2023-11-29

[BfR]化学物質とは何かを知る

Knowing what chemicals are all about

21 November 2023

https://www.bfr.bund.de/cm/349/parcopedia-knowing-what-chemicals-are-all-about.pdf

化学物質はヒトや環境にどのような影響を与えるのだろうか?欧州連合(EU)のパートナーシップ「PARC」は、この問題の核心に迫っている。PARCは「European Partnership for the Assessment of Risks from Chemicals(化学物質リスク評価のための欧州パートナーショップ)」の略である。この広範なプロジェクトには、独自のフォーラムもある。PARCの一環として開発された、化学物質のリスク評価に関する知識管理と情報交換のためのプラットフォームである「PARCopedia」は、最近オンラインになった。https://parcopedia.eu/registerへの登録は無料である。

新しいプラットフォームは、研究や方法開発、リスク評価やコミュニケーション、リスク管理又は政治などの観点から、化学物質評価に専門的な関心を持つすべての人を対象としている。PARCのメンバーシップは必要ない。

PARCopediaは、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)とポルトガルのパートナー機関INSAの共同リーダーシップの下で設立された。ITは、テッサロニキのアリストテレス大学によってつくられ、ドイツ連邦環境庁(UBA)、バーミンガム大学、ブルノのマサリク大学、アテネのギリシャ総合化学国家研究所の科学者もその他の重要な貢献をしている。

PARCopediaは、化学物質のリスク評価に関連するすべてのトピックについて、テーマや分野の垣根を越えた情報交換の場を提供している:

▪「wiki」(現在作成中)では、登録メンバーが化学物質や物質群、試験・評価方法、進行中のプロジェクトや活動、規制手続きに関する情報を入手できる。用語集では、重要な用語を説明し、化学物質評価分野の機関や法律を紹介している。

▪「ダッシュボード」では、化学物質評価分野からのニュースや時事情報、採用情報などが配信され、プラットフォーム上の新着情報についての情報が得られる。

▪「ソーシャルメディアエリア」では、メンバーは自分自身や自分の仕事を発表したり、公私のディスカッショングループで他のメンバーとネットワークを構築したり、ディスカッションフォーラムを開始したり、世論調査を実施したりすることができる。

PARCopediaは、PARCの産物として、革新的な概念とリスク評価の方法(NAMs:New Approach Methodologies(新しいアプローチ方法論))の促進に特に重点を置く。「NGRA: Next-Generation Risk Assessment(次世代リスク評価)」については大きな課題がある。

この新プラットフォームの目的は、特に、新しい試験及び評価方法の可能性や規制プロセスの理解に関する知識レベルの向上と、言語障壁の解消である。すべての専門分野と専門家グループとの間の集中的な科学的及び政治的交流の基礎を作ることを目的としている。

 

[BfR]オメガ-3脂肪酸サプリメントは心臓病患者の心房細動リスクを増大させる可能性がある

Omega-3 fatty acid supplements can increase the risk of atrial fibrillation in heart patients

16 November 2023

https://www.bfr.bund.de/cm/349/omega-3-fatty-acid-supplements-can-increase-the-risk-of-atrial-fibrillation-in-heart-patients.pdf

オメガ-3脂肪酸を含む製剤を服用すると、心疾患が既にある人や差し迫っている人は、不整脈である心房細動のリスクが増大する。これは、欧州医薬品庁(EMA)によるいくつかの臨床試験の評価結果である。これらの研究では、患者はオメガ-3脂肪酸含有薬又はフードサプリメントのいずれかを服用した。

臨床試験では、主に循環器疾患(すなわち、心臓や血管に影響を及ぼす疾患)を既に有する患者又は循環器疾患を発症するリスクが高い患者を調べた。EMAの評価では、心房細動のリスクは摂取したオメガ-3脂肪酸の用量に依存し、最高試験用量の4 g/日で最大であった。

オメガ-3脂肪酸を含むフードサプリメントは、例えば魚油カプセルの形態で販売されており、ときに医薬品と同様の用量が含まれている。医薬品とは異なり、フードサプリメントは市場で自由に入手でき、医師の監督なしに長期間服用することもできる。したがって、健康への有害影響の可能性はより簡単に見過ごされる可能性がある。

ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、特に心疾患又はそれに対応するリスク因子を有する消費者は、医師と相談した上で、特に長期間にわたる場合、フードサプリメントなどのオメガ-3脂肪酸を含む製剤のみを摂取すべきであると勧告する。

さらに、オメガ-3脂肪酸は魚にも含まれていることを考慮することが重要である。定期的な魚の摂取(週に1~2回)には脂肪代謝といった健康促進効果があり、上記の健康リスクに関連するオメガ-3脂肪酸の摂取量にはつながらない。

フードサプリメントは、病気の治療や緩和を目的とした薬ではなく、通常の食事を補う食品である。それらは安全でなければならず、望ましくない健康影響があってはならない。

DHAやEPA(ドコサヘキサエン酸及びエイコサペンタエン酸)のような魚油由来の長鎖オメガ-3脂肪酸は、循環器疾患及び血管疾患の予防のような健康促進特性を有すると考えられている。したがって、魚油はフードサプリメントだけでなく、強化食品にも使用される。

このような背景で、BfRは既に2009年にオメガ-3脂肪酸のDHAとEPAの多量摂取の健康リスクを評価し、コレステロール値の増加、高齢者の免疫防御機能の低下、心疾患の患者の死亡率の増加、高摂取レベルでの出血傾向の増加のエビデンスがあることを指摘した。多量摂取の長期的な影響も十分に調査されていない。したがって、BfRは食品へのDHAとEPAの添加の最大基準値を設定することを勧告した。BfRは、定期的に魚を摂取している場合、健康な人がフードサプリメントを介して魚油濃縮物を摂取する必要はないと考える。

 

[FDA]プレスリリース

-Himalayan Pain Relief Teaには表示されない医薬品成分が含まれる

Himalayan Pain Relief Tea contains hidden drug ingredients

11-17-2023

https://www.fda.gov/drugs/medication-health-fraud/himalayan-pain-relief-tea-contains-hidden-drug-ingredients

米国食品医薬品局は、www.himalayan-painrelieftea.comを含む様々なウェブサイトや、場合によっては一部の小売店で販売されている痛みに対する製品であるHimalayan Pain Relief Tea(ヒマラヤ産の疼痛緩和茶)を購入したり使用したりしないよう、消費者に助言している。

FDAの検査室分析により、Himalayan Pain Relief Teaには製品ラベルに記載されていないジクロフェナクとデキサメタゾンが含まれていることが確認された。この茶を服用している消費者は、製品の使用を安全に中止するために、直ちに医療専門家に相談する必要がある。コルチコステロイドの離脱のリスクは、医療専門家が評価するべきである。突然の中止は、離脱症状を引き起こすことがある。

ジクロフェナクは非ステロイド性抗炎症薬(一般にNSAIDと呼ばれる)。NSAIDは、心臓発作や脳卒中などの循環器イベントのリスクを高めるほか、出血、潰瘍、胃や腸の致命的な穿孔などの重篤な胃腸障害を引き起こすことがある。この隠れた医薬品成分は、他の医薬品と相互作用することもあり、特に消費者が複数のNSAID含有製品を使用している場合、有害事象のリスクを著しく高める可能性がある。

デキサメタゾンは、炎症疾患の治療に一般的に使用されるコルチコステロイドである。コルチコステロイドの使用は、感染症と闘う能力を低下させ、高血糖、筋肉の損傷及び精神障害を引き起こすことがある。コルチコステロイドを長期間又は高用量で使用すると、副腎を抑制する。副腎抑制のリスク又は発症について患者を評価できるのは、認可された医療従事者のみである。更に、Himalayan Pain Relief Teaに含まれる表示されないデキサメタゾンは、他の医薬品と併用すると重篤な副作用を引き起こす可能性がある。

Note:本通知は、ダイエタリーサプリメントとして販売されている製品や、表示されない医薬品成分や化学物質を含む一般食品について一般に周知するものである。これらの製品は通常、性的機能の強化、減量及び身体形成のために販売されており、しばしば「すべて天然由来」として表現されている。FDAは、ダイエタリーサプリメントとして販売されている潜在的に有害な表示されない成分を含むすべての製品を検査して特定することはできない。消費者は、上記のカテゴリーの製品を購入する前に注意する必要がある。

