[EFSA]平易な言語による要約:マンガンの耐容上限摂取量に関する科学的意見
PLS: Scientific opinion on the tolerable upper intake level for manganese
8 December 2023
科学的意見のバックグラウンド
リスク管理者は、特に、フードサプリメントや食品強化目的で許容できる最大レベルを設定するには、栄養素の安全性に関する助言が必要である。
栄養素では、閾値摂取量を超えなければ、有害影響のリスクは予想されない。この閾値の同定は、耐容上限摂取量(UL)を設定するための基礎として使用される。
マンガンの過剰な食事摂取量は、神経毒性などの有害健康影響につながる可能性がある。
2000年に、食品科学委員会(SCF)は、ヒトの入手可能な根拠が限られており、動物実験による無毒性量(NOAEL)が欠如していることから、マンガンのULを設定できなかった。だが、SCFは、食品や飲料に通常含まれる以上のマンガンへの経口暴露は、有害健康影響のリスクを示す可能性があると結論した。
結果と推測される影響は?
入手可能な研究からのデータは、基準点を定めるにはまだ十分ではないため、マンガンのULを設定できなかった。
そのためEFSAは、欧州の集団のマンガンの高摂取者に観察された摂取データを基にして、安全な摂取レベルを設定した。
安全な摂取レベルは:
成人は8 mg/日(妊婦と授乳中の女性を含む);
その他の集団には2~7 mg/日。
これらのレベルは、水、強化食品、サプリメントを含む、全ての食事源からのマンガンの総摂取量のことを指す。
マンガンに設定された安全な摂取レベルは、保守的なアプローチに基づき、マンガンのULを特定するために十分なデータが入手可能になるまで、適切だと考えられる。
天然由来マンガンを高摂取する人の、その他の供給源(強化食品及び/又はフードサプリメントなど)由来のマンガンの追加摂取に関連する有害影響のリスクの可能性は、依然として不明である。
[ANSES]植物保護製品に含まれるSDHIsに関するANSESの新たな専門家評価
New ANSES expert appraisals on SDHIs in plant protection products
05/12/2023
https://www.anses.fr/en/content/new-anses-expert-sdhis
ANSESはコハク酸脱水素酵素阻害剤(SDHIs)の安全性に関する2つの意見を発表している。これらの有効成分は作物に有害な真菌と闘うために植物保護製品に使用される。入手可能な全てのデータをレビューした結果、ANSESは、ヒトの健康保護を目的とした特定の毒性参照値を調整するよう助言している。これらの結論は欧州レベルで示される予定である。ANSESは、食品中の様々なSDHIs残留物に関連する消費者へのリスクも評価した。調整した毒性値に照らして、食品中の残留物の累積摂取から生じる健康上の懸念は強調されていない。
SDHIに分類される物質は、ヒトのミトコンドリアに含まれる酵素であるコハク酸脱水素酵素を阻害する。それらは殺菌剤として農業で使用される。今日までに、11種類のSDHI物質が植物保護を目的として欧州レベルで承認されている。
2019年の科学者による報告書で、健康上の警告はないと結論する意見がすでに出されたことを受けて、ANSESは自主的に以下の追加の専門家評価を実施した:
暴露に関連するリスクを評価するのに使用される安全値の改訂について
SDHI残留物の摂取による暴露について
結果は2つの意見で発表される。
特定の毒性参照値への変更案
ANSESは、最新のデータを含む入手可能な全データを踏まえて、SDHIsの毒性参照値(TRVs)をレビューした。EUで承認されている11種類、もはや承認されていない2種類、現在評価中の1種類を含む14種類のSDHI物質を調べた。この作業には39のTRVsの詳細レビューが含まれていた。
TRVsは、ヒトの健康を保護するために超えてはならない、既定の暴露ルートと既定の間隔(短期、中期、長期)の化学物質の量のことである。ミトコンドリア毒性を引き起こす可能性のある作用機序が特に考慮された。
ANSESが招集した専門家グループは、SDHIsを含む植物保護製品の承認申請の一環として、ANSESが入手可能にした、科学的文献に発表されたデータや提出された文書内のデータをレビューした。専門家が実施した文献検索では、2021年の農薬の健康影響に関するINSERM(フランス国立衛生医学研究所)集団専門家レビュー以降に発表された追加の疫学データをは見つからなかったことに留意する必要がある。
ANSESが実施した専門家評価では、既存の28のTRVsに疑問を呈さない。入手可能な科学的データのレビューを受けて、ANSESは、現在の値を1.5 ~3.3の範囲で緩やかに削減することで、分析した39のTRVsのうち11を引き下げるよう助言している。
