.eu

 

[EU]査察報告

-カナダ―動物用医薬品の管理を含む、生きた動物と動物製品中の残留物と汚染物質

Canada 2022-7486―Residues and contaminants in live animals and animal products including controls on veterinary medicinal products

16-06-2023

https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit-report/details/4616

2022年10月6~21日に実施した、カナダのEU輸出用生きた動物と動物製品中の残留物と汚染物質に関する公的管理を評価するための査察。動物用医薬品の認可、流通、使用も評価した。概して、国の化学物質残留物モニタリング計画や関連プログラムは十分機能しているが、効果を弱める要因として、ミツバチと水産養殖のサンプリング戦略、密封が不十分名サンプル、研究所の性能、違反結果のフォローアップ調査の中央の監視不足、全ての食品生産動物の医薬品治療記録保持に法的要件がない、などがある。

 

-アイルランド―EUに入る動物や製品に関する公的管理及び、国境監理所のEU要件の遵守の検証

Ireland 2022-7426―Official controls on animals and goods entering the European Union and verification of compliance of border control posts with European Union requirements

15-06-2023

https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit-report/details/4619

2022年9月8~29日に実施した、アイルランドの国境管理所(BCPs)を通してEUに入る動物や製品の公的管理を評価した査察。一般にEU規則に従い、教育を受けた職員、情報技術システム、文書化手順、計画された協定に支えられている。だが、英国(北アイルランド以外)からアイルランドのBCPsを通してEUに再入荷される特定の貨物に関するもの、非動物由来貨物検査の文書の欠如、特定の動物由来製品の身体検査不足などの欠点がある。

 

-マレーシア―動物用医薬品に関する管理を含む生きた動物と動物製品中の残留物と汚染物質

Malaysia 2022-7488―Residues and contaminants in live animals and animal products including controls on veterinary medicinal products

13-06-2023

https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit-report/details/4615

2022年11月22日~12月5日に実施した、マレーシアのEU輸出用生きた動物と動物製品中の残留物と汚染物質の公的管理を評価した査察結果。概して、水産養殖製品の残留物モニタリング計画はほぼEU要件を考慮しているが、サンプリングを1年のうち8ヶ月に制限する政策はEU要件に従っておらず、計画の効果を損ねている。動物用医薬品に関する法の枠組みや公的管理システムは、一般にEU市場向け水産養殖製品の残留物状態に関する保証を支持している。

 

[ヘルスカナダ]カナダ政府は電子タバコ製品報告規制を発表

Government of Canada announces Vaping Products Reporting Regulations

June 21, 2023

https://www.canada.ca/en/health-canada/news/2023/06/government-of-canada-announces-vaping-products-reporting-regulations.html

カナダ政府は急速に進化する電子タバコ市場とその人々の健康への影響をより良く理解するために新たな一歩を踏み出す。

本日Carolyn Bennett精神衛生と依存大臣及び保健副大臣がベーピング製品報告規制Vaping Products Reporting Regulationsを発表した。これは製造業者に製品に使った成分や販売をヘルスカナダに報告することを求める。

 

[USDA ]ARS

-ミツバチヘギイタダニとチヂレバネウイルスはミツバチを殺虫剤により感受性にする

Varroa Mites and Deformed Wing Virus Make Honeybees More Susceptible to Insecticides

June 21, 2023

https://www.ars.usda.gov/news-events/news/research-news/2023/varroa-mites-and-deformed-wing-virus-make-honeybees-more-susceptible-to-insecticides/

Environmental Pollutionに発表。

現実世界での実験で、ミツバチを殺ダニ剤アミトラズ(Apivar)で処理するとダニとウイルス感染が予防でき、ミツバチの免疫機能の低下や自然死が抑制できる。

 

-交配、ミツバチ、そして4つのP

Breeding, Bees, and the 4 Ps

Posted by Scott Elliott, ARS Office of Communications  Jun 20, 2023

https://www.usda.gov/media/blog/2023/06/20/breeding-bees-and-4-ps

2007年に始まったひどい冬の損失に苦しんだ後、ミツバチの数は戻ってきた。それでも損失は多いので、養蜂家はミツバチの置き換えにたくさんの時間とお金を使っている。

USDAのARSの科学者はそれに対応して遺伝学を使った選択的交配で問題-4つのP(寄生虫parasites、病原体pathogens、栄養不良poor nutrition、殺虫剤pesticides)-と戦うミツバチを作っている。

 