 

-Notoginseng Formula Special Gout Granuleには表示されない医薬品成分が含まれる

Notoginseng Formula Special Gout Granule contains hidden drug ingredients

11-17-2023

https://www.fda.gov/drugs/medication-health-fraud/notoginseng-formula-special-gout-granule-contains-hidden-drug-ingredients

米国食品医薬品局は、www.ebay.comを含む様々なウェブサイトや、場合によっては一部の小売店で販売されている痛みに対する製品であるNotoginseng Formula Special Gout Granule(痛風顆粒薬)を購入したり使用したりしないよう、消費者に助言している。

FDAの検査室分析により、Notoginseng Formula Special Gout Granuleには製品ラベルに記載されていないデキサメタゾンとジクロフェナクが含まれていることが確認された。

 

-Tepee Herbal Teaには表示されない医薬品成分が含まれる

Tepee Herbal Tea contains hidden drug ingredient

11-17-2023

https://www.fda.gov/drugs/medication-health-fraud/tepee-herbal-tea-contains-hidden-drug-ingredient

米国食品医薬品局は、www.amazon.comを含む様々なウェブサイトや、場合によっては一部の小売店で販売されている痛みに対する製品であるTepee Herbal Tea(疼痛緩和茶)を購入したり使用したりしないよう、消費者に助言している。

FDAの検査室分析により、Tepee Herbal Teaには製品ラベルに記載されていないピロキシカムが含まれていることが確認された。ピロキシカムは非ステロイド性抗炎症薬(一般にNSAIDと呼ばれる)である。

 

[EU]査察報告

-アイルランド―水産物

Ireland 2023-7716―Fishery products

27-10-2023

https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit-report/details/4681

2023年2月13日~3月13日に実施した、アイルランドの水産物に関する査察。公的管理システムはよく整備され、リスクに基づいた文書化された指示書/ガイダンスで支援され、欠点を特定・修正するのに必要な全ての要素で構成されている。独立した冷蔵倉庫以外の全フードチェーンに適用されている。公的管理は知識の豊富な職員が実施し、広範で詳細な指示書に支えられている。システムの全体的な有効性と信頼性は、教育のギャップ、承認が完全に更新されていないこと、検査訪問の事前通知への依存などにより弱められている。水産養殖の公衆衛生管理を実施する専門機関がなく、動物衛生用管理に依存している。

 

-クロアチア―動物と動物製品中の薬理活性物質、農薬、汚染物質の残留物

Croatia 2023-7679―Residues of pharmacologically active substances, pesticides and contaminants in animals and animal products

26-10-2023

https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit-report/details/4679

2023年3月6~17日に実施した、動物及び動物製品中の薬理活性物質、農薬、汚染物質の残留物の管理を評価した、クロアチアの査察結果。関連するEU要件を実行するために設定されている法的・行政的対策や、要件を満たした当局の業績に焦点を当てた。動物と動物製品中の薬理活性物質、農薬、汚染物質の残留物の公的管理の計画と実行はほぼEUの法的要件に従っている。にもかかわらず、計画工程におけるリスク要因の検討、暦年を通したサンプリングの広まりなど、分析方法の妥当性に関しては改善の余地がある。

 

-ナイジェリア―水産物(リモート評価)

Nigeria 2023-7846―Fishery products (remote assessment)

19-10-2023

https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit-report/details/4676

EUに輸出されるナイジェリアの水産物がEUの要件に適合していることを保証し、公的に確認できる能力を検証するための机上評価の結果。ナイジェリアは健全な法的枠組みや堅固な管轄機関の構造と法的権力を持ち、EU輸出用水産物に発行されるEUモデル証明書に規定された衛生証明を裏付けるための管理システムを実施できる。だが、重金属の分析結果の信頼性を立証する研究所ネットワークの能力は、誤った検出限界を使用したことで損なわれている。

 

-香港―水産物(リモート評価)

Hong Kong 2023-7877―Fishery products (remote assessment)