これらの調整案は、より拡大した保護を提供することを目的として、関連する有効成分を再評価する際に考慮に入れる可能性があるため、ANSESは欧州レベルで推奨している。これらのTRVsは消費者、地域の居住者、作業者、事業者の全ての暴露経路を考慮してリスクを評価するために使用される。使用される評価方法論は、急性・慢性両方の健康影響を考慮している。
ANSESは、SDHIsの作用機序やそれらの潜在的な健康への影響に関する知見の改善を継続するために、いくつかの方法論や研究の助言も発表している。これらの助言の一部は、OECDやEFSAの注目を集め、有効成分を評価する際に使用される試験戦略や試験プロトコルを定義するのに役立つだろう。
SDHI物質への累積食事暴露
2019年の専門家評価において、ANSESは、個別に考慮した各有効成分の毒性参照値に照らすと、各SDHI物質に関連する慢性食事暴露のレベルは低いと結論した。この分析を補足するために、ANSESは、全てのSDHI物質への累積食事暴露に関連するリスクを評価した。
評価は、EFSAが推奨する最新の方法論を採用し、欧州レベルで発表されたケーススタディで確認された科学的・技術的進歩も考慮した。「最悪の場合」のシナリオとANSESのTRV調整案の両方を含む2つの評価方法が使用された。
結果から、ANSESが下方修正したTRVsを用いても、全てのSDHI有効成分への累積暴露は消費者の健康への安全値を超過しないことが示された。
SDHIsの影響をさらに調査するための研究が進行中
国民のSDHIsへの暴露レベルに関する知見を継続して向上させるために、ANSESはすでにこれらの物質を以下の項目に含めている。
国民の食品中の化学物質への暴露を推定する目的で現在実施中の、第3回フランストータルダイエットスタディ(TDS)。
土壌中の植物保護製品を測定するためのINRAEキャンペーン。
ANSESは、ヒトのコハク酸脱水素酵素 (SDH)をコード化する遺伝子の1つの突然変異による病気である、遺伝性パラガングリオーマの発病率の変化が、SDHIsへの暴露と関係する可能性があるかどうか判断する試みで、国内登録によるデータを調査する研究にも資金提供している。これらの研究は、これらの物質に入手可能な限られた疫学データを補足するものである。
Ecophyto計画及びANSESの国家環境労働衛生研究計画 (PNR EST) から資金提供を受け、毒性学的及び機構論的アプローチを用いて、SDHI殺菌剤の生きた細胞への影響をより深く理解するために、その他2つの研究プロジェクトも進行中である。
詳細
コハク酸脱水素酵素阻害剤(SDHI)ファミリーの植物保護製品に関するデータ更新についてのANSESの意見及び報告書(フランス語PDF)
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.anses.fr/en/system/files/VSR2019SA0202Ra.pdf
SDHIへのフランスの消費者の暴露評価についてのANSESの意見(フランス語PDF)
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.anses.fr/en/system/files/PHYTO2019SA0135.pdf
集団的専門家評価を理解する
https://www.anses.fr/en/content/understanding-collective-expert-appraisal
[EPA]EPAは地域をPFAS汚染から守るための着実な前進を示す年次報告書を発表
EPA Releases Annual Report Showing Steady Progress to Protect Communities from PFAS Pollution
December 14, 2023
以下から
PFAS Strategic Roadmap: EPA's Commitments to Action 2021-2024
https://www.epa.gov/pfas/pfas-strategic-roadmap-epas-commitments-action-2021-2024
[EPA]EPAはTSCAによるリスク評価で5化合物を優先する手続きを開始
EPA Begins Process to Prioritize Five Chemicals for Risk Evaluation Under Toxic Substances Control Act
December 14, 2023
・アセトアルデヒド (CASRN 75-07-0),
・アクリロニトリルAcrylonitrile (CASRN 107-13-1),
・ベンゼンアミン(アニリン) (CASRN 62-53-3),
・4,4’-メチレンビス (2-クロロアニリン) (MBOCA) (CASRN 101-14-4), and
・塩化ビニル(CASRN 75-01-4).