[WHO]出版物

健康専門家と学術会議の乳幼児用食品を販売している企業による後援についての明確化:情報覚え書き

Clarification on sponsorship of health professional and scientific meetings by companies that market foods for infants and young children: information note

19 June 2023

https://www.who.int/publications/i/item/9789240074422

2016年の世界保健総会で採択された決議 WHA 69.9で加盟国と医療の専門家に「乳幼児用食品の不適切な宣伝を終わらせるWHOガイダンス」の履行を強く勧めた。このガイダンスは49回及び58回世界保健総会での各国に乳幼児の健康計画の財政支援確保と労働者の利益相反が生じないように薦める決議に従ったものである。このガイダンスでは「乳幼児用食品を販売している企業は医療専門家及び学術会議の後援をすべきでなく、医療従事者や専門家団体はそのような後援を認めるべきではない」と薦めている。ガイダンスでは「健康専門家や施設はしばしば乳幼児食品業界の宣伝や関係やインセンティブの標的とされ、利益相反によって独立性や完全性、信頼性を失う」と注記している。

医療専門大学や学会での後援はよくあることである。ウェブサイトを調べると、国の小児科学会の半分以上で母乳代用品の製造業者から資金提供、通常学会の協賛、を受けとったことを報告している。WHOとUNICEFは各学会からこれが企業の後援に該当するかどうかについて質問を受け取った。

この情報覚え書きの目的は2016年ガイダンスの文脈でのスポンサーシップの同定方法についてのガイダンスを提供することである

(以下略。母乳代用品だけではなく36ヶ月までの子ども用に開発したあらゆる飲食物を売っている会社は学会から締め出せとのこと。展示ブースすら許さない。だから粉ミルク危機になるんだろう。最適なベビーフードとか誤飲防止のための工夫とか企業と協力できることはありそうなのに。なおWHOの助言に従うかどうかを決めるのは各学会。)

 

論文

-インドの医療専門職は母乳を適切に支援してるか?

Are health professionals in India adequately supporting breastfeeding?

21-JUN-2023

https://www.eurekalert.org/news-releases/992884

Clinical & Experimental Allergyに発表されたレビューが乳児用ミルク業界とアレルギー専門家の問題のある関係を強調している。

インドは母乳を長く与える国(約70%が2年以上母乳を与えている、授乳の中央値は32.1ヶ月)なのに先進国向けの母乳ガイドラインを参考にしている。さらによくある乳児のミルクの吐出などをアレルギーだと診断してアレルギー専用ミルクを勧めているのではないかという疑惑。

(長すぎて栄養が足りないんじゃないかとは言わないんだ)

 

-ケトンサプリメントは訓練された持久運動選手のパフォーマンスを悪化させる、研究者が発見

Ketone supplements worsen performance in trained endurance athletes, researchers find

21-JUN-2023

https://www.eurekalert.org/news-releases/993231

International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolismに発表。

 

-山火事の煙の影響についての世界最大の研究が警告すべき長期健康影響を明らかにする

World's biggest study of wildfire smoke impact reveals alarming long-term health impacts

21-JUN-2023

https://www.eurekalert.org/news-releases/993346

Journal of Hazardous Materialsに発表されたオーストラリアのMonash大学の研究者らの山火事関連微小粒子(PM2.5)と死亡率についての11年のフォローアップ研究。

山火事関連PM2.5が10 μg/m3増加することと全原因による死亡率の0.4%の増加とがんによる死亡リスクの0.5%の増加に関連がある。6月8日の(北米の)山火事汚染のピーク時のPM2.5は460 μg/m3に達した。

 

-Nature Volume 618 Issue 7966, 22 June 2023

エディトリアル

世界の人道持続可能性計画は失敗している。科学にはもっとできることがある

The world’s plan to make humanity sustainable is failing. Science can do more to save it

これから9月まで、Natureは17のSDGsそれぞれをカバーする一連のエディトリアルを発表する。

 

研究ハイライト

チベットの湖は大都市並みの窒素を排出する

Tibetan lakes emit as much nitrogen as a megacity

ヒトの影響のない、遠隔地にある135の湖からの汚染は合計するとロンドンと同じくらいの酸化窒素を放出する。Nature Geosci.に発表

 

コメント

現在の保護政策は生物多様性消失を加速するリスクがある

Current conservation policies risk accelerating biodiversity loss

21 June 2023  Ian Bateman & Andrew Balmford

https://www.nature.com/articles/d41586-023-01979-x

農業による害を減らそうとする三つのアプローチ-土地の共有、再野生化、有機農業-は食料輸入を増加させ海外の環境破壊の原因になるリスクがある。別のアプローチの方が効果的で安上がりである。