19-10-2023

https://ec.europa.eu/food/audits-analysis/audit-report/details/4672

EU輸出用水産物のEU要件への準拠や、香港の公式認証能力を検証するために実施した机上評価の結果。香港は長年EUにオイスターソース以外の水産物を輸出しておらず、現在EUリストに承認されている加工施設はない。水産物のEU適格性を証明するための日常的な公的管理は実施されておらず、国内市場の基準を適用している。だが香港は管轄当局の構造や法的権力を用いてEUモデル公的証明書を支援する管理を実現できる。香港がEUへの水産物の輸出を再開する場合、管轄機関は、EUリストに追加施設を登録する手続きを行い、公的管理が十分実行されることを保証する必要がある。

 

[EFSA]意見等

-使用済PETを食品接触物質へとリサイクルするために使用するBuhlerテクノロジーに基づくINCOM RESOURCES RECOVERY (TIANJIN)プロセスの安全性評価

Safety assessment of the process INCOM RESOURCES RECOVERY (TIANJIN), based on the Buhler technology, used to recycle post-consumer PET into food contact materials

EFSA Journal 2023;21:e8403 27 November 2023

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/8403

(科学的意見)

このリサイクルペレットは、室温又はそれ未満で長期保存される飲料水を含む全ての種類の食品接触物質の製造に最大100%使用することを意図している。パネルは、EFSAに提出された情報は、このリサイクルプロセスが、投入されたPETフレークの潜在的な未知の汚染をヒトの健康にリスクをもたらさない濃度まで低減できると立証するには不十分だと結論した。

 

-使用済PETを食品接触物質へとリサイクルするために使用するVACUNITE (EREMA basic及び Polymetrix SSP V-leaN)テクノロジーに基づくRekisプロセスの安全性評価

Safety assessment of the process Rekis, based on the VACUNITE (EREMA basic and Polymetrix SSP V-leaN) technology, used to recycle post-consumer PET into food contact materials

EFSA Journal. 2023;21:e8407 24 November 2023

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/8407

 

-使用済PETを食品接触物質へとリサイクルするために使用するVacunite (EREMA basic 及びPolymetrix SSP V-LeaN)テクノロジーに基づくGuangxi Wuzhou Guolong Recyclableプロセスの安全性評価

Safety assessment of the process Guangxi Wuzhou Guolong Recyclable, based on the Vacunite (EREMA basic and Polymetrix SSP V-LeaN) technology, used to recycle post-consumer PET into food contact materials

EFSA Journal. 2023;21:e8405 24 November 2023

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/8405

 

-使用済PETを食品接触物質へとリサイクルするために使用するVACUNITE (EREMA basic及び Polymetrix SSP V-leaN)テクノロジーに基づくIntco Malaysiaプロセスの安全性評価

Safety assessment of the process Intco Malaysia, based on the VACUNITE (EREMA basic and Polymetrix SSP V-leaN) technology, used to recycle post-consumer PET into food contact materials

EFSA Journal. 2023;21:e8404 24 November 2023

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/8404

3件すべて(科学的意見)

このプロセスから得られるリサイクルPETを室温又はそれ未満で長期保存される飲料水を含む全ての種類の食品接触物質の製造に100%使用しても、安全上の懸念とはならない。このリサイクルPETで作られた最終製品/物質は電子レンジやオーブンで使用することを意図しておらず、そのような使用はこの評価の対象外である。

 

-ジコホルの最大残留基準値(MRLs)の対象を絞ったレビュー

Targeted review of maximum residue levels (MRLs) for dicofol

EFSA Journal 2023;21:e8425  23 November 2023

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/8425

(理由付き科学的意見)

規則(EC) 396/2005第43条に従って、EFSAは欧州委員会から、MRLの引き下げの可能性を考慮して、未承認有効成分ジコホルの既存の最大残留基準値(MRLs)のレビューをするよう要請を受けた。EFSAは現行のEU のMRLsの由来を調査した。全ての既存のEU MRLsはEUで以前認可された用途を反映し、使われなくなったコーデックス委員会の最大残留基準値に基づいている。さらに、毒性学的データセットの限界と関連する不確実性を考慮すると、EUレベルで導出された既存の毒性学的参照値はジコホルには確認できない。従ってEFSAは、ジコホルの既存のEU MRLsを全て定量限界まで引き下げることを提案した。