[FSANZ]食品基準通知
Notification Circular 275-23
15 December 2023
意見募集
・除草剤耐性昆虫耐性トウモロコシ系統DAS1131由来食品
の評価への意見を2023年2月9日まで募集
認可-閣僚会議通知
・除草剤耐性昆虫耐性トウモロコシ系統DP51291由来食品
・MRLハーモナイゼーション
[WHO]子どもたちを守り電子タバコの摂取を予防するために緊急対応が必要
Urgent action needed to protect children and prevent the uptake of e-cigarettes
14 December 2023
消費者製品としての電子タバコは集団レベルでは禁煙に有効であることが示されていない。それどころか集団の健康に有害であるという根拠が出てきている。
(WHOは電子タバコについては喫煙者の害の削減に有効という根拠は認めない方針で全面禁止を要求。英国政府は違う)
その他
-一卵性双生児での雑食と完全菜食の心代謝影響 RCT
Cardiometabolic Effects of Omnivorous vs Vegan Diets in Identical Twins
A Randomized Clinical Trial
Matthew J. Landry, et al.,November 30, 2023
JAMA Netw Open. 2023;6(11):e2344457.
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2812392
22人の健康成人一卵性双生児ペアで、健康的完全菜食と健康的雑食の8週間の介入試験。
完全菜食群のほうがLDL濃度、空腹時インスリン濃度が改善し、体重が減った。
(これは満足するまで食べてもらっていて、菜食群の方がカロリー摂取量が少ない。この手の研究でエネルギー摂取量が少ないせいで体重が減るという当然のことを軽視して、特定の食事法が良い悪いと言いたがるのは何故なのか)
-SCIENCE VOLUME 382|ISSUE 6676|15 DEC 2023
2023 Breakthrough of the Year特集号
表紙はGLP-1アゴニストを象徴する注射筒を仕込んだフォーク
2023年はブロックバクター減量薬がトップの話題
エディトリアルは
答えよりさらに多くの疑問
(コスト、入手可能性、生涯にわたる投薬など)
SCIENCEINSIDER
FDAの実験室検査取り締まりは患者を守るかあるいは医療へのアクセスを制限するか?
Will FDA crackdown on lab tests protect patients—or limit access to care?
12 DEC 2023 BYJENNIFER COUZIN-FRANKEL
FDAの提案が医療コミュニティの分裂を暴露する
FDAがこれまで規制されていなかったある種の検査の規制を強化する提案が、関係者の意見が違うことを顕わにした。
-コンシューマーラボ 製品レビュー D-マンノースサプリメント
D-Mannose Supplements
Published December 14, 2023
https://www.consumerlab.com/reviews/d-mannose-supplements/dmannose/
尿路感染予防に役立つかと製品比較
天然の糖であるD-マンノースは尿路感染予防あるいは治療を期待してサプリメントとして摂取されている。これまでそのベネフィットが示唆されているのは予備的研究だけでプラセボ対照RCTでは示されていない。典型的には1日2回1gを摂取するが1.5gや1gを1日3回も使われる。
コンシューマーラボがD-マンノースサプリメントを調べたところ量の誤表示や重金属汚染はなかった。しかし表示されている摂取量は臨床試験での量とは異なり、さらにD-マンノース自体は同じでも価格は1200%の差があった。
-米国心理学会(APA)
健康デマを理解し対抗するために心理学を使う APAコンセンサス声明
Using Psychological Science to Understand and Fight Health Misinformation
AN APA CONSENSUS STATEMENT
NOVEMBER 2023
https://www.apa.org/pubs/reports/misinformation-consensus-statement.pdf
デマは健康や福祉、市民生活に危険なリスクとなっている懸念が広がっている。このトピックについての研究は増加しているが、以下の疑問が残る (a)デマの影響を受けやすくする心理的要因、(b)現実世界での行動に影響するものの規模、(c)オンラインやオフラインでの拡大のしかた、(d)効果的対抗や修正のための介入戦略。この報告書ではそれぞれの疑問についてコンセンサスを得るために最良の入手可能な心理学研究をレビューした。さらに科学者や政策決定者、健康専門家向けの8つの助言を提供した。
助言
1.修正なしにデマを繰り返すことは避ける
2.有害デマの拡散を理解し減らすためにソーシャルメディア企業と協力する
3.健康行動を促すことが既に証明されているツールとともにデマ修正戦略を使う
4.デマに対抗し正確な健康情報を提供するために信頼できる情報源を活用する
5.根拠に基づいた方法で繰り返し何度もデマを否定する
6.影響されやすい人達に免疫をつけるために小さいときから技術と回復力を構築し、デマを事前に否定する
7.デマの科学研究のためにソーシャルメデイア企業にデータアクセスと透明性を要求する
8.効果的対抗方法も含めた健康デマの心理学の基礎と応用研究に資金を提供する