写真はスリランカの有機茶栽培での除草の様子

農業による世界の生物多様性への影響を減らそうとして世界中の政府が採用している政策の一部は役に立たず収量を減らすことで食品の輸入を増やし海外の野生生物に悪影響を与える。特に欧州で、自分たちの地域への影響だけにあまりにも視野を狭めて下流の帰結を無視している。既に情報や根拠はある。

(以下土地の共有land sharing(耕作地の中にところどころ耕作しないところを入れる)ではなく土地を空けるLand sparing(全く耕作しない広い土地を作る)方が良い、有機農業推進は逆効果といった説明)

しかしもっと基本的な、そしてあまり認識されていない問題が、農業関連だけではなく、環境政策への科学研究の適用を混乱させている。

ノーベル賞を受賞した心理学者で経済学者Daniel Kahnemanが提唱した「フォーカシング・イリュージョン」である。

歴史的にはデータの無さと理解不足が課題の一部だったが今やデータが以前より入手可能になった。広範な学際的研究が政策決定に使われることが普通になる必要がある。

データに基づかない残念な決定は最善でも望んだ結果を得られず、最悪では脅威を悪化させる。

(日本も間違った有機農業推進事例として挙げられているけれど日本の場合はEUほど本気でなく単に補助金引き出す口実だと思うけど。)

 

その他

-SMC NZ

処理した福島原子力発電所廃水が間もなく太平洋に放出される-SMC説明会

Treated Fukushima nuclear wastewater soon to be released in the Pacific – SMC Briefing

Published: 21 June 2023

https://www.sciencemediacentre.co.nz/2023/06/21/treated-fukushima-nuclear-wastewater-soon-to-be-released-in-the-pacific-smc-briefing/

日本は処理水を海に放出するための新たな施設の試験を始めた。

その水は福島第一原子力発電所の融解した原子炉を冷却するのに使われたもので、1000以上のタンクを満たし来年初めには保管能力に達すると予想される。日本はその水を有害でないところまで処理し、薄めて太平洋に放出する予定。

NZ SMCは3人の専門家と世界のメディア向けに説明会をひらく

NZオークランド大学上級講師David Krofcheck博士

オーストラリアのアデレード大学物理化学地球科学部Tony Hooker准教授

台湾中央研究院環境変動研究センター研究員Chau-Ron Wu教授

約1時間の動画あり

(太平洋地域とは言え海流の関係で日本から出た水は南半球にはいかないシミュレーション。実際事故後も豪州周辺海域への影響はなかった。NZと豪州の専門家二人とも処理水は普通の海水と同じで脱塩したら飲むし、周辺の魚も食べると言っている。H3とC14は天然にあるものなので全く気にしない。処理への信頼は国際協調で確認されるだろう。(異常が検出されたらすぐそばの韓国と中国と台湾が黙っているわけがない)。有機物と結合したトリチウムの質問も出ている。ALPSの性能は2019年以降画期的に改善した。他の原子力発電所が大量のトリチウムをもっと高濃度で放出しているのになぜ福島だけそんなに小さい値にするのか、等。最後はSMRの話。)

 

-MHRAは希なシプロフロキサシンと自殺の関連についての情報をレビューする

MHRA to review information about rare ciprofloxacin suicide link

Emma Wilkinson 21 June 2023

https://www.pulsetoday.co.uk/news/clinical-areas/mental-health-and-addiction/mhra-to-review-information-about-rare-ciprofloxacin-suicide-link/

MHRAは医師がよく使われる抗生物質シプロフロキサシンと関連する希な自殺リスクに気がつかなかったと検視官が警告したため、さらなる対応が必要かどうか検討する

 

-気候危機が欧州に食料安全保障を再検討させている

Climate crisis forcing Europe to reconsider food security

19/06/2023  - By European Views

https://www.european-views.com/2023/06/climate-crisis-forcing-europe-to-reconsider-food-security

作夏の壊滅的気候に続き冬の乾燥を生き抜いた欧州はこの夏のさらなる被害を恐れて緊急の解決法を探っている。気候変動が欧州農業を脅かしている乾燥を悪化させると専門家が警告し、いまからしっかりした対策を始めなければならない。それにはデジタル技術と革新的交配法の組み合わせが必要である。

この乾燥が、既に過熱しているEUのゲノム編集の規制を巡る議論に緊急性を加えている。