 

-遺伝子組換えBacillus licheniformis NZYM-AC株由来食品用酵素α-アミラーゼの安全性評価

Safety evaluation of the food enzyme α-amylase from the genetically modified Bacillus licheniformis strain NZYM-AC

EFSA Journal. 2023;21:e8393 24 November 2023

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/8393

(科学的意見)

この食品用酵素α-アミラーゼ(1,4-α-d-グルカン グルカノヒドロラーゼ; EC 3.2.1.1)は、Novozymes A/S社が遺伝子組換えBacillus licheniformis NZYM-AC株で生産した。この遺伝子組換えは安全上の懸念を生じず、この生産株は安全性適格推定(QPS)アプローチの要件を満たしている。この食品用酵素にはこの生産菌の生きた細胞やそのDMAは含まれていないと考えられた。7つの食品製造工程で使用されることを意図している:グルコースシロップやその他のデンプン加水分解物、焼成以外のシリアルベース製品、醸造製品及び蒸留アルコールの生産用シリアルとその他の穀物の加工;ジュース及びジュース以外の製品の生産用の果物と野菜の加工;精製及び未精製糖類の生産。総有機固形物(TOS)の残留量は2つの工程中に除去されるため、食事暴露は残りの5つの食品製造工程にのみ算出された。欧州人で最大0.167 mg TOS/kg体重/日と推定された。この生産株のQPSステータスとこの食品用酵素の製造工程に由来する懸念がないことを考慮して、毒性学的試験は必要ないと判断された。既知のアレルゲンに対するこの食品用酵素のアミノ酸配列の類似性が調査され、呼吸器アレルゲンで1件の一致が見つかった。パネルは、食事暴露によるアレルギー反応のリスクは除外できないが(蒸留アルコール生産を除く)、その可能性は低いと判断した。提出されたデータに基づき、パネルは、この食品用酵素は意図した使用条件下で安全上の懸念を生じないと結論した。

 

-非遺伝子組換えBacillus licheniformis NZYM-CX株由来食品用酵素サブシリチンの安全性評価

Safety evaluation of the food enzyme subtilisin from the non-genetically modified Bacillus licheniformis strain NZYM-CX

EFSA Journal. 2023;21:e8406  23 November 2023

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/8406

(科学的意見)

この食品用酵素サブチリシン(EC 3.4.21.62)は、Novozymes A/S社が非遺伝子組換えBacillus licheniformis NZYM-CX株で生産した。この生産株は安全性適格推定(QPS)アプローチの要件を満たしていた。この食品用酵素は8つの食品製造工程で使用することを意図している:醸造製品生産用シリアルとその他の穀物の加工;改変した乳タンパク質及び香料調製品生産用の乳製品の加工;乳及び乳製品の植物ベースの類似物・タンパク質加水分解物及び藻類由来食用油の生産用植物及び菌類由来製品の加工;タンパク質加水分解物生産用肉・魚製品の加工;酵母及び酵母製品の処理。総有機固形物(TOS)の残留量は海藻由来食用油の生産で除去されるため、食事暴露は残りの7つの食品製造工程にのみ算出された。暴露は欧州人で最大2.393mg TOS/kg体重/日と推定された。この生産株はQPSアプローチの資格を得ており、この食品用酵素の生産工程から懸念される問題は生じなかったため、パネルは毒性学的研究は必要ないと判断した。既知のアレルゲンに対するこの食品用酵素のアミノ酸配列の類似性の調査が実施され、全部で20件の一致が見つかり、そのうち17件は呼吸器アレルゲン、2件は食物アレルゲン(マスクメロンとザクロに含まれるた)、1件は接触性アレルゲンだった。パネルは、この食品用酵素に対する食事暴露によるアレルギー反応リスクは、特にマスクメロンとザクロに感作された人ではこの食品酵素を食事から摂取することによるアレルギー反応のリスクを除外できないが、これらの食品を摂取するリスクを超えることはないと考えた。提出されたデータに基づき、パネルは、この食品用酵素は意図した使用条件下で安全上の懸念を生じないと結論した。

 

-遺伝子組み換えBacillus subtilis MAMDSM株由来食品用酵素グルカン 1,4-α-マルトヒドロラーゼの安全性評価

Safety evaluation of the food enzyme glucan 1,4-α-maltohydrolase from the genetically modified Bacillus subtilis strain MAMDSM

EFSA Journal. 2023;21:e8410 23 November 2023

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/8410

(科学的意見)

この食品用酵素グルカン 1,4-α-マルトヒドロラーゼ(4-α-d-グルカン α-マルトヒドロラーゼ; EC 3.2.1.133)は、DSM Food Specialties社が遺伝子組み換えBacillus subtilis MAMDSM株で生産した。この遺伝子組み換えは安全上の懸念を生じない。この食品用酵素にはこの生産菌の生きた細胞やそのDNAは含まれていない。焼成および醸造製品の生産のためのシリアルやその他の穀物の加工に使用することを意図している。この食品用酵素への食事暴露-総有機固形物(TOS)は、欧州人で最大0.204 mg TOS/kg体重/日と推定された。この生産株はQPSアプローチの要件を満たしている。製造工程から生じる懸念は確認されなかったため、パネルは、この食品用酵素の評価に毒性学的検査は必要ないと判断した。既知のアレルゲンに対するこの食品用酵素のアミノ酸配列の類似性が調査され、4件の一致が見つかった。パネルは、食事暴露によるアレルギー反応リスクは除外できないが、その可能性は低いと判断した。提出されたデータに基づき、パネルは、この食品用酵素は、意図した使用条件下で安全上の懸念を生じないと結論した。

 

-MRL改定

ハチミツのプロパモカルブの既存最大残留基準値の改定

Modification of the existing maximum residue level for propamocarb in honey

EFSA Journal. 2023;21:e8422 24 November 2023

https://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/8422

(理由付き科学的意見)

 

[EU]グリホサート

Glyphosate

https://food.ec.europa.eu/plants/pesticides/approval-active-substances/renewal-approval/glyphosate_en

更新

(「事実」としてグリホサートは不耕起栽培によって土壌の浸食と二酸化炭素排出を抑制する(つまり環境に良い)、と認めているのに「環境団体」が「生物多様性」を持ち出して反対している状況。なお生物多様性にとって最も影響が大きいのは農業そのものの模様。)

 

[RIVM]コロナウイルスパンデミックの健康経済的帰結

Consequences of the coronavirus pandemic for health economics

28-11-2023

https://www.rivm.nl/publicaties/gezondheidseconomische-aspecten-van-covidpandemie

コロナウイルスパンデミックとその対策はオランダの社会と経済に深刻な結果をもたらした。RIVMは社会的費用対効果解析(SCBA)にむけた一歩としての研究でそれらの帰結のうちのいくつかを描き出した。この研究では厳しい対策とあまり厳しくない対策を比較し経済モデルと疾患モデルを初めて結び付けた。この研究は主にコロナウイルスによる疾患と死亡率、ケアの延期、多様な収入グループの子どもたちの学業成績、へのパンデミックの影響を調べた。

SCBAはさらに開発が必要だが、いくつかの知見が得られた。これらの知見は政策決定者が次のパンデミックの際に、特に異なる集団への影響を考慮して、より良い選択をすることを可能にする。

例えば、この研究はコロナウイルスパンデミックが既にある収入グループによる差を悪化させたことを明らかにした。コロナウイルスによる死亡率は低所得者層で最も高く、低所得者層は検査を受ける頻度も少ないが入院やICUは他の集団より多い。さらにケアの延期からのキャッチアップがより所得の高い集団より遅い。

またこの研究では健康と幸福への価値観の集団による違いも調べた。その結果人々は健康よりも幸福の方により高い価値をおいていることが明らかになった。この知見は健康には良いが幸福を害する対策についてはより慎重になることを可能にする。

全ての所得者層でレジリエンスが極めて高い価値とされていた。低所得集団の人々のレジリエンスは最も身近な集団に依存し、従って新たなパンデミックの際には単に国の方針を作るだけではなく地域の人々の関与が重要である。それは全ての層に情報を届け地域や近所レベルで連絡を取り合うことを勧めることで可能になる。

多数の欧州諸国との比較から、厳しすぎるのと緩すぎるの両端の極端な対策は、経済も公衆衛生も害することが示された。タイミングや期間、制限の厳しさの間でバランスをとることが必須である。人々は対策がリスクの程度に応じていて一貫していれば支持するだろう。あまりにも多くの変更は社会経済的地位の低い人々に政府不信を抱かせることになるだろう。

(people value their well-being higher than their healthが重要なのだろうがwell-beingの指標が難しい。日本人のほうがオランダ人より食の楽しみに大きな価値をおいていると思ったり。)

 

[ASA]更新環境ガイダンス:グリーン廃棄クレーム

Updated environmental guidance: green disposal claims

28 Nov 2023

https://www.asa.org.uk/news/updated-environmental-guidance-green-disposal-claims.html

ASAは消費者研究の知見と、それを反映した更新広告ガイダンスを発表した

 

-広告におけるグリーン廃棄クレーム

Green disposal claims in advertising

28 Nov 2023

https://www.asa.org.uk/news/green-disposal-claims-in-advertising.html

消費者研究の結果から

・人々は環境に良いゴミ捨て努力に誇りをもっている

・多くは自宅でのゴミ捨てに集中していて家の外でも努力することを求められるのは不公平だと感じている

・グリーン宣伝はあまり批判的でなく受容している

・「リサイクル」は理解しているが「コンポスト可能」や「生分解性」はあまりよくわからず、実際には時間が永遠だったり分解によって有害物質が放出されることがあると知ると怒りを表明した

・「生分解性」の時間を明確にする要求が多かった

・廃棄方法についてより明確な情報の重要性を強調した

 

[NASEM]デマに対抗し科学を効果的に共有する

Countering Misinformation and Sharing Science Effectively

https://www.nationalacademies.org/topics/misinformation

今日の複雑で迅速に変化する情報環境の中では信頼できるものを同定するのは難しい。科学アカデミーは何がデマの拡散要因なのかやそれに対抗する方法を探りつつ科学について効果的にコミュニケートする方法を進化させている。

以下関連情報

 

[APVMA]

https://www.apvma.gov.au/

ウェブページ刷新

-大臣からの期待

Ministerial Statement of Expectations

28 November 2023

https://www.apvma.gov.au/news-and-publications/statements/ministerial-statement-expectations

(職場でのいじめやハラスメント、差別が問題になっていたので。)

 

論文

-メリーランドで消費者に直接オンライン広告されているケタミンの虚偽または誤解を招く主張

False or misleading claims in online direct-to-consumer ketamine advertising in Maryland.

Matthew A. Crane et al., JAMA Network Open, Nov 7, 2023

https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2811466

オンラインで業者が、処方薬のケタミンをメンタルヘルスの応急処置として静注または経口摂取することを宣伝している。いずれもFDAに認可された方法ではない。他に多数の安全性と有効性について誤解を招く宣伝が行われていた。

 

-フルオロキノロン耐性大腸菌のワンヘルス伝達と都市部や郊外で生活する犬からの排泄リスク要因

One health transmission of fluoroquinolone-resistant Escherichia coli and risk factors for their excretion by dogs living in urban and nearby rural settings

Jordan E. Sealey et al.,

One Health Volume 17, December 2023, 100640

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S235277142300160X

オープンアクセス

犬に生肉を与えることが抗生物質耐性大腸菌排泄と強く関連する

(ペット業界でも「ナチュラル」「未加工」が流行しているせいで病気のリスクが増加している)

 

その他

-イタリア議会は緊張の中培養肉食品の禁止を承認

Italy's parliament approves ban on lab-grown food amid tensions

By Angelo Amante November 17, 2023

https://www.reuters.com/markets/commodities/italys-parliament-approves-ban-lab-grown-food-amid-tensions-2023-11-16/

イタリアの下院は培養細胞で作った食品を禁止する法案を最終確認した。これは「脊椎動物由来細胞あるいは組織培養」食品や飼料の使用、販売、輸出入を禁止する法案で、既に上院で賛成159反対53で承認されている。